ええっ!?この世界ってグラブルじゃないの!? 作:ざいざる嬢
余談ですが個人的に一番好きなイベントは【わたしの愛しのアウギュステ】です。
『マスター、申し訳ありません。ジータの調査が難航しています』
「難航? 何かあったのか?」
『はい。彼女は何らかの手段でこちらの監視網を抜け出すのです。非科学的な話ではありますが、まるで幽霊のようにふと姿を消してしまうのです』
「ルクシオンでも追跡が無理とかやっぱアレ本物だろ……」
『無理とは言っていません。難航していると言っただけです』
入学してから早一ヵ月、入学式の日に見たジータ──乙女ゲーにいるはずのないグラブルの主人公が本物なのか、それとも俺と同じような転生者なのかの調査をルクシオンに任せたものの、まさかこの課金アイテムでありチート級宇宙戦艦が巻かれるとは思ってもいなかった。
ジータが仮に本物ならこの世界はあの乙女ゲーの世界ではなく、グラブルとコラボをした世界線ということになる。
なんであんな
もしも……もしもコラボした世界線なら俺の原作知識は役に立たなくなる可能性がある。
グラブルのコラボイベントにおいて星晶獣という便利かつ厄介な……それも世界を滅ぼしかねない能力を持っているヤツが現れた場合、ルクシオンでも対処は難しい。
なんなら乙女ゲーのラスボスだった【大地の守護神】すらも上回る可能性がある。
だからこそ早いうちにあのジータが本物なのか確かめたかったんだけど……。
「じゃあ、王都付近にこういうやつらと船は見当たらなかったか?」
ジータ本人の素性捜査が進まないのなら次の手だ。
取り出したのはジータの相棒のビィ、そして
ついでにグランサイファーやカタリナ、ラカムと言った主要人物の絵も取り出す。
……こうして見ると俺って絵心無いよな。辛うじて特徴は掴んでいるつもりだが本家とは似ても似つかないのが悔やまれる。
『いえ、この様な人物やトカゲのマスコットは見かけていませんね』
「こいつはトカゲじゃねぇ! これでもドラゴンだ!!」
なんで俺がビィみたいなツッコミしなきゃいけないんだよ!!
俺の絵が下手なせい、と言われればそれまでだが。
……けど、とりあえずこのメンツがいないってことはジータは本物ではないってことか。
本物なら一緒に学園にいてもおかしくないからな。グラブルのストーリー的にも。
だから安心したんだ。ここはあの乙女ゲーの世界で、あのジータはたまたま似てるだけの転生者なんだって。
彼女は特異点じゃないし、ここはあのくそったれな乙女ゲーの世界だってことが確証を持てたようなもんだ。彼女は偶々似ていただけのモブか転生者。そうに違いない。
後は折を見て接触して、マリエをどうにかして原作通りに進めれば……なんてことを考えていた矢先にオリヴィアさんからとんでもない爆弾を次々に落とされることになる。
「え? もう一人の特待生も一緒だったの?」
「はい! ジータといって、とてもいい人でした!」
早速暗雲が立ち込めた。おいなんで主人公同士で接触してるんだよ!
同じ平民で、同じ特待生だから?そう言われたら何も言えないけどさァ!!
「ジータはすごい冒険者だってアンジェリカさんも褒めてました。それに、友達にもなれて……今度貴族の方と付き合う時のマナーを教えてくれるんです!」
「へ、へぇ……そうなんだ……ヨカッタネ」
つい言葉が硬くなる。でも仕方ないじゃんか!
なんで主人公と悪役令嬢が交流持ててるんだよ!しかも貴族とも上手く付き合ってるって……。
確かにグラブル主人公はすごいお人好しだけどさ……。人格面もすごい王道主人公してるけどさ……。
ここに来てまた本物か偽物か分からなくなってきてしまった……。
「あ、そういえばリオンさん、”ファーさん”って呼ばれている方をご存知じゃありませんか?」
「ファーさんッッッ!?!?」
おいおいおいおいおい!!こんなところで聞いていい名前じゃねーぞ!!
だが落ち着け……。まだあのファーさんと決まったわけじゃない……オリヴィアさんからもっと情報を聞き出してからでも判断は遅くない。
「な、名前だけだとちょっと……どんな人なんだ?」
「えっと、ジータ曰くよろず屋を営んでいて、貴族の方と色々な伝手がある方みたいなんです。ジータもその人から貴族の方との関わり方を教えてもらったみたいで、もしかしたらリオンさんも知ってる人なのかなって思ったんですけど」
「……それは本当にファーさんなのか? ”シェロさん”の聞き間違いじゃないか?」
聞いた特徴的にファーさんことルシファーなのはありえない……と思う。
むしろ特徴的にはグラブルでショップを営んでるシェロカルテの方が納得する。
よろず屋を営んでいるファーさんってなんだよ。想像つかないって。
「はっきりファーさんって言ってましたよ。もしかしてリオンさんご存知でしたか?」
「似た人なら知ってるけど、その人じゃないな」
あのルシファーならそもそもジータとは敵対しているはずだし、仲良くなるってことはな……いとは言い切れないよなぁ。何かの拍子に一時的に共闘することだって考えられるし。
……考えたくはないがもしかするとあのイベント──『どうして空は蒼いのか』のラストで次元の狭間に消えていったルシファーがこの世界に現れた……という可能性もある。
でもそうなるとなんでこの世界に
「リオンさん? リオンさーん?」
「……ッと悪い悪い、少し考え事をしてた」
「そうなんですか? ならいいんですけど……」
あまり考えすぎても無駄だなと、俺はいっそのこと考えるのをやめることにした。
もしもグラブルコラボ世界線だとしても、ジータが……主人公がいるのなら彼女に任せていいはずだ。俺が関わる余地はない。
きっと仲間も後で合流したりするんだろう。もしくは攻略キャラたちと手を組んで戦うのかもしれない。
それなら、せめて俺に出来ることはオリヴィアさん──乙女ゲーの展開を順守して物語を恙なく進めるサポートをすることぐらいだ。後はモブらしく学園生活を送ろう。
そんなことを考えながら俺はオリヴィアさんとの時間を過ごした。
……だが現実は残酷だった。
「リオンさん、紹介します。彼女が同じ特待生のジータです!」
「特待生のジータです! バルトファルト男爵の冒険譚を聞いて、一度お会いしたいと思っていたんです!」
どうしてグラブル主人公が俺に会いに来るんだよおおおおおおおッッッ!!!!
まだまだ勘違い要素は色々とありますが、ここからはジータちゃんを間近に見たリオンに苦しんでもらおうと思います。