名探偵プリキュア!ウルトラマンティガ 真実の光 作:Lotus000
●→るるか
◆
「ふぅ~……」
先輩と研究室でティガについて話し合いや研究について話をしてどれだけ時間が経っただろうか。
僕はソファーに仰向けになって寝転がっていた。
「敵の特徴に合わせて、戦い方を変える……か」
胸ポケットからスパークレンスを手に持ち、天井へ向けながら呟く。
こんなに静かで退屈な時間は久々だ。
そもそも一人の時間自体が久々だ。
外は既に雨がかなりの強さで降っていた。
あんなの予想通り、みくるに傘を届けに行ったのは正解だったようだ。
「あんなとポチタン、遅いな……」
あんなが傘を届けに事務所を出てからだいぶ時間が経っている。
ここからみくるの通う学校までは距離はあるものの、徒歩圏内のはず。
届けた後に街中を探検しているのだろうか。
窓から外を眺めると、雨はかなり降っている。
「降ってるな……」
「あの二人、まさかとは思うが依頼を受けているのかもな」
後ろから先輩が話しかけてきた。
咄嗟にスパークレンスを隠す。
「先輩。てっきり寝たのかと……」
「少し冷えるからな。暖かいミルクでも飲もうかと。飲むか?」
先輩とともに窓の外を眺めながら温かいミルクを飲んでいた。
その時だった。
ガチャン!
「うわぁ!?」
後ろの事務所の扉が大きな音を立てて、勢いよく開かれた。
振り返ると、あんなとみくる、そしてポチタンの姿が。
二人の服装は雨で濡れている。
傘を届けに行ったはずだ。
「ひかる……!ジェット先輩……!」
「ポチタンが……!」
ポチタンに何かあったのか、あんなに抱えられているポチタンに視線を移す。
出かける前まで元気だったポチタンの姿が、弱々しく呼吸をしている。
「ポチタン!?二人とも、一体なにが……」
「一先ず、ポチタンはボクが診る。二人は身体を拭いてこい。タオルと着替えを持って来てくれ」
「う、うん。分かった」
先輩の指示通り、タオルと二人の着替えを持って来た。
「ミルクも飲んでるし、大丈夫だ」
「二人も温まって」
しばらくして、ポチタンがミルクをあんなに飲ませてもらっている。
先輩の言葉を聞いて二人はほっと息をなでおろす。
二人に温かいお茶が入ったコップを差し出す。
「ポチタンが光を出した時にこれも光った、か……調べる必要がありそうだな」
あんなから返された伝説のプリキットを見ながら呟く先輩。
「ごめん……みくるに渡そうとしたけど、渡せなかったの……」
あんなはみくるに対して言うが、顔は下を向いたまま。
対するみくるもあんなを見るが、すぐに顔をそらす。
「あんな……みくる……」
●
「ニジーは?なぜ戻らない?」
ニジーとプリキュアとの戦いから随分と時間が経った。
ところが、いくら待ってもニジーがこの劇場に姿を見せない。
「マコトジュエルを二つも手に入れたのに」
「超~有り得ないんだけど」
「……」
ゴウエモンとアゲセーヌが戻って来ないニジーに対して不快感を抱く。
確かにこれは変だ。
『マコトジュエルを手に入れる』という目的は達成しているはず。
「キュアアルカナ・シャドウ、ニジーを連れ戻せ!」
ん、私か。
座席から立ち上がって指を差し出すウソノワール。
ニジーの不可解な行動に憤りを感じているのか。
「はぁ……」
「ライライサー!」
ため息をつく私の代わりにマシュタンが声を上げる。
戦うわけでもないし、アイスでも買っていこう。
◆
二人が帰って来てから時間が経った。
あれだけ降っていた雨も止んだ。
あんなに抱えられているポチタンは依然として目を開かず、元気のない様子だ。
「あっ……みくる?」
私服姿に着替えたみくるが事務所の扉に手をかける。
「どこへ行くの?」
「マコトジュエルを取り返してくる」
「え?」
マコトジュエルを取り返しに行くって……
「私も……!」
「ポチタンについていてあげて」
