名探偵プリキュア!ウルトラマンティガ 真実の光 作:Lotus000
◆
探偵事務所の内装を整えた翌日。
いざ、依頼をどんどん解決していくぞと意気込んでいたのだが……
「むぅ~……う~ん……う~ん……」
依頼人が未だに現れず、僕らは退屈で平和な日々を過ごしていた。
「……~!何だよ!さっきからそわそわして!」
唸り声をあげながら事務所内を歩き回るみくるに我慢できなくなったのか、先輩が作業をしている手を止めた。
「だって!せっかく探偵事務所を開いたのに依頼人が来ないの!」
「それだけ平和だってことだろ?」
「そうだよ」
先輩とあんなからそう言われ、共感するものの納得がいかない顔をするみくる。
「そもそも、探偵事務所があることを知ってる人っているのかな?」
「そっか。宣伝していないもんね」
あんなとそんなことを話していると……
「はぁ……はぁ……はぁ……た……助けて~!」
事務所の扉が勢いよく開かれ、バッグを抱えた男性が息を切らしながら大きな声で助けを求めた。
突然のことで事務所内が静まり返った。
「わわわ……!依頼人だ!お茶!お茶~!」
「とととりあえず、その前に座ってもらおう!」
「えっ!?どこに!?」
「どうしよう~!」
「ポチ!ポチ!ポチ~!」
静寂だった空間が一気に騒がしくなる。
探偵の二人どころか、依頼人もポチタンもパニックになっていた。
「おい!みんな落ち着け!」
先輩の一声でその場が再び静まり返る。
「ひ、ひとまず、お茶を入れるので左のソファーにおかけください」
「お茶です。どうぞ」
ソファーに座った依頼人の男性にお茶を出す僕。
正面にあんなとみくるが座り、その後ろに先輩と僕が立つ。
「「……で、どうしました!?」」
笑顔で聞くものじゃないだろう。
ようやく依頼が来たからってそんな満面の笑みで。
相手は困ってるんだぞ。
「僕のバッグの中身が……!リンゴとジャガイモになっちゃった!」
「リンゴとジャガイモになった?あ、その前に二人とも、名刺を渡しておこう」
詳しい詳細を聞く前に、まず名刺を渡しておこうと提案する。
「探偵の明智あんなです!」
「小林みくるです!」
「あぁはい!よろしく」
二人から名刺を受け取った依頼人。
「名刺を渡した……!探偵って感じ!」
「やったね!みくる」
依頼人の前で話すことじゃないよ二人とも……
相手からしたら二人は探偵なんだよ。
自称探偵って思われそうだ。
「……ったく」
先輩も呆れちゃってる……
咳払いをした依頼人は自己紹介をした。
「えぇ~改めまして、僕は小松崎純一です」
「……でバッグがリンゴとジャガイモって?」
「うん!気づいたら中身が変わってて……」
純一さんはバッグから中身を取り出し、机に置いていく。
「リンゴ、ジャガイモ、玉葱、パンに……エプロン?」
「元々、バッグには何が入っていたんですか?」
「漫画の原稿……あと着替えと……「漫画の原稿!?」」
すると、あんなが目を輝かせて身を乗り出して尋ねる。
「漫画家さんなの!?」
「ううん、目指してる最中なんだ。原稿を出版社の人に見てもらうために来たんだよ!認められれば漫画家になれる!いや!絶対なってみせる!」
純一さんは夢に向かって自分のやれることにひたむきな人間なんだろうな。
そんな思いが伝わってくる。
「原稿がないって気づいたのはどこですか?」
みくるに聞かれた純一さんは席を立つと、僕らを連れて外に出た。
「ここだよ」
「「えっ!?」」
「ここ!?」
そこはキュアット探偵事務所の目の前であった。
「出版社に行く前に気持ちを落ち着かせようと歩いてたらここにいて……それで、何かバッグが重いなと思ったら……」
中身が原稿ではなく、別の物になって混乱していたところ、キュアット探偵事務所の看板が目に入り、駆け込んだという。
ここへ来て気づいたおかげで事務所に訪れることができたのならある意味、運が良かったのだろう。
