サイバーパンク:ジャンク・アルケミー   作:たこ焼き 龍月

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一度はこういうの書いてみたかったのです。 


幕間 電脳掲示板の怪談(前編)

 

 

 三本さんが傷だらけで帰ってきた夜から、数日が過ぎていた。

 地下の食堂に、いつもより静かな空気が流れていた。作業の合間に立ち寄る者が多い時間帯のはずなのに、誰も食器を鳴らさず、誰も軽口を叩かない。壁際の換気扇だけが、いつも通りの低い音を立て続けていた。天井の配管を伝って落ちる水滴の音さえ、やけにはっきりと耳に届く。

 ピラルが端末の画面を凝視したまま、口の端をひくつかせている。手にしたスプーンはとうに動きを止め、汁物の椀からは湯気だけが所在なさげに立ち昇っていた。

 

「……なあ、レベッカ。これ、見てみろよ」

 

 声をかけられたレベッカが、椀を置いて覗き込んだ。

 

「なんだよ、そんな深刻な顔してよ」

 

「深刻っつうか……笑うしかねえっつうか」

 

 画面を覗いた瞬間、レベッカの目が大きく見開かれた。声を上げそうになるのを、かろうじて飲み込んでいた。

 

「……マジかよ、これ」

 

「マジだ。しかもパート23だぞ、パート23」

 

 二人のやり取りに気づいたデイビッドが、椅子を引きずって近寄ってくる。食べかけのパンを咥えたまま、興味津々といった様子だった。

 

「何の話だよ」

 

「見りゃ分かる」

 

 ピラルが端末をぐいと押しやると、デイビッドは怪訝そうな顔のまま画面を覗き込んだ。数秒後、彼の眉間にも同じような皺が寄る。

 

「……なんだこれ」

 

「な? 笑うしかねえだろ」

 

 差し出された端末の画面には、見覚えのある掲示板が表示されていた。以前にも何度か覗いた、都市伝説のスレッドだ。ただ、タイトルの末尾に並ぶ数字だけが、記憶にあるものよりずっと大きくなっている。書き込みの数はすでに三桁を超え、更新を知らせる赤い印が点滅していた。

 

「……前に覗いた時は、まだ一桁だった気がするんだが」

 

「俺もだ。久しぶりに開いたら、この有様よ」

 

 ピラルが肩をすくめる。三人はしばらく無言のまま、画面をスクロールし続けた。

 

  

 

 見回りから戻ったキーウィが通りかかり、三人の様子に眉をひそめた。

 

「何を騒いでる」

 

「これだよ、キーウィ。見てくれって」

 

 差し出された画面に、キーウィは煙草を咥えたまま視線を落とした。数秒の沈黙の後、彼女は静かに煙を吐いた。

 

「……ああ。またこれか」

 

「知ってたのかよ」

 

「知らないわけがない。ここ一か月、うちの整備士が何をしでかしてきたか思えばな」

 

 冷ややかな一言に、ピラルが首をすくめた。それでもキーウィの視線は、画面から完全には離れていなかった。興味がないふりをするには、少しばかり長く見つめすぎていた。作業場の奥から工具の音を立てていたニッカが、異変を察して顔を上げる。

 

「……何、その空気」

 

 ピラルが、待っていたとばかりに手招きをする。

 

「おいニッカ、こっち来て見ろ。お前が有名人になってるぞ」

 

 呼ばれたニッカが渋々近寄り、画面を覗き込んだ瞬間、彼女の顔から表情が抜け落ちた。

 

「……は?」

 

――――――――――――――――――――――――――――――

【怪異】地下に潜む伝説のメカニックについて語るスレ Part.23

――――――――――――――――――――――――――――――

 

1 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:41:03 ID:op0001

前スレ落ちたから立てた

知らん奴のためにテンプレ貼っとくわ

 

・地下から謎の高出力電流が漏れてる件(一か月ほど前から継続中)

