???「もうこれで 終わってもいい だから ありったけを」
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「珠世さん。こいつら本当に十二鬼月だったんですかね? そう名乗ってた割には弱すぎたような・・・」
「そうですね。目に数字が刻まれてませんので恐らく偽物なのでしょう。炭治郎さん。念の為採血して貰えますか?」
「わかりました!」
何だったんだろう。さっきの奴ら。「十二鬼月である私に殺されることを光栄に思うがいい!」とか言ってたけど、炭治郎が一つ型を出しただけで身じろぎせず頸落ちて死んだんだけど。
流石にあんな弱弱しい自称十二鬼月の血集めても禰豆子ちゃん人間に戻せないと思うんだけど。実は血鬼術がとんでもなく凶悪な代わりに本体が弱い鬼だったとか? うーん。無くは無いのかも。
「しかし困りましたね。鬼が来たということはこの場所が鬼舞辻にバレたということでしょう。早急に隠れ場所を変えなければ。愈史郎、頼めますか?」
「はっ! 珠世様! おいお前らも手伝え! 俺は痕跡を消す作業もあって忙しいんだ! 夜明けの一刻前には珠世様の御荷物全部おまとめしろ! 貴様ら何の為に日頃必死に身体鍛えてると思ってるんだ!?」
いや・・・当然鬼を狩る為なんだけど。荷物運びの為に鍛えてるはずないでしょ。まあ愈史郎の言う事を真に受けても仕方がない。私は炭治郎と手分けして珠世さんが持ち出したい荷物のまとめ作業に入った。
「炭治郎は愈史郎の指示に従って生活必需品を全般に運び出して。私は珠世さんの指示を聞きながら医療器材や薬品を運ぶわ。そっちは専門家じゃないと危ないものもあるから」
「わかったしのぶ! そっちは頼んだぞ!」
「では珠世さん。最低限持ち出したい薬品や機材を教えてください。私が荷造りします」
「えっと・・・失礼ですがしのぶさんには医療の心得が?」
「はい。鬼殺隊の診療所で医者の真似事をしています。元々は薬師の娘でしたから父から色々と教わっているんです。基本的なことはわかります」
「そうですか! その年で医療の現場で働いていらっしゃるとは。素晴らしいですね。ではお願いします。私も案内しますので」
それから私は珠世さんに付いて行って、診療室や薬品庫のある戸棚で持ち出し品をまとめ始めた。作業がある程度ひと段落すると、不意に珠世さんは気になったのか私に声を掛けてくる。
「しのぶさんは・・・どうして薬師の娘から鬼殺隊の剣士になろうと思ったのですか?」
「え?」
「正直貴方はその歳で充分に医者としての素養を身に着けられています。わざわざ刀など握らずとも、貴方なら他にいくつもの選択肢があったのではないですか?」
「そうかも・・・しれませんね」
私は少々気まずくなる。やっぱり私の経歴だと大人の人達って疑問に思うわよね。悲鳴嶼さんにも鱗滝さんにも一度は聞かれたし。
「やはりしのぶさんは・・・炭治郎さんのことがほうっておけないから剣士を続けているのですか?」
「えっ!?」
突如として珠世さんからそんな突拍子もないことを言われる。私は頬が染め上がったことを自覚した。
「な、何を・・・///」
「いえ。貴方が炭治郎さんに向ける眼差しは、私がかつて最愛の夫に向けていたものと同じに見えたので。大切に想っていることは見てれば自然と分かりましたよ」
「・・・・・・」
私は思わず作業の手が止まる。正直この時の私は混乱していた。
私、炭治郎のことどう思ってるんだろう。珠世さんが言う様に、炭治郎のことをそういう目で見ているんだろうか。正直、気持ちの整理もまだついてない。
「・・・実は私・・・自分でもよくわかっていないんです・・・炭治郎に対しどんな感情を抱いているのかさえ・・・」
気が付けば私は珠世さんに相談をしていた。珠世さんも一度手を止め、真剣な面立ちで私の独白を聞こうとしている。
