ええっ!?この世界ってグラブルじゃないの!? 作:ざいざる嬢
感想も評価もいただけると嬉しいですね。本当にありがとうございます。100件近い感想数とか自分の作品では初めて見ましたよ。
なのでお礼を兼ねて今回はちょっと長めです。
視点が何度か切り替わるのでご了承ください。
整備が終わった鎧に乗り込み闘技場へ降り立つ。
目の前にはジルクさんの緑色の鎧が同じように降り立った。
ただ、最初に見た時と見た目が変わっている。装飾が外れ、いくつか装甲と武装が追加されている。やっぱりクリスさんとの試合結果から私対策に鎧を整備してきたんだ。
『──貴女は強い。敬意を表しましょう』
『お褒めの言葉ありがとうございます。ただ──試合の前に私とひとつ約束をしてくれませんか?』
『約束?』
『ええ、これは決闘とは関係ない私個人のお願いです。 ──私が勝ったら、クラリスに謝ってください』
『……なるほど、平民の貴女がどうやってその最新式の鎧を用意できたのか不思議に思っていましたが、まさか用意したのがアンジェリカではなくクラリスだったとは。
つまり貴女はクラリスの刺客、というわけですか』
『残念ですけど、これは私が勝手にやったことです。クラリスの指示じゃありません。むしろ彼女からは止められましたから』
嘘は言っていない。最初クラリスは私を代理人から降ろそうとしていたのは事実だから。
これは私の意思だ。
遠回しに平民を利用したという体でクラリスに責任を被せようとしたみたいだけどそこは明確に否定しておく。私に腹芸は出来ないからね、正直に言うのが一番だ。
『そうですか。ならいいでしょう、私に勝つことが出来ればクラリスに謝罪しましょう』
言質は取った! これで私が勝てばクラリスに謝らせられる!!
気合を入れ両頬をパンと叩いて気合を入れる。絶対に負けない!!
『試合開始!』
審判の合図と共にジルクさんは手榴弾を落とし、そこから煙幕が発生した。辺りが煙で包まれ視界が悪くなる。
ドンッ!という銃声が聞こえ──私はその方向目掛けて剣を振る。すると私目掛けて撃たれた弾は真っ二つになりそのまま後方へ飛んでいき爆発した。
『なっ!? 銃弾を斬ったっ!?』
ジルクさんは飛行しながら持っている大型ライフルで私を撃ち続けるが、私にとってこの程度の弾丸を斬り捨てるなんて造作もないこと。剣豪のクリスさんも出来るだろう。*1
ただ、このまま距離を稼がれると面倒だな。左手のライフルを構えジルクさんを追いかけ飛翔する。
──ふと、視界に入ったのは審判に急いで何かを伝えに行っているリオンさんの姿。何かを訴えているみたいだったけど、何かあったんだろうか?
『……殿下に逆らった時点で君の人生は終わっている。ここで華々しく終わらせてあげましょう!』
『馬鹿言わないで! 私の人生を勝手に終わらせるな!!』
弾丸を斬り払い、左手のライフルでお返しとばかりに射撃する。ただあの装甲のお陰かあまり効果はないみたいだ。
なら接近あるのみ──という判断は読まれていたのかジルクさんは一定の距離を取り続けている。
『……これも殿下のためです。悪く思わないでくださいね』
その瞬間、ジルクさんが何かの魔法を発動した。それと同時に背中側から凄まじい熱を感じる。そして気づけば私は熱を伴う閃光に包まれていた。
『マスター、報告です。ジータの機体に爆弾がセットされています。どうやら学園の整備員がセットしたようですが指示した者がいます』
「はあっ!? 嘘だろ!?」
ルクシオンの報告にリオンは思わず取り乱した。
