救助の見込みはない。
そんな絶望を嘲笑うかのように、おっさんは今日も木こりを続けていた。
目標数と加工に掛かる時間は膨大で、夢のマイホームのために毎日コツコツと木を切り倒していった。
沿岸部に近く、ジャングルの比較的開けた場所に木材を集める。
時間が経つごとにおっさんの身体は変貌を遂げていく。
「明らかにオーバーワークです。今日はゆっくりしていて下さい。休日にしましょう」
身体のあちこちから悲鳴は上がっていた。
ゆりね大天使長からの診断結果には逆らえず、代わりにオイルマッサージという癒しの時間が設けられた。
背中だけではない。
全身だ。
全身なのだ!
もはや悔いはない。
「1人だと大変なので助っ人を呼んできます。少しだけお待ち下さい」
「何ィ!」っと声が出かかった。
UMAに間違われているこのおっさんに触れ合いたいなどというモノ好きがいるとは思えず、期待はせずに待つ事しばし。
連れてきた女生徒は茶髪のツインテールをしていて、目がクッキリとしている可愛いお嬢様だった。
「ゆりね、あんた正気?」
「おじ様は安心安全です。私が保証します」
見上げた先、スカートの中が見えてしまった。
ゆりねと違い、ツインテールの娘はお嬢様らしくない膝上スカート。
黒だ!
「ほら、大人しい内に済ませちゃいましょう」
「いやいや、おっさんはそう簡単には暴れないよ」
ゆりねの軽いボケに思わずツッコミを入れてしまう。
仕方ないなとばかりに腕をまくり、ツインテールの娘が手にオイルを塗り始めた。
「あんまし男を触ったことないんだけど?」
「初めは私も不安でしたが、慣れれば感動します」
砂地に臥せて2人に身を任せた。
力尽きて動けないおっさんは無力の塊である。
心を穏やかに保つ事で性欲は形を潜る。
超合金と化したマのつく物体はズボンの中で今か今かと出番を期待しているようだが、今日一日の我慢。
彼女達の心に見えない傷を残してはいけない。
「背中は私が、さっちゃんは腕や脚をお願いね」
「へいへい。人使いがお上手なことで」
さっちゃんこと野立さとみ。
同じクラスのお友達らしい。
言葉遣いから芸能関係の娘さんかと質問をしたところ、大女優の娘さんだった事が発覚。
マジか、と思わず呟いてしまった。
「親が偉いだけで私は何もしてないよ」
「でも将来は女優を目指すつもりなんだよな?」
「まあ気が向いたらね……」
歯切れの悪い解答。
この手の問題で一番多いのが親の七光りと揶揄われてしまうこと。
その経緯を散々味わったさとみは、いつしか笑えなくなってしまったのだとか。
「ごっこ遊びとかどうよ?」
「おじ様って時々子供ッポイです」
「男なんて幾つになっても子供心はなくさないからね」
「役職は?」
「やはりベテラン美人マッサージ師かな?」
「ありきたりでウケるー」
そう言いつつもさとみは表情を柔らかくしておっさんの手の指を一本ずつマッサージしてくれた。
「大きい手だな。うちらの倍くらいあるんじゃない?」
「おじ様はその手でお家を建てるらしいですよ」
「マジで? やるじゃん」
「まだ基礎すら出来ていないけどね」
「手にマメが出来てる。痛くない?」
「優しく揉んでくれたらありがたいかな」
恐々とマメを触り、その硬さに驚くさとみ。
小さい手で優しく触られるともどかしくもなる。
鳴り潜んでいた獣が昂ぶろうとしている。
待て。お座り。伏せ。チンチ……。ゲフンゲフン。
「おじ様、痒いところはありませんか?」
「ちょうど背中の真ん中辺りが痒いかな?」
「ではこちらはどうでしょう?」
爪を立ててツゥーと背中を走らせるゆりね。
いけない声が出そうになる所を気合いで塞ぐ。
身体が一気に熱くなった。
裏返りそうになる声を必死に隠した。
そういえば今日は全身マッサージだと聞いていた。
裏もあれば表もある。
背中と腰をやり終えたゆりねの指示に従い、表の真なる姿を披露する。
ああ、今日に限ってズボンは履いていない。
全身マッサージと聞いていたからな。
「ゴクリッ」
「ゴクリっ」
「あ、あまり見ないで……」
おっさんとて恥ずかしいものは恥ずかしい。
ここにテント場があれば、「ご立派!」と叫びたくなるような状態になってしまっている。
「おじ様、このベテラン美人マッサージ師にお任せください」
ゆりねの台詞に否が応でもでも期待が高まる。
いや未成年になりをやらせているんだ、と片隅にあった良心は唸り声を上げている。
「ゆりね、あんた……」
「さっちゃん。プロのワザを見せてあげる」
ゆりねはそう言ってからおっさんの上を跨ぐとスカートを掴み、ゆっくりと腰を沈めていく。
するとあら不思議、スカートの中にテントは隠れ、娘達の目を汚すものが消えてしまう。
「安心安全。さあ続きを」
「あ、うん、うん?」
今まではお尻とお尻がこっつんこ。
可愛い触れ合いが、一気に加速。
触れ合っちゃいけない部分が触れ合っている。
さらにゆりねは胸板にオイルを塗るので腰を前後に揺する始末。
金を払わせてくれと叫びたい。
「おっさんがこのオイル作ったのって本当?」
「……ああ、時間と手間はかかるけどね」
「ウチらでも出来るならやり方教えてよ。サービスするからさ」
「これ以上のサービスだ……と? くっ、貰いすぎている気がする」
「そんな事ないって。だってあの桑原のオバさんがおっさんのことを少しだけ褒めてたんだ。お釣りがくるって」
「さっちゃん、せめて桑原先生って言ってあげて」
年配の女先生の名前は桑原先生らしい。
しかもあまり褒めることのない厳しい先生らしく、そこからお褒めの言葉を引き出せたのはある意味偉業らしく、残留組みの中では最底辺だったおっさんの評価が0.1だけ上がったとか何とか。
「助けが来なくて嫌な雰囲気だったからさ。正直なところまああれで大分助かったんだわ」
「そりゃ良かった。まあ手が空いたらその内に教えるさ。そうなればヤシの実を集めておいてくれるか? 大量に作ってジャングルに入った人達にも配れるだろう?」
「絶対に喜ぶ。ほらおっさん。これはサービスね」
手の裏の甲が浅い胸谷間に埋もれている。
いつの間にかさとみの着ていたカッターシャツのボタンが三つほど外れていたのだ。
「にしし、どうよ?」
「ああ、流石ベテラン美人マッサージ師だな」
「口元がニヤけてる。バレバレだって」
「理性を保つのがやっとでな。もはやケルベロスの復活も間近なんだわ」
至福の時間は過ぎていき、悪魔の囁きに見事打ち勝てたおっさんはお礼として海鮮料理を振る舞った。
魚や貝、採れたての果物が添えられた料理は彩りも鮮やか。
塩味たっぷりなものの、種類の多さに驚きを隠せないさとみは箸を震わせながら口に運んでいた。
エネルギーを充填し過ぎて、運動をして発散しておきたかったのは言うまでもない。