胡蝶家の縁壱とお労しい姉上   作:科学大好き人間

30 / 35
しのぶ視点です。サブタイトルが前回と繋がってます。着々としのぶがフラグ立てまくってます。


30話 炭治郎にこの想いを伝える

「お! やってるな皆! 鍛錬は順調か? しのぶ」

 

「おかえり、炭治郎。ちゃんと眠れた?」

 

「ああ! もう眠気もないしな! 二人の面倒見てくれてありがとな! しのぶ」

 

「うん。これくらい平気よ」

 

「それで・・・これって今どういう状況だ?」

 

 

お昼過ぎになり、炭治郎が仮眠を済ませて庭先に戻って来た。私は木刀を握ったまま振り返る。私の足元には二人の生ける屍が転がっていた。

 

 

「うん。常中の方法教えたんだけど、二人が無理って言うから通常の打ち込み稽古に切り替えたの。今休憩中」

 

「これって休憩か? 二人とも身じろぎ一つしてないんだが・・・」

 

 

すると炭治郎の声に気づいたのか、善逸が飛び上がり、すぐさま炭治郎の背に回り込む。

 

 

「助けてぇぇえ!! 炭治郎~~~!! しのぶちゃん鬼だよ!! 鬼子母神だよ!!! 俺と伊之助二人掛かりで何度挑み掛かっても叩きのめされるばかりだよ!!!」

 

「そりゃあな。だってしのぶは俺でも二十合打ち合うだけで精一杯だし。多分木刀での打ち合いなら柱並みに強いと思うぞ?」

 

「柱っ!!!! 嘘でしょっ!? 今柱って言った!!??  しのぶちゃん俺とおない歳なのに!!?? 何それ下手すると俺を育てたじいちゃんより強いじゃん!! もう無理!! 俺逃げる~~~!!」

 

「善逸? 私の足から逃げられると思ってるの? 貴方には木刀じゃなくて注射器の方がいいかしら?」

 

「イィイヤアアアア!!!! 無理無理無理無理無理ぃいいい!!!!! 死ぬっ!! このままだと俺死ぬって!!! 炭治郎!! お前からしのぶちゃんに鍛錬減らすよう言ってくんない!? このままだと俺ら死体になっちゃうってぇええ!!!」

 

「駄目だぞ善逸。しのぶはお前たちに任務で死んで欲しくないから、敢えて心を鬼にして厳しい鍛錬を課してるんだぞ? しのぶに感謝しないと」

 

「いやそれ絶対違うよ!! あの子ニコニコしながら打ち込んでくるもん!! 絶対そんな殊勝なこと微塵も思ってないって!! お願いだよ炭治郎~~~!! しのぶちゃんの代わりにお前が鍛錬付き合ってくれよ~~~!!」

 

「う~ん・・・どうするしのぶ?」

 

「はあ、仕方ないわね。どの道お昼食べた後、私、昨日書き切れなかった悲鳴嶼さんと姉さんへの手紙書くつもりだったから丁度いいかもしれないわね。炭治郎頼める?」

 

「ああ! 任せてくれしのぶ! 俺が責任持って二人を鍛えるよ!」

 

「伊之助もそれでいいかしら?」

 

「ハイ・・・クチゴタエシマセン」

 

「良し」

 

「伊之助。お前もしのぶ相手に絶対服従じゃん。わかるぜ怖いよな? まさかこんな美人で可愛いしのぶちゃんが鬼より怖いだなんて予想付かないし・・・」

 

「善逸? プスッとイッとく?」

 

「いえ!! 何でも御座いません!! 全てはしのぶちゃんの仰せのままに!!!」

 

 

私が注射器をかざすと善逸は訓練された兵隊のように背を伸ばし元気よく返事をする。彼もだいぶ従順になった気がする。ただもう少し我慢強くなってくれればなぁ。やっぱり炭治郎が特別なのね。

 

 

「じゃあご飯! 土落として屋敷に上がるわよ。しっかり食べるのも鍛錬のうちだから」

 

「小食のしのぶがそれ言うの珍しいな」

 

「っ! もうっ! 茶化さないで! 私はただ、二人が午後の鍛錬もバテない様にするために敢えてそう言ってるだけなんだから! ほら炭治郎も一緒にお昼食べるわよ?」

 

「良し。じゃあ善逸も伊之助も行くぞ? 遠慮せず沢山食べていいからな?」

 

「無理・・・俺鍛錬のし過ぎで食ったら吐きそう・・・」

 

「ゴメン・・・オレハラヘッテナイ」

 

「二人とも? そんなこと言ってると私の自作の栄養剤飲ませるわよ? 滅茶苦茶苦い奴。それでも良いの?」

 

「飯だ飯飯!! 伊之助行くぞ!!」

 

「よっしゃぁああ!! 見てやがれ紋逸!! 俺がお前の分の飯も食いつくしてやる!!」

 

 

そうして二人は大慌てで屋敷に上がろうとする。あいつら・・・土落とせって言ったのに・・・

 

 

「ははっ! にぎやかでいいな! しのぶもそう思わないか?」

 

「そうね。まあ少し騒がしい気もするけど・・・」

 

 

任務前のこの穏やかな喧騒。隣には炭治郎が居る日々。彼が傍に居てくれる日常。私は思わず胸が温かくなる。こんな時間が、いつまでもいつまでも続けばいいのにと、この時の私は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし。悲鳴嶼さんには鬼舞辻無惨と接触した時の詳細な手紙書けたし、姉さんに送る諸々の近況の手紙も書けたわ。色々バタバタして遅くなっちゃったけど、とりあえずこれを鎹鴉の艶に・・・」

 

「カァアア!!」

 

 

私は文をしたため二通の手紙を送る。悲鳴嶼さんに手紙を送れば自動的にお館様への耳にも入るはず。珠世さんのことだけは流石に伏せたけど、これで何かしらの対策が打てるはずよ。

 

それと姉さんにはここ数件の任務での出来事を書いて、炭治郎と二人で順調に任務をこなせてる旨の手紙を綴ることができた。姉さんには凄く心配かけてるから、今後もなるべく頻繁に送らないと。

 

以前、最終選別が終わって日輪刀が届くまでの間、私は蝶屋敷に戻って姉さんと過ごしたけど、そう言えばあの時の姉さんとても嬉しそうにしてたわね。

 

やっぱり私が無事隊士になれたから、それで喜んでくれてたんだわ。その割にはやたら弟弟子の炭治郎のことばかり根掘り葉掘り聞かれたけど。あれって結局何だったのかしら?

