レッドアーカイブ   作:フルール・ド・ガリア

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今回ロボトミ要素少なめです。
赤い霧の本心に近い部分を書きました


Day 2 霧と大人とあの女

そして私は——

 

「くだらんな。だが、ここで死なれても困る。案内しよう」

“ありがとう。優しいんだね”

 

優しさ。

 

連邦生徒会長も、私は『優しさ』を持っていると屈託のない笑顔で言ってのけた。

ブラックマーケットで優しさは弱みになる

 

「…優しさ、か。あの女もそう言ったさ」

“あの女、って言うのは…”

「連邦生徒会長のことでしょうね」

 

先生は納得がいったか、少し強張った表情を消し、柔らかい笑みで

 

“じゃあ、赤い霧。簡単にブラックマーケットについて教えてくれるかな”

「ああ、だがここは…」

“もちろん、場所を変えて、だけど”

 

血とオイルに濡れた私のトレンチコートを見て言い直したようだ。

私は別にこのままでも構わないのだが。このコートは頑丈な上汚れが落ちやすい、何度も助けられた私の愛する服。

 

「私は別にこのままでも構わないが。確かに、貴様が歩くには中央駅は危険だからな。ついてこい」

“あはは…そう言うことじゃないんだけどな”

「赤い霧、とはそういう人ですよ」

 

しばらく歩いて、私がよく寝泊まりしている場所、珍しく裏路地にしては綺麗で澄んだ色をしている川の中流近くに到着した。

 

“綺麗だね”

「私がここに住んでから、周りはより綺麗になったさ。人はな」

 

川底に少し染み込んだ赤い石を少し見た後、それから私は、先生と連邦生徒会から派遣された生徒2名——もう一名いたような気がするが——に、ブラックマーケットの現状について話した

 

「私が知る限りの話をする。それでいいな」

“うん。とにかく生の情報が欲しいから”

「情報室もある程度集めてはいますが、やはり…」

「噂レベルばかりだろ。事実をここで話す奴は少ない」

 

ブラックマーケットでは、メンツがまず優先される。

企業であればブランドや畏怖の感情、そう言った類のものだ。

事実を常に話せば、無論自分に不利な情報も話すことになる。

そうなった時、組織の統制は崩れ、周りから包囲網を組まれるだろう

 

“ふむふむ…”

「ブラックマーケット出身のヘルメット団は、統率力も組織の力も段違いです。これが原因ですか?」

「ヘルメット団に強さなんてない。甘えて群がってるだけの集団だ」

 

ヘルメット団。

各学園にいるはぐれもの、不良、問題児。それらの一派が徒党を組んだものがヘルメット団と呼ばれる。

ブラックマーケットに学園はほぼ存在しないため、ヘルメット団は本来生まれないはずだった。

しかしブラックマーケットに籍を置く大企業は、自らの鉄砲玉や民兵として彼女らを動員、資金援助を行いより強大で、畏怖されるヘルメット団を編成した。

ブラックマーケットにいるヘルメット団は、基本学園主体のそれより遥かに強い

 

「まあ、所詮下っ端だ。起こす問題も大したことじゃない」

「……ちなみに、どれほどヘルメット団を壊滅させたのですか?」

「さあな。数えてないが、8はやったんじゃないか」

“ヘルメット団…D.Uでもあったけれど、あれは…”

「すぐに倒せただろ。ホローポイントだとか、焼夷弾を使うだけだ」

“でも、キツネの子は強かったよ。確か名前は…”

 

キツネ。

災厄の狐の異名を持ちブラックマーケットで恐れられている存在。

私もかつて、一度戦ったことがある——それを、目の前の大人が?

 

「ワカモ、とか言ったか。そこに隠れてるんだろ」

「ええ、ふふっ…私に気づくとはさすがですね。赤い霧、さん?」

「ここでやり合う気はないんだろ。だったらすぐ失せろ」

「私の大切な先生から離れなどしませんわ!貴女こそ早く消えたらどうですの?」

“2人とも…ワカモ、今は大丈夫だから、少し離れててね”

「それでも…」

 

近くにワカモがいることはすでに知っていた。

しかし、ワカモがここまで執着しているとは思いもしなかった

この女は人を好きになることはないと思っていたのだが、何かあったのだろうか

不思議な気の悪さを感じる。不快感か、異質故の感覚か

 

“それで、赤い霧も抑えて…”

「ん?ああ…ワカモをどっか行かせたのか。ならいい、話を続けるぞ」

“ああ、うん…すごい殺気が出てたから…”

「考え事をしていたんだ。どうやってあの女を、手懐けたんだ」

“手懐けたんじゃないよ。彼女はただ、孤独だったから。”

 

孤独

 

私は、連邦生徒会長に会うまで、そして『あの日』から孤独であり続けた。

 

違う。

彼女がきたから、孤独だったことを知った。

ワカモの場合、それが目の前の大人だったのだろう。

 

「そうか。先生。」

“どうしたの?”

「少し気分が変わった。貴様はどこの室長だ」

「先生はシャーレの部長です。室長ではありませんよ」

 

シャーレ、知らない存在。

連邦生徒会長の時代にはなかった組織。

ふと今思い出した、防衛室の生徒から聞いたことがあった噂。

『連邦生徒会長は自分がいなくなった時の部屋を作っている』

 

もしかしたら、それはきっとシャーレとか言う存在だったのだろうか

 

「そうか。シャーレは何をするところだ」

「今はブラックマーケットの話を…」

“いや、ずっと聞いてばかりだったからね。答えるよ”

 

先生は、シャーレがこの世界で暮らす全生徒の相談に応じ、所属や学籍によらず不特定多数の生徒の協力をとりつけることが可能な、まさに無法な組織であると話した。

今はミレニアム、トリニティ、ゲヘナの一部生徒が参加しているのみであることも。

 

「無法な存在だな。しかしなぜ敵になりうる存在を助ける。何故弱みを作る。」

“生徒が困っていたら、助けるのが先生だからね”

「それはブラックマーケットで犯罪を犯した結果の困窮でもか」

“もちろん助けるよ。更生の機会も与えて、ね”

 

「「ならば、私を捕まえて見せろ。私はブラックマーケットで幾つも組織を潰した『赤い霧』

だ。」」

 

過去、あの女に会った時、投げた問い。

超人の答えは納得いくものではなかった。

ならば、この大人はどう答えるか、気になってしまった。

 

そして彼は…




ロボトミー用語解説
ZAYIN:幻想体(アブノーマリティー)の危険度のうち一つ。基本、施設に利益をもたらしたり、人に危害を与えることはほぼない。彼らより抽出されるE.G.Oはあまり強くない。意味は「行い」「養い」「武器」
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