ええっ!?この世界ってグラブルじゃないの!? 作:ざいざる嬢
決闘当日。学園にある闘技場に私はいた。
鎧は無事、クラリスから借りることが出来た。なお、呼び捨てにしているのはクラリスが”先輩”や”さん”付けをするとムッとした顔をするからだ。どうしても呼び捨てにして欲しいらしい。可愛い
ただ、呼び捨てにすると困ったことにグラブルの方のクラリスが脳裏をよぎってしまう。これはいけない。早急に解決策を見つけなければ……まずはファーさんに衣装を作ってもらうところから始めよう。
「おい! なんで鎧を用意してこなかった! お前、自信満々だったくせに用意していないとか言わないよな!」
と、アンジェがもう一人の代理人を問い詰めている声が聞こえる。
私の鎧は既に届いているのにもう一人の代理人──リオンさんは鎧を用意してこなかったのかな?
「あれ? もしかして念のために用意してくれてました? でも大丈夫……今到着しましたよ」
控室を出て闘技場の方へ向かえば、そこには決闘相手である殿下たちの色とりどりの鎧五機に、私の借りたアトリー家の量産型の鎧。そして、空から降ってきた大きな箱──コンテナかな?──からゆっくりとダークグレーの重厚感あふれる鎧が姿を見せた。これがリオンさんの鎧らしい。ごつくて強そうだ。
そんな私の感想とは裏腹に殿下たちと観客たちは大笑いしている。
何がおかしいんだい? 彼の鎧はすごく強そうだよ?
「なんでみんな笑ってるんだろう?」
「ああ、あの鎧はおそらくロストアイテム……ジータも知っての通り現在の技術では再現不可能な代物だが、だからといって強さの指針にはならない。今の戦いは攻撃力とスピードを重視した高機動型の鎧が主流だ。あの鎧は見た目の通り重すぎるから、流行遅れの型落ちに見えるということだ」
私に気づいたアンジェが私の疑問に答えてくれた。なんて分かりやすい解説なんだ。
でも、それならこの学園の生徒の見る目はないなと思ってしまう。流行にとらわれすぎだ。
確かにリオンさんの鎧は大きく、重そうに見えるけどその分出力が違うはずだ。それに背中のバックパック、アレはあの鎧の武装が積みこまれていると見た。
グラブルで養われた私の見識は間違っていないはず。きっと羅生門博士とシロウも同じように考えるはずだ。
……ふと思ったけど、この世界がグラブルの過去ならまだ発見されていないロボミが埋まっている可能性があるのかもしれない。もしそうならバルツを探すところから始めないといけないし、先に私が見つけてロボミイベントが将来的に崩れる可能性もあるけど……うん、まずはファーさんに相談しよう。前に叱られたばっかりだからね。
まずはこのホルファート王国がどの空域に属しているかも知らないからね。
「あっ! ジータ、来ていたんですね。心配しました……」
「ヴェッ!!? ジ、ジジジッ、ジータさん!? なんでここに!? ま、まさかあの鎧は……」
リビアが駆け寄って迎え入れてくれ、リオンさんは知らされていなかったからかビクゥゥッ!!と全身で驚いている。そんなに驚かなくてもいいのに……。
「ああ、バルトファルトには伝えていなかったが……ジータもあの後私の代理人を引き受けてくれたんだ。無用な厄介事を招かないように当日まで情報を伏せていたんだ。すまない」
「あっ、あっ、あっ、はい」
どんだけきょどっているのさ。それとも緊張かな? 決闘は最悪命を落とすこともあるみたいだし、それもそうか。
「リオンさん、今日はよろしくお願いします。一緒に殿下たちの目を覚ますキツイ一撃をお見舞いしてやりましょう!!」
「アッウンソウダネー」
うーんダメそうだ。これは私が出るか?