なにせ明らかな不正が行われた上に、その矛先がジータに向いているというのだから。
これが自分ならルクシオンの存在のお陰で無駄な努力と鼻で笑えるが、その矛先がジータに行くのではその限りではない。
『指示したのは次の対戦相手です。爆薬のセット位置は背中になります。この世界の鎧はそこに重要機構があるので、ジータを本気で潰しにきています。爆薬の量から計算すると、一般的な鎧ならば中の操縦者の命はないかと』
「あの野郎……!! いくら決闘とはいえ、それはマズいだろ!!」
「どうしたんですかリオンさん?」
「何かあったのか?」
「……ジータさんの鎧に爆薬がセットされてる! しかも背中の重要な位置にだ! 下手するとジータが死ぬ!!」
「なっ、なんだと!?」
正直なところ、この世界があの乙女ゲーとグラブルがコラボした世界観ならジータは死ぬことはないとリオンは考えている。
しかし、そうでなかった場合──ただ
「ば、爆薬って……まさか整備員を買収したの!?」
取り乱しているのはジルクの婚約者だったクラリス・フィア・アトリー。乙女ゲーでジルクの婚約者だった彼女はあまり本編に関わることなく、
だが、この世界の彼女はジータと交友関係を築いていて、この決闘にも彼女に協力しているみたいなのだが、どうもそれ以上の感情を抱いているようにも見える。
「クソッ! 急いで止めないと──おい審判! 一度試合を止めろ!!」
『バルトファルト君、これは決闘です。互いの合意なく試合を中断することは出来ません』
「そんなこと言ってる場合じゃないんだって! ジータさんの鎧には爆薬が──」
──その
恐る恐る空へと目を向ければ無傷の緑色の機体と、全身が爆発の炎で包まれている機体──言うまでもなくジータの機体が炎を上げて炎上していた。
……闘技場にいる誰もが絶句した。あの爆発では鎧の操縦者の命はないと。
「ジ、ジータァァァアアアァァァアアアッ!! イヤァァァアアアァァァアアアアッ!!」
クラリスの悲痛な絶叫が闘技場に響き渡る。
『流石にあの爆発には耐えきれなかったようですね』
炎上し、力なく落下しようとしている機体をジルクは無表情に眺めていた。
こうなっては欲しくはなかったと思いつつもジータという特待生は脅威であった。
貴族に恐れることなく刃向かう平民。しかも剣豪であるクリスをも凌ぐ実力を持つ平民。
──あってはならない。平民が貴族を脅かすことがあっては。
クリスが敗れた時点で策を打った。男子生徒を使い学園の整備員を買収、脅しをかけジータの鎧に爆薬を取り付けた。あのバルトファルトの鎧に通じるかは不明だが、ジータの鎧は量産品だ。まず耐えられないだろう。加えて、鎧の整備も決闘用ではなく実戦用へと変更した。
純粋な強さでクリスに劣る私が勝つには火力が必要だ。そして防御力も。
出来得る限りの備えをしつつ、グレッグの敗北を確認した後に別の男子生徒を使ってバルトファルトの姉──どうやら今回の決闘騒ぎで立ち位置が悪くなっている彼女に不安を与え、バルトファルトが自主的に敗れるよう仕向ける。彼も身内が大切だろう。潔く引くはずだ。そうでなければ──。
この暗躍に私は直接は関わっていない。事が公になってもユリウスの評判を傷つけることなく、ユリウスを心配した男子生徒の暴走として処理できる。貴族政治とはそういうものだと私は理解している。
ふと、炎上する機体を見やる。動かない──が、落下しない。
馬鹿な。爆薬をセットした場所は鎧の重要機構のある場所だ。破壊されているのなら、既に落ちるのが普通だ。だが落ちていない。これは一体──?
