中指の親方がダンジョンに居るのは間違っているだろうか? 作:アイド
相性悪い人はとことん悪いだろうが
それと感想とかで色々指摘してもらえると修正出来るから嬉しいぜ
「ねぇねぇ、今日はボクのオススメの物を食べないかい?とは言っても、ボクのバイト先のヤツなんだけどね。」
「ほう?娘ちゃんのオススメか!そりゃまずは食べてみないとな?何処にあるんだ?」
「えっと…メインストリートの方に戻るんだけど、ホームの近くではあるんだ。まぁ行ってみてからお楽しみさ!」
ヘスティアと一緒に歩いて行くと、何かが揚げられたいい匂いがしてくる。屋台の一つからその匂いがしており、ヘスティアが声をかけると屋台の運営をしているであろう女性のヒューマンが気づく。
「あらぁヘスティアちゃんじゃないか!ジャガ丸くんかい?」
「そうだよ!あ、紹介するよ!ボクの家族になったマティアス君さ!遂にボクはファミリアを結成出来たのさ!」
「おやそうかい!ヘスティアちゃんを守れそうなしっかりとした身体つきがいいわねぇ。ほら、いつものあるから持っていって!」
女性は揚げられたばかりのジャガイモをマティアスとヘスティアに渡す。味は塩とバターの2種類らしい。
「ええ!?いいのかい?」
「良いんだよ!ヘスティアちゃんにはバイトで沢山売ってもらってるからね!それに、おめでたいじゃないか!遂にヘスティアちゃんもファミリアの主神だね!」
「うう…ありがとう…!ボクは感動してるよ…!」
「ハハハ!娘ちゃんが世話になってるみたいだな!俺からも礼を言おうか。」
「良いって事よ!また来てくれればいいのよ!」
痛快でアツい女性にこれまた気に入るマティアス。都市と比べて気前の良さや、疑心暗鬼になる必要がある人間がそれ程居ないのが嬉しい所だと感じている。
「これは…結構イケるな?おーい!後7個くらいくれ!」
「あいよ!味はどうするの?」
「何があるんだ?俺はまだここの文字が読めなくてな?」
「なんだ、そうだったのかい?あるのはバター、塩、小豆クリーム味の3つさ!」
「ほう…俺が食ったのが塩だからな…バターと、後この小豆クリームってやつも気になるな?まぁ塩2つとバター2つ、小豆クリームは3つだ!」
「アハハ!よく食べるねぇヘスティアちゃんのとこの!ほらこれ、もう一個バターをおまけしておくからヘスティアちゃんにも食べさせてあげな!」
「ハハハハ!元からそのつもりだったぜ!にしても気前がいいな?」
「気に入られたらまた来てくれるだろ?そういう事よ!」
「かぁ〜いい奴だな!俺はさっきも言われてたがマティアスだ。たまに買いに来るとしようか!」
「マティアスさんね!ほら、持っていっておやり!」
アツアツの揚げたてを受け取ったマティアスは、まだちょっとずつ食べてるヘスティアにバターと塩を1つずつ追加で渡してやり、近くにあったベンチで座って味わう。
「うーん…やっぱりボクはこれ好きだなぁ!塩もそうだけど、バターたっぷり使ってるからめっちゃ美味しいんだよね〜。」
「どれどれ?ほう…確かにかなり美味いな!揚げたジャガイモってだけだが、シンプル故に素材の味がよく出てるな!さてこの小豆クリームが気になってたんだが…娘ちゃん、食べたことあるか?」
「うーん…食べたことはあるけど、ボクはいつもの塩とかバターが好きかな?」
「娘ちゃんの評価はそれか…ま、食ってみりゃ分かるか!」
一口小豆クリーム味を食べてみると、少し甘みのあるクリームが溢れ、サクサクに揚げられたジャガ丸くんの食感と絡み合い中々の味わいが広がる。塩やバターはジャガ丸くん本来の味に添えられているようなものだったが、小豆クリーム味はジャガ丸くんと小豆クリームの2つを上手く組み合わせたような物だと感じた。
「うーん…こいつも中々にいいぞ?だが、毎回食いたいかと言われるとそうでもねぇな…たまにやる味変ってやつにちょうど良いな!女子供が喜んで食べそうな味とも言えるな?」
「女って言い方はちょっと強くないかい?女の子〜とか女性〜って感じにしようよ!ボクはそっちの方が好きだな〜。」
