おっさんと女子校生徒達との無人島生活   作:かなえもん

2 / 9
第二話 おっさんと天使の戯れ

 

 遭難から十日目。

 筋肉痛と手に出来た豆に苦しみつつも、休憩がてらおっさんは浜辺でゆりねのマッサージを受けていた。

 

「少し痩せましたか?」

「やっぱり? ベルトの穴が一つ狭くなっていたからそんな感じはしていたよ」

 

 木こりダイエットに成功したおっさん。

 半裸での作業で日に焼けた身体は少しだけ縮んでいるように思う。

 お腹周りはまだまだ蓄え脂肪に覆われているものの、目に見えて痩せているならば、効果は絶大だったということだ。

 

 ゆりねのおっさんの背中を労わるように指圧をしてくれた。

 体重を乗せてコリを解してもらえたおっさん。

 たまにお尻とお尻がこっつんこ。

 ズボンで圧迫されてしまった膨張機関車トーマス君が苦しみに喘ぐ以外は至福の時間と言える。

 おっさんもお礼にマッサージをしてあげようかと問うのは大問題となる為に自重した。

 代わりに暇を見つけてはジャングルの恵みをお土産に持って帰る。

 バナナ以外にもマンゴーやパイナップル等、南国で有名な果物が自生していたのは有り難かった。

 何よりもゆりねの喜ぶ顔が見れたのが印象に残った。

 

「友達とも分けあったりもしています」

「それは何より。あー、気持ちいい」

 

 溜まった乳酸を散らしてくれたお陰か、昼からの労働にも意欲が漲ってきた。

 会社だと憂鬱な日々だったので、貯まるストレスはごく僅か。

 おっさんにも笑顔が戻ってきていた。

 

「父にもこんなことはしたことなくて、少し不安でした」

「良い嫁さんになると思うよ。いやマジで」

 

 背中を向けているのでこちらからゆりねの表情は伺えない。

 しかしながら指圧から按摩に移行してからは、長きに渡りお尻が触れ合う。

 下半身の苦しみで腰を揺らすと、ゆりねのお尻もそれに合わせて揺れ動く。

 

「釣竿を貸して頂けませんか?」

「やり方は知ってる?」

「隣で見ていたので大体は。でも初めてなので期待は出来ません」

「釣りは知識と根性。あとは魚の気持ちを知れば簡単に釣れるさ」

「おじ様って面白いお方ですね」

 

 クスクスと笑う仕草までが手に取るようにわかる。

 馬鹿にしている感じはなく、おっさんの冗談に対して割と寛容な感じ

だ。

 心が広いのだろう。

 おっさんもこうでありたいと思う。

 

 ルアー釣りのやり方や、釣れる時間帯、波に注意する事や日の当たる時間を最小限にする事など。

 マッサージの時間を使っておっさんは知識を披露していった。

 偏差値の高いお嬢様ともなれば蓄えた知識でどこまでやれるのか、おっさんとしても何気に楽しみだ。

 初めて釣れた時の表情は是非とも拝見してみたいので、陽の弱まる時間帯を狙ってゆりねは釣り糸を垂らした。

 

「擬似餌は竿を適度に揺らして魚に餌と思わせれば勝ちだ。魚の種類によってはすぐに食らいつくぞ」

「お魚の気持ち、お魚の気持ち……」

 

 呟きながら水面に集中している。

 岩場の魚を狙っているので浮きは敢えて付けていない。

 竿先の揺れて細かに振動する。

 グイッと竿が曲がれば引っ掛けるチャンスだ。

 

「竿をギュッと引いて!」

「はいっ!」

 

 上手く引っ掛けたのか当たりは強い。

 背後からゆりねの竿を掴みサポートに回る。

 

「大きいな。岩陰に隠れらると厄介だから、竿を引きながらリールを巻き戻そう」

「とても重たいです。おじ様っ!」

「お腹を使って竿を固定しよう。腕の力だけだと竿を持っていかれそうだ」

 

 両手で竿を掴みっぱなしのゆりね。

 しなる竿をゆりねのお腹に当てておっさんがリールを巻く係になる。

 おっさんの体重があるので海に引っ張られる心配はないが、ゆりね1人ならば事故があったかもしれない。

 

「魚も動き続ければ疲れてくる。動きが治まったと思った時がリールを巻くチャンスだ」

「おじ様っ、腕が痺れてきました」

「もう少しの辛抱だ。ほら水面に浮かんできたぞ!」

 

