ええっ!?この世界ってグラブルじゃないの!? 作:ざいざる嬢
──ついて来れるか?
そして筆が乗りに乗ったので二度目の投稿です。
案内された部屋には既にアンジェリカさんとその取り巻きの令嬢たちが待ち受けていた。
許可を得てから席に着き、用意されたカップに茶が注がれた。
注がれたお茶の香り、用意されたカップにポット。ケーキスタンドに用意された菓子とどれをとっても一級品ばかり。平民の私たちでは手が届かない品ばかりだ。クラリス先輩でもここまでのものは使っていない。
それを本来身分が違う私たちへ振る舞ってくれるのはアンジェリカさん──公爵令嬢としての矜持なのだろう。
「誰の入れ知恵か知らないが挨拶に来たことは褒めてやろう。精々、身の丈に合った生き方をすることだ。本来、ここはお前達のような者がいる場所ではない。だが、弁えているのなら、隅で大人しくしていることぐらい許してやろう」
優雅な所作で紅茶を飲みカップを置いたアンジェリカさんは私たちへと鋭い視線を向けながら言い放つ。
貴族然とした態度で私たちに接しているのは公爵令嬢として、この学年の女子を率いる者としての威厳を示すためなのだろう。慈愛溢れるクラリス先輩とは違った令嬢だな……。
一先ずはアンジェリカさんに頭を下げ、恭順の意を示してお茶をいただいて帰れば挨拶はお終いだ。これで私もオリヴィアさんもアンジェリカさんへ挨拶をし、認められたという結果が残り他の貴族令嬢からのやっかみもなくなるだろう。
「え、えっと、それでは学園にいるのを許してくれるのでしょうか?」
と、思った矢先にオリヴィアさんがやってしまった。
それもまあ仕方ないことだ。なにせ私たちは平民で貴族社会には疎い。こういった事への知識がないのだ。私なんかは前世のふんわり知識とファーさんのサポートがあるから、どうにかやれているだけでオリヴィアさんが普通なのだ。
すぐさまオリヴィアさんへのフォローを……と思った矢先、アンジェリカさんが同室していた取り巻きの女子たちを退室させていた。
「……あそこで頷いて茶を飲んで帰る。それだけで全て終わった。お前が質問をするからややこしくなっただろうが」
「──え?」
先程よりも口調が少し柔らかく、優しくなったアンジェリカさんはオリヴィアさんへと話し始めた。
「そっちの特待生は理解していたみたいだが……許すも何も、私がお前を追い出そうとしているとでも思ったのか?
正直な話、特待生の件は
オリヴィアさんが困っているので、私も手を差し伸べよう。
「オリヴィアさん、今回の挨拶はあくまでも貴族の令嬢の方々への挨拶であって、学園にいることへの許可を求めることじゃないんだよ。許可自体は入学した時にはとっくに貰えてるんだよ。
今回の挨拶は私たちなりに言えばそうだな……引っ越ししたら近隣の住民の人たちに『これからよろしくお願いします』って挨拶しに来るのと同じかな。それを貴族スケールでやっている感じ」
「あっ……なるほど」
どうやら理解できたみたいだ。よかった。
アンジェリカさんも私の例えを聞いてどこか感心しているように見えた。
「特待生……オリヴィアと言ったな。お前に挨拶の話を教えたのは誰だ? ジータは二年のクラリス伝いで挨拶しに来たが……ああ、勘違いするなよ、含むところがあるという意味ではない。周りが特待生であるお前に距離を置く中、お前を助けたやつが気になっただけだ。これは個人的な興味だよ」
「確かに……私もクラリス先輩に教えてもらうまではこの慣例を知らなかったから気になるな」
「……お前は他の令嬢たちから聞く話から立場をわきまえていると聞いているが、よくクラリスに気に入られたな。どこで知り合ったんだ?」
「それは後でお話ししますよ。それでオリヴィアさん、誰が教えてくれたの?」
「それならリオンさん……! リオンさんです、助けてくれたのは……!」
「バルトファルトの三男か。アレは変わり者だな。まあ、好感は持てる」
「知っているんですか?」
「結構有名人だよ。入学前に未開拓のダンジョンを攻略してロストアイテムを発見、新しい浮島まで見つけて冒険者としては大成功を収めたすごい人だよ」
リオン・フォウ・バルトファルト。彼にはどこか親近感を覚えるからいずれ会いに行きたいとは思っているけど、今の時期は彼も婚活で忙しいに違いない。ここで平民の私と絡んで他の貴族令嬢から遠巻きにされるのは彼も望むところではないだろう。
クラリス先輩の取り巻きの男子はクラリス先輩が紹介した令嬢との仲が出来ていたり、卒業後エアバイクのレーサーになることが決まっていたりと、逆に落ち着いている。こういう時、貴族の繋がりがあると婚活にも困らないのかな?