「もともと、私たちは同門の弟子同士で、私の方が先輩で、ずっと鬼殺の剣士になれなくて行き詰ってたんです。私、生まれつき身体が小さくて、腕の筋肉もつきにくくて、鬼の頸を斬る素養が一切ありませんでした。その素養を確認する為の試験も、8年も費やしたのに結局達成できませんでした」
珠世さんは一言も発することなく私の話を聞いている。
「もともとは両親を鬼に殺され、一人で鬼殺隊に入ろうとする妹の後ろを追いかけるつもりで、一番上の姉と共に鬼殺隊に入ろうと決意したのが始まりでした。最初こそは妹よりも強くなって、姉も妹も私の手で鬼から守るつもりでいたんです。でも妹には天賦の才があって、姉さんも私よりずっと才能があって、私はいくら頑張っても鬼殺隊に入ることすらできずに長年燻っていました。でも・・・」
私はそこで自然と笑みを溢していた。胸の奥が温かい。あの日のことを思い出して私は打ち震えているのだろうか。
「鬼殺の剣士の道を遂に諦めるしかないって思ったその瞬間、炭治郎が言ってくれたんです。『俺がしのぶの傍で鬼の頸を刎ねる刃になる。しのぶが居ればどんな鬼でも倒せるってことを証明してみせる』って。彼はそう言ってくれて・・・」
ああ。そうか。とっくの昔に私の気持ちは決まってたんだ。あの時から私は炭治郎のことを・・・
「私は・・・彼が私の居る意味を見出してくれたことが嬉しかった! 私の今までの努力は無駄じゃなくて意味があったんだって・・・それをこれから一緒になって証明するって言ってくれたことが堪らなく嬉しかったんです!
私の姉も、妹も、師匠も、私自身でさえも、私が私を認められるようになる方法を見つけることができないでいた。思いつきもしなかった! でも彼は、炭治郎は見つけてくれたんです。それを私の目の前にはっきりとした形で示してくれたんです! それが本当に嬉しくて・・・きっと私はその時から炭治郎のことが・・・!!」
「しのぶさん・・・」
あれ・・・おかしいな・・・頬に熱いものが伝わって床に落ちていく。なんだろう。なんでだろう。どうして私泣いてるんだろう。悲しい訳でもないのに。そっか。これは嬉し涙だ。
「はは・・・あはは・・・そっか・・・私とっくの昔に炭治郎のことが好きだったんだ・・・なんで気づかなかったんだろう・・・」
「しのぶさん。貴方の気持ちは尊いものだと思います。どうかそれを大切になさってください。きっといつか・・・彼にも伝わると思いますから」
気が付けば珠世さんは私を優しく抱きしめてくれていた。温かい。まるでお母さんに抱きしめて貰ってるみたい。
「ふふっ。どうですかね? 彼、図抜けて鈍感ですから」
私は思わず笑い、涙を吹いた。そして珠世さんの目を見る。
「でもおかげで私、今後何をすべきかはっきりしました。だからこそ珠世さんにお願いしたいことがあるんです」
「私に? 一体何を・・・」
私は珠世さんから離れ、丁寧にお辞儀した。
「私の・・・薬学の師になってくれませんか? お願いします!」
「私が・・・しのぶさんの師に?」
「はい。実は私、鬼の頸が未だに斬れないので自作した藤の花の抽出物を日輪刀に塗って突き技だけで戦っているんです。なので炭治郎は私が鬼殺隊士をやっていけるよう一緒に任務に就いてくれてるのが現状です。でもこれから先、炭治郎でも頸を刎ねられないような上弦鬼と戦うことになったら、きっと炭治郎に無理を強いることになってしまう。場合によっては私を庇って命を落とすこともあるかもしれない。それだけは絶対に嫌なんです!」
「わ、私は・・・しのぶさんに何を教えればいいのですか?」
「はい! 私に鬼を殺す毒を開発する術を教えてはくれないでしょうか!?」
珠世さんは驚いている。私は話を続ける。
「藤の花の抽出物のように、ただ弱体化させるだけの代物ではなく、それ単体で鬼を殺せる毒を作りたいんです。毒と薬は表裏一体。薬学を極めるということは、即ち毒を極めることでもある。
珠世さんは鬼舞辻無惨を滅ぼすために薬の研究をしているんですよね? それはここにある様々な研究資料から推察できました! なら鬼を殺す毒や薬の知識も相当研鑽を積まれているはずです!