そう思慮を巡らせた途端、炎上した鎧に動きが見えた。咄嗟にライフルを構え警戒する。
そして──
「……」
パイロットスーツが焼けてボロボロになり、顔が煤や火傷で汚れながらも鎧の上に立っている
いや~、焦った。まさか突然爆発するとは。しっかり整備してもらったはずなのにこんなことが起きてしまうとは……。
いや、普通に考えて学園の整備員が何かしたよね、これ。中立のはずの学園が何をしてくれてるんだ。後でとっちめてやろう。
命じたのは……
わざわざこんな上空で爆発させたのは遠目から違和感を持たせないためか。なんて卑怯で小賢しいことをしてくるんだ。そんなことをするのはあのメンバーではジルクだけだろう。
私の借りている鎧は既に使い物にならなくなっている。クラリスになんて言おう……私の全財産でも返せないよな。なるべく傷はつけずに返そうと思っていただけにショックだ。
いや、ファーさんに頼んで修理してから返した方が安上がりかな? ちょっと相談しよう。
……でもその前に。
「やってくれましたね」
目の前の陰険腹黒緑をぶちのめさなければ。
『あ、あの爆発で無事なのですか……!?』
「無事? ……あー、
それよりも──と私は拳を合わせる。ここからは拳で戦うからだ。
「ジルクさん──お覚悟を」
『ま、まさか鎧相手に生身で戦う気ですか!?』
「そのまさかです……よっ!!」
魔力を通して無理矢理浮かせていた鎧を足蹴に緑の機体に急接近する。
「ミゼラブルミスト*2からの──アーマーブレイク!!」
暗い霧が緑の機体を包みこみ、攻撃力と防御力を低下させる。そして極めつけのアーマーブレイク!ダメージと共に相手の防御力を下げるアビリティだけど──
『ぐおあぁっ!? な、なんですかこの威力は!? まさか素手でこのダメージを!?』
この装甲を後付けした鎧相手なら効果抜群! 装甲が弾け飛び防御力が低下したのが目に見えて分かるね。*3
それから、私は素手じゃない。燃えて破れて使い物にならなくなったパイロットスーツの一部をバンテージとして装備しているのだ。グラブルではバンテージだって立派な拳武器なのだ。
「まだまだぁぁぁあああ!!」
ツープラトン!*4とは名ばかりの鎧の胸部装甲目掛けて怒涛の六連撃!!
殴りつけるたびに装甲が凹み、亀裂が入っている! あともう少し!
『グゥッ……一度距離を……
緑の鎧は私から距離を取るため急いで魔力を噴射し後方へと下がる。
でも逃がさない。
「まだだよ?」
『なっ、いつの間に!? いや、足場もない空中でどうやって!?』
「鎧が飛べるんだから、人間が飛べてもおかしくないでしょ!!」
『その理屈はおかしい!! そんなことが出来るのなら、とっくに飛行魔法が開発されています!!』
そうなの? でも私は十天衆のソーン*5みたいに宙を浮いて空を移動したいと思ったから頑張って出来るようにあれこれ工夫しただけだけど。
鎧が出来るんだから人間だって出来ないことはないよね!
『ま、まさか貴女が学園に招かれた理由は──』
「今はそんなことどうだっていいね!! はあああッ!!」
一発一発、確実に鎧を破壊するように心を込めて打ち込む。師匠も私にレスラーやモンクスマヒヒトの極意を教えるためって壊れた飛行船をサンドバッグの代わりに何度も殴らせられたから感覚はもう掴んでいる。
「イヤーッ!!!」
バギャンッ!!という金属が割れる音が響き、装甲が砕けた。そして操縦席にいる
「ば、馬鹿な……鎧の装甲をこんなにもあっさり……」
「さて……歯、食いしばってくださいね? お返しですッ!!」
「えっ……ぶげらぁっ!?」
うん!スッキリ!! ムカつくイケメンをぶん殴ってやったぜ!!
殴られて鼻の骨が折れたからか鼻血が出て止まらなくなっているっぽいけど、後で治してあげるからいいよね? そっちは私を爆破したんだしお相子お相子!!
「じゃあ、トドメといきますか」
「ま、まだなにかするつもりですか!?」
「だってまだ私の鎧が壊された分が残ってるでしょ?」
なので、この鎧も破壊します。私は一度操縦席から離れ、胴体部分を両手でガシッと掴む。
ジタバタとジルクさんが何か言いながら抵抗しようとするけど無駄だ。
「いっくよー!! はああああ!!」
「うわあああああああッ!?」
私と鎧は頭から回転しながら闘技場へと落下していく。ついでに足から魔力を噴射して速度もつける。
回転しながら落下することで鎧の中にいる緑は遠心力で鎧から弾きだされないようにしがみつくのに必死で、何も出来なくなっているだろう。
鎧の抵抗もなくなり地面も見えてきた。後は──
「叩きつけるだけッ!! 名付けて奥義”グランブルー・フォール”!!」