「バッグの中身が変わるなんて……」
そう言いながら純一さんはバッグを肩にかけようとするが、なかなか紐が頭を通せず手間取っていた。
「紐、短すぎません?」
「あれ?確かに……!短くした覚えないのに!?」
みくるの指摘通り、バッグの紐の長さが純一さんに合っていない。
僕はバッグをよく見て、ある部分に注目した。
「ピンと来た!中身じゃなくて、バッグそのものが入れ替わったんじゃない?」
「まさか!間違いなく僕の……あれ?」
あんなが直感で口にしたのを聞いた純一さんが所持しているバッグをよく見る。
「なんか……汚れてる」
彼の言う通り、バッグに茶色い汚れが付着していた。
「どっかで落としたとか?」
「あぁ!そういえば、駅前で!」
純一さんの案内で僕とあんな、みくるはバッグを紛失したと思われる駅前へと向かった。
「そうだ、ここだよ!ここで向こうから走ってきた人とぶつかって、バッグを落としたんだ!」
僕らが着いた場所は、まことみらい駅前の広場。
見通しもよく、人通りもある。
ここでバッグが入れ替わったのか。
「それってもしかして、純一さんとその人がぶつかった時に偶然バッグが入れ替わって、そのまま持ち帰っちゃったとか?」
「なるほど!それあり得るかも!」
「ぶつかった人はどんな人でした?」
「う~ん……覚えてないなぁ……」
せめて特徴でもあれば探しやすくなると思ったのだが、困ったな。
「そのバッグ、さっき同じの持ってる人が来たよ。間違えて持って行ったお兄さんを探してた」
声をかけてきたのは近くにあるベンチの塗装作業をしていたおじさんだった。
「あんなの推理、当たってた!」
「うん!」
「その人ってどこに行きましたか?」
ハイタッチしている二人をおいて、僕はおじさんに尋ねた。
「さぁ、あっちの方へ行ったけど……」
「どんな人でした?」
「えっと……若い女の人で、こんな眼鏡で……髪型はこんな感じで」
「ふむふむ……なるほど」
おじさんから女性の特徴を聞き、みくるはプリキットブックにペンを走らせる。
似顔絵を描いているのか。
これも探偵に必要な技術、能力だな。
「出来た!ズバリ……この人ですね!?」
みくるは似顔絵を自信満々に見せた。
「「この人……?」」
あんなと純一さんが絶句している。
「えぇ……」
それは、あまりにも似顔絵というよりは幼稚園児が描くものだった。
身体は四角形、落ち武者のような毛量、魂が抜けたような目を眼鏡で隠しているような感じの絵。
漫画家を目指す純一さんの前で、よくこの絵を自信満々で見せれたものだ。
これで伝わるわけが……
「おぉ!彼女だ!」
「「「えぇ~!?」」」
うそ~ん……
「捜しに行きましょう!」
僕らは駅前からその女性を捜しに歩いていく。
「絵画教室です。生徒募集中です!お願いしま~す」
「絵画教室か~私も似顔絵描けるようになりたいな~」
捜す道中で、チラシを受け取ったあんながポケットに折りたたんで仕舞う。
「じゃあ僕が教えようか?」
「みくるも教えてもらった方がいいよ」
「え?どうして?」
「自覚ないのか……」
その後もみくるの描いた似顔絵を頼りに聞き込みを続ける僕たち。
しかしながら情報は得られなかった。
「情報なしだね……」
「はぁ……もう無理なのかな」
「大丈夫!絶対に見つけてみせますから!」
「えぇ!」
落ち込む純一さんを励ます二人。
「見つけたぜ。紫の包み!」
僕らの後ろから声がした。
振り返ると、銀髪のガタイの良い男で顔に歌舞伎のような化粧を施し、黒のタンクトップに先を閉めた短パンと下駄。
腰には桜の紋章を付けており、江戸時代を思わせる容姿の男がいた。
「そのバッグ、いや……マコトジュエルを置いて行ってもらおうか!」
「マコトジュエルって!?」
「怪盗団ファントム!?」
「か、か……怪盗団!?」
僕らの前に現れた怪盗団ファントムの団員。
ニジーやアゲセーヌの他にもう一人いたのか。
奴も僕のことを知っているのか?
