ええっ!?この世界ってグラブルじゃないの!? 作:ざいざる嬢
ジータちゃんのテンペストブレードから星間国家のリアム様を彷彿とさせるそうなので、ジータちゃんの専用機はアヴィドでも許されるんじゃないかと思い始める。
「おい嘘だろ……? あのクリスが負けた……?」
「ありえない……! なんなのあの平民!」
「だ、大丈夫かよ殿下たち。俺、全財産殿下たちに賭けてるんだぞ……!!」
観客の生徒たちからどよめきの声が上がっている。
そりゃあそうだ。だって、観客の誰も私が勝つとこれっぽっちも思っていなかったんだから。
剣豪の称号を獲得しているクリスさんが勝って当然と考える中で私が勝てば狼狽えるに決まってる。文字通り番狂わせ、ダークホースといったところかな。
「ジータ! 無事か!?」
「大丈夫ですか? ケガしてませんか?」
鎧から降りるとアンジェとリビアが駆け寄ってきてくれた。二人は純粋に私の心配をしてくれているようで、何も言っていないのにリビアは私に治癒魔法をかけてくれている。
「大丈夫ですよ二人とも。いや~、鎧の反応が思ったより遅くてどうなるかと思いましたよ」
そう笑って返すとホッとしたのか無事でよかったとアンジェが労ってくれた。
そこへ──
「見てたわよジータ。素晴らしい戦いだったわ」
「あ! クラリス!」
「クラリス!? 何故ここに……」
「あら、アンジェリカ。ジータは私の寄子よ? 気にかけて当然じゃない」
「なんだと!?」
あ、アンジェも知らなかったのか。これもクラリス──アトリー家が伏せていたんだろうなぁ。
まあ私が言わなかったからっていうのもあるんだけど。
「じゃああの鎧も……」
「そうよ、アトリー家で用意したわ。勿論今用意できる一番いいものをね。 ……ただ、ジータには合わなかったみたいだけど」
「そ、そんなことないよクラリス!? ただ、私が操縦したことある鎧とのギャップに悩んでいただけだから!」
師匠が修行の時用意してくれた鎧は実に身体に馴染んだのだけど、今回の鎧は新品だったからか馴染みきれなかったんだと思う。まあ、少し遅めに動けばいいだけだけど、フルパワーでは戦えないな。
「そ、そう? ならいいのだけど……一応整備に出しなさい。決闘中は互いの公平を規すため鎧の整備員は学園で手配してくれているから、念のために不具合がないか見ておくべきだわ」
それもそうだな。ちょっと無理な動かし方をしたところもあるから、整備員に見てもらった方がいいかもしれない。一応メカニックを習得しているから自分で整備できるけど、こういう場ではプロに任せるべきだろう。
──この時の判断を私はすぐ後悔することになった。
三回戦、グレッグさんとリオンさんの戦いが始まったのだけど……。
『ちくしょうがぁぁぁ! 放せよ!』
『……放すかよ、ば~か』
『いたぶって楽しいのか! お前は男じゃねー! 騎士なら騎士らしく戦いやがれ! 鎧のおかげで勝っているだけだろうが!』
『騎士? まだ正式な騎士じゃない。ついでに言わせて貰えれば、決闘に旧式の鎧で出てきて負ければ鎧のせい? 特待生のジータさんでさえ新型の鎧を借りてきたのに新型を用意しなかった自分の準備不足を嘆いた方がいい。いや、侮っていた自分を恥じた方がいいよ。でも言い訳が出来ていいよね。僕は鎧の性能差で負けたんです、ってさ!』
『くそっ……くそおぉ!!』
こ れ は ひ ど い。
もう一方的過ぎる試合展開とリオンさんのアロガンツがグレッグさんの鎧を丁寧に一か所ずつ破壊していくという鬼の所業。あまりの所業に観客からも悲鳴が上がっている。あれを人でやったらなかなかのグロシーンになるね。丁寧に相手の心を折りにいっているのがよく分かる。
しかも比較対象として私の名前を出すことで遠回しに「平民でも出来ることをお前はしなかったんだよ」と突きつけるという……。その……人の心とかないんか?