「ハハッ!娘ちゃんがそう言うならそうしようか。しかしこのジャガ丸くんってやつも中々気に入ったぞ!」
「そうしてくれると嬉しいよ。にしても、本当にジャガ丸くんは美味しいなぁ…無限に食べてられるよ。」
「そうか?ならダンジョン帰りとかにはジャガ丸くんを買って帰る事にしよう。パパのお土産だな!」
「それは本当かい?ジャガ丸くんを毎日…へへ、嬉しいな。」
談笑しながらジャガ丸くんを食べていると、何やらジッと見つめてくる少女が現れる。何も喋らず、ただ持っている小豆クリーム味のジャガ丸くんを見ている事に気がつく。
「……。」
「……。」
「なんだ?どうして黙ってるんだ?」
「それ…ジャガ丸くん。」
「あぁ。あっちの方で買ったぞ。欲しいのか?」
「欲しい…けど、それよりも貴方に話を聞きたい。」
「俺か?ハハハ!別にいいが、まだ服も見てねえし散髪屋も見てねぇんだよな。」
「服と散髪屋かぁ…このあとボク暇だし、服だけでも見繕おうかい?」
「娘ちゃん、いいのか?」
「任せておくれよ!服はマティアス君みたいなスーツ系があればいいのかな?後、ボク的にはオラリオに馴染む洋服も着てほしいから探したいんだよね。散髪屋は…オラリオなら何処でも同じくらいだから、話が終わったらホームから近い所を探してみて欲しいな!」
「そうか…ま、それなら任せてみるのも面白いな!娘ちゃんのセンスが試されるな?」
「ふふん、ボクのセンスが良いことを証明してみせるよ!じゃあ、マティアス君はその子の相手をしてあげて。」
「ハハハ!頼んだぞ娘ちゃん!」
ヘスティアはもぐもぐと残っているジャガ丸くんを食べながら離れていった。そして、ベンチの空いた席に少女が代わりに座る。
「さて、話ってなんだ?俺はまだここに来て日が浅いからそんなに目立つ事はしてないはずだが…」
「えっと…」
沈黙が広がる。緊張しているのか、それとも何から話せばいいのか分からない様子だ。
「あ〜…ジャガ丸くんだったか。食べるか?」
「食べる…」
3つ買っていた小豆クリーム味のジャガ丸くんを渡すと、サクサクと一生懸命に食べ始める。その様子を見守りながらサングラスをかけ直して辺りを見渡すと、周りの注目を集めている事が分かった。だがそんな事は気にせず食べ終わるの待つ。
「さて、改めて聞くとするか?俺に話ってなんだ?」
「…その、貴方って冒険者なんですよね。」
「そうだな!昨日なったばかりだな!」
「私も冒険者をしてるんです。」
「おお!そうか!確かに結構強そうだな?」
「結構、強いとは思います…けど、私はもっと強くならないといけないんです。」
「へぇ?まぁ力を求めるのは当たり前だな!無双ゲーをリアルにやるのは中々気分爽快だしな?」
「…?その無双ゲーとかってのはよく分からないですけど…貴方もかなり強いですよね。」
「まぁな!俺は強いって自信があるな。それがどうかしたのか?」
「貴方は…どうやったら隻腕でも強くなれるんですか?」
「別に俺は隻腕になってから強くなった訳じゃねぇぞ?元々は両腕があったが、色々あって斬り落とされちまったな!」
「腕を無くしたら…冒険も辛くないんですか?」
「この隻腕は1つの大事な勲章だと思ってるからな。特に辛くもなんともないな。それに、俺が片腕だからって弱い訳じゃないしな?ハハハ!」
「腕を斬り落とした相手に復讐したくないの?」
「この腕を斬り落としたのは俺が愛し続けたヨシヒデに落とされたんだ。何処で間違えたのかは分からないが、少なくとも一つの原因は俺じゃなく後から入ってきたやつにあると思っている…だから俺はヨシヒデに復讐しようとは思う事はないな!」
首を傾げてみる少女は、思う所があったのか質問を重ねてくる。
「貴方は…復讐をどう思う?」
「ハハハ!復讐はいいと思うぞ!ヨシヒデにしようとは思わないが、ヨシヒデに手を出したヤツらを許すつもりはないな!俺の大事な物に何かしやがったと思うと、腸が煮えくり返るな?」
