おっさんと女子校生徒達との無人島生活   作:かなえもん

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第六話 絶壁との死闘

 一からやり始めるとなると場所を探す必要がある。しかしながら条件に合うような土地は中々見つからない。

 ただ空き地があれば良いという訳にはいかない。

 近くに水場や食料、家の素材を如何に効率よく集められるのかが鍵になる。

 おっさんは岩場に注目した。

 右回りなら生徒会が縄張りにしている洞窟。

 左回りならばどうか?

 探検隊はジャングルの奥地へと向かった。

 隊員は隊長を除き一名。

 ツインテールを解いてポニーテールへと進化した野立さとみ隊員。

 暇だったからという理由での参加理由。

 断り辛く、頷き難い。

 

「暑いってー。足痛いー」

 

 ここまで来るのに1時間。

 さとみの足に合わせての行軍。

 ビーチサンダルでの強行は無謀過ぎた。

 

「少し休憩をしようか。足は浮腫んでないかな?」

「マッサージして」

「喜ん……、いや分かった」

 

 ご褒美にありつけるとは思っても見なかった。

 おっさんはさとみのは細い脚を優しく揉み解していく。

 日焼けしたふくらはぎを重点的に。

 流石に太腿に触れるのはマズい。

 短いスカートはおっさんを誘うように風で揺れていた。

 

「おっさんてさ……」

 

 心臓の鼓動が一際大きく音を奏でた。

 黒は深淵を意味する。

 やはり深淵を覗くときは深淵もまたこちらを覗いていたのだ。

 

「ゆりねの事をどう思っているの?」

 

 解答に詰まる質問が飛んできた。

 胸の大きさを語れば拳が飛び、お尻の形を語れば踵が落ちる。

 判断を見誤ればおっさんの命はない。

 そう思わせるだけの気配を感じた。

 

「優しくて思いやりのある良い子だと思う」

「そんなんじゃなくてさ。ほら、好きとか嫌いとか。もっと分かり易く答えてよ」

「す、す、す、好きとか、あわわ……」

 

 思ったいたよりも動揺した。

 マッサージに集中していたい気もするが、質問の答えに集中するべきだったのだ。

 判断を見誤ってしまった。

 

「どう見ても2人はデキてるって。だってさ、普通「あーん」とか人前する? マッサージの時もゆりねのあの手付き。どう見ても誘っていたし。どうやって落としたのさ? 教えて?」

 

 おっさんが知りたいわ!

 心の声は大きくなれど、そんな勇気はなく。

 強くならねばと宣言したあの誓いはどこに行ってしまったのか。

 動揺を隠すようにマッサージに熱が入る。

 ふくらはぎは終わった。

 足首も問題ない。

 凝り固まっているのは膝上だろう。

 おっさんはA型だ。

 やり残しは性に合わない。

 

「口説き文句とか無かった? 例えば君は太陽よりも美しい、とかさ?」

「いつの時代だ? せめて現代風で語ってくれ」

「俺のメスになれよ? みたいな?」

「少女漫画の見過ぎだろ」

「う、う、う、うるさい! 見てたって良いじゃん!」

 

 オレオレ詐欺に引っ掛かるなよと忠告をするべきか。

 おっさんは無意識にスカートの中へ手を差し伸べていた。

 話に夢中になっているさとみも気付かぬままに。

 

「ってかおっさんこそ少女漫画の台詞なんてよく気付いたよな。まさかおっさんって……」

「違うぞ! 広く浅くがモットーだからついな。参考程度にパラパラと捲っていた所にだな……」

「語るに落ちてるじゃん。もしかして女心を知ろうとかした口?」

 

 黒だ。

 黒しか見えない。

 おっさんの回答はいくら頑張っても白にはなり得ないのだ。

 負けた気分になった。

 

「っておっさん。近い近い!」

 

 おっさんはふと我に返り、失態を悟った。

 いつの間にかさとみの股に顔を突っ込もうとしていたのだ。

 通りで甘い蜜の香りがすると思った。

 

「さとみ達とは年齢が離れ過ぎていてイマイチ感情が掴めない。いつと言われれば出会いからだろうし、今はその思いは強くなっている気はする」

 

 天使から女神様へと昇格した。

 天にも昇る気持ちと言われればその通りだ。

 

「だが手は出せない。あまりにも尊いのだ」

「私の下着には手を掛けているのに?」

 

 失態。いや、大失態だ。

 女神様の友達が身に付けている下着を奪おうとしたのだ。

 またしても罪を重ねてしまった。

 こうなれば働いてお返しをするしか道はない。

 下僕となれば許してくれるだろうか。

 

「マッサージは終わった。立てそうかな?」

「いや、真顔でスルーとか良い度胸だよ」

 

 休憩を終わらせて道なき道をまた歩く。

 少し内股気味になっているさとみに気を配りながら歩いていると、白い湯気のようなものが見えた。

 さらに水の気配を感じた。匂いともいうべきか。

 進んでいくと、池らしき水の溜まり場と、岩場の上から勢いよく水が流れていた。

 

「凄い! やったじゃん! って、……うわぁ」

 

 滝壺の近く。

 どう見ても裸の娘が水浴びを楽しんでいる。

 さらにその数6名。

 惜しげもなくちっぱいを晒していた。

 悲鳴と怒号。

 顔を真っ赤にして頭だけ浮かべた軽蔑の眼差し。

 言い訳など通用するはずもなく、おっさんはさとみの背に隠れた。

 

