「……森亜さん…もう何日も来てないわね…」
「ええ…何かあったのかしら…」
「もしかしたらこの前の爆発事故に巻き込まれたとか…!?」
「だったら可哀想ね…」
曇り空。昨日の晴天が嘘のように曇っている空だった。
玲二は寝込んだまま雑音を聞き流す。
今日は朝から少しやる気が出なかった。
「…るるかの奴…」
昨日、あんな事があってからるるかは高校に来なくなった。
理由は分かる。くれあの件だろう。
以前からくれあに対して少し怪しい感じだったが、このような形になるのは予想外だった。
「…何してるんだろう…」
すると、雷が鳴る音と共に、大雨になった。
それを機にサイレンから大雨を知らせる警報が鳴り響く。
「えー、今回は帰宅する事になった。外に出るなよ〜!」
教師の言葉に急いで荷物を整える生徒。
玲二も荷物を整えつつ、外を見つめていた。
その頃、るるかは大雨の中、傘すらも刺さずに歩いていた。
「これで良いの…これで…」
「くれあが戦ったら駄目…大切な…親友…」
るるかはペンダントを握り締める。
「これが終われば全て終わる絶対なんとかなるなんとかしなくちゃだって彼女は戦わずに過ごし方が幸せなのそれを壊すなんて私には…」
「できない…」
静かに溢れる言葉。雨の雑音が彼女の叫びをかき消した。
「……だから…なんとかしなくちゃ…」
るるかは静かに立ち上がって雨の中を歩く。
ただ雨に濡れる事すら気にも止めずに…。
そんな中、公園を歩く。いつもアイスを食べていた公園だった。
ベンチを見ると、玲二と共にアイスを食べたあの日を思い出す。
しかし、すぐに目を逸らして歩いていると、前に誰か立った。
るるかは顔を見上げると、いつもの顔をした玲二が立っていた。
「…何…」
「濡れるぞ。」
「別に良いでしょ…」
「風邪引くだろ。」
「……」
「…るるか。お前…」
玲二がそう言うと、彼女はティアアルカナロッドを向けてきた。
雨に濡れる杖とるるか。押し寄せてくる後悔のように重い感覚だ。
「…どいて…」
「退いてどうになかるのかよ。」
「…退いてよ…!」
るるかはそうして近づく。しかし、次第に足取りが重くなり、その場に倒れようとする。
玲二はすぐに傘を放り捨て、急いで駆け寄る。
「るるか!」
玲二は近くの屋根に雨宿りしてるるかの頬に触る…
「熱い…急いで家に帰って休ませねぇと…」
玲二は彼女を抱っこして辺りを見る。
今だに大雨が降り続き、このままでは悪化させてしまう。
「あらあら、私が必要って事?」
マシュタンが傘を持って玲二達に近寄ってきた。
「着いていくわ。貴方の家、近いんでしょう?」
「サンキュー…よし、行こう!」
玲二は急いで走って自宅に戻った。
息を荒くし、ズボンが雨に濡れても構わず、そのまま自宅まで走っていた。
そうして数分後に自宅に到着。家に帰ると、母親が待っていた。
「おかえり玲二…って、その女の子は…!?」
母親が言おうとすると玲二が叫ぶ。
「母さん!何かあったかいもん作って!ついでに温度計とタオルも!」
そう言うと、母親は何があったのかも聞かずにそのまま頷いて持ってきた。
彼女を一旦ソファに寝かせて体温を測る。
「玲二のお母さん?私、マシュタンって言うの。よろしく」
「ぬ、ぬいぐるみが喋った!?」
母親は露骨に驚いていたが、気に留めず、お粥を作る。
「…はあ…はあ…」
るるかは息を荒げ、顔も赤くなっていた。
…そうして看病を続け、息が少し安定したるるか。
「っう…」
彼女が目を開けて周りを見回す。
「るるか、大丈夫か…?」
「玲二…それにマシュタンも…」
「良かった。じゃあ私は家事してるから、玲二はその子の看病お願いね」
「分かった。」
そうして母親は家事をしに洗面所に向かった。
玲二とるるかは二人になる。マシュタンも居るが…
「玲二。」
「ん?」
るるかが息を整えて玲二に話しかける。
「どうして助けてくれたの…この前…あんな事言ったのに」
「…当然だろ。るるかは俺にとっても、くれあにとっても、他のみんなにとっても大切な友達だからな。」
「…友達……」
「それに…俺は…えっと…好きな人を助けるのに…理由が必要なのかよ?」
玲二は照れつつ、目を逸らして言う。
るるかはそれを見て驚きつつ、布団で身を隠した。
「余計なお世話…でも…ありがとう。」
