開店前のポアロ。
安室はシャッターを開けた。
エプロンをつけ、店長と料理の仕込みを手伝う。
昼時を過ぎ、店内は落ち着きを取り戻していた。
「お疲れ様です!」
大学の授業を終えた梓もカウンターに入る。
それからベルが鳴った。
「いらっしゃいませ!」
コナン、蘭、世良、千速が店に入ってきた。
安室はわずかに目を見開いた。
コナンたちはそのまま梓の案内で席へ向かっていった。
テーブルでは自然とメニューの話が始まる。
蘭「コナン君、何にする?」
コナン「コーヒーと……ケーキも食べたい!」
千速は苦笑した。
「少年のケーキは私が奢ろう」
蘭が「ありがとうございます」と頭を下げる。
やがてコーヒーの香りが近づいてくる。
「お待たせしました。今日のブレンドです」
梓が注文をテーブルに並べていく。
コナンの前にケーキが置かれた。
「たくさん食べろよ、少年」
「ありがとう!千速さん」
コナンはケーキにフォークを差した。
コナンがケーキを頬張る様子を見て、千速は目元を緩めた。
千速はコーヒーを一口飲んだ。
気づけば、コナンは蘭にケーキを差し出していた。
蘭「美味しい!」
世良「うん、美味しいよ!」
千速も少し困ったようにケーキを口に運んで、小さく笑った。
(……少年、一体どこまで考えていたんだ?)
テーブルに穏やかな笑い声が広がった。
笑い声が落ち着いた頃、世良がギターに気づいて席を立った。
「安室さん、ギター弾くの?」
「少しだけね」
世良はギターを上から下まで眺めた。
「……大事にしてるんだね」
安室は静かにうなずいた。
世良「借りてもいい?」
安室「構わないよ」
店内に静かな調弦の音が響いた。
コナンたちは音の方を見た。
世良はギターを抱え直した。
「昔教わった曲なんだ♪」
『キミがいれば』が流れる。
千速は静かに耳を傾けた。
初めて聴くはずなのに、どこか懐かしかった。
曲が終わると、誰からともなく拍手が始まった。
世良は照れた後、テーブルに戻った。
蘭「世良ちゃん、すごいね!」
世良「いやぁ、ちょっとだけだって」
コナン(なんかアレンジも入ってなかったか……)
気づいた世良がコナンにウインクした。
「……!」
拍手の余韻が、しばらく店内に残っていた。
閉店後のポアロ。
安室は、昔ヒロと並んでギターを弾いた日々を思い出していた。
「安室さん!ぼーっとしてないで片づけてください!」
「ああ、ごめん」
梓の声に、安室は我に返る。
やがて梓は優しく目を細めた。
「さっきのギターの子、上手でしたね……」
「……なんだか懐かしい感じがしました」
安室は小さく笑った。
「うん、僕もいい演奏だったと思うよ」
(あの音、どこか似てたな……)
(ヒロ……)
安室は黙って掃除を続けた。
(おわり)