「そ、そんなすごい人だったんですか」
オリヴィアさんが驚いているのに対してアンジェリカさんが微笑みながら私を見ていた。
「バルトファルトは今や将来を期待された騎士のひとりだ。冒険者として理想の成功を収めたすごいやつだが……そのすごいやつはお前もだろうジータ」
「いやいや、バルトファルト卿に比べたら私なんて……」
「そう謙遜するな。お前だってこの学園に招かれたのは冒険でロストアイテムを発見したという功績があるからだ。もっと胸を張って誇るといい」
「ジ、ジータさんもすごい人だったんですね」
「う~ん、そんなこと……あるのかなぁ?」
グラブルのジータちゃんならもっとすごい発見や戦いをしているから、どうしても見劣りしちゃうんだよな。周りからすごいと言われても比較対象が本物のジータちゃんだからね……。
「それでジータ、お前はどこでクラリスと知り合ったんだ?」
「ええっと、王都を散策している時にエアバイクのレース場を見つけて、そこでテンションが上がってひとりで盛り上がっている時に声を掛けられて……」
「エアバイクか……確かにクラリスのアトリー家は王都にレース場を持っていたな。それにエアバイクの部隊も」
「はい!それでエアバイクに乗せてもらってから、仲良くなって色々面倒を見てくれているんですよ!」
クラリス先輩にはお礼としていずれ錬金術を教えてあげたい……。アルケミストも習得出来ている私なら錬金術を教えることも出来るし、錬金術が出来るということはクラリス先輩にとって貴族社会での武器にもなるだろうから。
決してグラブルのクラリスに近づけたいとかいう邪まな理由はない。ないったらない!!
「あいつは人を見る目があるからな……だが、他の令嬢との付き合い方は誰に教わった?」
「ああ、それはファーさんが教えてくれたので」
「「ファーさん?」」
……あ、そういえばこれはあまり言っちゃいけなかったな。
実のところ、私はロストアイテムを発見したがそれがどんなものなのかまでは公開していないのだ。
これは師匠の判断でもあり、基本的には隠しておいた方がいいと言われていたのだけど……うっかり口が滑ってしまった。
とはいえ、まだ致命的なことは何も言っていない。なので上手く誤魔化そう。
「ええ、貴族に伝手のある知り合いがいまして、その人から貴族との付き合い方を少し教えてもらったんです。よろず屋を営んでいて、他にも色んな事業に手を広げているとかで」
イメージするのはシェロカルテ……ファーさんとは言ってしまったけどルシファーではない架空の人物を作り上げる。
……そういえば貴族どころか王族との伝手があったよね確か。ある意味底知れない人物だったな。
そしてこんな時でもシェロカルテは時空を超えて私を助けてくれた……ありがとうよろず屋。でもダジャレは言わないでね。
「なるほどな、それなら納得だ」
アンジェリカさんが納得してくれた。た、助かった……!?
私の心の中のファーさんが私の評価を下方修正した気がするけど気のせいだろう!