「ぐえぇっ」死んだンゴ
ドゴォォォオオンッ!!という轟音と共に叩きつけられた緑の鎧はゴシャアッ!!という音を立ててひしゃげながら操縦席から上が闘技場の地面に埋まった。
さながらその光景は犬神家だ。
「これが本当の土下座……なんてね」
既に炎上し物言わなくなった私の鎧が闘技場のあちこちにバラバラになっているのを横目に私は審判の宣言を待つ。
ただ審判もどういうわけか慌てているようでこれから協議に移るというので勝者宣言は待つことになった。
「ジータ! ジータァァア!!」
「クラリス……ぐえぇっ!?」
涙を目一杯にため込んだクラリスが勢いよく突っこんで抱きしめてくるから思わず変な声が出てしまった……ジータちゃんにあるまじき行為だ。ジータちゃんはこんな声出さない。
「ジータ! 無事か!?」
「ジータさん……わあっ酷い怪我……!!」
「ああ大丈夫、後で──」
「大丈夫じゃないじゃない!! 馬鹿!!」
リビアとの会話に割り込む形でクラリスが叫んだ。
顔を合わせると明らかに怒っている。確かに心配しないでと言いつつ、結果的に心配させるようなことになっちゃったからな。これは怒られても仕方ない。
「……ジータ、これは別に貴女に怒っているわけじゃないわ。自分に腹が立っているのよ……!!」
「え、なんで」
「あの時、整備を勧めたのは私よ……結果、
「それは──」
「貴女を助けるって言ったのに私……私……ッ!!」
また泣き出してしまったクラリス。悪いのはクラリスじゃないのにこんなにも責任を感じている。
なら私に出来ることは──こうしてクラリスを抱きしめて、罪悪感を受け止めて、それを少しでも
「ありがとうクラリス。私のためにそんなに怒ってくれて。でも私は十分クラリスに助けられてるよ。返し切れないと思うぐらいにさ」
「でも……でもぉ……!!」
「私も生きてるし、死んだわけじゃないから。 だからクラリス、笑って欲しいな。私クラリスが泣いているより笑っている顔の方が好きだから」
そう言うと、クラリスはハンカチで零れる涙を拭き取り深呼吸をしてから今出来る優しい笑みを浮かべてくれた。
ああ、やっぱり彼女には笑顔が似合う。
「うん、笑顔の方がクラリスによく似合うよ」
「なによそれ……」
少し照れたクラリスはそっぽ向いてしまった。可愛い。
「あの……」
「んんっ、仲がいいのは分かったからそろそろ私たちも入れてもらえないか?」
「「あ」」
クラリスとふたりだけの空気を作ってしまいアンジェとリビアを除け者にしてしまった。大変失礼なことをしてしまったなぁ……。
「あー……その……ごめんなさい」
「謝る必要はないが……無事で良かったよ。あの爆発を見た時は冷や冷やしたぞ」
「そうですね。リオンさんも試合を止めようとしてくれていましたし」
「え? リオンさんは気づいてたんだ」
流石、冒険者として名を上げた男はレベルが違う。私が危ないと審判に直談判してくれたことについては後でお礼を言わないといけないな。
当のリオンさんは少し離れたところで私たちを見守るようにじっと見ていた。紳士的な人だな。
──しばらくして協議が終わったのか審判ではなく、あのイケオジ先生がマイクを握っていた。
『只今の試合、学園側で用意した整備員によってミスジータの鎧に不正行為が行われた事実が確認されました。よってこの試合は無効とし再試合を……と言いたいところですが、ミスジータはそんな不正に屈さず、生身でミスタジルクを打ち破りました。
本来なら、
よって、この試合の勝者はミスジータ、貴女です』
イケオジ先生の宣言に会場からは疎らながらも拍手の音が鳴り響いた。
そうか、鎧が戦闘不能だと負け扱いなのか……グレッグさんは続けてたからいいと思ったんだけど、あれは審判が止めるのが遅かったからか。勘違いしてたな。
でもこうして勝ちになってよかった。
この後、私は大事を取るために救護室へと向かい、そこでリビアの治癒魔法を受けた。
私は当たり前のようにヒールなんかを使っていたけど、治癒魔法を使える人間は少ないらしい。
グラブルだとそんなことなかったけど、過去と未来なら使い手が少ないのもまあ納得できるな。
しばらくして──リオンさんがユリウス殿下を下し、決闘はアンジェの勝利に終わった。
グランブルー・フォール
要はすごい高いところから回転して地面に叩きつける技。
イメージしやすいのはパワーボムかリクームとベジータの戦いで地面に埋められるベジータのシーン。
一応言っておくと百合展開はありません。これは女の子同士の素敵な友情です。
ユリウス殿下は特に原作と流れが変わらないのでカットです。ごめんよ殿下。