・カブキの闇市オークションで壁をプラズマで溶かして逃げた女の件

・タイガークロウズをバイクだけで撒いたっていう件

・サントドミンゴの廃棄処理場に高級タクシーが毎日列作って待機してる謎

・カブキの屋台で爆発寸前のオーブンを素手で直したって噂

 

これ全部同一人物説が濃厚

異論ある奴は先に前スレ読んでこい

※このスレは都市伝説を語る場です。個人の特定・過度な詮索はやめましょう。

 

2 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:42:15 ID:aa1122

乙

また立ったのかよこのスレ

 

3 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:43:02 ID:bb3344

テンプレ久々に見たけどタクシーの件だけ毛色違わね

他は全部「化け物みたいな技術」系なのにタクシーだけ「懐かれてる」系じゃん

 

4 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:44:47 ID:cc5566

>>3

それな

デラマンの列、俺も実物見たことあるわ

サントドミンゴの外れの廃棄場、ハザードランプ焚いた車が十何台も並んでてマジで意味わからん

待機の順番まで守ってるらしい

 

5 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:45:30 ID:aa1122

デラマンが規律正しく渋滞作ってる画像前スレで見たわ

あれ見た時笑いすぎて仕事にならなかった

 

6 名前:デラマン観察日記(自称) 投稿日:76/06/14(火) 20:46:10 ID:wt3030

>>5

昨日の時点で十四台

ハザードの点滅が揃うと、ちょっと綺麗

 

7 名前:都市伝説研究家(自称) 投稿日:76/06/14(火) 20:47:11 ID:dd7788

まとめると

「地下に潜んで」「電気を勝手に使って」「機械を異常な速度で直したり改造したりする」

「タイガークロウズを撒くほどの運転技術も持ってる」

「AIタクシーにまで懐かれる」

一人でこれ全部やってるとしたら人間離れしすぎだろ

 

8 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:47:35 ID:cc5566

>>7

人間離れっていうか、もう設備だろそれ

発電所と整備工場と運転手とAI調教師を一人でやってる計算になる

 

9 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:48:02 ID:ee9900

バッドランズ出身の凄腕メカニックって説が今のところ有力だよな

荒野育ちなら電子的な足跡残さないのも納得いくし

 

10 名前:元アラサカ社員(自称・嘘松疑惑) 投稿日:76/06/14(火) 20:49:40 ID:ff0011

一応言っとくけどこの手の噂、企業内部でも密かに話題になってるぞ

上の方で、バッドランズ出身の技術者についての報告書が回ってたの見た

 

11 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:50:12 ID:aa1122

>>10

はい嘘松

アラサカの内部資料とか見れる立場の奴がこんな掲示板で油売ってるわけないだろ

 

12 名前:元アラサカ社員(自称・嘘松疑惑) 投稿日:76/06/14(火) 20:50:58 ID:ff0011

信じるか信じないかはお前ら次第

 

13 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:51:40 ID:ss6600

>>12

その決め台詞で信憑性が一気に薄れた

 

14 名前:夜勤明けの配達員 投稿日:76/06/14(火) 20:52:33 ID:gg1234

俺、先月カブキの屋台で見たことあるかも

串食ってる女がオーブン直してたやつ

店主がめちゃくちゃ拝んでた記憶ある

 

15 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:53:20 ID:bb3344

>>14

それマジ?特徴覚えてる?

 

16 名前:夜勤明けの配達員 投稿日:76/06/14(火) 20:54:05 ID:gg1234

黒髪一つ結び

オイル汚れが服についてた気がする

つっけんどんな喋り方してた

 

17 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:55:12 ID:cc5566

情報少なすぎワロタ

それだけでこの街の女何人当てはまると思ってんだ

 

18 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:56:00 ID:qq4488

>>17

黒髪一つ結びオイル汚れで絞り込んだら

うちの職場の整備士が全員ヒットした

 

19 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:56:40 ID:bb3344

でもプラズマの件の目撃談もオイル汚れの黒髪一つ結びだったよな

一致してね?

