「姉さん・・・」
「しのぶ。おはよう。心配かけたわね? ありがとう。お見舞いに来てくれて。姉さん嬉しいわ?」
「姉さん・・・姉さんっ・・・!!」
私は反射的に立ち上がり、寝台で上体を起こしている姉に近づき、そっとその身体を抱きしめた。
「姉さんっ・・・!! 姉さんっ!! 姉さぁあああんっ!!」
「よしよし。しのぶ。ごめんね? 不安にさせて。この通り無事だわ。ちゃんと足だってついてるのよ?」
私は年相応の女児のように泣き叫んで姉さんに縋り付いた。
やがて落ち着いた私は姉さんの左腕が私の腰や背まで回ってないことに気づいて疑問に思った。
「姉さん・・・左腕・・・」
「ああ。これね。まあ流石に上弦ノ弐相手に無傷って訳には行かなかったわ。血鬼術もろに浴びて動かなくなっちゃった」
「っ!!」
私は姉さんを抱きしめるのを止め、肩に両手を乗せ姉さんの目を真っすぐに見る。
「他には!? 他に辛いところはないの!? 姉さんっ!!」
「うん。辛くはないわ。けど左半身は今後ずっと不自由だと思う。一人で出歩いたりもできないかもしれないわね」
「・・・・・・」
私は視線を落とし、内心決意を固めて再び姉さんの瞳を真っすぐに見据える。
「姉さんっ!! 私・・・私が!! 今後の姉さんの手となり足となるわ!! これからはずっと傍で支えるし、日常生活の介護も付きっ切りでする!! だから・・・!!」
「しっかりしなさい。そんなことを言い出すことは許しません」
その瞬間、姉さんは鋭い眼光で私を射貫きそう告げる。私は思わず固まってしまう。
「私一人に構うんじゃありません。今は少しでもできることをやりなさい」
「姉さん・・・でも私・・・」
私はそこで目尻に涙を溜める。一方姉さんの視線は変わらない。
「私・・・あれから三年必死に頑張ったけど・・・育手の鱗滝さんから課せられた課題今でも達成できないの・・・今だに岩が斬れなくて・・・常中まで身に着けたのにそれでもまだ斬れなくて・・・最終選別すら行く許可がずっと貰えないままで・・・」
「関係ありません。諦めるんじゃありません。貴方は私と同じ鬼殺を志す者です。胡蝶しのぶ」
私は目を見開いたまま何も言い返せなくなる。
「あの日、私と二人で決めたはず。まだ壊されていない誰かの幸福を守るために鬼と戦う、と。そしてカナヲ一人にそんな重荷は背負わせない、と。鬼と戦うと決めたなら戦いなさい。守ると決めたのなら守り通しなさい。私とも、悲鳴嶼さんの前でもそう誓ったんでしょう?」
「姉さん・・・」
すると姉さんは私の肩に右手を置き、優しく微笑む。
「大丈夫。しのぶならちゃんとやれるわ。カナヲをよろしくね?」
私は姉さんに託される。本当は姉さんがカナヲを支えるつもりだったんだ。姉として。妹の力になるために。
でも姉さんは道半ばで戦えなくなってしまった。だから代わりに私に頼んでるんだ。大切な妹のカナヲのために力になって欲しい、と。
私は両の手に力が籠る。
「わかったわ、姉さん。カナヲを一人にはしない。私が必ずカナヲを支える。たった一人で鬼と戦わせるような真似はしないわ。今はまだ私、カナヲはおろか姉さんの足元にも及ばないけれど、いつか必ず強くなって、カナヲの力になってみせるから。約束するわ」
「ええ。約束ね。カナヲはああ見えて結構傷つきやすいから、お姉ちゃんが傍で見守ってあげてね? しのぶがそうしてくれるなら姉さん安心できるわ?」
「うん。任せて。姉さんも元気で。また絶対会いに来るから」
そうして私はその場を立ち上がる。そして姉さんの居る病室をあとにし、鱗滝さんの待つ狭霧山の麓まで戻ることにした。
「本当によかったのか? 姉の下に残らないで」
「はい。大丈夫です。鱗滝さん。ご心配をおかけしました」
私は鱗滝さんの住む小屋まで戻っていた。鱗滝さんは腕を組み、悩ましそうに呟く。
「正直、仮に岩を斬れたとしても、しのぶは鬼殺隊士を続けるのは難しいと思っている。仮に常中の練度を今後も高めていったとしても、強い鬼程頸は頑丈になり下手をすれば岩以上に硬くなる。そんな鬼相手に将来戦う羽目になるくらいならいっそ・・・」
「私は諦めません。姉さんと誓ったんです。カナヲを一人にしないと。必ず私が傍で支え、力になってあげると」
「だがカナヲ程の実力を持つ剣士と合同での任務となると、狩る鬼は相当の・・・」
「はい。なので私考えたんです」
鱗滝さんの言葉を遮り、私は姉さんの屋敷より持ち出したある書物を引っ張り出す。
