「…」
玲二は目が覚めてベッドから起き上がる。
「…朝か…」
いつもと何の変哲もない朝。しかし、そのいつもとは違う物が置いてあった。
机にはトランクと読み終わった説明書が置いてあった。
「…やっぱり夢じゃないよな…」
玲二はベッドの横に置いてあったバッグの中から銃を取り出す。
説明書に書かれていた銃の名前は"バレットストライカー"だった。
日差しが差し込んで玲二の目を刺激する。一瞬目を細めてバレットストライカーをバッグに閉まった。
「…はあ…」
玲二は溜息を吐いて、そのまま学校への行く準備を整えてそのまま出発した。
昨日、怪盗団ファントムという組織に成り行きで加入した玲二。
夢だと思っていたが、バレットストライカーを見て現実だと分かった。
「…これからどうなっちまうんだろう…」
玲二は再び空を見上げて考える玲二。
学校前に来ると、何やら人集りでザワザワしていた。
玲二は人混みを退けて行くと、そこには警察と血まみれで倒れていて包丁らしき刃物が大量に刺さって見るも無惨な死体が転がっていた。
「うわっ…」
玲二は思わず声が出た。
「殺人事件で休校だって。」
「るるか。」
玲二が横を向くと、るるかがマシュタンを抱えて立っていた。
そしてそのまま学校近くの公園で集まった。
「玲二。貴方は怪盗団ファントムの一人になった。それは分かってる?」
「ああ…」
「なら、しっかり説明しなきゃね。」
マシュタンがコホンと言い、玲二に色々説明してくれる。
「私達、怪盗団ファントムは人々の大切なものに宿る想いの結晶"マコトジュエル"を集める事が目的よ。」
「何じゃそりゃ。オカルトじゃねぇか。」
玲二は半信半疑で話を聞き続ける。
「まあ見なさいよ。これ。」
マシュタンが玲二にそのマコトジュエルを見せた。
「この学園にあった物。」
「もしかして…昨日ソイツと一緒に居た時に…?」
「見てたの…?」
「…うっ…気のせいだよ。」
玲二は苦笑いして誤魔化すと、るるかは興味無さげに次の話に進めた。
「これからは貴方にもマコトジュエル集めに協力してもらう。」
「…でもそれって他人から物を盗むって事だろ?なんか嫌だな。」
「……私だって…」
るるかが意味深そうに言葉を呟くが、玲二には聞こえていなかった。
「……分かったよ。協力するけど、俺は俺のやり方をやらせてもらうさ。」
玲二は立ち上がって学校の方に戻ろうとする。
るるかも立ち上がって玲二を呼び止める。
「何をしようとしてるの。」
「…そりゃ、あの事件の事気になってんだよ。解決できたらいいかもなって。」
するとるるかが玲二の肩に触れて止める。
その時の声は一段と低く感じた。
「………名探偵にでもなったつもり?貴方には無理。」
そう言われた玲二は顔色を変えずに答える。
「無理でもやらなきゃ。それに、やってみなくちゃ分からないだろ?」
そう言って玲二はるるかの手を離してそのまま駆け出して行った。
それを見たるるかは溜息を吐いた後に少し微笑んでいた。
「…誰かさんに似てる。」
るるかは走る玲二を呼び止めた。
「…玲二。」
「ん?」
「…そのまま行っても追い返されるだけ。」
るるかはグロスらしき物を取り、自身の唇に塗る。
すると、一瞬で姿が警官の衣装に変わった。
「…すげぇ…」
「プリキットグロス…。これで変装できる。」
玲二はびっくりしたような顔をしてバレットストライカーを手に取る。
「…あ、そうだ。」
バッグに説明書をしまっていた事を思い出してそのまま出して再び読み出す。
「……変装機能…これか。」
バレットストライカーを持って、カモフラージュチップを取り出して装填する。
トリガーを押してそのまま玲二の衣装も変化していく。
「…わあ…」
「……どうするの、玲二。」
「よし、行ってみよう!」
玲二とるるかはそのまま現場に向かって行った。
そうして変装した二人は難なく現場に入る事ができた。
よく死体を観察する玲二。
「…あ。」
「どうしたの?」
「…この人知ってる。里中先輩だ…」
「…誰なの。」
「柔道部の有名な人…流介のバイト先の先輩だって聞いたの覚えてる。」
顔はぐちゃぐちゃになっていて、左腕も折れて千切れていたものの、右足にあるほくろと先月に怪我をしていて包帯が巻かれた右腕で何とか判別出来た。
「何で襲われたんだろ…悪い人じゃなかったのに…」
玲二は悲しそうに答えていたが、深呼吸した後に周囲を見回す。
すると、刃物の破片が血溜まりの横に落ちているのが見えた。
布を出してからそれを拾い上げるるるか。