笑いながらそう答えるマティアスは、蜘蛛の巣の事を思い出す。赤子だったヨシヒデに自分なりの愛情を注ぎ続け、邪魔をするものや何であれ傷付ける奴には仕返し帳簿に従い復讐を果たしてきた。間違えた色のぬいぐるみや服を持ってきた店員の目を一つ引っこ抜いてやったり、
「…もしもの話です。自分の為に家族が犠牲になったら。例え強大な相手でも貴方は復讐する?」
キョトンとした顔でサングラスをあげ、少女の顔を見る。復讐するかと聞かれ、中指に居た時の必ず復讐をやり遂げた記憶をも思い出す。中指を侮辱した者、中指に迷惑をかけた者、中指を騙る者、中指が懇意にしている店を台無しにした者…そして、中指の家族に手を出した者。例えどんな立場やどんな力を持っていようとも、それら全てを仕返し帳簿に従って復讐してきた。
「ハハハハ!まぁ、当然だな!家族に手を出した奴がのうのうと生きていける筈がねぇよな?お前もそう思わないか?」
答えを聞けた少女は、ゆっくりとまた話し出す。
「私も復讐の為に…強くならないといけないんです。モンスターは全員殺さないと…」
「ほう?モンスターで何かあったのか?」
「……。」
少し考えたマティアスは、中指らしく考えてみることにした。
「いいか?復讐しなきゃいけない相手は、家族と共有してぶち殺すんだ。仕返し帳簿でも何でも作って書き記すんだ。そして何処までも執念深く追いかけて、最後の最期となるまでしつこく追いかけろ。そうして、相手を追い詰めた時に復讐を果たしてやるんだ。そうしたら、忘れないだろ?俺の居た所でぴったりな言葉があったな!【中指は忘れない】だ。」
「【中指は忘れない】…うん。私は忘れないよ。必ず復讐する。」
「ハハハ!その調子だな!後は強くならないとな?」
「うん。私はもっと強い怨みを持って、これからもモンスターを殺し続けるよ。」
「良いって事よ!いや〜中々に復讐にアツい想いがあったな?」
立ち去る少女を見送りながら、マティアスはそろそろ散髪屋を調べてみることにする。時間は相当経ったのか、太陽は少しずつ傾いてきていた。
「さて…家の近くの散髪屋を調べるって言ってたな?服は娘ちゃんセレクトを楽しみにしてぇから…散髪屋を見るとしようか。」
家の近くにある散髪屋を調べ、試しに入ってみた。中は清潔感があり、そこそこに整った雰囲気の散髪屋だ。
「いらっしゃい。切るか?」
「いや、試しに来ただけだ。オラリオなら何処でも同じくらいの腕前らしいと聞いてるが…そうか?」
「どうだろうな。俺は他の散髪屋はいかん。自分で切れるしな。だが皆がそう言うならそうなんだろう。」
「あんまりプライドとかはねぇのか?」
「プライドよりも金だ。金さえ払ってくれりゃ俺は髪を切って整えてやる。それでいいだろ?」
「ハハハ!お前も面白いな?かなり分かりやすいぞ!それも嫌いじゃねぇな。」
「だろ。だからお前も金を払えば髪を切って整える。それでいいだろう。」
「よし、ここに決定だな。ホームからの距離もいいくらいだしな?」
「つまり、顧客になるんだな?」
「あぁ。俺はマティアスだ。お前は?」
「クライスだ。特に名前に意味もない。」
「ハッ!よろしくなクライス。髪がボサボサしてきてるし、その内頼みに来る事になるだろうな。」
「いつでも空いてるからいつでも来い。待っててやるよ。」
気に入る散髪屋を見つけたマティアスは、機嫌を良くしながらホームへと戻る。帰り道に、ヘスティアと約束したジャガ丸くんを買って帰るという物を果たしながら。
「お〜い娘ちゃん!パパは帰ってきたぞ〜。」
前と同じく返事はないが、まだ洋服を見繕っていると考え、ソファに座ってゆっくり待つことにした。とはいえ、何もないホームで1人だと流石につまらないので、すぐに居眠りを始めた。
〜〜〜〜〜〜
sideヘスティア
マティアスに洋服選びを任されたヘスティアは、意気揚々と歩きながら街中を歩く。麗しいが幼い姿と小さい身長、そしてその姿には似合わない胸がスキップしながら歩く度に跳ねる。それは男の視線を当然集めるが、ヘスティアは特に気にしていない様子だ。
「ボクに任せてもらえたんだから、マティアス君の期待に応えられるようにしなきゃね!」