 

多分、私と任務に同行する炭治郎がどれくらい腕が立つか知りたかったのね。姉さん心配性だもの。きっと私の身を案じて彼の実力とか諸々把握しておきたかったんだわ。

 

もし蝶屋敷に寄ることがあったら、炭治郎のこと紹介しないと。炭治郎を姉さんに会わせれば、きっと今まで以上に姉さんは安心してくれるはず。

 

ああ、また姉さんに会いたいなぁ。なんだか恋しくなってきたかも。次の任務終わったら、お暇貰って姉さんに会いに行こうかしら。

 

 

「まあ先のことばかり考えててもしょうがないわね。炭治郎達の鍛錬、今どんな様子かしら?」

 

 

そうして私は庭先に赴いた。そこでは木刀を持った炭治郎と、生ける屍と化した善逸と伊之助が転がっていた。

 

 

「あ、もう終わったのか? しのぶ。まだゆっくり休んでても良かったんだぞ?」

 

「大丈夫。手紙は送れたから。それよりこれは今どういう状況?」

 

 

すると地に臥す善逸が亡者のように顔を上げ、私に対し救いの手を求めて手を伸ばした。

 

 

「しのぶちゃん・・・炭治郎爆裂に教えるの下手過ぎるよぉ・・・常中のやり方また一から教えてよぉ・・・」

 

「ムキー!! 紋八郎言ってる意味わかんねぇ!!」

 

「ぜ、善逸!? 伊之助!? そんなに俺の教え方下手だったか? 懇切丁寧に教えたつもりなのに・・・」

 

「はあ・・・そう言えば炭治郎って人に物事を教えるのが爆裂に下手だったわね。私も忘れてたわ」

 

 

そうして私は二人の前に立つ。

 

 

「で? 結局やり方がわからなくて打ち込み稽古してたって感じ?」

 

「そうそう! 炭治郎ならまだしのぶちゃんよりは勝負になるかなって! でもこいつ謙遜する癖にとんでもなく強いんだけど!!! 俺騙されたよ!! なんかさりげなく自虐風自慢してくるしほんま腹立つ!!」

 

「惣一郎の奴!! 俺のこと叩きのめしておきながら自分は弱い弱いって五月蠅ぇんだよ!! 強いのか弱いのかはっきりしやがれっ!!!」

 

「炭治郎。なんでそんなこと言ってるの?」

 

「え? だって俺、しのぶよりはかなり弱いし」

 

「そんなことないと思うけど。木刀の手合わせならって話でしょ? 鬼に対しては炭治郎の方が頸切れる分強いわよ」

 

「でも・・・やっぱり俺しのぶに比べたら全然だよ。もっとしのぶを困らせない為に強くならないと!」

 

「・・・別の意味で度々困らせられてるけど・・・」

 

「え? なんか言ったかしのぶ」

 

「なんでもない! 兎に角! 二人には打ち込み稽古よりもまずは常中の習得の為の鍛錬を積まないと! 今のままいくら手合わせしても意味なんてないわ!」

 

「えぇええ!!?? じゃあなんでしのぶちゃん今朝俺ら相手に打ち込み稽古してたの!!?? だったらただの弱い者虐めじゃん!!!!」

 

「あれはアンタが『常中もう無理~!』とか言い出すからよ。伊之助も『肺ばっか使ってないで身体動かしてぇ!』とか言うし、それで・・・」

 

「あ~、そういうことか。じゃあしのぶは悪くないな」

 

「炭治郎っ!! お前しのぶちゃんの肩持ち過ぎだろ!!! あ~あ! 良いよなぁ! 日頃からそんなだからしのぶちゃんみたいな可愛い女の子の気引けてさ!! 俺なんて禰豆子ちゃんにお花上げたり容姿褒めたりしてるってのに関心すら持って貰えてないよ!! 不公平過ぎんでしょ!! あ~!! 羨ましい~~~!!」

 

「ん? 善逸。それって一体どういう意味だ? しのぶの気がなんだって?」

 

「善逸? 命が惜しかったらそこから先は慎重に言葉を選びなさい」

 

「ヒィ!? ごめんごめんごめん!! しのぶちゃぁあああん!! 今のは口が滑っただけなんです!! お願いだからそんな笑顔で怖い音させないでぇえええ!!!!」

 

 

善逸・・・こいつ・・・油断するとすぐこれだ。私の炭治郎への気持ち、さらっと暴露しようとするんじゃない。こんな形で炭治郎に伝わるなんて嫌だ。ちゃんと自分の口から伝えたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは次の任務。次の任務を生きて帰りさえしたら、私は炭治郎にこの想いを伝える。だから何も起こらないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 




今話だけでしのぶはいくつの死亡フラグを建設したんでしょうね。このままだと上弦最強の男、即ち筆者の推し鬼が襲来するんじゃ・・・まさかね。

読みたい路線はどっち?

  • 一部の層(継国兄弟ファン)にぶっ刺さる話
  • 万人受けしそう(マイルド)な話
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。