サミット会場を狙って脅迫状が3通届いた。
うち2通はいたずらだった。
山頂にそびえるホテル。
ロビーの大きなシャンデリアが印象的だ。
ネットワークはインサイトの専用線だ。
警察が厳戒態勢を敷いている。
その裏で公安警察が動いていた。
安室の後ろで会議が滞りなく進んでいる。
そこに無線が入る。
『爆発物解体の進捗は……』
『……ロビーの爆弾は未着手……』
諸伏は安室を見た。
「ロビーの爆弾は帰りを狙ったものだろう」
会議の後、記念撮影、報道陣への対応がある。
安室は少し考える。
「ロビーの爆弾は会議終了直後すみやかに解体を行うように」
(萩原、松田いるんだろ。そっちは頼むぞ)
だが、無茶を言っているのも承知だった。
諸伏は安室の顔色を見逃さなかった。
「それと、ネットワークに誰も侵入させるな。予備の回線もだ」
ネットワークが切れれば、会議システムそのものが停止する。サミットへの影響が大きすぎる。
安室は無線を切った。
「安室、悪戯メールの手口はよくあることだろ」
残り1通の脅迫メールは、経由が複雑で発信元を特定できなかった。
「警戒する理由はそれだけじゃない」
安室は目を細めた。
「奴を確実に迎え撃つためだ」
(公安の威信にかけて、この借りは返す)
諸伏はそれ以上聞かなかった。
「安室、サポートするよ」
「助かる」
ベルモットは会議関係者へ変装し、 公安の配置を確認していた。
その頃。
各階の大廊下で爆発物処理班が解体作業をしている。
一方、萩原と松田はロビーに来ていた。
爆弾は天井のシャンデリアの上にある。
松田が赤い点滅を見つけた。
「狙いはシャンデリアか」
(……ロビーごと吹き飛ぶぞ)
小さいが被害は計り知れない。
萩原「会議が終わるまで作業できないって話だ」
松田「その前に爆弾に手が届かねぇよ」
話している間もタイマーは進む。
松田「黙って見てろってか」
(お楽しみの爆弾が目の前にあるのに……)
松田は目を細めた。
萩原「準備しようぜ。爆弾に近づく方法は何か用意してくれるだろ」
「長いハシゴでも出すのか」
「はいはい」
そこにFBIの赤井が現れた。
「爆弾だけ落とせばいいんだな?」
手にはスコープのついたライフル。
赤井は不敵な表情を変えない。
(起爆装置に触れず、本体だけを落とす。狙えるのか?)
松田は赤井のライフルを見上げた。
(……正気か)
「外せば爆発だ」
「だから外さない」
赤井はスコープをのぞき込んだ。
やがてロビーが封鎖された。
防護服を着た隊員4名が網を持つ。
同じく松田も側で待機する。
警察、公安がモニタ越しに見守る。
その頃、安室も続報を待っていた。
会議終了直後、赤井は爆発物に銃弾を放った。
網の上に静かに落ちる爆弾。
萩原(あいつ、やりやがった!)
松田はすぐ作業に入った。
(ちょろいぜ)
(陣平ちゃん、解体できてよかったな……)
まもなくロビーに再び警戒態勢が整えられ、要人たちはホテルを後にした。
同じ頃、変装を解いたベルモットは愛車で走り去る。
「仕方ないのよ。言われてた裏切り者も現れなかったわ」
バーボンとライはホテルの近くで合流した。
「すみません……わかりました……」
バーボンは電話を切って、ライを振り返った。
「爆弾は失敗だ」
「目的は別だ」
「他の奴らは?」
「知らないな」
「僕も帰るよ」
バーボンはさっと身を翻した。
ライは苦笑する。
電話がもう一本鳴る。
ジンからだった。
二人とも立ち止まる。
「次の仕事だ」
飲み会。
「よくやったな。ニュース見たぞ」
伊達はテーブルを見回す。降谷だけがいない。
萩原と松田が注文したものを食べ尽くしていく。
「たっぷり食え」
伊達は諸伏に訊く。
「降谷は?」
「遅れるって聞いてるけど……」
「すまない!」
「おっと、来たな」
やがて飲み物が揃う。
「乾杯!!」
降谷と諸伏は互いを見て、静かにグラスを当てた。
「お疲れ様、ゼロ/ヒロ」
「「班長のおごりだよな!!」」
「任せとけ!」
伊達は伝票を見た。苦笑した。
(おわり)