振り返りもせず、みくるは事務所から出て行ってしまった。
あんなは悲しそうな顔をして。
みくると入れ替わるように先輩が研究室から戻ってきた。
「先輩、あのプリキットは?」
「いや、いくら調べても何も分からない」
あんなが言うにはポチタンの光に共鳴したそうだが、何も分からず。
「みくるは?」
「マコトジュエルを探しにいった……」
「……ったく、あんなとポチタンを残して……」
先輩が呆れたように言う。
だが、マコトジュエルを手に入れたニジーはもうどこかへ消えているかもしれない。
マコトジュエルの場所を感知するポチタンもこの状態。
「私が……」
「私が悪いの……みくるに声をかけられなかったから……」
「あんな?」
あんなは目を閉じたまま話す。
「笑ってたんだ……!友達と、見たことない知らないみくるで……。だから……私の知らないみくるの世界があるんだって……!」
「出会ったばかりだから知らなくて当然だよね……邪魔しちゃいけないって思って一人で事件を調査したら……言い合いになって……」
涙ながらに話すあんな。
本当にあんなは凄いよ。
伝説の名探偵プリキュアといっても、中身は普通の14歳の中学生。
2027年から1999年に来た彼女に知人は誰もいない。
家族も……
「あべこべだな」
先輩が頭を搔きながら言った。
「あんなとみくる、逆になったみたいだ。みくるのこと、色々考えたから動けなくなったんだろ?みくるみたいじゃないか」
ティアラの時のようにみくるは色々考えすぎるタイプだ。
考えすぎて、答えに中々たどり着かない。
「みくるは一人で飛び出して行っちゃうし……それじゃ、まるであんなだ」
エリザさんのペンの時も、あんなは深く考えるよりも真っ先に行動するタイプ。
「二人が影響し合ってる……ってこと?」
「あぁ。出会ったばかりにも関わらず、ほんとびっくりするくらい」
あんながハッとした顔になる。
「ボクは『見た物しか信じない』って言っただろう?短い間だけど、お前たちを見てきたボクには分かる」
「お前たちは運命の……いや、奇跡の二人だ」
奇跡の二人……
何故だか馴染みのある単語だ。
「ポチ……」
「ポチタン……」
ポチタンも僅かに目を開き、笑って言う。
「ポチタンは任せろ。行けよ、みくるのところに。お前たちは二人で名探偵プリキュア、だろ?」
「ジェット先輩……!私、行ってくる!」
あんなは着替えるために部屋へと一度戻った。
「先輩。僕も行ってくる」
「平気なのか?もう依頼調査の域ではない。お前はハンニンダーとは戦えないだろ?」
確かに先輩の言う通りだ。
ティガであることはジェットにすら話していない。
本当は話す方がいいのかもしれない。
だけど。
僕がティガであることを万が一ファントムに知られれば、その力を狙おうと何か企むかもしれない。
それでも……
「僕は行くぞ」
二人の精神的支えになれれば――――。
「分かった」
「二人とも、準備できた!」
着替え終えたあんなが戻って来た。
「あんな。僕も一緒に行かせて」
「ひかる君!?でも……」
「プリキュアでなくても。あんなとみくる、二人を支えたい。助手として。友達として」
あんなに僕の思いが届いたかは分からない。
「分かった!行こうひかる君!」
あんなとともに事務所を飛び出して行く。
「まず、みくるに連絡しよう」
「うん!」
僕の言葉を聞いたあんなはボイスメモを取り出した。
「オープン!プリキットボイスメモ!」
ボイスメモをじっと見つめるあんな。
みくるに声をかけられなかった時が頭によぎっているのか、緊張しているように見られる。
覚悟を決めたのか、あんなは力強くボタンを押した。
『あんな?』
ボイスメモからみくるの声がした。
繋がったようだ。
「みくる!どこにいるの!?」
『浜辺に向かってる!ニジーが来いって』
ニジーが?
マコトジュエルがまだ手元にあるのか?