「…これはおそらく犯人のもの。折られてる形成があるから…きっと反撃したんだわ。」
「…じゃあもしかしたら…」
玲二は更に注意深く周りを見つめると、微かに血溜まりの横に足を引きずったかのような跡が残っていた。
二人は近付くと、その跡は途中から消えていた。
「きっと誰かが血溜まりに足を踏んづけた後に後退りしたのかも…」
玲二がそう考えると、向こうに流介の姿が見えていた。
現在学校には誰も入れない筈なので、何処からか侵入したのだろう。
「…あいつ何処行くんだ?」
玲二は気になって、後を追いかけた。
るるかは周囲の警官を少し警戒した後に後を追いかけた。
そのまま追い掛けると流介が見えてきて、玲二とるるかは変装を解いた。
「…流介!」
「玲二…それにるるかちゃんまで。どうしてここに…」
流介は心底驚いている様子だったが、気にせずに二人に問いかけた。
「…それより、何でここに?」
「犯人探しさ。お前らも同じ?」
流介にそう言われて頷く玲二。
「……今、すげぇショックなんだ。里中先輩死んじまうなんてよ…いっつも他人ばっか気にする面倒見がいい先輩だったからよ…」
「だから、俺が犯人をとっ捕まえて!何で殺したかを説明してもらうんだよ!」
流介はそう言って第一体育館に入って行った。
「追いかけよう。」
るるかがそう言うと共に玲二も彼の後を追った。
追い掛けて行くと、ステージの上に人が二人…いや、もう一体は怪人らしき存在が居た。
「…!」
玲二は人の手の方に目を向けると、手には昨日戦ったレガルーが現れた四角のキューブを持っていた。
「…あいつ!昨日の奴と同じ四角持ってる!」
玲二がそう言うと流介が近付く。
「お前!」
相手はビビって姿を現す。
「な、何だよお前…?」
「お前か!?里中先輩を殺したのは!」
「お、俺は殺してない!」
「しらばっくれんじゃねぇよ!その隣にいる奴が証明してんだろうが!!」
流介は声を荒げて犯人に向かって怒号を飛ばす。
しかし犯人は焦った顔をしてそのまま否定するような様子を見せていた。
「…く、くそ…犯人扱いされてたまるか…!」
犯人はホウチョウレガルーに指示を出して玲二たちに向かわせた。
ホウチョウレガルーは身体に刺さったナイフを抜いてそのまま流介に襲いかかってきた。
「う、うわぁぁぁ!」
「流介!」
玲二はホウチョウレガルーにバレットストライカーを連射して攻撃した。
「れ、玲二!?」
「るるかと流介は下がってろ。俺がなんとかする!」
玲二はマグナムチップを構えてバレットストライカーに装填しようとする。
しかし、るるかは溜息を吐いた後に玲二の横に立つ。
「…玲二。仲間になったなら、一緒に戦う事に慣れるべき。」
るるかはペンダントを掴んで長杖を実体化させる。
「ティアアルカナロッド…」
更に懐からマコトジュエルを取り出し、ティアアルカナロッドにセットした瞬間にるるかの身体が紫の光に包まれていき、光が消えていくと共に違う姿をしたるるかが現れた。
「…るるか…その姿は…」
「今の私は、キュアアルカナ・シャドウ。」
そう言ってるるかはレガルーに対して走っていった。
玲二は暫く見つめた後に、流介の方を振り向く。
「…流介。お前は待っててくれ。」
「何とかするから、任せとけ!」
そのままチップを装填してトリガーを引いた。
「変身!」
そう叫ぶと玲二はバレットの姿に変身していった。
「…す、すげぇ…」
そうして玲二もレガルーに向かって走っていく。
レガルーに殴りかかっていく玲二と後ろから光弾を放って支援するるるか。
「オラっ!」
連撃を繰り返すがレガルーにはあまり効果が無さそうだった。
「…別のチップでやってみるしかねぇか…!」
玲二はマグナムチップを抜いてガトリングチップを装填してトリガーを引いた。
左腕にガントレットが装備され、バレットストライカーを右手に持ち直す。
「撃ち落としてやるぜ!」
ガトリング並みの連射でレガルーを攻撃して怯ませていく。
るるかはティアアルカナロッドの先端部分のカードを回転させてレガルーに向ける。
「アルカナスターレイン!」
全方位に対してビームを放ってレガルーに攻撃を命中させた。
「玲二!」
「よし!」
玲二はウェポンチップの一つを手に取り、装填してトリガーを押して武器を召喚する。
バレットストライカーを腰のホルダーに取り付けた後に右腕にドリルアームを装備し、そのままレガルーに突撃していった。
回転したドリルによる猛攻はレガルーの身体から火花が飛び散る。
「そらっ!」
