ええっ!?この世界ってグラブルじゃないの!? 作:ざいざる嬢
ありがとうございます!
活動報告の通りちょっと仕事がごたついて更新頻度が落ちますが、今後ともよろしくお願いします。
仕掛けを動かすと壁が動いて道が現れるのではなく、地下へと繋がる階段が現れた。
ちょっと心躍ったのはここだけの秘密だ。
更に先に進むと謎解きのような仕掛けが多数用意されていて、みんなで頭を悩ませながらひとつひとつ解いていった。
仕掛けもパズルや間違え探し、クイズみたいなものばかりでなんだかミニゲームがいくつも集まっているお楽しみダンジョンって感じだ。
そんなのが続いたからか程よく緊張感が抜けた私たちは遂に最奥へと辿り着いた。
そこには今までの仕掛けが文字通りお遊びでしかないと理解させられるような魔物がいた。
黒く筋肉質でたくましい巨躯に鋭い爪、生えそろった鋭い牙。そして、最も特徴的な捻じれた二本角。角は黒く艶があるが、今まで屠ってきた冒険者の血で染まったのではないかと思わせられる深紅がまだらに広がっている。
そんな殺意の塊が──魔物が私たちを待ち構えていた。
「なんだあの魔物は……!?」
「見るからにやべぇな……ここは引くべきか?」
「でも、こんなダンジョンにいるような魔物だぞ? 意外と大したことないんじゃ……」
「馬鹿言うな! さっきも言っただろ!? あれはヤバい……俺たちはともかくお嬢様もいるんだぞ!?」
あれは……! ベヒーモス! ベヒーモスじゃないか!! まさかこんなところでお目にかかれるとは!!
見た目は若干私が知ってるベヒーモスとは異なるけど、些細なことだ。グラブルの古戦場で何度も見た顔だ。なんと喜ばしいことか。
となると、このダンジョンの難易度はEXTREMEといったところかな?
同じEXTREMEでもこの上に肉集めでもっとお世話になるウィケッドブルムがいるから、大したことないね!
「■■■■■■■■■ーーーッッッ!!!」
ベヒーモスが私たちに気づいたのかビリビリと空間を伝わる咆哮を上げた。
私は何ともないけど先輩たちとクラリスには効果覿面だったみたいで全員が震えてしまっている。
これは……ちょっとマズいか?
「ダ、ダメだ! いったん引くぞ!!」
「お、おう!」
引き返し始めるもベヒーモスの突進の方が早そうだ。このままだと私以外のみんながボーリングのピンのように撥ね飛ばされてしまう。
「お、おいジータ!?」
アビリティ『かばう』を発動。
これでベヒーモスの攻撃は私に誘導されるはず。現に視線が私を向いているから成功したらしい。初めて使ったから成功してよかった。
「■■■■■■■■■ーーーッッッ!!!」
雄たけびを上げてベヒーモスが私に襲い掛かる。鋭い爪を振り下ろし、それを私は両手で構えた剣で受け止める。
重い! けど鎧ほどではないかな。これぐらいなら余裕で受け止められる。
「ジ、ジータ! 無事か!?」
「はい! 私は大丈夫です! 私が時間を稼ぐので皆さんは撤退を!!」
「なっ、何を言っているのジータ!? 一緒に逃げるわよ!」
クラリスがそう叫ぶけど、ベヒーモスは逃がす気が無い。いや、正確には私から目が離せないと言うべきか? 『かばう』の効果がここまであるとはね。
でもこれは好都合だ。安全にクラリスたちを逃がせる。
見た感じ先輩たちにもベヒーモス相手は荷が重く感じるからね。
「……クッ、すまないジータ!!」
「ちょっ、放しなさい! ジータだけ残していくつもり!?」
「申し訳ありませんお嬢様、ですが今我々がここにいても足手纏いにしかならないんです。どうかお解りください……!!」
「ジータ……ジータアアアァァァ………………!!」
クラリスの声が遠のいてやがて聞こえなくなる。撤退には成功したかな。ヨシッ!
私は魔力で斧──
やっぱでっかい敵にはでっかい武器で豪快に戦いたいよね!!
