お詫び:こちらのミスにより、本文が執筆途中のところで投稿されてしまいました。大変申し訳ございません、既に修正いたしましたので現在は問題ありません。
全員の自己紹介が終わってから少しの時間が経ち。
ふと頭上から聞こえた羽音に、私は天井を仰いだ。
天井付近の通気口から、小さな影が飛び出してくる。化け物フクロウこと、ゴクチョーだ。
ラウンジの中央に置かれたテーブルに降り立ったゴクチョーに、少女たちの視線が集まった。
「えー……お待たせしました。改めまして、私はこの牢屋敷の管理を任されております、かわいいフクロウ、ゴクチョーと申します。定時とかもありますので、ちゃっちゃと説明していきますね」
ゲーム内と変わりないくたびれた態度を隠しもせずに、ゴクチョーが説明に入る。
「えっと、すごーく申し上げにくいんですが、皆さんは【魔女】になる因子を持っています」
聞きなれたようで違う意味を孕んだ単語に、ラウンジの空気が揺れる。ここで騒めきが起こることにはもう慣れたのか、ゴクチョーは構わずに話を続けている。
「エライひとが決めた話では【魔女】はこの国にとって、災厄をもたらす悪らしいんですよ。そして、皆さんはわが国の法に基づいた全国検査によって、その因子が大きく検出された存在でして」
多少言い回しは違うが、私の知っていることと同じ説明をする化け物フクロウ。
しかし、私が異例なだけで、他の少女たち(内2人を除く)はそんなことは初耳なのだろう。頭上に「?」が見えそうに怪訝げな表情をしていた。
「ま、魔女……ですか……?」
「魔女って、あの箒に乗って空飛んだり、大釜で怪しい薬混ぜてたりするやつ?」
リムが小首を傾げ、サイカが疑問を口に出した。
その後ろでユニが目を輝かせる。
「それなら私は既にそうですよ! 正確には『魔法使い』、ですけどねー!」
まだ【魔女】を正しく理解できていないからか、胸を張って誇らしげだ。
「いや、今魔女は悪って言ってただろ。ドヤ顔することじゃねぇ」
相変わらず煙管に口を付けたまま話を聞いていたソラノが、冷静に指摘した。
「【魔女】に関しては……えー、まあ、大体そんな感じの解釈で構いませんよ」
サイカの問いに対し、ゴクチョーは適当な調子でそう返答し、話を進める。そんなファンタジー魔女とは明らかに違うぞと言いたくなるが、ゴクチョーは定時退社したいのか、その辺りの細かい説明はしないつもりらしい。
「続けますと、因子が大きく検出された存在は、この国にとってあまりに危険と判断されて、この牢屋敷への収容が決まるんですよ。いずれ【魔女】になる可能性があるとなると、野放しにはできませんのでね」
「つまり皆さん、この世界に害をなす悪者ってことで……どうかご納得ください」
明確に『悪者』と言われたことにより、再びその場が騒然としだした。己を『魔法使い』として誇っていたユニも、流石に表情を強張らせている。
ちらとエマとメルルを横目で盗み見ると、どちらも動揺したような顔色で身を寄せ合っていた。
どこまでが明確に演技なのか分からないが、見事なものである。
心中で感心しつつ視線を戻したその時、視界内の別の方向で、僅かに不自然な動きが見えた気がした。
反射的にそちらへ意識を向けてみると、スオウがギリギリと音が出そうな程に強く拳を握りしめていた。その目は昏く淀み、今この状況に対する苛立ちやら怒りやら、ありったけの負の感情を流し込んだような色をしているように見えた。
「……さっきから黙って聞いてたら………魔女? 悪者? ふざけないでよ」
スオウが更に目立った動きを見せた。一歩前進し、テーブルの上に置かれていた陶器の水差しを手に取る。
「どう考えても、今ここに私を連れてきたあんたらの方が悪者に決まってるじゃない」
更に一歩、少女たちの集団から外れる。
「あんたらを潰せば解決するんじゃないの?」
そして両手で持っていた水差しを振り上げようとする。
「死ね、クソフクロ――」
――瞬間、私は絨毯を踏み締めた。
「待った」
背後から、私の手がスオウの肩に触れる。その直後、彼女の身に異変が起こった。
「は……?」
スオウの手から水差しが滑り落ちた。まるで力が抜けたかのように。……いや、実際に
「な、んで……!? 急に力が、入らなく……!」
「……運営に歯向かっても、良いことはない。大人しくしておく方が得策」
スオウの肩に手を乗せたまま、私は短く言い添える。そしてゴクチョーに視線を向けた。
「……遮って申し訳ない。続けて」
「あ、はい。それでは……」
私の促しに応じて、ゴクチョーはスオウの暴走未遂にさして言及することもなく、説明をまた再開する。……昨年度はきっと、ここでひとり『死んだ』はずだ。彼としては仕事が始まっていきなり死体の処理を命じることになり、面倒なうえに気分だってそう良くなかっただろう。このタイミングで人死にが出るのは本望ではないはず。
私だって、牢屋敷到着早々少女の首が飛ぶのを見たいわけがない。止めに入るのは当然のことだ。
その後も淡々と行われたゴクチョーによる説明は、ゲーム内での説明と全く変わりは無かった。
これから集められた13人の少女たちで、この屋敷で囚人として共同生活をするということ、【大魔女】の存在、看守のこと、魔女の【なれはて】のこと。
――そして、いずれ起こるとされる『殺人事件』のことと、【魔女裁判】のこと。
またも飛び出してきた物騒な単語に慄く少女たちを尻目に、説明を一通り終えたゴクチョーは通気口の中へと消えていった。
私はスオウの肩から手を離した。まだ呆けているのか、すぐに立ち上がる様子は無かった。
確かゲーム内では、この後レイアが……
