コナン、明美さん、世良ちゃん、沖矢さん、
を出したくなって描いたら訳わからなくなった
コナンは息を呑んだ。
灰原がゆったりと長い脚を組んで座っている。
段ボールの山の間に、急ごしらえしたデスクだけがやたら整っていた。
コナンは一瞬だけシェリーを見た気がした。
灰原は静かに引き出しを開け、小瓶を取り出した。
「工藤君、これ」
灰原はコナンの手のひらへ小瓶を載せた。
コナンは新しい解毒剤をじっと見つめた。
灰原が不敵に笑う。
「驚いた?」
「そんなことねぇよ」
コナンは素知らぬ顔をした。
「いつ飲んだんだよ?」
「1週間前よ」
コナンが口を開いた時、博士が紅茶を置いていった。
コナンは言葉を飲み込み、頬杖をついた。
「1週間も黙ってたのかよ……」
(博士も、インフルエンザだって言うし……)
「あいつら(探偵団)心配してるぞ」
灰原は紅茶へ視線を落とした。
大人になった自分の姿が揺れる。
「自分でも呆れてるわ」
コナンは灰原に視線を送った。
「……オメェ、他に何か隠してないか?」
2人の間に、短い沈黙が落ちた。
「ひとつだけ……」
「世良さんは気付いたみたい」
コナンは息を呑んだ。
(まずい、来る時気付かなかった……)
「私もうっかり玄関の外に出てしまったの」
「そうは言ってもよ……」
コナンは部屋を見回した。
積み上がった段ボール箱が目に留まる。
「なあ、通販の箱多くないか?」
「……そうかしら」
後ろのクローゼットの扉は静かに閉じられていた。
コナンは紅茶を飲んだ。
ふとコナンが振り返った直後、クローゼットの服が雪崩れた。
「うわあぁっ!」
コナンの背中に溢れた服が直撃した。
灰原は血相を変えて椅子から立ち上がった。
クローゼットの惨状とコナンを交互に見る。
青ざめた。
コナンはすぐに足元の服をひょいと掴んだ。
「ほら、オメェも手伝え」
灰原も慌てて服をかき集め、服を抱え直した。
「あなた明日も学校でしょ?」
「じゃあ、何かあったら連絡しろよ?」
「ええ」
「世良にはなんとかしておく」
「……助かるわ」
コナンは帰った。
灰原は静かに閉じたドアを見つめた。
(おわり)
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家には灰原(宮野志保)だけがいた。
迷う間もなくキーボードを叩く。
ふと、指先が検索窓に「東都大学」と入力した。
画面に映る輝かしいキャンパスの風景。
灰原はすぐに検索画面を閉じた。
(……バカね、私にはこれしかないのに)
灰原は新一のデータを開いた。
夕方、インターホンが鳴った。
宅配だった。
しばらくして、また音が鳴った。
灰原の肩が震える。
やがて外の気配が遠ざかった。
胸のざわつきに静寂が戻る。
灰原は慎重に玄関のドアを開けた。
足元に紙袋が置いてあった。
中にあった箱の蓋をそっと開ける。
ショートケーキが2つ並んでいた。
見つめるうちに家族の顔が脳裏に浮かんで、灰原は目を伏せた。
(お姉ちゃん……)
今話したいと思った。
けど、その人はもういない。
灰原は震える手で、コナンにメッセージを残した。
それからしばらくして、コナンが家に駆け込んできた。
灰原はコナンの顔も見ないで、ただテーブルにつくよう促す。
コナンは一瞬だけ言葉を失った。
「それで、ケーキってなんだよ……」
灰原はケーキをよそった皿を置いた。
「沖矢昴が持ってきたの。メモが入ってた」
コナンはわずかに視線を泳がせた。
「……連絡してきただけマシか」
ケーキにフォークを入れた。
(あの人なりに気を遣ったのだろう)
対して灰原の手は止まっていた。
コナンは呆れたように笑った。
「灰原」
「……ええ」
「食ってみろよ」
灰原はコナンを見た。
コナンは得意げに笑った。
「美味いから!」
灰原はそっと目を細めた。
(……ずるいわね)
気づけば、ケーキを口に運んでいた。
優しい甘さが、部屋を暖めていく気がした。
ふと視線を向けると、コナンは無言でケーキを頬張っていた。
コナンが帰った後、灰原は空になった皿を見つめた。
身近に残るものなんて、そう多くはない。
ケーキの甘さともらった言葉で胸の奥がじんわりと温かい。
この小さな温度だけは確かだった。
(おわり)