ええっ!?この世界ってグラブルじゃないの!? 作:ざいざる嬢
正しくはジルク・フィア・マーモリア子爵令息でしたね。今までモーマリエ辺境伯令息って書いてました。何をしているんでしょう。
心よりお詫び……する必要はないか?だって
「おう殿下、いやなに珍しくクリスとジルクが
と言って気安く殿下に話しかけているのはグレッグ・フォウ・セバーグ伯爵令息。
赤い髪に身の丈ほどの槍を背負ったどこか男らしい印象を持つ人だ。
パッと見た感じ、この中で一番場慣れしているみたいだ。ダンジョンというだけあって危険と隣り合わせな環境で彼だけが自然体でいる。
「いえ、最初に声を掛けたのはクリスですよ。私も特待生の噂を聞いてはいましたが、ここで会うとは思っていなかったので挨拶をしていたんです」
「へえ、クリスが自分から? 本当に珍しいね。マリエ以外の女性に好意を持ったのかな?」
そう嘯くのはブラッド・フィア・フィールド辺境伯令息。紫の肩まで伸ばした髪が特徴で、身に着けている装備から魔法を主体としているみたいだ。
私の魔法で造った的の出来栄えを一目で見抜くあたり、知識量も豊富そうだ。
「そういうアレじゃあない。ただ実演していた剣術の腕前が気になったから声を掛けただけだ」
「クリスが興味を持つほどか。確か特待生の……」
そして深い藍の髪と瞳が特徴のこの人がアンジェリカさんの婚約者でありこのホルファート王国第一王子であり王太子のユリウス・ラファ・ホルファート王子だ。
「申し遅れました、私はジータと申します。あちらにいるのは同じく特待生のオリヴィアとリオン・フォウ・バルトファルト男爵です。どうぞお見知りおきを」
「え、あっ、は、初めまして、ご紹介いただいたオリヴィアです」
「……」
あれ?リオンさんどうしたんだろ? 心ここにあらずって感じだけど……?
「ほう、平民とは聞いていたが礼儀作法の心得はあるようだな。感心したぞ。
俺はユリウス・ラファ・ホルファートだ」
「俺はグレッグ・フォウ・セバーグだ。あの冒険で功績を上げたって言うのはお前たちのことだったのか。実戦経験があるやつがいて良かったぜ」
「ブラッド・フィア・フィールドだ。確か特待生の二人はお茶会に招待したと思ったけど、都合が合わなかったようだね。いずれ僕からまた招待状を送るよ」
ふぅ、これで全員と自己紹介が終わったな。ひとまず安心だけど……この光景を見ているであろう他の貴族令嬢たちからのやっかみが後で怖いな。その辺りはアンジェリカさんにどうにかしてもらおう。
「殿下、こちらにいましたか」
そう考えた矢先にアンジェリカさんが取り巻きを連れてやってきた。
なんだなんだ?この物語の主要人物が一堂に会すような展開は!?
何かが起こるんじゃないかと期待しちゃうじゃないか……!!
「アンジェリカか」
「……今日は
あの女?一体誰のことだろう?
ふと先程の会話を思い返すと彼らは共通の女性の名前を出していた気がする。
確か──。
「で、殿下」
「マリエ! 来たんだな、迎えに行けなくてすまなかった」
新たなる乱入者が現れた。──そうだ、マリエだ。彼らの話に出ていた名前!
どうやらこのマリエという令嬢は五人の貴公子と知り合いになっていたみたいだ。
……ん?となるとジルクさんとも付き合いが? あれ?ジルクさん、クラリス先輩とは会っていないみたいなのにマリエさんとは会っているの? んんん?
