おっさんと女子校生徒達との無人島生活   作:かなえもん

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第八話 群雄割拠

 看病の甲斐あってか、麗華は順調に回復していった。

 おっさんだけではなく、ゆりねやさとみも交代で看病にあたった。

 下の世話は流石のおっさんでも手が出せない。

 そんな事情があった。

 

 サーカスの屋根を特徴したコテージのような家。

 イメージの段階で理想とはかけ離れてはいるが、屋根付きである。

 救助ボートは多数あった。

 同じ作りの家ならば量産出来るが、おっさんの体力的に今はこれが限界だ。

 

 屋根の下では病人の麗華の他、おっさん、ゆりね、さとみが住んでいる。

 サーカスの屋根は木の板で延長してあるので、思ったよりも広い。

 救助ボートの柔らかい布地でベッドも製作してある。

 防水加工なので濡れても平気だが、昼寝をすると暑さで地獄を見るので、夜にしか使われない。

 麗華のベッドには加工したベッドにシーツを敷いてある。

 裁縫班の力作らしいので、鴨のお肉と交換して譲ってもらえた。

 値切りは効かず、3羽の鴨が天国へ旅立った。

 

 ゆりねはおっさんの腕枕を報酬に選ぶ事が多い。

 釣った魚の数に応じて時間は延長される。

 

 さとみは探索のパートナーとしておっさんと同行する事を好む。

 生徒会の集めた情報を吟味してその場所を捜索をすると、必ずやおこぼれに預かれる。

 

 おっさんは農作業を始めた。

 畑作りから始めようとして思いとどまり、肥料作りから始めたので道のりは遠い。

 鳥の糞は集めてあった。

 ただ野鳥の糞は病原菌のリスクが高い。

 適切な方法で処理しなければ使い物にはならないとおっさんは知っていた。

 

「どれくらい出来そうですか?」

「肥料作りだけで数ヶ月。畑を形作りながら地道な作業になりそう」

「そもそも野菜ってここにあるの?」

「浜大根やら島ネギかな。あとはさやインゲンみたいなマメ科の植物とか育ててみたいかな」

「パン食べたい」

「私はお米が食べたいです」

「おっさんはラーメンが食べたいな」

 

 食の欲求は止まらない。

 思い出しただけで生唾が湧いてくる。

 鳥の出汁で作るなら麺類が理想だが、米でリゾットを作るのも良いかもしれない。

 

 夢物語は眠る前まで行われたが、夢の中でおっさんは食堂の前を通り過ぎて風俗へと向かって行った。

 

 

 

 世はまさに乱世。

 最大派閥であった生徒会組の解散宣言により、多数の生徒達は各地へ散って行った。

 年若い女先生率いる新たな組みが結成され、洞窟拠点を中心にして各地に目を光らせていた。

 生徒会という扱いにくい存在があったことで、今まで爪を研いでいた若い女の先生は、より好戦的な態度で獲物を横取りしていく。

 

 元生徒会組は滝壺方面に逃れ、おっさんの指示の元、浄水システムの構築に取り掛かっている。

 書紀のハルコはおっさんのメモを片手にして。

 

 洞窟拠点から右回りで北上して行った橘組みは音信不通。

 若松先生の安否が気遣われる。

 

 生徒会組みの解散によって最大派閥となったのは、ココナッツオイルで必死に小皺を伸ばしている桑原組率いる桑原先生だ。

 おっさんのマイホームを簒奪し、一国一城の主人となり、裁縫班、洗濯班、他を擁して盤石な体制を整いつつあった。

 

 おっさんにも城はあるが、現在は野戦病院よろしく病人を抱えているので順風満帆とは言いづらく、若い娘達から漂うフェロモンに思い悩む毎日を送っている。

 

 未成年。

 この言葉がずっと引っ掛かっている。

 せめて後一年。16にでもなればおっさんでも気は緩む。

 しかしながら未だ15はおっさんの半分の歳。

 手が届きそうで届かない。

 ずっと重痒い気持ちを引き摺っている。

 

 充填は常に120%。

 僅かな衝撃で波動砲は発射される。

 沖田艦長の「うてー!」の声だけでもヤバいのだ。

 

 そんな訳で、おっさんのズボンの前は常にテントが張ってある。

 名前すら知らない女生徒からは会う度に悲鳴を上げられ、ゆりねの瞳は潤い、さとみは嬉しそうに唇を舐め、元生徒会長の麗華は伏せながらでもズボンのテントを目掛けて静かに這い寄ってくる。

 

 成程と思った。

 痩せるにつれて性欲というものは増大しているのではないかと。

 この衝動を抑え込むには食欲によって上書きし解消せねばならぬと。

 

 おっさんは鳥の楽園たる湖を思い出す。

 渡鳥達は海を跨ぎ大陸から大陸へと渡る。

 当然栄養を蓄える為の餌を食べるのだが、胃の中のものを消化しきれずに息絶えた個体がこの島には必ずいる筈だ。

 米や小麦が腹の中に残っていれば、発芽していてもおかしくはないのではないかと。

 

 おっさんはその日のうちに荷物を纏めて探索の準備を始める。

 建築予定地を探しに行った前回とは違い、今回は米や小麦などの穀物一点狙いで行く。

 狭まった視界を更に狭める。

 病人の麗華には気の毒だが、このままではおっさんの毒牙にかかるかもしれないと説得すれば納得してくれるだろう。

 動物性タンパク質を摂取したことで、浮出そうになっていた肋骨も形を潜めた。

 胸も少し膨らんだ気もするとでも言っておけば、麗華にも生きる希望となる筈だ。

 