 

20 名前:都市伝説研究家(自称) 投稿日:76/06/14(火) 20:58:03 ID:dd7788

特徴が一致し始めるとこのスレ盛り上がるからやめろ

 

21 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:58:40 ID:cc5566

>>20

盛り上げ役がそれ言うな

 

22 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 20:59:18 ID:hh4499

そもそも一人の人間離れした話にするから無理があるんだよ

複数人説の方が自然じゃね

バッドランズのクランが総出でやってる可能性とか

 

23 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:00:02 ID:cc5566

>>22

ノーマッドのクラン単位で都市部にちょっかい出す意味ある?

リスクでかすぎるだろ

 

24 名前:都市伝説研究家(自称) 投稿日:76/06/14(火) 21:00:44 ID:dd7788

個人的には性別すら確定してないと思ってる

黒髪一つ結びって証言はあるけど声とか体格の証言はバラバラだ

 

25 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:01:20 ID:aa1122

サイバーサイコ説はもう否定されてんの?

前スレで誰か唱えてた気がする

 

26 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:01:59 ID:bb3344

>>25

否定されてる

サイコなら壊すだけで直したりしない

むしろ逆の存在だろ

 

27 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:02:40 ID:ee9900

逆サイコで草

壊れたもの見ると直さずにいられない病気か何かか

 

28 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:03:15 ID:cc5566

>>27

病気で片付けるのは違う気がするけど言いたいことは分かる

とにかく「物」に対する執着が異常なんだろうな

 

29 名前:都市伝説研究家(自称) 投稿日:76/06/14(火) 21:03:30 ID:dd7788

執着というより、放っておけない性分に近い気がする

勝手なイメージだけどな

 

30 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:03:44 ID:ee9900

>>29

荒野育ちあるあるだな

向こうは機械が止まる=死だから、放っておけない癖がつく

 

31 名前:夜勤明けの配達員 投稿日:76/06/14(火) 21:03:58 ID:gg1234

誰か絵師いない?

そろそろ想像図とか見たいんだが

 

32 名前:絵師志望 投稿日:76/06/14(火) 21:04:03 ID:ar2024

>>31

絵師志望です、描いてみた

黒髪一つ結び、首にゴーグル、袖はまくってる感じ

工具は……とりあえず巨大レンチ持たせといた

 

33 名前:夜勤明けの配達員 投稿日:76/06/14(火) 21:04:09 ID:gg1234

>>32

ゴーグルは首に引っ掛けてたな

巨大レンチはさすがに盛りすぎ

 

34 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:04:15 ID:hh4499

想像図もいいけどそろそろ呼び名統一しない?

「地下の亡霊」「壁を溶かした鉄くず拾い」「旧式バイクの女」って別々に呼ぶの分かりにくい

 

35 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:04:28 ID:cc5566

>>34

統一するにしても何にすんだよ

多数決でも取るか

 

36 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:04:33 ID:ii5510

「電脳の亡霊」ってバンド名っぽくて好きだけどな

アルバムジャケットとか想像しちゃう

 

37 名前:都市伝説研究家(自称) 投稿日:76/06/14(火) 21:04:40 ID:dd7788

前スレの終わりに簡易まとめwiki作った奴いたぞ

更新頻度は知らん

 

38 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:04:52 ID:aa1122

>>35

投票

地下の亡霊に一票

響きが怖いのに実害ゼロなのが好き

 

39 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:04:58 ID:bb3344

>>35

鉄くず拾いに一票

謙虚な感じが本人っぽい

 

40 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:05:06 ID:ee9900

>>35

旧式バイクの女に一票

都市伝説に最近入ったばかりの新人感がいい

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ピラルが吹き出した。

 