「リオンさん、そんなに緊張しているなら私が先に戦おうか?」
「ハッ!! いや、大丈夫大丈夫!! 女子を先に戦わせるなんてことになったら、男の風上にも置けないとか言われちゃうから、俺がやるよ」
「そうですか? ……無理はしないでくださいね」
引き攣った笑顔を見せたリオンさんはそのまま鎧──アロガンツというらしい──に向かって行った。
「さて、試合形式はどうする? ジータさんが増えたから五対二になったわけだけど、前言った通り一対一を繰り返すでいいか?」
そういえばリオンさんはひとりであの五人を相手する気で一対一を五回するつもりだったみたいだけど、私という二人目の代理人が出てしまったのでこの辺りを見直す必要が出た感じかな?
「そうですね、そこは変えずともよいでしょう。ただ……そうですね、勝者が連続して戦うのは無し──交代制としましょう」
「は? 俺ひとりで充分だろ? 平民のジータさんまで戦わせる必要はないだろ?」
「分かっていませんねあなたは。代理人として立った以上、その義務を全うする責任と覚悟があるはずです。それなら決闘を挑んだ側として、挑んだ側全員が一度は戦う必要があるのです。
……もっとも、あなたが我々に勝つなどあまり考えられない話ですので、そこまで深く考えずともよいと思いますが」
「お前……」
そう言うジルクさんだが、これはまあ保険と見せしめ、それと彼らの見せ場を増やすためかな?
本来はリオンさんひとりで戦うつもりが私が増えたことで戦う相手が増えた。これによって見せ場も増えるということになる。五人の内誰が最初に出るかは分からないけれど、最初にリオンさんと戦う人が勝った場合、続けてその人が戦うと必然的にその人の活躍が増える──即ちマリエさんへのアピール場面が増えるということになる。
つまり、あの五人の内ひとりだけが目立つというのを避けるようにしているわけだ。
加えて万が一負けた場合でも、一度私を挟むことによって確実な勝利をものとし、同時にその戦っている時間で対策を取る……みたいな考えだろう。
と、ここまでが私があの言葉から読み取った彼の考えだけど、なんて陰湿なんだ……。
というか私相手には絶対勝てるとかいうそんな考えを持っている時点で腹が立つね! ジータちゃんをなめるなよ! 鎧なんて剣一本で真っ二つに出来る自信があるんだぞ!!
「私はそれで良いよ」
「えっ!? で、でもさ、女子を戦わせるのって騎士としてというか男としての面子が……」
「私は誰かに強いられて戦わさせられるんじゃなくて、自分の意思で代理人としてここに立ってるんだよ? それなのに女子扱いされて戦わないってなったら、私の面子はどうなるの?」
そう言うとリオンさんは黙ってしまった。まあ平民の私が面子がどうこう言ったところで平民に潰れる面子はないだろって言われるだけだけど。
現に観客から「特待生だからって平民風情が粋がっちゃって」とか「立場をわきまえていると思ったけど、場の空気を読めないのなら見込み違いだったわね」とか悪口、陰口が聞こえている。
確かに私自身には立てるべき面子はないかもしれないけれど、私以外──アンジェとクラリスの面子は私にかかっているのだ。おいそれと退くわけにはいかない。
「それに私も強いから負けないって! だから安心してください!」
「………………分かった」
了承まで長かったのはやっぱり女子を戦わせたくないって葛藤からかな? リオンさんは本当に優しいなぁ。
そうしてリオンさんはアロガンツへ乗り込み鎧を起動させた。
同時に最初の対戦相手である紫の鎧が降りてきた。
「逃げずに出てきたのは褒めてやろう。だが、そんな型落ちの古い鎧を持ち出して、僕の鎧に勝てると思ったのか? 名工に作らせたこの鎧は製作だけでも白金貨で──」
長々と語りはじめるブラッドさん。いいの? そんなに自分の鎧の性能自慢して? 戦いの前に手の内を晒すのってどうなの?
一応何かの参考になるかもしれないのでメモはしておこう。ファーさんに渡せば何かの役に立つかもしれないし。
ちなみにリオンさんはブラッドさんの話をガン無視してバックパックから大きなスコップを取り出し、笑われていた。
別に普通だと思うけどな。グラブルではスコップも立派な武器だよ*1?
決闘後のリオン視点『リオン・フォウ・バルトファルトの戦慄』が楽しみですね。