「私たちも行く!」
『ポチタンは!?』
「ジェット先輩といるから大丈夫!」
あんなはボイスメモを切る。
「ひかる君、浜辺って?」
「まことみらい市の浜辺、虹ケ浜だ。行こう」
どうして呼び出したのか。
気がかりはあるが、一先ずあんなと一緒にそこへ向かって走る。
●
虹ケ浜――
まことみらい市に位置する浜辺。
アジトに戻ってこなかったニジーは、ここで名探偵プリキュアを倒すという。
「どうしてここに呼び出したの?」
砂浜に腰掛けるニジーにマシュタンが尋ねる。
「海か……なるほど」
「どういうこと?」
ニジー。
ファントムの中でも用意周到な彼らしい戦略だ。
本気でプリキュアを倒そうとしている。
「ちなみに今回はウソノワール様にはご覧いただかない、シークレットライブとする。プリキュアを倒し、マコトジュエルを二つ持ち帰って……サプラ~イズ!」
なんて身勝手な。
ただでさえ失敗すれば、もう跡がないのを分かったうえでのこの所業。
怪盗としてのプライドか何か。
ふと、ニジーの左の方に意識が向く。
名探偵プリキュアの一人、キュアミスティックの変身者。
「好きにして。さっさと終わらせて」
そう言い、私は見られないうちにその場から離れた。
◆
「「みくる!」」
「あんな!ひかる!?どうしてここに?」
虹ケ浜に着いた。
既にみくるがニジーと対峙している。
「やぁ真ひかる。キミも来たんだね」
僕を見てニジーは言う。
ニジーも僕がティガであることは知らない。
だからニジーは僕のことをただの見物客として扱う。
「おや?ベイビー妖精がいないようだが?まぁいい。好都合というもの」
みくるの隣に並ぶあんなと僕。
ニジーは手に持っていた薔薇を空へと放り投げた。
すると、空から二羽の燕のハンニンダーがニジーの後ろへ着地した。
「「ハンニンダー!」」
「「くっ……」」
あれが二人を追い詰めた燕のハンニンダーか。
それも二体。
二人はまだ敗北した感覚が刻まれているのだろうか、表情が強張っている。
「二人とも」
そんな二人に僕は声を掛ける。
「僕はプリキュアではないから二人の力にはなれない……けど、忘れないで。君たちは一人じゃないから」
僕の言葉を聞いたあんなとみくるの表情が柔らかくなる。
「うん!」
「今度は負けないから!待ってて!」
二人の返事を聞いた僕はその場から少し離れた高所で見守る。
ニジーが僕が離れる様子を横目で見る。
そして二人は変身した。
「「名探偵プリキュア!」」
「私の答え、見せてあげる!」
「行け!ハンニンダー!」
「「ハンニンダー!」」
ニジーの号令で二体のハンニンダーが空中へ飛び上がる。
そのうちの一体が地上にいる二人めがけて突撃してくる。
「「はっ!」」
初手は跳び上がって回避。
「ニン!」
「「きゃあっ!?」」
空中で身動きが取れない二人にもう一体が突撃。
二人は海へ叩き落された。
「二人とも……!」
海、砂浜――――
これがニジーの狙いか。
自由に飛行できるハンニンダーに対し、プリキュアは飛ぶことも海に足をつくことも出来ない。
かと言って砂浜では、土やアスファルトと違って足を取られる。
完全に潰しにかかってきている。
「フフッ、足場がない海は飛べないキミたちには不利に働く。対してこちらは自由に空を飛ぶ燕!さぁどうする?」
ニジーが海にいる二人に対し、余裕そうに言う。
僕は居ても立っても居られず、変身しようと胸ポケットからスパークレンスを取り出そうとした。
すると……
「海が……光ってる?」
二人が落ちた場所、海が光っている。
あの光は見たことがある。
「なんだっ!?」
海面から飛び出した複数の丸い光が空中に静止する。
「「はぁぁぁぁぁぁっ!」」
その光に跳び移るようにアンサーとミスティックが姿を見せた。
その手にはプリキットライト。
「あれは……プリキットライト!」
そうか、プリキットライトは描いたものが実体化する。
足場がないなら作ればいいんだ。
「足場を作ったというのか!?」
ニジーが予想外の反応を示す。
「反撃だよ!」
アンサーがライトを使ってさらに足場を作り出す。
跳びながらハンニンダーに接近し、ジュエルキュアウォッチの長針を動かす。
「アンサーアタック!」
「ハンニンダー!」
アンサーの拳を受けたハンニンダーが護岸に叩きつけられるように吹き飛ばされる。
「ハーン!」
「ミスティックリフレクション!」
もう一体が突撃してきたところをミスティックがシールドを張って受け止める。
「うぅっ……!はぁぁぁぁぁぁっ!」
「ダー!」
ミスティックが競り勝ち、ハンニンダーが海へと墜落した。
「いいぞ二人とも……!」
二人が優勢だ。
二体のハンニンダーを相手に戦えている。
勝てる――――。
そう判断したのが甘かった。
「マコトジュエルを返して!」
「燕の像を返しなさい!」
二人がニジー、ハンニンダーに向けて言う。
「フフフ……まだ幕は上がったばかりさ!」
しかしニジーは笑うと、右手の指を鳴らす。
合図を受けたように二体のハンニンダーが空高く舞い上がる。
「ハン」
「ニン」
「「ダー!」」
二体のハンニンダーが空中でぶつかり合う。
眩い光が起こると、そこには羽が四つある一体のハンニンダーが姿を見せた。
「「えっ!?」」
「合体した!?」
戦いは過酷さを増していく――――。