「見ろよニッカ、お前もう伝説扱いだぞ」

 

「……なんで、こんなに」

 

「あれだけやらかしておいて、今さら驚くな。日頃の行いだ」

 

 キーウィが煙草の灰を落としながら、素っ気なく言い放った。ニッカは画面を睨みつけたまま、言葉を失っていた。途中に混じっていた「企業内部でも密かに話題になってる」という書き込みが、妙に頭から離れなかった。真偽不明の与太話だと分かっていても、胃の底が微かに冷たくなる感覚は拭えなかった。

 

「……ウィキまで、あるの」

 

「あるみたいだな」

 

 デイビッドが検索を進めながら、気まずそうに視線を逸らした。ニッカは頭を抱え、テーブルに額を押し付けた。

 

 沈黙を破ったのは、リンクを踏んでしまったピラルの声だった。

 

「……お、おい。これ結構ちゃんと作り込まれてるぞ」

 

 半信半疑だった一同の顔が、次第に真剣なものへと変わっていく。覗き込んだ皆の前に、簡素な年表形式のページが表示された。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

【非公式まとめ】伝説のメカニック目撃情報年表(編集:都市伝説研究家有志)

――――――――――――――――――――――――――――――

 

■第一報 一か月半前

 カブキの露店街にて、爆発寸前の調理機器が来客の手により即座に修理される一幕が目撃される。店主による感謝の言葉多数。

 

■第二報 一か月前

 サントドミンゴ近郊にて原因不明の電圧変動が発生。深夜帯に不定期で起こることから「地下に眠る古き機械の亡霊」説が浮上。

 

■第三報 三週間前

 カブキの闇市ジャンクオークション付近にて、壁を溶断する未確認の熱線兵器が目撃される。犯人は接触した組織関係者を振り切って逃走。以後「壁を溶かした鉄くず拾い」と通称される。

 

■第四報 数日前

 高架ハイウェイにて、電子的な痕跡を一切残さない旧式二輪車が、追跡してきた勢力を地形とタイミングのみで振り切る。目撃者多数だが、鮮明な映像記録は皆無。出回っているのは、端末で撮られたぶれた動画が数件のみ。

 

■第五報 現在進行形

 都市部の高級自律走行タクシー複数台が、サントドミンゴ外れの廃棄物処理施設前にて連日待機。当該人物との関連を疑う声多数。

 

備考:これらの報告に登場する人物は、いずれも黒髪の一つ結び、オイル汚れの目立つ服装という共通点を持つ。同一人物説が支配的だが、確証は一切ない。

 

追記:目撃情報の増加に伴い、当該人物の危険度は「低」から「不明(要注意)」へ引き上げられた。ただし、これまでの報告に人的被害の記録は一切ない点も併せて留意されたい。むしろ被害よりも恩恵の報告の方が多いという、都市伝説としては珍しい傾向が見られる。

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 読み終えたレベッカが、感心とも呆れともつかない声を漏らした。

 

「……こいつら暇なのか凄いのか、もう分かんねえ」

 

「両方だろ」

 

 ピラルが淡々と返す。

 

「……これ、第一報のやつ。前にニッカが言ってた、パン屋の窯の話と同じだ」

 

 デイビッドが年表を指差しながら呟くと、ピラルが横から覗き込んだ。

 

「ああ、あのパン屋の話な。もう都市伝説の教科書に載ってるレベルだろこれ」

 

「あのパン、合成の粉じゃなくて本物の小麦だったよな。窯を直したお礼だって、山ほど持ち帰ってきたろ」

 

 デイビッドが懐かしそうに付け加えると、ピラルが羨ましそうに舌打ちした。

 

「くそ、俺その場にいたかった」

 

