ええっ!?この世界ってグラブルじゃないの!? 作:ざいざる嬢
同時に評価投票者も100人を突破……これほどめでたいことはありませんね!
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「そういえば貴女アンジェリカには挨拶したの?」
クラリス先輩からそんなことを尋ねられた。
アンジェリカ・ラファ・レッドグレイブ公爵令嬢。
王太子であるユリウス・ラファ・ホルファート第一王子の婚約者であり、王子に次いでこの学園で最も爵位が高い令嬢だ。そのことから一年生女子のまとめ役をしていると聞いた覚えがある。
今年は王子と公爵令嬢だけでなく、他にも四人……
その話題に上がったひとり──ジルク・フィア・モーマリア辺境伯令息はクラリス先輩の婚約者であり、エアバイクレースでも期待の新星として有名らしい。
私は直接会ったはなく遠目で見たことがある程度で、緑色の長髪がよく似合う美形だったのを憶えている。その場にいなかった一人を除いて他の令息たちも美形揃いだったな。グラブルにもいそうな感じで、いたらそこそこ人気があったんじゃないかと思う。グラブルは美男美女揃いだからね、どっちでも楽しめるいいゲームなのだ。
ジルクさんは髪色とそのエアバイクの腕前からプラチナ・スカイのミュオン君を彷彿とさせるので、いつかエアバイクで競い合いたいなと思っている。
「いえ、クラスも違うので面識はありません」
「そう……なら、一度は挨拶しておきなさい。貴女は平民の出だから知らなくて当然だけど、この学園には慣例というものがあるの」
「慣例、ですか?」
これはファーさんも教えてくれなかったなとクラリス先輩の言葉に耳を傾ける。
聞けば、この学園では独自のルールが存在していてそのひとつが学年、もしくはクラスで一番爵位が高い令嬢に手土産を持って挨拶に行くのが慣例となっているらしい。
勿論、手土産は相手の好みを調べて用意するのが当たり前だとか。
よくよく思えば学園は貴族社会における最初の社交の場。こういうところで社交のマナーや派閥の構成などの練習や習得を目指しているのかもしれない。
「本来なら学園に通っていた両親からそういう話をされるものだけど、特待生として平民を受け入れることになったのは今年が初めてだからね。知り得ない慣例を学べ、というのも中々酷だと思うのだけど」
「そうですね……もう一人の特待生の子は大丈夫かな?」
「はぁ……貴女はまず自分の心配をしなさい? いいわ、私からアンジェリカに話を通しておいてあげるから、貴女は彼女への手土産を──って、お金は大丈夫かしら?」
「お金の方は大丈夫です。以前冒険で稼いだ分がまだ残っているので」
「それならいいのだけど、もし足りないようなら言いなさいね? 貸してあげるから。
……まあアンジェリカも平民の懐具合を鑑みてくれると思うけれど」
ああ、クラリス先輩は本当に良い先輩だ。長期休暇になったら恩返しするために冒険に出て稼ぐことを誓ったのだった。
『なるほど。それで私に王都の有名店をリサーチさせたのか』
「そうそう。アンジェリカさんの好みの品を用意しないといけないからね。仲介してくれるクラリス先輩の顔に泥を塗るわけにはいかないし、それなりのものを探しておかないとさ」
『その考えは実に好感が持てる。マスターの評価を上方修正しよう』
こういう時にグラブルだとどこからともなくシェロカルテが現れて、物を用意する代わりに依頼を受けてくれ~みたいな流れがあるんだけど、残念ながらシェロカルテには会えていない……。
そもそもハーヴィンはおろかドラフの姿すら見かけていない。見かけるのは燕尾服を着た男性の獣人とエルフぐらいだ。
見かける獣人やエルフは主に貴族令嬢に雇われている奴隷──専属使用人というもので、学園の令嬢たちの多くが後ろに連れ添っている。令嬢たちにとって、ある種のステータス的な扱いでもあるらしい。
彼らは奴隷という身分ではあるものの、身元は保証されており奴隷という身分で貴族の使用人として出稼ぎに出ている……という事情らしい。
平民の私には縁のない話ではあるが、奴隷ではなく仲間として騎空団に迎えられたらきっと心強いに違いない。
閑話休題。
『そういえばマスター、最近周りで何か変わったことはないか?』
「変わったこと? ……いや、クラリス先輩と付き合いだしてからは他所の令嬢に絡まれることがなくなったぐらいかな?」
『……そうか。実害が出ていないのならいいが少し用心して欲しい。最近、マスターを何者かが監視するような動きが確認された』
「えっ!?ストーカー!?」
『マスターが気配を消すと見失っているようだから大丈夫だとは思うが、念のため寮のセキュリティを上方修正しておいた。部屋に戻った時に教えよう』
「いつもありがとうねファーさん。私が安心して学園生活を送れるように色々してくれて助かってるよ」
『調査のついでだ。気にするな』
姿を消して私に付き添うファーさんを見て、人工知能でも照れ隠しをするんだな、と思ったのはここだけの秘密だ。
『マスター、今私に対して何か良からぬことを考えなかったか?』
「そんなことないよ?」
『……マスターが嘘を吐くときは平時より返事が40%ほど速い』
「え!?」
『図星だな? ……マスターの評価を下方修正しよう』
「理不尽!!」
後日、クラリス先輩からアンジェリカさんとの挨拶の場が整ったと連絡を受け、呼び出された部屋に向かうと先客がいた。
明るい茶髪にミドルのボブカット、優しそうな印象を持った一見地味だけど磨けば眩い光を放つ原石を思わせる女生徒がいた。
垢ぬけないというか、
「えっと……貴女は?」
「ようやく会えた! 初めましてだね、私ジータ! 同じ平民で特待生だよ!」
「あっ……!私以外にもうひとり特待生の方がいるって聞いてました!私、オリヴィアって言います」
「オリヴィアさんだね、よろしく。いや~、もっと早くに会えればよかったんだけどね。学園生活が楽しくて中々会いに行けなかったんだ」
「そ、そうなんですか。ごめんなさい、私から会いに行けば……」
「謝らないでよ。オリヴィアさんが悪いわけじゃないんだからさ! それにほら、そろそろ行かないと。ホストを待たせるわけにはいかないからさ」
同じ平民、特待生という立場からかオリヴィアさんから警戒心が薄れ、親近感が感じられた。
なんだか守ってあげたくなるなこの娘……。庇護欲をそそられるというか。
と、親睦を深めるのはほどほどにして私とオリヴィアさんはアンジェリカさんの待つ部屋へと入っていった。
ジータ調査中のルクシオンですが、ジータの隠遁術のせいで捜査が難航しています。
旧人類兵器の監視網を突破できるジータちゃんの隠遁術はジョブ忍者由来のものです。