そう思いながらまずは一般的な洋服が立ち並ぶ店に入る。
「こんにちは〜!」
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「今日はボクの子供の洋服を買いに来たんだよ!だから見ていってもいいかい?」
「ごゆっくりご覧下さいませ。」
この店にあるのはお洒落用ではなく、普段着や部屋着といった分類になるであろう服が多い。特に部屋着は機能性が高く、触り心地もかなり良い物が多かった。しかし、これらの服がマティアスに似合うかと言われるとそうではないことも分かる。
「うーん…この辺はあんまりマティアス君には似合わないかな…?うん、この真ん中に愛とか書いてある変な服とかあんまり…」
「どんな物を探していますか?子供の洋服を買いに来ていたと仰っておましたが、もしや神様でしょうか?」
「そうさ!もしかして、特徴を言えば一緒に探してくれるのかい?」
「はい、お探ししますよ。もし無ければ申し訳ありませんが…」
「いやいや、手伝ってくれるだけ有り難いさ!えっと、それで特徴なんだけど…聞いたことないかな?白いスーツでサングラス付けてて、紫色のコートを付けた黒い肌をした大柄の人なんだけど…」
「あぁ!聞いたことありますよ!冒険者らしいですが防具を付けずに大きい棍棒のような物を持ったとても目立つ人ですね?」
「大体そうだね…その子の為に、オラリオに馴染むような目立たないけど似合う服を探しているんだ。」
要望を伝えると、店員は少し勿体なさそうな顔をしながら答えを返す。
「あの人ですと…そうですね、色味を少し変えるくらいならオラリオに馴染みそうですが…正直、私としましてはあまり変えない方がいいと思います。私のような者ですら知っているとなると、恐らくオラリオ全体にその姿の特徴は知られてるんじゃないですか?」
「うーん…そうかも?」
「ですので、敢えて特に変えずに似たような服を揃えるのは如何でしょうか?逆にオラリオ名物のものにする事で馴染ませる考え方です。変わった服装も見慣れればいつしかはお馴染みになるのですよ。ほら、ガネーシャ様という方も変な挨拶されますが、あれもお馴染みになっているのと同じと思えば分かりやすいでしょう?」
「うーん…確かに、そう言われるとそれも凄く有りかも。ボクもマティアス君の服装は白いスーツにサングラスってイメージだしなぁ。でもオラリオで売ってるの見たことないなぁ。」
「でしたら!私達の所で特注するのは如何でしょう?様々な色を使ってスーツをご用意致しますので。」
「いいのかい?」
「ええ。あれほど目立つ広告塔はないでしょう?それに、あの人の格好はかなり斬新で新しいですが、流行りとしてのポテンシャルは秘めていると感じています。そこを私達が作りましたと宣伝する事で、より売れると思いませんか?」
「なるほど…なら、君の所にお願いしようかな!あ、お金今持ってないや。」
「そうでしたか…では、お金を稼げた時にいらして下さい。その時に特注を受けましょう。」
「ありがとう!分かったよ!マティアス君にも伝えなきゃな〜。」
こうして目処が立ったヘスティアは、落ち着いた気分でホームへと帰った。きっと自分の帰りを待ってる子供が居るから。軽い足取りでホームの地を踏んで、マティアスが帰ってきた時のように声をかける。
「ボクが帰ったぞ〜マティアス君!君のスーツみたいなのを作ってくれる所を見つけたんだ!お金を稼げた時に来てくれたらいいって…あれ?」
帰ってきてみると、ソファに座って寝ているマティアスと、机の上に置かれているジャガ丸くんの袋をがあり、声を抑えるヘスティア。
「お〜っと…静かにした方がよさそうだね。それに…ジャガ丸くんを買って来てくれてる…ボクは嬉しいよマティアス君。今日はゆっくり休んでね。」
今日もオラリオの1日が終わる。ジャガ丸くんだけ食べてヘスティアも共に寝ることにした。月の光が少しだけホームに差し込むのが神秘的に思えた。
やっぱりマティアスは白スーツに紫コートにサングラスだよな?