 ニッカは年表を見据えたまま、しばらく身動きが取れずにいた。自分の知らないところで、自分の一か月半が、他人の手によって几帳面に整理されている。その事実だけが、妙な現実味を伴って胸に重くのしかかってきた。第二報の日付を目で追うと、あの夜のことがまざまざと蘇ってくる。送電フィルターの調整に手間取り、明け方近くまで一人で配線を這わせていた記憶だった。誰にも見られていないつもりで組んだ回路が、こうして見知らぬ誰かの記録に刻まれている。落ち着かない気分の正体は、恐怖でも怒りでもなく、もっと据わりの悪い何かだった。

 

「……被害報告、一件もないんだ」

 

 年表の備考欄を見つめながら、ニッカがぽつりと呟いた。

 

「そりゃそうだろ、お前が誰かを傷つけたことなんてねえんだから」

 

 ピラルの何気ない一言に、ニッカは意外そうに顔を上げた。当たり前のことを言われただけのはずなのに、なぜか少しだけ胸の奥が軽くなった気がした。

 

*

 

 その夜、拠点の食堂は珍しい賑わいに包まれていた。誰かが続きを読もうと言い出したことがきっかけで、端末の画面はテーブルの中央に置かれたまま、代わる代わる覗き込まれ続けていた。夕食の匂いも忘れられたまま、皿はすっかり冷え切っている。

 

「なあ、これもう伸びてるぞ」

 

 デイビッドが画面をスクロールしながら声を上げた。数字は、先ほど見たときよりさらに増えている。

 

「……見なくていい。もう見なくていいから」

 

 ニッカが止めようとした声は、誰にも届かなかった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

41 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:12:44 ID:zP4kQ2

おいおいお前ら適当なこと言ってんじゃねえよ

オーブンの件はマジだ、俺その場にいたし

あの人が触ったら三分で直った、修理費もタダにしてもらったって話も聞いた

 

42 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:13:20 ID:cc5566

>>41

おっ新しい目撃者きた

詳しく

 

43 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:14:55 ID:zP4kQ2

あの人ってのはあたしの――

じゃなくて、その、知り合いのダチが見たって話な

本人はいつも面倒くさそうな顔してるけど根はめちゃくちゃ面倒見いいらしいぜ

あと荒野育ちだから街のこと詳しくないくせにやたら強いって話も聞いた

 

44 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:15:12 ID:aa1122

>>43

今「あたし」って言いかけたよな

あたしの……何だ?

 

45 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:15:31 ID:bb3344

>>43

情報量いきなり増えすぎだろお前

「知り合いのダチ」にしては詳しすぎる

 

46 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:16:02 ID:zP4kQ2

う、うるせえな詳しいもんは詳しいんだよ!

文句あんならかかってこいこら、ギャハハ!

 

47 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:16:20 ID:cc5566

>>46

文字なのにダミ声が聞こえた

ギャハハの破壊力すごい

 

48 名前:都市伝説研究家(自称) 投稿日:76/06/14(火) 21:16:44 ID:dd7788

急にキレるなよww

まあでも喋り方に勢いあるのは信憑性高いな

 

49 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:17:20 ID:hh4499

ID:zP4kQ2さっきから熱すぎるだろ

本人のファンクラブでもやってんの

 

50 名前:都市伝説研究家(自称) 投稿日:76/06/14(火) 21:17:45 ID:dd7788

>>49

ファンクラブというか、これはもう会員番号1番だな

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「……おいレベッカ」

 

 メインの低い声が、テーブルの端から響いた。振り向いたレベッカが、ばつの悪そうな顔で目を泳がせる。

 

「な、なんだよ」

 

「今、書いたのお前だろ」

 

「し、知らねえよそんなの」

 

「ID、変わってねえぞ。さっきから同じ番号だ」

 

 メインの指摘に、レベッカは端末を胸に抱え込むようにして黙り込んだ。誰も何も言わなかったが、食堂の空気が静かに緩んでいく。数秒の沈黙の後、ピラルが我慢できずに肩を震わせ始めた。

 

  

 

