胡蝶家の縁壱とお労しい姉上   作:科学大好き人間

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しのぶ視点です。原作に比べて炭治郎が相当パワーアップします。


18話 二人で一つ

「やった! 割れた! 斬ったぞ遂に!! 大岩を斬りましたよしのぶさんっ!!」

 

「凄い・・・」

 

 

炭治郎が私の為に鬼を斬る刃になるとそう宣言して約半年、本当に約束通り炭治郎は大岩を割っていた。それも私が鍛錬で使っていた大岩の倍以上大きな岩をだ。

 

 

「これで、これで! しのぶさんも最終選別に行けるっ! 見てて下さいしのぶさん!! 俺が必ず、しのぶさんが鬼殺隊で最も凄い剣士だって皆に証明して見せますよ!!」

 

「まだ大岩斬れただけでしょう? 常中の鍛錬だって始めてすらいないし。それに鬼殺隊最強の隊士は悲鳴嶼さんよ。私たちがあの人以上に強くなることなんて天地がひっくり返ってもあり得ないわ」

 

「えっ!? そんな強い人がいるんですか!? しのぶさんよりも強いなんてそんな人いるんですか!?」

 

「いるわよ普通に。そもそも柱の人達は皆私なんかと比べものにならない位強いのよ。常中ができるのなんて当たり前。そこから更に想像を絶する鍛錬で自身を磨き上げて強くなってる人達ばかりなんだから」

 

「そ・・・そうだったんですね・・・鱗滝さんがしのぶさんは自分よりも既に強いって言ってたからてっきり俺は・・・」

 

「鱗滝さん何歳だと思ってるの? あの人慶応の時から柱やってるのよ? 今となっては日本有数の高齢な方なんだから当然でしょ?」

 

「慶応っ!? まさか江戸時代っ!? 鱗滝さんってそんなに昔から鬼狩りしてたんですか!? と、とんでもない人だ!!」

 

「そうよ。あの人は鬼殺隊でも屈指の柱在籍期間が長かった人なの。そういう意味では悲鳴嶼さんとは違った意味で歴代最強の剣士かもしれないわね。ただ・・・」

 

「? ただ?」

 

 

私はそこで言い淀む。ついカナヲがそれ以上の実力を持つ剣士であると口走りそうになった。悲鳴嶼さんから口酸っぱく口止めされているのに。私は急遽発言を撤回する。

 

 

「まあいろんな意味で凄い人が鬼殺隊には大勢いるのよ。わかったら炭治郎ももっと鍛錬しなさい」

 

「え? でも大岩は割れたしこのまま最終選別に行けるんじゃ・・・」

 

「言っておくけど大岩が斬れるのは鬼を狩る上での最低条件だから。鬼の頸は岩と同じくらい硬いし。何なら鬼舞辻無惨直属の精鋭、十二鬼月の鬼達なんて岩より遥かに硬い頸してるんだから。まあ柱はそれでも下位六体までなら瞬殺できる位には皆強いらしいけど・・・」

 

「岩より硬い!? いったいその鬼達の頸は何で出来てるんですか!? 鉄か何かですか!?」

 

「まあそうね。上位六体の上弦の鬼なんて下手したらそれ位硬いかもね。柱ですらここ百年以上一匹も殺せていないみたいだし」

 

「百年!? 誰一人敵わない鬼が六体も居るんですか!?」

 

「そうよ。だから大変なの。しかも肝心の鬼舞辻無惨なんてそれ以上に強いはずだし、何よりそいつを殺さないと鬼は無限に増え続ける。千年以上鬼との戦いが終わらない理由もまあわからなくはない話よね」

 

「と・・・途方もない話だ・・・」

 

「だから大岩が斬れた位で舞い上がってる場合じゃないわよ炭治郎。まあ私はその大岩すら斬れない不完全な隊士だけど・・・」

 

「大丈夫ですよしのぶさん!! 俺が代わりにどんな鬼の頸でも刎ねられるよう腕力鍛えて見せるんで!! 約束です!!」

 

