「しのぶ。善逸。昨日までごめん。俺夜通し考えてみたんだ。二人に対してのここ数日の言動を。俺は二人に対してずっと無神経なことばかり言ってたと思う。
しのぶには気を許し過ぎて気遣いに欠ける節があったと思うし、善逸に対しては話が良くわかっていないまま勝手に解釈して自分勝手に話してた気がする。
だから今後しのぶに対しては親しき中にも礼儀ありのつもりで接するし、善逸の話は良く聞いてちゃんと内容を理解するまで聞きに徹するよ。
勿論、他にも何か嫌だと思うことがあったら遠慮無く言ってくれ。時間はかかるかもしれないけど、ちゃんと改善する努力をするよ。だからこれからもよろしく頼む。駄目かな?」
「「・・・・・・」」
結局私は泣きつかれて、いつの間にか元居た部屋の布団の中で一人眠っていた。恐らく善逸と伊之助が眠りに落ちた私を運んでくれたのだろう。正直みっともないところを見られて恥ずかしく思う。
そして翌朝、私達が起床し、部屋の布団を片付けたぐらいでお屋敷のお婆さんが朝食を運んで来てくれた。私は大部屋に移動し善逸や伊之助と一緒に食事を摂る。丁度食べ終わって隊服に着替えたくらいで屋敷の外から炭治郎も戻った。そして夜通し自分の頭で考えたことを私たちに告げて、そのまま私と善逸に頭を下げた。善逸はそれを見て呆れるように溜息をつく。
「いや、えっと、そうじゃなくて、う~ん。やっぱり勘違いしてるな炭治郎は。別に俺らそんな風に思ってないよ。そもそもの話、しのぶちゃんが言った言葉の意図ってそういうことじゃないし」
「えっ!? そうなのか!? ごめんしのぶ・・・俺一晩考えたけどわからなかった。酷い奴でごめん」
「もう・・・炭治郎は・・・」
私は一歩前に進み出て炭治郎の手を握る。
「そもそも炭治郎は悪くないわよ。悪いのは素直になれない私の方だから」
「え? それってどういう意味だ?」
「えっと・・・それは・・・ごめんなさい。まだ言えない。ただ炭治郎は何も悪くなくて、これは私の問題なの。でもいつか必ず炭治郎には伝えるから、それまでの間待っててくれる?」
「え? う~ん。しのぶが何を言わんとしてるか俺にはわからないけど、とりあえず俺はこれまで通りでいいってことか?」
「うん。炭治郎はそのままでいいの。私の方こそあれこれ五月蠅く言ってごめんなさい。もし炭治郎が良いのなら、これから先も一緒に居てくれる?」
「いや、良いも何も、俺はしのぶと二人一組の隊士として鬼殺隊に入った訳だから、これからもしのぶとは同じ任務にずっと同行するつもりだったぞ?」
「そっか。ごめんね変なこと聞いて。じゃあこれからも引き続きよろしく頼むわね」
「? ああ、よろしく頼む」
結局炭治郎には私の本当の気持ちは言えなかった。どうにも決心できない。炭治郎とは常に傍に居たいって思うくらいには私は炭治郎のことが好きなのに。
でもだからこそ、今の関係を壊したくないって思ってしまう。もしかしたら、炭治郎は私に思いの丈を打ち明けられても戸惑うかもしれない。それでギクシャクして任務に支障が出てもお互いの為にならない。
なら今のままの関係を維持できた方がずっと良い。でもいつか、それでもいつか、私の気持ちを炭治郎に受け入れて欲しいな。
「良し。じゃあ俺朝食貰うよ。夜通し歩いてだいぶ空腹になったからさ。あと申し訳ないけど食べたら昼時まで仮眠を取らせてもらえないか? 流石に眠気もあるからさ」
「うん。分かった。大丈夫よ炭治郎。日中の善逸と伊之助の面倒は私がちゃんと見るから」
「え? 伊之助だけじゃなくて俺も?」
「当り前じゃない。だって善逸まだ常中習得してないでしょ? 今後のこと考えたら覚えてた方が絶対良いわよ」
「うげぇ~、炭治郎が言ってたずっと全集中の呼吸続けるあれだよね? 俺もできれば炭治郎みたいに休んでたいな~」
「駄目だぞ善逸。鍛えられるうちに鍛えておかないと。いつ十二鬼月と戦うかわからないんだ。生き残るためにも最善を尽くさないと」
「いやだから!! 鬼の最強集団と戦いたくないって!! 俺絶対すぐ死ぬし!! いざって時は逃げるから!!」
「善逸。もし禰豆子ちゃんが鬼に喰い殺されそうになった時貴方はどうするの?」
「うっ!? それは・・・」
私はさりげなく善逸に釘を刺す。今朝善逸に昨晩のことを謝りに言った時、朝っぱらから善逸は禰豆子ちゃんに言い寄るような行動を取っていた。禰豆子ちゃんは困ってたし何のことかわかっていなかったけど。
だから善逸は恐らく禰豆子ちゃんのことを大切に想っているはず。ただ身近な女の子だからってだけかもしれないけど、それでもそれが彼の強くなる動機になるならいくらでも利用させてもらう。