 しばらくして、画面を覗いていたピラルが、突然噴き出すように笑い出した。

 

「おい見ろよ、次の書き込みやべえぞ」

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

51 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:24:18 ID:xT9mR7

プラズマ砲の件についてマジレスすると

あれ普通の缶ジェネレーターじゃできねえからな

出力絞る構造にしないと壁溶かす前に自爆する

缶の口を絞って収束させる発想がないと無理だぜ

どこの誰だか知らねえけどそこまで分かってて即興でやったならガチもんの天才だろ

 

52 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:24:40 ID:tt7711

>>51

俺も缶で試したら缶だけ溶けた

絞り方ってそんなに難しいのか

 

53 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:25:03 ID:bb3344

>>51

急に専門的すぎるだろお前何者だよ

 

54 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:25:40 ID:xT9mR7

ヒャッハー、俺様はただの通りすがりのテック好きだぜ!

文句あんのか!

 

55 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:25:58 ID:aa1122

>>54

通りすがりのテック好きが全然通りすがらない

スレに居座るの早すぎるだろ

 

56 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:26:15 ID:cc5566

>>54

急にテンション上がるやつで草

このスレ変な奴多すぎ

 

57 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:26:52 ID:hh4499

>>51

待て、缶の口の絞り方まで断言できるってことは実物見たか自分で作ったかのどっちかじゃね

 

58 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:27:30 ID:xT9mR7

う、うるせえ!俺様は詳しいだけだ!

妹分の武器も改造してやったことあるしな!

 

59 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:27:44 ID:ee9900

>>58

妹分のくだり、書かなきゃバレなかったのに

 

60 名前:都市伝説研究家(自称) 投稿日:76/06/14(火) 21:28:05 ID:dd7788

妹分って単語がやけに具体的で草

このスレ関係者製造機になりつつある

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ピラル」

 

 ドリオの一声に、笑っていたピラルの肩がびくりと跳ねた。

 

「な、なんだよドリオ」

 

「その喋り方、丸出しだぞ」

 

「……マジか」

 

 頭を抱えるピラルの隣で、レベッカが小声で毒づいた。

 

「あたしと同レベルじゃねえか」

 

 ピラルはそれに言い返す気力もなく、ただ額をテーブルに擦りつけていた。

 

「つうか妹分ってなんだよ。あたしのことバラしてんじゃねえよ」

 

「悪い悪い、つい口が滑った」

 

 軽い調子で謝るピラルに、レベッカは納得いかない様子でジト目を向け続けた。

 

  

 

 画面はさらにスクロールされていく。デイビッドが眉を寄せながら次の書き込みを読み上げた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

61 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:31:02 ID:qL2vN8

ここ見てる奴に言いたいんだけどさ

怖い人とか化け物みたいに言われてるけど、たぶんそんな人じゃないと思う

むしろ困ってる奴放っておけない性格っつうか

初対面の奴にもすぐ手貸してくれるタイプだと思うぜ

 

62 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:31:48 ID:cc5566

>>61

断言のトーンおかしくね

「思う」って言いながら確信持ちすぎだろ

 

63 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:32:20 ID:qL2vN8

い、いや別に俺は普通に噂として聞いた話をだな……

命の恩人だって話も聞いたことあるし……

 

64 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:32:40 ID:bb3344

>>63

「……」が二個ついてる時点で全部言ってる

 

65 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:32:59 ID:aa1122

>>63

命の恩人はさすがに盛りすぎだろww

 

66 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:33:35 ID:hh4499

このスレ関係者しかいねえのかよ

もう都市伝説スレじゃなくて身内スレだろ

 

67 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:34:02 ID:yy3366

>>66

身内スレって言葉、今日だけで三回見た

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「デイビッド」

 

 ルーシーの静かな声に、読み上げていたデイビッドの手が止まった。

 

「な、なんだよ」

 

「今の、あなたよね」

 