いやまあ分かっててやってるんだろうけどさ。観客どころかアンジェもリビアもクラリスもドン引きしてるよ。
「ふざけんなっ! 俺はまだ負けていない。死ぬまで戦ってやるよ!」
グレッグさんはそれでも諦めず、破壊されていく鎧から抜け出し鎧の破片を持ってアロガンツに斬りかかるもビクともしない。当たり前だ、あんな攻撃であの重厚なアロガンツに傷をつけるのは無理があるって。それなら鎧の破片を握って身体強化して殴りかかった方が良いって。
『俺、お前たちと違って、流石に弱い者いじめは気が引けるし』
「な、なんて言った。今なんて言ったぁぁぁ!」
『君たちみたいに弱い者いじめを好む趣味はない、って言ったんだよ。聞こえなかったかな?』
「ふ、ふざけんな! 俺たちがいつ弱い者いじめを──」
『アハハハ! お前、本当によく喋るよね。まぁ、人を舐めて旧式の鎧なんかで出てくるくらいだから、よっぽど実力に自信があったんだろうけど……お前程度の奴なんか世の中ゴロゴロいるからね。俺も実力的にトップじゃないし、アレだけ決闘を申し込んだ時に強気に出てくるから少しは期待したのにこのざまって……お前、本当に雑魚すぎ。こんな雑魚をいたぶっても後味が悪いから、手早く終わらせたいの。この気持ち、分かんないだろうな~』
「うわぁぁぁああああぁぁぁぁあぁぁぁ!!」
これは完全に私怨が入ってるね。多分私が参加していないパーティーでよほど腹に据えかねることがあったんだろうなぁ。
聞いた限りだと決闘の話になった時に殿下たちが敵対してアンジェが孤立し、周りが誰もアンジェに味方せず嘲笑するだけだったって話だから……まあいじめだよね。
悪いのはどちらかと言うとマリエさんだし、それを咎めたらハブられる……のは良くないよね。リオンさんみたいな優しい人が怒るのも納得だ。
つまるところ、この決闘はその意趣返しみたいなものかな。
それから間もなく、審判が止めに入り試合はリオンさんの勝利に終わった。
試合内容の酷さから罵声などは上がらなかったものの、観客からはリオンさんを恐れるような雰囲気が漂っていた。
「リオンさんが勝って嬉しいですけど、今のはやりすぎです。後でグレッグさんに謝罪すべきですよ!」
「止めておけ。余計にグレッグのプライドを傷付けるだけだ」
「そうよオリヴィアさん、確かに試合内容は良いものとは言えないけど、決闘に勝った相手から謝られるなんて誇りを持って挑んだ騎士への最大の侮辱になるわ」
そう窘められればリビアも納得するしかなくシュンとしてしまう。リビアは優しいからね、グレッグさんに同情したんだろう。
「大丈夫だよリビア、人間どんなに挫けそうになっても、また立ち上がって強くなれるんだから!」
私もそうだった。何度師匠にボコボコにされて地面に這いつくばって諦めかけたか……。でも夢のために、憧れのために私は何度も立ち上がってジータちゃんに相応しい強さを身につけられた。
成長に挫折は必要なんだ。どこかの監督も『負けたことがあるというのが、いつか大きな財産になる』と言っていたからね。
「さあ!次は私かな。相手は……ジルクさんみたいだね」
ジルクさんの名前に反応するクラリス。もう元とはいえまだ情は残っているのかもしれない。
「ジータ……」
「心配しないで、必ず私がジルクさんを倒してクラリスに土下座させますから!」
クラリスは見た。
自分のためにアンジェリカの代理人となり決闘に挑んだ少女の乗る鎧が──遥か上空で凄まじい爆発の炎に包まれるのを。
闘技場にいる誰もが絶句した。あの爆発では鎧の操縦者の命はないと。
「……これも殿下のためです。悪く思わないでくださいね」
「ジ、ジータァァァアアアァァァアアアッ!! イヤァァァアアアァァァアアアアッ!!」
やめて! ジルクの暗躍で鎧を爆破されたらジータまで死んじゃう!
お願い! 死なないでジータ!
ジータが今ここで倒れたら、アンジェやクラリスとの約束はどうなっちゃうの?
鎧はまだ残ってる。ここを耐えればジルクに勝てるんだから!
次回『ジルク死す』デュエルスタンバイ!!