 魚影が濃くなり、姿を現したのは石鯛だ。

 しかも60㎝オーバーの大物、推定3キロ超。

 まさかまさかの釣果におっさんも驚きを隠せない。

 

「わぁ、とても立派なお魚ですね」

「豊かな自然だという証拠だね。魚拓にして記念に残しておきたあくらいのサイズだよこれは」

「うふふ、やりました」

 

 とても嬉しそうにしていたのでゆりねとハイタッチを決めた。

 今夜の夕飯はコイツで決まりだ。

 喜びも束の間、ついでに締め方と血抜きの方法も教えておく。

 おっさんの手元を注意深く、真剣な眼差しで眺めている。

 跳ね回っていたあ石鯛から力が抜けて、食材へと変わった。

 

「あとは煮るなり焼くなり、刺身もいける。鱗の処理は専用の道具があれば簡単だが、今は無いものねだりだし、このままいこう。3枚に捌く時はまた料理の時間になれば教えるね」

「この時間だけで汗だくです。でもとても貴重な体験でした」

 

 爽やかな笑顔がとても眩しい。

 汗で光っているから尚更だった。

 おっさんも汗だくだった。

 お風呂があればなとしみじみ思う。

 

 夕飯前に服を脱いで海水に浸かった。

 全裸での突貫、ゆりねには汚いモノを見せたくないので夕日を眺めてもらっている。

 遠くから残留組みの女生徒達から悲鳴が木霊した。

 走ったおっさんの下半身に付いてる振り子もぶらんぶらんだった。

 多くがゆりねの身を心配する声。

 そしてより大きいのがおっさんを非難する罵詈雑言の声。

 音頭をとっていたのは年配の女先生。

 親の仇を見るようなキツい表情でこちらを睨んでいた。

 

 海中に潜ると鳴り止むので長く潜水。

 空気を吸うために浮上するとまだ賑やかに騒いでいた。

 

 腰を揺らしながらモデル歩きで砂浜へ上陸。

 脱ぎ散らかした服は畳まれていて、乾いたタオルすら置かれていた。

 おっさんの心の中ではもはや大天使長と化したゆりね嬢。

 そんな出来た娘と夕飯は塩焼きと刺身で箸をつつき合った。

 

 

 遭難生活14日目。

 ゆりねは残留組みとおっさんの間を行き来している。

 おっさんに白百合の状況を伝えるのが日課になりつつある。

 残留組みはヤシの葉で雨風を凌ぎ、助けが来るのを待つ間、焚き火の煙を漂わせて維持する姿勢を貫いている。

 食事は主に海藻と果物。

 海は危険だからと潜るのは禁止されている。

 サメが出たのでこれは止む無し。

 しかしおっさんは知っている。

 サメはサメでも比較的温和なサメで、人間を襲う種ではないことを。

 だからと言って油断はしていたない。

 ホオジロザメのような本物が出たらおっさんでも危うい。

 沖まで泳ごうなどとは思っていない。

 

 ジャングルへと向かった勇者組は、おっさんが見つけた洞窟を拠点にして索敵範囲を広げている模様だ。

 どうやらかなり大きな島だということは皆が薄々気づいている。

 その確証を得るために広範囲の探索を目的にして日夜頑張っているのだ。

 これにはおっさんも応援したくなった。

 なので道に迷っていそうな女生徒を見掛けれると、勇気を振り絞って声を掛けてみた。

 UMA(未確認動物)扱いされた。

 ジャングルに住まうかん高い鳥達の鳴き声と、うら若い女生徒達の悲痛な悲鳴が合唱した。

 おっさんは迂闊にジャングルへ入れなくなった。

 身嗜みを整えてやっとの状態。

 サメよりも油断ならない。

 

 

 気を紛らわすためにおっさんはココナッツオイルを作り始めた。

 木の板をすりおろし機に加工。

 自然分離法で半日ほどかけてオイルを抽出。

 余ったペットボトルに移し替えて完成。

 万能オイルと言われているだけあって、肌に潤いと胃腸を整え、さらにビタミンEを摂取できる。

 テカテカになったおっさんを羨むゆりねにも当然ながらお裾分け。

 残留組みにも見せたいと言い残して去り行く。

 後日、年配女先生が誰よりもテカテカになっていた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。