「あら、そう? じゃあ早速常中の鍛錬でも始める? 言っておくけど私が例外なだけで、普通の剣士にとっては大岩を斬るよりこの瓢箪を息で割る方が大変なんだから。覚悟しなさいよ?」

 

 

そう言って私は岩を斬ったばかりの炭治郎に掌大の瓢箪を渡す。

 

 

「え? なんですかこれ。しのぶさん」

 

「言ったでしょ。瓢箪を息で割るって。因みにこの大きさの瓢箪が割れれば常中の第一歩達成って言ったところかしら」

 

 

そう伝え、私は瓢箪の栓を抜いて息を吹き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァアアアアンッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

「・・・とまあこんな感じ。常中を習得すればこれくらい朝飯前よ。そして常中の完成には少なくとも私の上背と同等の瓢箪を割る位しないと認めて貰えないわ。炭治郎できそう?」

 

「・・・これ・・・硬くないですか・・・しのぶさん・・・」

 

「当り前じゃない。柔らかかったら簡単に割れるわよ。だから漆で硬くしてるの」

 

「いやいやいや! 漆で硬くしなくても息で割れませんって!! 誰ですかこんな無茶な鍛錬考えたのって!!」

 

「全然無茶じゃないわよ。悲鳴嶼さんなんて丸太数本担いで持ち上げたり大岩を一町先まで押したり火あぶりに耐えたりともっと大変なことしてるんだから」

 

「待って!? 最後が明らかに可笑しい!! 火あぶりって何なんですか!? 呼吸極めたらそんな修行までするんですか!? その悲鳴嶼さんって人怖い!!!」

 

「まあそこまでするのは悲鳴嶼さん位でしょうね。普通は火傷負うし場合によっては死ぬこともあるだろうし」

 

「は・・・柱って一体何者なんだ・・・本当に同じ人間なのか・・・」

 

「さて、いい加減その瓢箪に息吹き込んで見なさい。まずは炭治郎の呼吸の練度確かめるから。全集中の呼吸の要領で息を吸い込んで、思いっきり吹き込みなさい。はい、始め」

 

 

すると炭治郎は恐る恐る瓢箪の栓を抜いて、呼吸を整え、全力で息を吹き込む。暫く待つが何も起こらない。徐々に炭治郎の顔が真っ赤に染まり、目ん玉をひん剥き始め苦しそうにし始める。

 

 

「ハアッ!! ハアッ!! キツイ!!! なんでしのぶさんはこれ割れるんですか!?」

 

「言ったでしょ。常中を習得すればそれ位朝飯前だって。これでも私五年半は続けてるし。炭治郎も私と同じくらい鍛錬してくれないと困るわ。ほら頑張って」

 

「・・・頑張ります・・・」

 

 

それから半年の間、私は炭治郎に週一で会いに行って常中の鍛錬を課した。ただ炭治郎は真面目で努力家だから、小さい瓢箪ならものの一ヶ月で割れるようになった。

 

そして更に三ヶ月程で、私の等身大の瓢箪も割れるようになった。正直私は驚いた。私が同じ大きさを割れるようになるまで、最低でも二年位は掛ったのだから。

 

 

「どうですかしのぶさんっ!! 俺、しのぶさんの為にこの大きな瓢箪も割れるようになりましたよっ!! これなら最終選別なんて余裕ですよねっ!?」

 

「・・・凄いわ・・・炭治郎・・・」

 

 

炭治郎は本当に心が強い。私なんて何度挫けそうになったことか。私がそんな炭治郎の芯の強さを褒めると決まって炭治郎は「俺、長男なのでっ!!」って自信満々に答える。

 

どういう理屈? 長男だと忍耐強くなるの? わからない。竈門家の教育方針なのだろうか。少なくとも胡蝶家ではそんな教育は為されなかった。私は適当に流す。

 

 

「それじゃあ炭治郎。残りの二カ月位は私と手合わせしましょう? 動きの悪い癖とか指摘してあげるから。単純な木刀での打ち合いだったら多分鱗滝さんよりも私の方が強いから良い鍛錬になるはずよ」