「はぁ~・・・きついの嫌だなぁ。でも禰豆子ちゃんが危ない時逃げるのもなぁ~。わかったよ、俺やるよ。ほんとは嫌だけど。その代わりしのぶちゃんなるべく優しく教えてね?」
「ええ。ちゃんとみっちり鍛えてあげる」
「いやだから!! 優しく教えてって言ったよね!? 俺キツイ鍛錬とか無理なの!! 育手のじいちゃんみたいに厳しい鍛錬とか真っ平ごめんだから!!!」
「もう・・・しょうがないわね。じゃあ善逸が逃げ出さない程度の練度で教えるから。それならいいでしょ?」
「う~ん・・・まあそれなら」
「良し! じゃあ頼むぞしのぶ! 俺は早速朝食を貰うから! また昼頃になったら俺も起きて鍛錬に参加するからそのつもりで!」
「ええ。炭治郎。じゃあ私たちは先に外出てるわね」
そうして炭治郎は屋敷のお婆さんを探しに行って、私と善逸は外の庭へと移動する。そこでは既に伊之助が準備運動を行っていた。
「猪突猛進!! 猪突猛進!!」
「伊之助はやる気満々みたいね」
「ねえ、しのぶちゃん」
すると善逸が私の声を掛けてくる。私は善逸に振り返る。
「本当によかったのか? だって泣くほど炭治郎のことが好きなんだろ? 俺が言うのもなんだけど、俺達鬼殺隊はいつ死ぬかわからない立場なんだ。気恥ずかしいのは分かるけど、早いうちに炭治郎には想いを伝えた方が良いんじゃないか?」
「ごめんなさい。善逸」
私は善逸の言葉を遮り顔を背ける。善逸から戸惑う気配がする。私は正直に答える。
「私・・・本当は臆病なの・・・今でも鬼の頸が切れないから炭治郎に居て貰えないと戦うことすらできなくて・・・それにもし素直に炭治郎に想いを伝えてそれが理由で任務に支障が出たり私から距離を取る様になったらと思うと・・・どうしても・・・」
「う~ん・・・しのぶちゃんが不安に思うのも分かるけど・・・」
私が表情を暗くしていると善逸が頭を掻いて言葉を付け足す。
「炭治郎はそんなことでしのぶちゃんから離れたりしないと思うぜ。だってあいつ、しのぶちゃんの為に最終選別受けて同時に合格して任務まで一緒にこなしてるような奴だし。普通、何とも思ってない相手にそこまでしないんじゃないかな? やっぱり炭治郎にとってしのぶちゃんは大事な存在なんだよ」
「・・・・・・」
私は善逸の言葉に耳を傾けそれを黙って聞く。善逸は続ける。
「まあ俺はすぐ気になる女の子とか居たら好きになって求婚とかするような奴だから、正直しのぶちゃんの尻込みする気持ちを分かってあげられないかもしれないけど、でもやっぱり好きな人が居るのならできるだけ早く伝えるべきじゃない? だって自分の気持ちを隠してても相手には伝わらない訳だし。もし任務で炭治郎が先に死ぬことになったらしのぶちゃんは一生後悔すると思う」
心臓を鷲掴みにされた気分だ。もし任務で炭治郎が先に死んだら。想像するだけで吐き気がする。きっと私は堪えられない。でも最悪のことを常に想定しなければならないのは鬼殺の剣士として当然のことだ。
余りの正論に私は思わず苦笑してしまう。
「善逸の癖に真っ当なこと言うじゃない? 意外なんだけど」
「酷くない!!?? 俺そんな風に思われてんの!!??」
「ふふっ。でも善逸の言う通りね」
私は顔を顔を上げる。
「決めた。次の任務、生きて帰れたら私、炭治郎にこの気持ちを伝えるわ。私、やっぱり炭治郎のことが好きで堪らないもの」
私は善逸に振り返る。ただ善逸は言いにくそうに口を開いた。
「しのぶちゃん。その発言不吉じゃない? 死ぬ可能性ある場所に行く手前でそういう事言うと死にやすくなるって迷信で俺聞いたことあるんだけど・・・」
「え?」
私は善逸の言ってる言葉の意味がよくわからなかった。善逸はそのあと丁寧に言葉の真意を説明してくれる。
へぇ、そんな迷信あったんだ。でもただの噂話なら特段気にする必要もないわよね。正直十二鬼月の上弦の鬼と戦ったりしない限り、私と炭治郎なら早々後れを取ることもないだろうし。
続く
???「俺、この戦争が終わったら、結婚するんだ」
はい。典型的な死亡フラグですね。しのぶのこの発言のせいで、本作の那田蜘蛛山編では隠しボスが出現予定です。誰が出るかはお楽しみに。
読みたい路線はどっち?
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一部の層(継国兄弟ファン)にぶっ刺さる話
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万人受けしそう(マイルド)な話