彼女が現れてからアンジェリカさんが見るからに不機嫌になっているのが分かる。
そんな疑問を抱いた私を置き去りに授業は進んでいった。
ダンジョンを進むにあたって六人の班を五つ組むことになった。
「リビア、一緒の班になろうか」
「はい!もちろん! ……あ、リオンさんも同じ班になりませんか?」
「……あ、ああ、いいよ」
後三人……どうせならアンジェリカさんを誘いたいけど、立場的に難しい。
公爵令嬢に先陣を切らすわけにもいかないだろうし……。ここは先生に振り分けてもらった方が──。
「身の程を知れと言っている!!」
おおっと!? 突如聞こえるアンジェリカさんの怒声にびっくりしてしまった。
見ればユリウス殿下の後ろに隠れているマリエさんに叱責していたらしい。
何してるんだろう
「アンジェリカ、もうそこまでにしておけ」
「殿下、この者のわがままをお許しになるのですか?」
「殿下、私……殿下と一緒が良いと思っただけです。迷惑なら断っていただいても構いません」
「図に乗るな! お前と殿下では身分が違う。今まで大目に見てきたが、お前がそのような態度なら──」
うん、悪手でしょそれは……。そりゃあアンジェリカさんだって怒るし、クラリス先輩でも怒るよ。
あれが許されるのって貴族教育を受けていない
それにいくら殿下と仲が良くても、ここは婚約者を立てるべきだと思うんだけどな……。
周りの反応も良くないし、このままだといじめの対象になってもおかしくないよね。
「あのマリエって女、何かおかしくないか?」
そう私たちに声を掛けるリオンさん。
言われれば、色々とおかしな状況にある令嬢だとは思うけど、リオンさんが言う『おかしい』はそういう意味じゃない気がした。
「そ、そういえば、最近は私よりいじめが酷くなりましたね。周りが言うには貧乏な子爵家の娘だとか噂されてましたけど」
「え?リビアいじめられてるの? 私が話しつけに行こうか?」
「い、いえ!大丈夫です!アンジェリカさんに挨拶してからはなくなったので! でも心配してくれてありがとうございます」
こんな状況でサラッと自分がいじめられていたことをカミングアウトしないでよリビア!!
いじめダメ!絶対!
というか私よりも情報通だなリビア。ジータちゃんともあろう者がそんな噂話を知らないとは……。
ファーさんに頼んで今度からは噂話もリサーチしてもらった方がよさそうだ。頼むぜ私のシェロカルテ。
──さて、とりあえずここは私が動くべきだろう。
この感じだとマリエさんはこの授業中にどさくさに紛れていじめられてしまう可能性もあるし、ユリウス殿下と組むのも現実的ではない。
ならこのジータちゃんが受け入れようじゃないか。うん、それなら角は立たないだろうし、アンジェリカさんも知り合いが一緒の班で見張ってくれるのなら安心できるはずだ。
「それなら私と一緒の班になりませんか?」
一歩前に出てそう進言すると周囲の眼が全て私に向いた。
うーん、悪目立ちしてるなぁ。
「お前は……」
「……ジータか。確かにお前なら腕も立つし、人柄的にも問題ないな。 いいだろう、お前はジータたちと班を組め、いいな?」
「え!? ちょっと、誰よあの女! こんなの知らないわよ!」
殿下たち以外に味方してくれる人がいないと思っていたからなのかマリエさんからは驚きの声が上がった。
後ろからはリビアとリオンさんの「え!?」という声が聞こえた。ごめんね、勝手に決めて。でもこれが一番穏便に済むと思うから……。
それにマリエさんがどんなに癖のある人物でも大丈夫! ジータちゃんは団長として一癖も二癖もある団員との仲を取り成して仲良くなっていた。それがジータちゃんに転生した私に出来ない道理はないのだから、大船に乗った気でいて欲しい。実際、ファーさんはめっちゃでっかい飛行空母だけど。
「いや、結構だ」
だが残念なことに私のこの場を穏便に済ます手は殿下によって払い除けられてしまった。
アンジェリカさんも拒否されると思っていなかったのか驚いている。
「で、殿下?」
「アンジェリカさん、あまり殿下を困らせないでいただきたいですね。 それに特待生に押しつけようとするのはいただけませんね」
「困らせる? 私が困らせているというのか? 私は殿下のためを思って……ジータも特待生でありながら現状を理解して──」
「そういう態度が迷惑だって言うんだよ。学園にまで外の関係を持ち込むな。それに特待生にマリエを押しつけようとするのも見ていてイライラするぜ」
ジルクさんとグレッグさんに立て続けに咎められアンジェリカさんも周囲も言い返せずにいた。
……あのジルクさん? 別にアンジェリカさんは押しつけようとはしていないんですよ? 私から言い出したことだし……。
「申し訳ない。俺たちはここにいるマリエと組む。後は適当に編成してくれ」
「は、はい!」
私たちを置き去りにユリウス殿下は教師にそう言い、この場は一先ず収まった。
唖然とするアンジェリカさんに余計なことをしてしまったと謝罪し、受け入れてもらったけどまさかこんな展開になろうとは。
何か起こると期待してはいたけど、こういうのじゃないんだよなぁ……。