「あ、あのジータさん、良ければ私に貴族の方との付き合い方を教えてはもらえませんか?」
「え?」
「それはいいな。今後学園は特待生として平民を受け入れ続けるらしいからな。平民同士で学園でのマナーを共有できるのなら余計なやっかみも減るだろう。先程の例えも通じるのなら貴族の私なんかが教えるよりも分かりやすいんじゃないか?」
そ、そう言われると教えられる自信はないんだけど……!?私だって全部ファーさんから教えてもらったし……。
……でもジータちゃんなら、断らないよなぁ。
そうだ、ジータちゃんは依頼を基本的には断らない。どんな時も困っている人に手を差し伸べるスーパー主人公だったじゃないか。転生してジータちゃんになった私がそれを請け負わなくてどうする!!
「……勿論!私なんかで良ければ」
「わぁ!ありがとうございます!!」
う~ん可愛い。これだけで依頼を受けた甲斐がある……。
「あ、そうだ。私のことはジータって呼んでよ」
「そんな、呼び捨てだなんて……」
「いいのいいの、私たちもう友達でしょ?」
そう言うとオリヴィアさんの眼から涙がポロポロと零れた。
ど、どうしたんだろう?何か傷つけるようなこと言っちゃったかな?
「え?あ……あれ? ご、ごめんなさい。この学園に来て、初めて友達って言ってもらえて嬉しくて……つい涙が……」
そう言うオリヴィアさんは溢れ出る涙を拭いながらも嬉しそうな笑みを見せてくれた。
思えば、今日この時までオリヴィアさんはひとりで何も知れないまま過ごしていたのを考えるとこうなっても仕方がない。
周りは貴族の令息令嬢だらけ。社交もマナーも慣例も知らない彼女は友人を作ることも出来ず、たった一人でこの学園生活を過ごしていた。どれほど心細かっただろうか。
思わずギュッと抱きしめてしまった。オリヴィアさんも戸惑っていたようだったけど、その内自然と受け入れてくれた。
「もうひとりじゃないよ。だから安心して」
「……はい」
オリヴィアさんが泣き止むまで私は彼女を抱きしめ続けた。
「……すまないが私がいることを忘れていないか?」
「「……あ」」
振り返ればそこには気まずそうにしているアンジェリカさんが。
「まあいい。特待生同士親睦を深められたようでなによりだ」
「ご、ご迷惑をおかけしました」
素直に謝る。なにせ公爵令嬢を置き去りに二人だけの空気を作ってしまっていたのだから。
「気にするな。 だがまあ、そうだな。もし頼みを聞きいれてくれるのなら不問としよう」
「私に出来ることであれば……」
私がそう言うとアンジェリカさんが小さく笑い、頼みごとを口にした。
「五月半ばにダンジョンに挑む授業がある。そこに私と殿下、他の宮廷貴族の跡取りたちが参加するグループに参加して欲しい」
アンジェリカさんとの挨拶を終え、オリヴィアさんと一緒に寮へと帰る。
「授業でダンジョンに挑むのか……楽しみだなぁ」
「だ、大丈夫でしょうか?私、戦う経験がなくて……」
「授業で挑む場所だからそこまで危険度は高くないんじゃないかな?なんだったら私がオリヴィアさんに少しレクチャーしてあげるよ」
そんな話をしているとオリヴィアさんが少し不安そうな顔をしながら、意を決して私にこう言ってきた。
「えっと……その、”リビア”です。リビアと呼んでください。実家だとみんなリビアと呼んでくれるので……」
……ああ、なるほど。互いに親しい呼び方をしたいんだね。さん付けだと距離を感じるのだろう。
なんだかいいな、こういう感じ。アオハルって感じがする。それともグラブルに倣ってフェイトエピソードと言うべきか。
「もちろんだよリビア!」
私の答えにリビアは花のように笑った。
次回はリオン視点の予定です。