 

「う、鱗滝さんとまず鍛錬して来てからでも良いですか?」

 

「平日はそうしなさい。でも週末はわざわざ私ここまで通ってるんだから私とやるわよ。言っておくけど手加減しないから」

 

 

そうして二カ月程の間、炭治郎と木刀を使った模擬戦を何度も行った。正直最初の一ヶ月は打ち合いにすらならなかった。私が一方的に叩きのめして終わることが多い。

 

常中を修めてからはカナヲとしかこうして打ち合いをしてこなかった。その弊害か加減がうまくできない。後半になると炭治郎から「コロ・・・シテ・・・コロ・・・シテ・・・」と、何だか変な片言めいた呟きしか聞こえてこなくなった。私の耳が可笑しいのだろうか。

 

しかし流石に二カ月目の終盤になると十合二十合は私と炭治郎の間で打ち合いが成立するようになった。私は炭治郎の上達具合に舌を巻く。

 

 

「ハアッ!! ハアッ!! しのぶさん!! もう無理!!!」

 

「・・・だいぶもたせられるようになったわね・・・炭治郎・・・」

 

 

きっと炭治郎は、既に下弦の鬼位なら一人で戦える位にはなったと思う。だだその反面、私の存在価値は何なんだろうかと自問自答する。炭治郎は一人でも戦えるけど、私は一人じゃ戦えない。私が炭治郎のおんぶに抱っこで最終選別を合格することに、果たして意味はあるんだろうか。そんな悩みに炭治郎がどうやら気づいたようで、彼は私に優しく声を掛けてくる。

 

 

「大丈夫だよ、しのぶさん。俺が必ず、しのぶさんの実力を鬼殺隊全員に認めさせて見せるから」

 

「・・・そんなに不安そうにしてたかしら・・・私・・・」

 

「俺、実は鱗滝さんと同じで鼻が利くんだ。それでしのぶさんが悩んでたり塞ぎこんでたりするとなんとくなく察することができるからそれで・・・」

 

 

炭治郎。鱗滝さんと同じことができるのね。凄いわ本当に。カナヲも、貴方も、皆特別な力がある。一方で私は・・・

 

 

「しのぶさん。鬼の頸が斬れなくたって、立派な鬼殺隊士になれるって証明しよう。大丈夫。俺達二人ならできると思う」

 

「炭治郎・・・」

 

 

私は振り向き、そして目を逸らす。眩しい。炭治郎は真っすぐで優しくて。私なんかの為にここまで付き合ってくれるなんて。私は照れくさくなり炭治郎を茶化す。

 

 

「・・・言葉遣いがまた崩れてるわよ・・・炭治郎・・・」

 

「あっ! すみません! つい・・・」

 

 

慌てて訂正する彼の様子を見て私は肩の力が抜ける。不意に微笑んで私は炭治郎に提案した。

 

 

「もういっそ、崩れた口調のままでいいわよ? どうせ二人一緒に最終選別に合格したら同期になる訳だし」

 

「え!? いいんですか!?」

 

「ええ。もういいわよ。姉弟子弟弟子なんてもう関係ないわ。私たちは今後対等で居るべきよ。二人で一組の隊士になるんだから」

 

「わかった・・・じゃあこれからも改めてよろしくな・・・しのぶ」

 

「うん。こちらこそよろしくね。炭治郎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからは更に、私たちの距離感は縮まったような気がした。いつの間にか私にとって、炭治郎は特別な存在になってたのかもしれない。それがどういった感情によるものなのかは、この時の私はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




いつか悲鳴嶼さんに「炭しの・・・キテル・・・尊い」って言わしたい。あの人一部の層から真恋柱言われてるので。因みにそんな様子を他の隊士が目撃したら「信じられぬものを見た」って唖然としそう。

読みたい路線はどっち?

  • 一部の層(継国兄弟ファン)にぶっ刺さる話
  • 万人受けしそう(マイルド)な話
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