「『ウェポンバーストⅢ+』!!*1」
「■■■■■■■■■ーーーッッッ!!!」
「『絶冴羅爪三鉾環』──ッ!!」
「ここまで来れば安全か……」
一方、ダンたちはクラリスを連れ撤退していた。
理由は明白、あの
あのレベルの魔物相手となるとダンたちでは鎧を用意しなければ相手にならないだろう。
それに今回はクラリスという護衛対象もいる。無茶は出来ない。
ならばここはジータがあの魔物を倒すか、もしくは撤退するのを待って戦力を揃えた上で再度挑戦するのが望ましいが……。
「ちょっと、あなたたち! ジータを置き去りにするつもり!?」
「しかしお嬢様! あの魔物を抑えられるのはジータしかいません! それにジータならもしかすると……」
その瞬間──
ドンッ!! ズガガガガガッ!!
ドォォォォオオオンッ!!!
凄まじい轟音がダンジョン中に鳴り響く。
音だけでなく衝撃までもがビリビリと、あの場から離れているのにも関わらずその場にいるかのように肌に伝わる。
「……ッ!! ジータ!!」
「お嬢様!! 行ってはなりません!! ……クソ、ダメか」
敬愛してやまないクラリス相手にダンは思わず悪態を吐いてしまう。
あの決闘以来、クラリスはジータにご執心だった。今回の冒険でも
ダンたちもジータに対して好感を抱いているが、クラリスのそれは度を越していた。かつての婚約者であるジルクに対する想いをも上回っている。
普段は今まで通り変わらないままでいるが、ジータのことになると目の色が変わり、アトリー伯爵の言いつけがなければ全てを差し置いて優先するほどにだ。
とはいえ、クラリスがそうなってしまっても仕方ないと納得せざるを得ない。
彼らでも敬愛する
だが、ジータはそれを問われるまでもなく自主的に実行しようとしていた。それも貴族でもない平民がだ。
平民だから失うものなどない、などとは言えない。むしろ貴族にとって平民は取るに足らない存在だ。貴族に歯向かおうものなら武力と権力で一家諸共消すことも出来る。
それをこの学園での生活で理解し、上手く立ち回っていたはずの彼女が理解出来ていないはずがなかった。それなのにジータはそれを承知で──これは後から聞いた話だが自身が所有するロストアイテムの献上まで考慮してクラリスとアンジェリカのために立ち上がった。とてもダンたちには出来ないことだった。
そして、文字通り命を落としそうな状況に追い込まれてなおジータは輝き続けた。その輝きは確実にクラリスの価値観を塗りつぶした。
ジルクへ向けられていた本人からも重いと語られていた愛がそのままジータへと向けられ、それに加えて様々な想いが加わった。それはひとりの女性の価値観を壊してしまうほどに。
だから今のクラリスは危うい。ジータに守られ、また目の前で死んでしまうのではないかと恐れている。
こうなってしまっては仕方がないとダンたちは意を決してクラリスを追いかけ、あの場へと戻っていった。
そこで見たのは──。
「これで! トドメ!!」
見覚えがない
いや~、ベヒーモスはいい敵だった。流石に1ターン撃破は無理だったけど、満足した戦いが出来た。前のダンジョンにいたジャイアントアントは物足りなかったからね……。こう何度も攻めて受けて躱して反撃して……っていう戦いが魔物相手に出来たのは中々の収穫だった。
それに前からずっと練習していた魔力で武器を具現化──統べスキンと極みスキンの再現が実戦で出来て満足だ。*2
今回は三寅斧だけだったけどいずれは……! などと考えていると息を切らせてクラリスたちが戻ってきた。
「ジータ……」
「クラリス! それに先輩たちも戻ってきてくれたんですか? 心配させちゃってごめんなさい。でも、この通りベヒーモスは倒しました!!」
誇らしげに報告するとクラリスが俯いてしまった。ダン先輩たちも少し気まずそうだ。
……もしかして私ひとりを置いて行ったことを気にしているのかな? でも、あのまま戦ったら重傷を負っていたかもしれないし、グラブルでは初心者騎空士が救援を呼んだらベテラン騎空士が颯爽と現れてマルチボスを倒すのはよくあることだ。だから気にしないでほしい。*3