「……なんで分かるんだよ」

 

「口調。それに、命の恩人って表現、前にもデイビッドが使ってた言い回し」

 

 畳みかけるような指摘に、デイビッドは言葉を失った。反論の糸口を探すように口を開きかけたが、結局は諦めたように視線を落とした。食堂の隅で、ニッカは両手で顔を覆ったまま、テーブルに突っ伏していた。

 

「……もう、やめて。誰も、書き込まないで」

 

 その懇願は、賑やかな食堂の空気に溶けて消えていった。

 

  

 

 冷えた皿を重ねていたレベッカが、思い出したように別のタブを開いた。片付けの手を止めてまで確認したがるあたり、興味は本物らしい。

 

「そういやこっちのスレも伸びてるって聞いたぞ」

 

 画面には、また別のスレッドが表示されていた。今度のタイトルには、見慣れた単語が並んでいる。

 

「――高架ハイウェイの旧式バイクの女、正体を語るスレ。……これも私?」

 

 ニッカが恐る恐る問いかけると、ピラルが得意げに頷いた。

 

「三本さんの件だろ。あの夜の話、もう街中で伝説になってんぞ」

 

「……なんで嬉しそうなの」

 

「そりゃ嬉しいだろ、身内の武勇伝だぞ」

 

 悪びれもせず答えるピラルに、ニッカは深いため息をついた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

【目撃】高架ハイウェイの旧式バイクの女、正体を語るスレ

――――――――――――――――――――――――――――――

 

68 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:41:09 ID:ii5510

あの夜のハイウェイ、俺も見た

三気筒の爆音で追い抜いてった旧式バイク、車両照会にも信号ログにも何も引っかからなかったらしい

 

69 名前:夜勤明けの配達員 投稿日:76/06/14(火) 21:41:30 ID:gg1234

>>68

高架の下で三気筒の音が反響して

窓ガラスがびりびり鳴ってた

 

70 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:41:50 ID:cc5566

>>68

何も引っかからないってどういうことだよ

あれだけ派手な音させといて足跡ゼロって矛盾してるだろ

 

71 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:42:33 ID:ii5510

ナンバーも登録もなくて、信号も一切出してなかったって話

機械の目には最初からいない扱いで、見えてたのは人間の目と耳だけだったらしい

妨害電波か何か仕込んでたんじゃねえかって噂

 

72 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:43:00 ID:bb3344

>>71

信号を一切出してないって、バイクというより歩行者扱いなのでは

 

73 名前:元虎鉤衆(自称) 投稿日:76/06/14(火) 21:43:20 ID:tc4400

横から失礼するぜ

あの夜追ってた組の端くれだ

はっきり言って完全に面子潰された

 

74 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:43:58 ID:cc5566

>>73

おっ本物のタイガークロウズきたか

実際どうだったんだよ

 

75 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:44:20 ID:hh4499

>>73

虎鉤衆がスレに常駐してて草

仕事しろ

 

76 名前:元虎鉤衆(自称) 投稿日:76/06/14(火) 21:44:41 ID:tc4400

刀持ってスマート武器まで持ってったのに

高架下の地形使われて信号妨害されて全員撒かれた

デジタルの足跡は一切残らねえくせに、目の前で走り去る姿だけはしっかり見えるっていう

反則みたいな乗り物だったよ

未だに悔しくて夜も眠れねえ

 

77 名前:都市伝説研究家(自称) 投稿日:76/06/14(火) 21:45:26 ID:dd7788

>>76

組織として報復とか考えてないの

面子潰されたんだろ

 

78 名前:元虎鉤衆(自称) 投稿日:76/06/14(火) 21:46:10 ID:tc4400

上の方の判断は知らねえ

末端の俺らはとりあえず酒の肴にしてるだけだ

正直、また会ったら勝負したいって気持ちの方が強い

 

79 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:46:55 ID:hh4499

>>78

負け惜しみが清々しくて草

逆にちょっと好感持てるな

 

80 名前:元虎鉤衆(自称) 投稿日:76/06/14(火) 21:47:12 ID:tc4400

>>79

好感持たれても困るんだが

名前くらい聞きたかった

聞く前に飛んでった

 

81 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:47:30 ID:ii5510

バイクの型式について詳しい奴いる?