 ゆりねに看病を頼み、さとみを連れて探索に向かう。

 さとみは鳥を捕まえるのが上手い。

 体力はないのでペースは落ちるが、身のこなしと目の良さをおっさんは信用している。

 

 発見した湖を直線コースで目指した。

 前回よりも時間は短縮し、その分を探索に回した。

 湖の周りを隈なく見渡して草生い茂る辺りを手分けして捜索。

 

「見つけたよ。これじゃない?」

 

 さとみが小麦を、おっさんは米を手に入れてしまう。

 しかし今住んでいるマイホームだと圧倒的に水が足りない。

 この湖を利用するか、滝壺近くを用地にするかでおっさんは悩んだ。

 

 この湖の水をマイホームへ。

 小川をつくり崖下へと引き込む作戦。

 またもや膨大な時間がかかる壮大な計画をおっさんは考える。

 だがやはりこの農地計画には圧倒的に人手が足りない。

 協力者を集めて人海戦術で工事を行えばかなりの短縮にはなる。

 

 出来るか出来ないか、ではない。

 やるのだ。

 ラーメンの為に。

 

 

 マイホームに戻り事業計画を打ち立ててプレゼンをした。

 会社でもこうして人を集めて回していた。

 おっさんの得意分野でもある。

 

 在野に散って行った女生徒を探す案が出た。

 これは即採用だ。

 

 今最大勢力である桑原組から有志を募る案も採用した。

 

 元生徒会のメンバーに事業計画を話した。

 浄化システムは機能し、新たな水源を得て復活の兆しを見せていた矢先であった為に話はスムーズに進み、水門建設に従事する約束を取り付けるのに成功した。

 

 洞窟拠点の新たな勢力は蛮族となっているので近寄り難く、刺激しない方針で固めた。

 

 

「私も手伝いますわ」

 

 麗華がベッドから起き上がるとそう申し出た。

 ゆりねの見立てによると、もう病は治っているという。

 筋力をつける為に動いた方が麗華にとっても良い方向に進む。

 おっさんは頷き、麗華にも指示を与えた。

 

 生徒会に反発して散って行った生徒達の所在は様々だった。

 おっさんを矢面に立たせると悲鳴を上げるので、麗華を全面に押し出して交渉を開始。

 一度自由を手にしたものの、自由の代償を知る羽目になった娘達。

 米と小麦の話をすると目を輝かせた。

 

 復活した麗華は話が巧みで上手い。

 病で伏せっている間、自分と真摯に向き合えた時間があったのも大きい。

 自尊心の塊が削り取られ丸みを帯び、人を惹きつける魅力を発揮し始めたのだ。

 

 おっさんの事業計画の顔役となるまでが早かった。

 

 

 麗華にはさとみとの因縁があった。

 互いに傷つけ合い、心の傷を増やして行った。

 麗華の看病にはさとみも携わっていた。

 角の取れた麗華にさとみは毒気を抜かれ、ぎこちなくも手を握り合うまで歩み寄り、今では麗華をサポートする側に回っている。

 

「いつまでもギャルとかしてらんないっしょ?」

 

 茶髪の髪はポニーテールから自然に流し、たまにツインテールでおっさんの腕にしがみ付く。

 

「焼き立てのパンはよ」

「先にラーメンだろ」

「イチジクで作ったジャムを塗って食べたい」

「美味そうだなそれ」

 

 主食が食卓に上がる日はいつ来るのだろうか。

 おっさんは木のクワを量産しながら思案する。

 道具の作成は急務だ。

 素手で土を掘らせるわけにはいかない。

 木のシャベルやツルハシも作りたい。

 木こりの仕事はまだまだ続きそうだ。

 

 ゆりねと魚釣りに出かけた。

 静かな波の音が心を落ち着かせてくれた。

 ルアーから餌釣りへ。

 ゆりねも進化していた。

 

「初めは触るのも嫌でしたが、慣れると可愛いです」

 

 ミミズに容赦なく針を引っ掛けて水面に垂らす。

 竿がしなり、合わせるタイミングも完璧だった。

 

「また大物かも。おじ様、手伝ってもらえませんか?」

 

 ゆりねを抱え込むようにして竿を握る。

 大物の手応えではないが、ゆりねがそう言うのであればこれは大物なのだ。

 ゆりねの柔らかいお尻が大事なところに当たる。

 

「かなりの大物です。んっ、んっ」

 

 竿を立てる。

 こっちの話ではない。

 

 リールを巻いていくと、ウマズラハギが釣れた。

 こいつのキモは絶品で、刺身につけて食べると旨味が弾ける。

 

「やりましたね。今すぐ食べますか?」

「新鮮な内に食べるか。皆には内緒だな」

 

 皮を剥いで3枚に卸して一口サイズに。

 箸はないので手掴みだ。

 

「甘いキモですね。とても美味しいです」

「ああ、毎日でも食べたいよ」

 

 先程の格闘で賢者に成り果てたおっさん。

 終始穏やかな表情をしていた。

 

 洗濯班には渡したくない。

 やるなら1人でこっそりとだ。

 

 

 

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