「そう……。私たち……足手纏いだったわよね」
「え? そんなことないよ?」
「……そうね、ジータは優しいからそう言ってくれるわよね。このままじゃジータの隣にいられないわね……」
「クラリス……?」
クラリスは思いつめたような顔をして、それから何かを決心したのか向き直ったクラリスの顔つきが変わっていた。
「ジータ、私を鍛えてもらえないかしら? 私もジータと肩を合わせて戦えるようになりたい。もう……今日みたいなことにならないように、私も強くなりたいわ」
「鍛える? もちろんいいよ!」
「ホント!?」
「ホントホント! クラリスには是非覚えて欲しい
元々錬金術のあれこれを教えようとは思っていたから丁度いいと言えばいいタイミングだ。
クラリスも今回ベヒーモス相手に一度も攻撃できなかったことから己の弱さを悔いているのかもしれない。せめて一撃入れていれば貢献度が僅かにでも入り何かしらの報酬が手に入ったのに……みたいな感じで。*4
「……ジータ、俺たちも頼めないか?」
「先輩たちもですか?」
「ああ。これは俺たちの総意だ。今回、無理を言って前衛を任せてもらったって言うのに、いざとなったらビビッて動けずジータに押しつける形になっちまった……。情けない話だ……例えお前が許せても俺たちのプライドが許せねぇ。だから恥を承知で頼む。俺たちを鍛えてくれ」
そう言ってダン先輩を筆頭に先輩たちが揃って頭を下げた。後輩の、それも元とはいえ平民に頭を下げるなんて屈辱だろうに……。
でも女性優遇されているホルファート王国なら男性は女性に頭を下げて当然……というか慣れているのかな?
まあこんなに深く頭を下げられなくとも、本物のジータちゃんなら断らずに受け入れるだろうし、きっと快く協力するはずだ。だから私も受け入れよう。
「もちろん構いませんよ! あ!でも先輩たちもエアバイクのこと、もっと教えてくださいね!? 学園祭のエアバイクレースも気になってるんです!」
「それぐらいならお安い御用だ。なあ、お前ら?」
「ああ、もちろんだ」
「あなた達……」
「お嬢様、申し訳ありません。ですが……」
「……いいえ、いいのよ。あなた達も苦い思いをしたものね」
クラリスと先輩たちも互いに納得したことでこの話は終わった。
そうか、今度は私が教える立場になるのか……。これは頑張らないといけないな!
このダンジョンから帰るルートにはファーさんが目星をつけていた
ふっふっふー! これからが楽しみだなー!!
「ところで、あの魔物が守っていたお宝って一体何だったの?」
「あ、忘れてた! えーっと、これは……なんだろう?」
見るからにメカメカしいこれはまさしくロストアイテムの類なんだろうけど……鏡か何かかな?
後でファーさんに調べてもらおう。
こうして私たちはベヒーモスが守護していたロストアイテムとお宝を無事獲得できたのだった!
今回攻略したダンジョンは乙女ゲーのミニゲームダンジョンで基本魔物は現れず、ミニゲームが多数用意されていて、それらをクリアすることで先に進めるタイプのダンジョン。
最奥にそれなりに強いベヒーモスが配置されていたという設定。最期にモノを言うのは知力ではなく暴力という()
これを入手出来る頃にはゲームではベヒーモスは大した敵ではなくなっている上に必須アイテムでもないので、ユーザーの反感は買わずに済んだ。
なおリオンはプレイ中寄り道する時間が無かったため、このダンジョンのことは頭から消えています。まあ、乙女ゲー時代だとほぼ必要ないアイテムでもありますが、現実では……?
また、ベヒーモスの強さは共和国編のキメラビースト並みです。
五馬鹿とリオンなら対処は余裕を持って出来ますが、あいつらは攻略対象なので一般生徒であるダン先輩たちとはレベルが違い今回のような結果になりました。
相手が悪いよ、相手が。(先輩たち、ベヒーモス共に)