それを見た玲二は再び顔を赤くした。
その後、間を置いて話をしてみることにした。
「……くれあのマコトジュエルの壊すって決めてたのか?」
「……」
「嫌なら話さなくてもいい。無理強いするつもりは無いぞ。」
玲二はそう言って代わりの冷えピタを持ってくる。
るるかはそれを受け取って額に貼ると少し話す。
「…戦わせたくないから…」
「え?」
「くれあに戦って欲しくないから…あの子は平和なあの空間で、ずっとパティシエとしてみんなの笑顔を作るだけで良いの…」
「でもキュアエクレールに変身して戦った…」
るるかの声は一段と後悔の念に苛まれている様子だった。
「そうした方がいいのは分かってる…でも納得出来ない…どうせ傷付くなら…私だけでいい…」
るるかはそう言って髪を触る。
玲二は黙って話を聞いていた。
「…それでくれあと戦うつもりなんだな。」
「分かった。俺は止めない。お前がその選択をしたならな。」
「でも、それで後悔しないようにしろよ。俺はお前らの事をしっかり見守る。」
「玲二…」
そう言った玲二の背中は動じていなかった。
るるかは微笑んだ後、そのまま横になった。
…そうして翌日。
熱を測ると、平熱になっておりますすっかり完治していた。
「…玲二…。」
「なんだ?」
「その…ありがとう。」
「気にすんなって。何かあったら、また来いよ。」
玲二はそう言うと、るるかは微笑んだ後にマシュタンを連れて帰路に着いた。
それを見た母親は玲二に声をかける。
「あの子の事好きなんでしょ?」
揶揄うつもりで言う母親。しかし玲二は顔色変えずに言う。
「うん。」
それを見た母親は少し驚いた顔をしつつ「そっか」とだけ言ってそのまま部屋に戻って行った。
………………
「くれあ殿。お茶を」
「ありがとうございます…」
茶道中の幸次郎からお茶を貰うるるか。彼女は飲むと苦い風味が口全体に広がる。
「やはりるるか殿の事で…?」
「はい…あんな事言ったのかは分からないけど…けど、きっと無理してると思うんです。」
くれあは空を見上げて言う。昨日の雨が上がって虹と太陽が挨拶していた。
「だから…私聞きたいです。るるかの本心を…そうしたら…また…」
くれあはそう言って湯呑みを畳に置く。
「…くれあ殿。おそらくは其処許は戦う事は避けられぬ。」
「だが、これはむしろチャンスと考えるべきだ。るるか殿の本心を戦いの中で話せばいい。」
「幸次郎さん…」
「そして、こちらも本心を吐露すれば良い。お互いを理解する事が和解への一歩だと某は思う。」
「…るるか殿とくれあ殿は…大切な…ご友人なのだろう?」
それを聞いたくれあは立ち上がって空を見上げる。
「そうですね…私、悩んでたけど…決めました。るるかと戦います。あの子の本心を知りたいから!」
「くれあ殿がそう決めたならば、某は止めぬ。」
幸次郎はそう言って羊羹を差し出した。
「おそらくるるか殿は其処許と関連ある場所に居ると思われる。某も共に行き、その動向を見守る事にする。」
幸次郎はそう言い、ブレイザースラッシャーを持って外に出た。
「…るるか…」
くれあは静かにそう言って空を見上げた。
太陽が暑く、自分を照らし出すかのようだった。
そうしてるるかはこのまことみらい市の近くにあるロケーションに来ていた。
そこにくれあも歩いてやってくる。
「るるか!」
「くれあ…」
その後ろには玲二、幸次郎、あんな、みくる、流介、マシュタン、シュシュタンとかなりの人数が居た。
「随分とオーディエンスを引き連れてきたのね。まあいいわ」
ティアアルカナロッドを構えてくれあに向ける。
「…くれあ、私はアナタのマコトジュエルを壊す…」
「本当に…そうしなきゃないけないの?」
「……」
るるかは黙って彼女を見つめた。
そしてすぐにマコトジュエルをセットする。
「るるか…私は勝つわ。」
「アナタの本心を…知る為に…!」
くれあもまたトップオブリリーフレグランスにマコトジュエルをセットする。
そのまま何も言わずに、るるかはキュアアルカナ・シャドウに変身し、くれあもまたキュアエクレールへと変身を遂げた。
二人とも少し息を整えて見合った後、拳を握って走り出す。
二人はそのまま飛び出して、お互いの頬に殴りを入れ込んだ。
今回もう終わりです。