私は自分の服をざっとまさぐってみる。すると、ケープコートの内側に付けられたポケットにスマホが入っているのを見つけた。雪の結晶を模したカバーが付けられている。起動してみると、いくつかのアプリアイコンの中に、開いた本のようなマークを見つけた。……これが『魔女図鑑』か。
「……む? 確か…セツナじゃったか。その手に持っているのはなんじゃ?」
ユウナがいち早く私の動きに気付いて近寄ってきた。そして私の手元を見て驚愕したように声を上げる。
「も、もしやそれはスマホか!? 一体どこで……」
「……そう驚くことでもない。多分、君たちにも支給されてると思うから、着ている服の中を探してみて」
そう答えると、一同が一斉に自分の服を探りだした。暫く待つと、各々がポケットなどから自分に割り当てられたスマホを見つけ、起動していく。
「……だめだ、圏外…外との連絡には使えなさそうだね」
「でも、配信とか、電話、チャットとか……結構機能は充実してるみたい」
エマが残念そうな顔で言い、シノンが感心したようにそう返す。
「……なんか、変わったアイコンがありますね? どれどれ……『魔女図鑑』? って、書いてありますけど」
ユニが魔女図鑑を見つけたようなので、補足のためにもう一度口を開く。
「……どうやら、それに規則や注意事項が載ってるらしい。かなり数があるから、各自で確認しておいた方がいい」
そこで私は、ラウンジの壁に掛けられた鳩時計を仰ぎ見る。監房内に居なければならない時刻まで、あと10分を切っていた。
「……それから。その規則によると、もうすぐ監房に戻る時間らしいから、図鑑の確認は房内でするべきだと思う」
その言葉に、エマが慌てたように声を上げた。
「ほ、ほんとだ! みんな急いで戻ろう! もし遅れたらひどいことされちゃうかも……!」
「あ、あわわわ…エマさん、待ってください……!」
ラウンジを駆け足で飛び出していくエマと、エマに手を引かれて走るメルルに続くように、続々と皆が退室していく。
そんな中、私はもう一度室内を見回していた。
赤い内装、華美な家具や装飾。そして壁には…ボウガンや小型の斧が飾られている。
ボウガンは果たして、レイアが殺人に使ったものと同一か、別の新たなものか…流石にそれを判断はできないが。
やはり安全のためにも、取り外して何処かに隠すなり、壊しておくなりするべきだろうか。
そんなことを思案しながら立っていると、背後に気配を感じた。とっくに全員退出したものだと思っていたので、少し意外に思いながら振り返ると……そこに居たのは、不機嫌そうに眉尻を吊り上げたスオウだった。
「…あんた、さっき私に何したの」
開口一番にスオウが求めたのは、先程私が触れた瞬間に身体の力が抜けたことについての説明だった。あの時は突然だったこともあり説明する暇も無かったので仕方ないのだが、いきなり身体の自由が利かなくなれば誰だって混乱するであろうことは確かだ。
「……驚かせてしまって申し訳ない」
「別に謝罪は求めてないんだけど。何したのかって聞いてるの」
「……説明すると長くなるから、次の自由時間にしてほしい」
「…はぁ」
スオウは盛大なため息を吐いた。
「今教えないならいいわよ、そこまでして知りたいわけでもないし時間の無駄」
そう吐き捨てるとスオウは苛立たし気に踵を返し、さっさとラウンジを出て行ってしまった。
……随分と難のある子らしい。私はその背を黙って見送った。
そして、今度こそ自分も戻るかと、ドアに足を向けようとした時――
――ラウンジ奥で、何かが光った気がした。
「……?」
振り返ると、テーブルやソファの奥、暖炉の近くで、また何かが瞬いた。
再度時計を見上げ、自由時間終了まで、まだ5分ほど残っていることを確認する。
……そして少し逡巡した後、私は何かが光った場所へと近寄った。
そこにあったのは、赤黒い靄のような、不定形の光。
不気味さを湛えた光は、グネグネと蠢いている。
それはまるで、【呪い】を実体化したかのような……
――その時、食い入るようにその光の靄を見ていた私の視界から、赤黒い色が突然立ち消えた。次の瞬間には、私の胸に刺されたかのような鋭い痛みが奔る。
「……っ…!? く…!」
思わず私はその場に蹲る。……しかし、痛みを感じたのはほんの一瞬で、身を屈めた時には既に何も感じていなかった。
もう一度靄のあった場所を見る。靄は跡形も無くなっていた。
「………」
……何だったのだろうか。今のは。
疑問で頭が一杯になりそうだったが、忘れてはならない、今は自由時間が終了する間際。
一度考えることを振り切り、私は足早にラウンジを出て行った。
ド深夜投稿失礼します。
はい、なんか今回も字数が通常より多いですね。なんか、切りが上手いこと付けられないんですよ。なぜでしょうかね。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=344259&uid=521736
はい、活動報告で質問受け付け始めました。ぜひぜひ。
次の投稿は果たして何時になるやら……(遠い目)
追記:はじめにも記載した通り、投稿時にミスがありましたので修正いたしました。読者の皆様申し訳ございませんでしたm(__)m。
どの少女がお好きですか?(容姿未判明時点)
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宮乃リム
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伊礼ユウナ
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交久瀬スオウ
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白築セツナ