「漫画の原稿の入ったバッグを見つけるの!」
「だから絶対渡さない!」
二人は純一さんを守るように前に出て、両手を横に広げる。
「熱いね~!熱くて湯で上がっちまいそうだ。だが……」
男は扇子を取り出す。
「相手が悪かったな!」
「わっ!?」
「くっ……」
「あぁ!?」
男は扇子を一振りすると、桜吹雪とともに風が僕らを襲う。
風で身動きが取れず、桜吹雪に視界を奪われる。
「いただいていくぜ!」
「待て!」
いつの間にか純一さんが抱えていたバッグは、男の手にわたっており、逃走し始めていた。
逃がすまいと、二人は腰からミニチュアサイズのライトを手に取った。
「オープン!プリキットライト!」
「お、大っきくなった!?」
「うん!ジェット先輩の発明品!」
「こうやって、好きなものを光で描くと……」
みくるがライトを照らしながら動かすと桃色の光が空中に浮かび、実体をもってその場に現れた。
「形になる!」
「ピーナッツ!?」
純一さんの言う通り、ピーナッツのような形の大きな物体がその場に置かれた。
「ううん、トランポリン!」
「そっか!バッグ取り返してきます!」
「ひかるは純一さんと待ってて!」
僕と純一さんに伝えると、二人は飛んで行った。
この場には僕と純一さんが残った。
「純一さん、大丈夫ですか?怪我は?」
「だ、大丈夫です……」
怪我はないようだ。
あの男が狙っていたのはバッグ、正確には純一さんが本来所持しているバッグの中身の漫画の原稿。
今持って行ったのは純一さんのバッグに似た別の人のバッグ。
そしてやはりというべきか。
あの男……扇子を取り出す時、僕と目が合い、見開いていた。
「あの……助手さん?」
「――ぁ。あぁ……ひとまず、二人が戻って来るまで待っていましょう」
「怪盗がなんで僕の原稿を!?」
バッグを取り返した、いや返されて戻ってきた二人から説明を受けた。
やはり狙いは純一さんの描いた漫画の原稿。
そこにマコトジュエルが宿っているのか。
「原稿は渡しません!」
「私達が先に見つけます!」
あんなとみくるは純一さんに力強く話す。
「もう……いいよ……」
ところが純一さんは浮かない顔でそう言った。
「僕は、みんなを笑顔にしたくて漫画を描いてるんだ……なのに、僕の漫画のせいで探偵さんが危ない目に合うなんて嫌だよ!」
「あっ……」
純一さん……
「私達も同じだよ!」
「探偵も困った人を笑顔にしたいの!」
「だから……受けた依頼は、必ずはなまるに解決にします!私達、名探偵に任せてください!」
「あっ……探偵さん……!」
あんなは純一さんに向けてサムズアップをした。
そうだ、二人は諦めない。
純一さんの思いを踏みにじらせない。
「事務所で待っててください。ひかる君、純一さんと一緒に事務所に行ってて」
「分かった」
「あっ、純一さんの漫画、後で読ませてくださいね!」
「うん!」
二人は再び街中へと歩いて行った。
「行きましょうか」
僕は純一さんとともに探偵事務所へと歩いて行く。
「あの二人はすごいね。僕よりも年下なのに立派な人だよ」
「はい。僕もあの二人がすごいと思ってます」
「それに比べて、僕は緊張ばかりで、原稿もなくしてさ……ダメダメだよ」
純一さんは自分を卑下する。
「そんなことありません」
僕は立ち止まって、それを否定する。
「純一さんは、漫画家になるという目標をもって努力している。『みんなを笑顔にしたくて漫画を描いてる』とあなたはおっしゃった。僕には夢はないし、将来何になりたいのかも願望もありません。だから、純一さんはすごいなと思っています」
「助手さん……」
「それに……純一さんの漫画、僕も見たいですし!」
「あっ……うん!」
そんな談笑をしているうちに、事務所に着いた。
純一さんには事務所で待っててもらい、僕は再び街へと駆けるのであった。