私はそんな珠世さんからその技術を教わりたい! そうすればきっとこれから先も、炭治郎の傍で戦い続けることができると思うんです! だからどうか・・・私の師になってくれませんか!? お願いしますっ!!」
私は直角90度のお辞儀をする。そしてそのまま珠世さんの返事を待った。やがて珠世さんは優しい声で私に応えた。
「いいでしょう。私にできることなら喜んで力になります。それに・・・最愛の人を傍で支えたいという願い・・・私には甚く共感するものがあります。寧ろ放っておくことの方が難しい」
「っ!!」
「では暫くの間、文通で指南します。私も新しい隠れ家で基盤を築くのに少々時間が要る。ややお待たせする期間があるかと思いますが宜しいですか?」
「は、はいっ!! よろしくお願いします!!」
そうして私たちは、再び持ち出す薬品や医療器材、研究資料を一式まとめ出した。やがてそう時を置かずに荷造りを終え、私は炭治郎と合流する。
「随分と掛かったみたいだけど、そっちは無事終わったか? しのぶ」
「ええ。今しがた完了したわ。そっちも既に済んでいるようね」
「ああ。こっちは禰豆子と二人掛かりだったからな。愈史郎さんも言葉はキツイけど指示は的確だったから、俺達は言われた通りにするだけで楽だったよ」
「ふん。流石に日頃よく鍛えてるだけあって動きは速いし重量物もモノともしてなかったな。気は乗らないが褒めてやる」
「はい! ありがとうございます!」
「むー! むー!」
そこで私達は外の様子を確認した。まだ日の出まで時間がありそうだ。これなら今夜中に珠世さん達も移動はできそうだった。
「珠世さん! 愈史郎さん! では俺達はこれで失礼します! 必ず十二鬼月の血を多く集めて送りますので、薬の開発よろしくお願いします! どうかお元気で!!」
「ええ。こちらも貴方達の武運長久を祈っています」
そうして私達は一部壁に穴の開いた洋館を立ち去ろうとした。すると・・・
「炭治郎」
突如、愈史郎から声が掛かる。炭治郎は振り返る。
「認めてやる。お前の妹としのぶは美人だよ。珠世様に次いでな」
それを聞いて炭治郎は笑った。続いて珠世さんが付け加えるように私に視線を送ってにこやかに言葉を投げかけてくる。
「しのぶ。応援してますからね? 剣士としても、女の子としても」
「っ!? ちょっ!? 珠世さんっ!!??」
「? どうしたしのぶ? 急にそんなに慌てて」
「珠世様? 一体何をおっしゃっているのですか?」
「ふふふっ! 愈史郎。野暮なことは聞くものじゃありませんよ? 彼女にも色々と成就させたい願いがあるのです」
「そうですか。それは失礼しました!」
私は大慌てで炭治郎の腕を掴んで引っ張り、その場を急いで立ち去ろうとする。
「わっ! しのぶ本当にどうしたんだ? それになんか手とか顔とか色々赤いぞ? 大丈夫か? 風邪でも引いたのか?」
「あー! そうねっ! 風邪かもしれないから私最寄りの藤の花の家紋の家で寝泊まりしたいかな~? アハハッ!」
「そうか! じゃあ一拍しよう!」
「カァアア!!! 南南東!! 次ノ場所ハァ南南東!!!」
「五月蠅いわよ鴉っ!! 私と炭治郎の足なら秒で到着するんだから半日くらい休ませなさいよ!! ほら炭治郎さっさと行くわよっ!!」
「わっ! しのぶこけるって! ・・・ん? しのぶ、何だかいつもよりだいぶ力強くなってないか? 気のせいかな・・・」
炭治郎が鈍感で助かった。まさかあの珠世さんが最後にあんなこと言い出すなんて。次会いに来る時は炭治郎には待機しててもらった方がいいかも。私は心底思うのだった。
続く
書いてて凄いオキシトシン出た気がする。やはり恋愛成就は素晴らしい(まだ片想いだけど)。
因みに筆者の書くSSの恋するヒロインはみんな膂力にバフが入ります。きっとみんな恋の呼吸を無意識に使ってるんでしょうね。以前書いてた鬼滅SSの病弱ヒロインも度々屈強な狛犬に「力強っ!?」させてヒイヒイ言わせてました。この情報は無料です。気になったらそっちも是非。
それと炭しのSSが好きな人はお気に入り登録と高評価頂けると幸いです。今後この路線を走り続けるか悩み中なので参考にしたいです。皆様の反応にかなり影響を受ける筆者。未熟者で申し訳ない。
読みたい路線はどっち?
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一部の層(継国兄弟ファン)にぶっ刺さる話
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万人受けしそう(マイルド)な話