排気音的に空冷の並列三気筒だと思うんだが今どき珍しいよな

 

82 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:48:15 ID:xT9mR7

たぶん70年代風の骨格だな

カムシャフトも吸排気バルブも持たない古い機構だとしたら整備できる奴自体がもう少ないはずだぜ

現存台数考えたら博物館級の希少種だろこれ

 

83 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:48:52 ID:cc5566

>>82

またお前かよww

さっきも缶ジェネレーターの件で早口だったよな

 

84 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:49:30 ID:xT9mR7

う、うるせえ!俺様は物知りなだけだ!

 

85 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:49:48 ID:uu8822

>>84

さっきと同じIDで物知りを名乗る勇気

 

86 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:50:05 ID:zP4kQ2

二人乗りは無理そうな軽量フレームらしいぜ

タンクの脇に、歪んだ歯車の飾りが鎖でぶら下がってたって話もある

持ち主は否定してるが、あれは絶対お守りだ

 

87 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:50:44 ID:cc5566

>>86

持ち主が否定してる話まで出てきて草

伝説の乗り物にしては可愛すぎる情報混じってて草

 

88 名前:元虎鉤衆(自称) 投稿日:76/06/14(火) 21:51:20 ID:tc4400

その飾り、俺も追走中にちらっと見えたわ

あの速度で鎖ごと揺れてたのに、一つも落ちなかった

 

89 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:52:02 ID:ii5510

>>88

追走中にそんな細部まで見てる余裕あったのかよ

さすが本職は視野が違うな

 

90 名前:名無しのナイトシティ民 投稿日:76/06/14(火) 21:52:30 ID:bb3344

>>89

本職の視野が広いのか

あの飾りがそれだけ目立つのか

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

「……その飾りの話、誰情報」

 

 ニッカが低い声で呟くと、レベッカが慌てて目を逸らした。額に浮かんだ汗が、何よりも雄弁に答えを語っていた。

 

「し、知らねえなあ、そんなの」

 

「ID、また同じだぞ」

 

 メインが端末を指差すと、レベッカはがっくりと肩を落とした。

 

「なんでこんな早く特定されんだよ……」

 

「てめえ、さっき特定されたばっかじゃねえか」

 

 ピラルが腹を抱えて笑い出した。その笑い声を、キーウィの冷たい一言が遮る。

 

「笑ってる場合か。型式の講釈を垂れてたのは、どこの誰だ」

 

 キーウィの視線の先で、ピラルの笑いがぴたりと止まった。立ち直ったレベッカが、ここぞとばかりに追い打ちをかける。

 

「兄貴の早口、街の掲示板でもバレるレベルだったんだな。ちょっと感動した」

 

「うるせえ、褒めてねえだろそれ」

 

 言い返しながらも、ピラルの耳の先はほんのりと赤くなっていた。

 

  

 

 その騒ぎを離れた場所から眺めていたメインが、腕を組んだまま端末に目を落としていた。「バッドランズのクランが総出でやってる」という書き込みに、口の端をわずかに歪める。だが元虎鉤衆を名乗る投稿者のくだりまで読み進めると、笑いごとでは済まされない緊張が眉間に走った。

 

「……笑ってられるのも、今のうちだな」

 

 低い呟きは、賑やかな食堂の喧騒にかき消され、誰の耳にも届かなかった。虎鉤衆の名が軽い調子で扱われているのは、末端が面白がっているからに過ぎない。だが、これがどこまで本物の耳に届くかは、誰にも分からなかった。

 

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