*共犯者の皆様へ
この作品は、とあるバッドエンドのネタバレを含みます。
大丈夫な方のみ、この先にお進みください。
すべてを知った気になっていた、自惚れた『彼女』の懺悔を。
最期まで目を逸らさず、耳を塞がず、お聞きくださいね。
―突然だが、私は不思議な能力を持っている。
普通の人にはない、まるで【魔法】のような能力。
…いいや、というよりも。本当に【魔法】と呼んで差し支えないのだと思う。
……意味を説明するためには、私のいるこの『世界』についてのことから話す必要が出てくる。
一見普通の現代社会のように見えて、その実ものすごい『闇』を抱えているこの世界についてを。
私が今生きているのは、普通の大都会である。近未来的でもなければ、ファンタジーでもない。
しかし、そんな社会に紛れるように、私のような【魔法】を扱える『少女』が存在している。
例えば『火を出せる』だとか、例えば『宙に浮ける』だとか。
なんの変哲もない世界に、そんなファンタジックなモノが紛れ込んでいるのだ。
更に言うと、私は所謂『転生者』という存在だ。
ベタな話だが、前世で若くして死んだ私は、この世界にその記憶を持ったまま生まれ変わってきた。
まあ、記憶があって得をしたことといえば、その予め蓄えられた知識を使って学校で無双できたという程度だったのだが、それも今世では殆ど学校に行けなかったことを考えると大したことにも思えなかった。
この生まれ持った人生18年分の知識も、その程度の役に立ちづらい代物でしかない。
と、思っていた。ついこの間までは。
さて、漸くだが始めの話題に戻るとしよう。
私や、他の人間、主に『少女』たちが持っている【魔法】について。
名前だけを見るならば空想の世界に存在する、魔訶不思議でロマンのある力のことだと思うだろうが、そうではない。
いや、実際不思議な力ではあるのだが、その成り立ちがロマンの欠片も無いのだ。
―――これは、遥か数百年前の話。
とある人間とは違う、超常的な力を操る存在が、小さな孤島で慎ましやかに暮らしていた。
彼ら……いや、『彼女』らの名は【魔女】。
長い時間を生きた彼女らは、やがて彼女らより遥かに無力で、それでいて高い文明をもつ存在と接触することとなった。
そう、『人間』である。
魔女たちは人間にたいし友好的な姿勢を見せたが、人間側はそうはいかなかった。
人間は魔女を脅威と認め、攻撃を開始した。
その様相はさながら『魔女狩り』。
老化の著しく遅い肉体でも決して不死身ではない魔女たちは、次々に残虐な仕打ちを受けて殺されていった。
そして、魔女はその殆どが息絶えたが―――たった1人だけ、生き残った者が居た。
【大魔女】と呼ばれる高位の魔女に1人であったその生き残りは、己の仲間を、家族を奪い去った人間を憎み、復讐を誓う。
その『復讐』というのが、私含む少女たちがもつ【魔法】に関係してくるのだ。
彼女が立てた計画はこうだ。
己が所持している【魔法】の数々を、1つずつ【魔女因子】という呪いの因子に変え、世界にバラ撒く。
そして、世界中にその【呪い】が蔓延した時に―――
呪いをもつ存在を確実に活動停止させる魔法【魔女殺し】を発動させ、一気に人間共を殺す。
本物の【魔法】から生まれた因子である以上、因子が定着した人間は因子の元となった魔法が使えるようになる。
私はその1人となるわけだ。
つまるところ、私は今、生き残りの大魔女の一存で生死が決まる爆弾を抱えている状態になる。恐ろしい話だ。想像するだけで気が滅入る。
と、同時に。今すぐにはそうはならないだろうという確信もあった。
それもまた、今ここまでで披露した知識に基づいた確信。
この世界は、とあるゲームの世界観そのものだ。
名を『魔法少女ノ魔女裁判』
13人の少女たちが、殺し合い、人殺しの【魔女】を吊るし上げるのを見るゲーム。
公式運営が中々に人の心がなく、かなりの鬱ゲーとして名が知れている作品だ。
【魔法】を持つことで孤島の『牢屋敷』に囚われた少女たちには、隠されたトラウマ、【禁忌】が存在する。
【魔女】に選ばれた少女は、残忍な【処刑】にてその【禁忌】を暴かれ、過剰なストレスによって異形の化け物へ変貌させられ、地下に永遠に幽閉するという、一見何がしたいのか分からない、ただ残酷なだけの所業により、10代半ばという若さで人生を終えることとなるのだ。
そして、そのゲームの視点の主であり、パッケージの顔にもあげられている主人公の少女。『桜羽エマ』という名をした彼女こそが、私たち【魔法少女】の生死を握る存在となる。
ストーリーの終盤になるまで明かされない、エマの魔法。それこそが、先程私が挙げた【魔女殺し】。
最後の大魔女は、人間の滅亡の鍵を、ごく普通の人間の少女に預けているのだ。
エマが己の【禁忌】を思い出し、魔女として覚醒した時が、私たち人間の最期である。
―――そうならないためには、どうするべきか。
結論から言うならば、牢屋敷に幽閉された13人の少女たち全員の【禁忌】を暴き、全員を異形の【魔女】の姿にしたうえで、その魔力で召喚した最後の大魔女を言葉で説得しなければいけない。
中々に精神にくる作業になるが……それさえ乗り越えられれば後はハッピーエンドに突き進むのみである。
本来なら少女たちの【禁忌】は、少女が人を殺してしまった後、処刑時の回想にて明かされるのだが………そこは転生者の特権。
私は既に、彼女たちの禁忌を見て知っている。そして、テレビやネットを見れば、原作キャラの少女たちと年齢が同じであることも分かった。
つまり私はおそらく、原作キャラと同じ年に牢屋敷に幽閉されるはず。
攫われた時点で即、牢屋敷の管理者である『氷上メルル』という少女に事情を話し、協力を取り付けて魔女裁判へと持ち込む。そして皆の【禁忌】を炙り出し、大魔女を召喚して説得。
ほぼズルのようなものだが、それで救える命があるならどうだっていい。私は『もしも』を考えて立ち止まるようなタイプではないのだ。例え原作が一番収まりのいい結末なのだとしても、更に最善の選択を探しもしないで受け入れる理由にはならない。
ズルだって嘘だっていくらでも使って見せよう。
私にできること全てをかけてでも、『1発で』全員を救う。私にならばそれができる。
……なんて。
大した旨味も感じられていなかった2周目の人生に意味を持たせることができた私は、そんな自惚れも甚だしいことを考えていた。
周りの見えていなかったこの時の私は、知る由もなかったのだ。
この決意も全て無意味だったと。
私は―――
―――戦いの土俵にも、立たせて貰えなかったのだと。
初投稿です。こんにちは共犯者の皆様、未プレイですがまのさばへの愛は本物、水無月ズンです。
前々から書きたいと思いつつ踏み出せずにいたのですが、switch版の追加スチルが良すぎたあまり、衝動的に書き始めてしまいました。
導入はあまりオリジナル設定がいらないので楽に書き上げられましたが、次回からはそうはいきませんので、これの投降後から次話投稿までは少し(もしかしたらかなり)間が空くと思います。
それでも待っていてくださるという方、よろしければ評価感想で私にやる気を分けてください。頂ければいただけるだけ私はやる気を出します。
(まだ1話だけでどう評価しろというんだって言われたらその通りなんですが)
何卒このなれはてに力をわけてくれ~(土下座)