ドリルを突き刺したまま、バレットストライカーのスロットをマグナムに切り替え、そのまま再び銃を持って至近距離で乱射した。
吹き飛んだレガルーにるるかは再びアルカナスターレインの用意をしてレガルーに放った。
全方位に放たれたビームをホーミングしてレガルーに全て命中した。
そのままレガルーは唸り声を上げたと共に爆発四散した。
「…ふう…」
るるかはホッとしたような顔をして変身を解除した。
「るるか…さっきの姿は…」
「…あれはキュアアルカナ・シャドウ。るるかがプリキュアとして変身した姿よ。」
しれっと入ってきたマシュタンが玲二に向かってそう言う。
「うわっ!人形が喋ってる!」
流介は驚いたような顔をしてマシュタンを見つめていた。
玲二はすぐに近くに倒れていた犯人の手を掴む。
「…さっきの爆発で、多分警察も気付いてる筈だ。ここは逃げようぜ!」
玲二はそう言うと、流介やるるかも頷いてその場を後にした。
「でもどうする?裏門も正門もサツが居るって!」
「だったらいいところがあるぜ!来いよ!」
流介が二人を案内してグラウンド近くの森に着いた。
よく見ると、柵の間に壊れた隙間が草で隠れているのが見えた。
「こっから逃げようぜ!」
流介の言うがままにそこに入り込んで玲二達は難を逃れた。
…そうして公園。
玲二達は犯人と思わしき人物を拘束して尋問してみる事にした。
「…くっ…離してくれ!」
「聞きたい事がある。アンタが里中先輩を?」
流介は犯人に聞くが、犯人は焦っているように首を横に振った。
「…どうしてレガルーと一緒に居たんだよ。」
「お、俺は知らない!」
玲二が聞くと犯人はしらばっくれて話さなかった。
玲二達は目を見合って考える。
「…流介。これ以上話しても多分話してくれないと思う。」
「………くそっ」
流介は悔しそうにそう呟いた。
その後、玲二達は男を警察に突き出した。
すぐに逮捕され、取り調べが始まるそうだった。
………そんな事件から翌日。
警察の調査がある為、今日も学校は休校になるらしい。
玲二とるるか、そして流介の三人は公園に集まっていた…ついでにマシュタンも。
「…流介。大丈夫か?」
「…まあ…ちょっとはな。」
玲二と流介は土管の上に座りながら話していた。
るるかは木陰に入りながらアイスを食べていた。
「……なあ玲二。あの姿って…」
「…アレか…俺はバレットって呼んでる。この銃もバレットって名前が付いてたし。」
バレットストライカーを見せながら話す玲二。
「かっこよかったな!ヒーローみたいだったぜ。」
玲二はヒーローという言葉が少しモヤっとした。
別に自分は誰かを助けたかった訳でもないし、なりたくてなった訳でも無かった。
「まるで仮面を被りながらバイクで走ってそうなライダー…"仮面ライダー"だな!」
「仮面ライダー…」
玲二は流介のその言葉が言葉に残った。
…彼の中でヒーローと呼ばれるより、そちらの言葉で呼ばれる方が嬉しく思えた。
「仮面ライダー…仮面ライダー!かっこいいじゃん!」
玲二は立ち上がってバレットストライカーを天に掲げた。
「仮面ライダー…バレット!」
玲二は静かに何度もそう言った。
相当嬉しかった事が誰から見ても分かった。
るるかはアイスを食べ終えて玲二に近付く。
それを見た流介が土管から立って言う。
「なあ、俺らでチーム組まね?」
「チーム?」
「警察の捜査だけじゃ分かんない事を、俺達が暴いてやるんだよ。お前と、るるかちゃんと、俺でさ!」
「……私も?」
るるかは一瞬驚いた顔をして自分に指を刺した。
「…いいんじゃないか?ま、ちょっと危険かもしんねぇけど。」
玲二も少し楽しそうにしていた。るるかに視線を向ける玲二と流介。
るるかは黙った後に「…分かった…」と諦めたかのように答えた。
「じゃあ決まり!名前は…"愚連調査隊"とか?」
「いいじゃん!メンバーどうする?」
「今は三人だけでいいんじゃないか…?」
玲二と流介の話は長く続き、るるかは溜息を吐いて木陰の裏に隠れる。
マシュタンがるるかに聞いてみる。
「…ねえ、アレ本気にしてるの?」
「…さあね…。もしかしたらだけど。」
るるかは乗り気では無さそうだったが、少し意味深な言い方をしていた。
マシュタンがやれやれというような感じだった。
……………
同時期、公園に視線を向けていた青年が立っていた。和風な衣装に身を包み、右手には鞘に収めてある"バレットストライカーに似た剣"が握られていた。
「仮面ライダー…」
青年は静かにその名前を呟いた。
"仮面ライダー"の誕生。