「生徒会役員達が揃いも揃って水浴びか。他の娘達は知ってるの?」

「黙りなさい! その男を早く向こうに!」

「あれれ? 質問に答える気はないのかな?」

「あなたはいつもいつも嫌な質問ばかり、だから皆から嫌われているのよ!」

「でも友達はちゃんといるよ。あとおっさんも」

 

 おっさんより小さいさとみの背中が大きく見えた。

 やはりギャルはいつの世も強い。

 おっさんが敵わないと思ってしまうのも止む無しなのだ。

 

 お互いに一歩も譲り合いそうにない話し合いに決着をつけたのは、ちっぱい代表、ではなく生徒会会長その人であった。

 

「そろそろ身体が冷えてきました。上がりたいのでその男を見えない所へ追いやってくれないかしら?」

 

 確かに顔色は悪くなっていた。

 そこまで意地を張る問題ではないと冷静になってから気づいたさとみは、おっさんと共にその場を立ち去ろうとする。

 

「さとみ、このこと覚えていなさい」

「知った事じゃないし。おっさんもあんな無い胸なんかよりも、ゆりねの胸の方がいいっしょ?」

 

 頷き難い質問はやめて欲しい。

 おっさんはさとみと共にその場を立ち去った。

 

 

 収穫はないが発見はあった。

 岩場を登れば滝の上には源泉があるはずだ。

 岩場の高さは低い所で役10メートル前後。

 頑張ればよじ登れそうな雰囲気ではあった。

 ただ無防備では落ちて怪我をする恐れはある。

 行き帰りを考えるならロープは必須。

 足場を固めて行くなら固定アンカーに代わる何かを用意しておけば安心。

 落下時の保険として落ち葉を敷き詰めるなり対策はできるだろう。

 決行を二日後とし、準備期間を設けた。

 

「覗きの現行犯か。おっさんもついにって感じだね」

「味方、だよな? だよね?」

「女の味方でありたいとは思うけど、おっさんの報酬も魅力的だしな。どうしよっかな」

「分かった。さとみにら一番大きな部屋を使う権利をあげよう。どうかな?」

「毎度あり。やっぱおっさんだよねー」

 

 ギャル強い。ギャル怖い。

 トラウマを植え付けられてしまった。

 しかし冤罪を勝ち取るには悪魔に魂を売らねばならないのだ。

 またしても穢れが。

 南の島でバカンスを楽しみたい。

 今がそうだわ。

 逃げ場なんてなかったわ。

 

 さとみと共に浜辺に到着した。

 歩き疲れて倒れそうになった。

 さとみですらおっさんの目の前で、汗でスケスケになっている白いブラウスを脱ごうとしている。

 だがおっさんの反応は早い。

 すぐさま視線を逸らしてゆりねの姿を探した。

 

 

 山があれば登りたい。

 山男なら誰しもがそう思う。

 会社員のおっさんならば通勤電車に揺られたい、とはならないがタイムカードを押した時に気持ち良くなる事がある。

 

 危険なロッククライミングに挑戦しようとしている。

 心配の声はもちろん上がる。

 しかし夢のマイホームを建てるためには、困難に立ち向かう勇気が必要だとおっさんは説いた。

 

「分かりました。お供します」

「まああれくらいなら楽勝っしょ?」

「山を舐めちゃいけない。2人とも理解して欲しい」

 

 ロープの作成を手伝ってもらった。

 木に絡まっている蔓の繊維を裂いて編み込んだもので、人の重さでも持ち上げらる強度を目指して作成した。

 1人でも登り切ってしまえば、ロープを垂らすだけでいい。

 結びのついたロープならば手を滑らせる危険も減る。

 荷物の運搬も上と下に別れてロープを手繰り寄せるだけで良い。

 硬い木の先端を尖らせてペグ代わりにした。

 岩の隙間に差し込めば登る時の助けにはなるだろう。

 

 決戦前夜、おっさんは密かに見つけていた蜂蜜を2人に振る舞った。

 甘味の少ないバナナにかけるとあら不思議、極上の果物へと進化した。

 2人の笑顔を脳裏に刻んだ。

 もはや悔いは無い。

 

 

「ロープを垂らすよ? 荷物から先に上げる?」

 

 岩場の絶壁を僅か数分で登り切ったさとみ。

 黒豹のごとく、見事なクライミング能力だった。

 元々スレンダーな体形で体重も軽い。

 身のこなしで言えば3人の中ではダントツ。

 おっさんからは断崖絶壁に見えても、さとみの目には公園にあるジャングルジム程度にしか感じないのだろう。

 

 おっさんの目には未だに断崖絶壁に見えている。

 生徒会会長の胸板のように、掴める起伏すらないのではないかと絶望したものだ。

 

 ロープを掴んで崖を登り始めた。

 よく見れば指で引っ掛かるような場所が数箇所もある。

 足先を引っ掛けるにも十分で、ロープのサポートがあれば難なく登り切ることに成功。おっさんは憑依抜けしてしまう。

 

 荷物の運搬を済ませ、最後にゆりねが胸の谷間を披露しながら登る姿に釘付けになるが、掛かった時間で言えば1時間にも満たない。

 少しの休憩の後、滝のある方角へ向けて歩みを進めた。

 

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