「っ! これは・・・!」
「はい。数代前の花柱の手記です。丁度鱗滝さんと同じ時期に在籍していた方が記した書物になります」
鱗滝さんは驚いていた。私はそのまま自身の考えを述べる。
「私が水の呼吸だけで鬼を狩り続けるのはきっと難しいでしょう。以前鱗滝さんと話し合った通り、漆ノ型で鬼を串刺しにし木や岩に縫い留めて、その隙に拾ノ型で限界まで回転速度を引き上げて頸を刎ねる方法ぐらいしか現状私に打てる手はありません。その為にこの三年間、必死に鍛錬を積み重ねてきました。でもそれだけじゃ足りないと思うんです」
私は花柱の手記をめくり、私が興味深く思った部分について言及する。
「鱗滝さんが現役だった頃、当時の花柱でひと際腕力に乏しい方が居たことがわかっています。彼女は薬師の妻で、夫を鬼に殺されてから鬼殺隊に入ったため鍛錬を積む時間もさほどなかったそうです」
「ああ。覚えている。彼女は当時私の先輩だった。それまでは刀など一度も握ったことのない穏やかな女性だった」
「はい。そしてこの方が柱に成れるまでに鬼を狩れた理由。それがここに記されています。正直私が鬼殺の剣士として戦ってく為にはもうこれしかありません」
私は該当箇所を指で差し、結論を述べる。
「藤の花の抽出物。彼女は薬師の知識を活かしてこれを生成、濃縮し日輪刀に塗って鬼を斬り、弱体化させてから頸を刎ねて討伐していたそうです。間違いないですね?」
「ああ。当時の花柱 南方咲殿は無き夫より学んだ薬師としての知識でそれらを生み出し、数多の鬼を狩り続けた。加えて鬼の毒を藤の花の薬湯で分解するなどの試みで多くの隊士の命を救った功績もある。よく覚えている」
「姉さんが花柱に就任してからお館様より頂いた屋敷は、初代から代々花柱に該当する者が譲り受け続けた屋敷のようでした。なので姉さんに許可を取って借りて来たんです。私はこの人の戦い方を自分なりに落とし込みたい。水の呼吸だけを研鑽し続けるよりもずっと現実的なはずです」
「そうだな。儂もそう思う。しかしできそうか? 藤の花の抽出物は生成に緻密な作業と知識が必要と聞く。現にここ数代の花柱達がそれを実践していないのは、それが技術的に難しいからだ」
「大丈夫ですよ鱗滝さん。寧ろ私にとっては剣を握る以上の得意分野です」
私は手記を閉じ、自信満々に宣言する。
「物心つく前から父の真似事で、家の庭の草木から薬を調合していましたから。それにある程度の薬学の知識も既に修めています。私は水の呼吸と藤の花の抽出物で、鬼を狩る剣士になってみせます」
続く
【イベント発生】
???「全力でお姉ちゃんを遂行する!!!」
【しのぶのお労しさが最低値まで下がった! 今後は暫く上がらないようだ!】
原作のしのぶもそうですが、やはり兄上と違って人間としての芯が強いんですよね。正直彼女は原作も本作も相当お労しい人生歩んでます。なのに折れないし道を外れない。それはなぜか。それこそが鬼滅作品最大のテーマ。失われたものは回帰しない、二度と戻らない、でも人の想いは繋いでいくことができる。人の想いこそ永遠であり不滅。正にお館様の仰る通りです。しのぶは大好きだった姉の想いを受け継いで最期まで戦い、煉獄さんは亡き母の最期の遺言を受け継ぎ戦い切り守り切った。竈門家なんて縁壱との約束を何世代にも渡って受け継ぎ最後は炭治郎が縁壱の成そうとしたことを成し遂げました。その受け継がれる想いこそが人の最大の原動力なのでしょう。一方兄上の原動力は何でした? 弟の縁壱の技と力を我が物にしたいとか言ってました? それって何の為ですか? 誰の為ですか? 結局自分の為だけの願いですよね? だから兄上は最期の最期までお労しいだけの人生で終わってしまうんですよ。それこそある種の芸術作品とも言える最期を迎えてです。そのせいで筆者の脳が焼かれて推しキャラが兄上になってしまいました。全く罪深い御人ですよ兄上は。何はともあれ超長文失礼しました。
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読みたい路線はどっち?
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一部の層(継国兄弟ファン)にぶっ刺さる話
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万人受けしそう(マイルド)な話