「髪、伸びてきたなぁ…」
流介が髪を触りながら呟く。
「じゃあ切れよ。」
玲二がすかさずそう返すものの、彼は乗り気では無かった。
「考えてもみろ!俺の髪の毛が無くなったら、俺のこと知ってるヤツが『え……ハゲにしたんだ…』って言ってきた時の空気感!お前だって、るるかに鼻で笑われたら嫌だろ!?」
「それとこれとは話が別な気が……」
「とにかくだ!玲二!髪切ってくれ!」
……と、流介からハサミと新聞紙を手渡される玲二。
彼は引きつった顔をした後に彼に聞く。
「……ちょ…おい!なんで俺なんだよ!」
「いや俺さ…散髪屋で散髪するの苦手で……」
「お前こだわりあるんだな。対して気にしてない癖に。」
「うるせー!お前にだけは言われたくねぇよ!」
玲二だって髪の毛をそこまで気にしている訳ではなかった。彼本人もあまり気にして無さそうだったのを見て流介は溜息を吐いた。
「こうなったら幸次郎さんに頼むしかねぇ!」
「なんで泉さん?」
「刃物の扱い上手そうじゃん。」
「それとこれとは全く別問題!」流介の返答に思わず玲二はツッコミを入れた。
早速幸次郎のところに行く二人。
「すまぬ、某は散髪の心得が無い……」
「ええっ」
幸次郎は散髪は無理と正直に答え、流介も思わず変な声が出た。
「確かに刃物の扱いは心掛けている。その危険性も含めてだ。」
「……だが、ハサミは使った事が無いのだ……すまんな。」
「…じゃあ流介って子供の時図工とかどうしてたんスか…?」
「カッターナイフ……」
「カッターナイフ派かよ畜生!」「別に良いだろ。」
カッターナイフ派でしかも散髪の心得が無かった幸次郎の家を後にしてキュアット探偵事務所に戻ってきた。
「やべ、もう夜だ。参ったなぁ…」
時計を見ると、もう21時を過ぎていた。
それと丁度、みくるが帰ってきた。
「あれ、流介さんに玲二さんも。何してるんです?」
みくるを見つけた流介は彼女にハサミと新聞紙を手渡してきた。
「頼む!この際誰でもいいから髪切ってくれ!」
それを見た玲二は内心(最初からそれ言えば良かったろ…)と思った。
みくるはすぐに物を受け取る。
「まっかせてください!私小林みくる!全力で散髪します!」
「おお!やっぱ頼れるのはみくるだよなぁ!」
流介は喜んでいたが、玲二はやれやれと言う表情をして、そのまま仮眠室を借りて寝に行った。
「なあ……みくるは散髪の経験とか…」
「無いけど頑張ります!」
(不安になってきた)
そうして散髪が始まり、流介に聞く。
「どのぐらい切れば良いですか?」
「なら、ちょっと短めで頼む。」
流介の注文通りに慎重に切るみくる。
チョキチョキとハサミを切る音が静かな夜の部屋に響き渡っている。
(意外と上手いなコイツ…それに…なんか落ち着く…)
流介は夜にもなってきてそろそろ眠くなってきた。
「流介さん。髪の毛着いちゃうからヘッドホンとメガネ外し…あ。」
彼女が彼の顔を見ると、目を閉じてぐっすりと眠っていた。
それを見たみくるは自然と心臓がドキドキする。
(ハッ!駄目よ小林みくる。平常心を保って……!)
しれっとキスしようと邪念が生まれるものの、頭をブンブンして取り払った。
しかし、眼鏡とヘッドホンは外して自分に付ける。
「これはこれで似合うかも…」
みくるは鏡を見ながら自画自賛していた。
そうしてその後も彼の髪を短く散髪し終え、彼を起こす。
「流介さん。起きてくださーい。」
「ん…寝てたか。ありがとよ。」
「いいって事ですよ!」
流介がみくるの顔を見ると、自分の眼鏡とヘッドホンを付けてフフンと自信満々のみくるが立っていた。
「……眼鏡とヘッドホン返してくんね?」
「あ」
彼女は思い出して急いで返した後、彼を玄関に連れていく。
「今日はありがとよ。」
「いえいえ…別に」
流介は彼女の頭をポンっと撫でてそのまま走って帰った。
みくるは……オーバーヒートして固まっていた…
その帰り道…
「はっっっっっっずッ……!」
「ちょっと距離近かったかな…」
流介も流介で少しブツブツと喋りながら自己嫌悪気味になっていた。
尊
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