「ではここに居る11名を二班に分ける。村田には片方の班を任せる。頼んだぞ」
「はい。任されました。それじゃあ君達は俺について来てくれ! 作戦の概要を伝える!」
私、炭治郎、善逸、伊之助は、村田さんの指示に従い片班にまとまる。良かった。四人とも一緒の班だ。でもこんな偶然ある? 私は気になり村田さんに質問する。
「班の人員編成に何か理由ってあったりしますか?」
「えっと、しのぶはこの編成に何か不満があるのかな?」
「いえ、不満はありません。寧ろ望み通り過ぎて逆に疑問なんです。何か選定基準のようなものがあったんですか?」
すると村田さんは頭を掻いて困ったように笑う。
「アハハ・・・まあ俺の我儘もあるかな? できれば冨岡と同門の弟子達は俺の方で面倒見たかったんだ。この任務で殉職させたらあいつに会わせる顔がないからな」
「成る程・・・」
冨岡さんと同期である村田さんは、心情的に私達を自分の手の届く範囲に置いて守りたかったようだ。やっぱりこの人は頼れる人だ。腕っぷしは平隊士相応だけど、人格的には手放しに尊敬できる。
「弱味噌のくせに面倒見良いじゃねぇか! 良し! だったら俺が親分としてお前を鬼から守ってやるぜっ!!」
「え? 親分???」
「あ、村田さん。気にしないで下さい。この子山育ちで一般常識通用しないんです。いざとなったら私が手綱引くんで任せてください。伊之助君、ちゃんと私の言う事聞ける?」
「ハイ・・・キケマス」
私が注射器をそれとなくチラつかせると、伊之助は大人しくなる。良し。この感じなら問題なさそう。
「じゃあ、しのぶの疑問も払拭できたようだから作戦の流れを伝えるね。まず俺達は山を登る。どこに鬼が潜んでいるかわからないが、まず高台になり得る場所に拠点を作って、索敵陣形を整える。望遠鏡とか俺の方で携帯してるから、それで鬼の居場所を探すつもりだ。鬼の位置が特定でき次第、本隊の尾崎さんに鎹鴉で情報を伝達し、可能な限り奇襲をかけてもらう。
即興案の即席作戦で不安はあると思うけど、一旦これで犠牲者を最低限まで減らした上で任務に臨もうと思う。ここまでで何か質問とかあったりするかな?」
私は無言で手を挙げる。村田さんは質問を促す。
「十二鬼月が居た場合どうしますか?」
「えっと、その場合は絶対に手出ししないこと。まず癸が主な構成の今回の班編成じゃ討伐は非現実的だ。その場合、速やかに鎹鴉を使ってお館様に伝達。手の空いてる柱を派遣してもらい俺達は待機する予定だ」
「なんだよ!! 十二鬼月とは戦わねぇのかよ!! そんなんで鬼狩れると思ってんのかこの弱味噌がっ!!」
「伊之助君? 静かに出来る?」
「ハイ・・・デキマス」
「・・・他に質問は?」
村田さんが若干困惑しているが、何事もなかったかのように作戦会議が続く。すると今度は炭治郎が勢い良く挙手をする。
「どうした? 炭治郎」
「村田さん。多分俺としのぶ、善逸と伊之助なら二人一組でも十二鬼月の下弦位なら倒せます。もし存在が確認できたら奇襲は俺達が仕掛けてもいいですか?」
「なっ!? 何を馬鹿なことを言っているんだ!? 十二鬼月が如何に恐ろしい存在か、君は知らないのか!?」
「確かにまだ遭遇したことはないですが、俺としのぶなら負けないと思います。なのでその時は戦わせてくれませんか?」
「ど、どうしてそんなに戦いたがるんだ!? 俺はこの任務で、可能な限り犠牲者を少なくしたいと思っている! 特に君達二人は冨岡と所縁のある後輩だ。みすみす死なせるような真似はできない!」
すると炭治郎は私に目配せする。ああ、成程。炭治郎は珠世さんからの頼みで十二鬼月の血を集めたがっているのか。だから発見したら見逃したくないと。私はその真意に気づき、炭治郎の話に乗っかった。
「村田さん。報告できていませんでしたが、私と炭治郎は常中を修めています」
「え・・・常中ってあの!? 確か柱かその継子くらいしかできないって言う例のあれのことかい!?」
「はい。そしてここに居る善逸と伊之助も修行途中ですが、常中の鍛錬を積んでいます。二人とも常中の第一歩は達成済みです。私達四人なら、十二鬼月の下弦程度の鬼なら倒せるかと」
「お・・・驚いた・・・君達は一体どれ程の鍛錬を・・・」
村田さんが驚愕している。まあ普通はそうよね。常中なんて柱以外だとその継子か、それに準ずる階級甲のごく一部の人達しか使えないもの。でもこれだけの戦力を匂わせれば、村田さんも考えを改めてくれるはず。
「わ、わかった・・・正直頼もしいよ。でも、もしとても敵わないと俺が判断したら戦いを中断して即時退避すること。その場合は俺が
「はい。約束します」
私がすぐに了承するので村田さんは胸を撫で降ろしていた。少しは安心してくれただろうか。
「しかし、まさか君達がそんなに強い隊士だったなんて夢にも思わなかったよ。これなら俺達の班が鬼討伐の実行部隊になった方が良いかな? ちょっと待って。尾崎さんに確認してくる」
そして村田さんは本任務の責任者である尾崎さんの下に駆け寄っていく。私はその様子を見ていた。
しかしあの尾崎さんっていう人、女性隊士なのに階級上から二番目の乙なんだ。正直凄いと思う。村田さんよりは後輩だろうから入隊年数もそんなに経ってないはずなのに。
もしこの任務でお互い生きて帰れたら情報交換してみようかしら。もしかしたら私でも鬼の頸を斬る方法の足掛かりになるかもしれないし。
「ごめん。そもそもの話、癸の隊士にそんな危険な役目は任せられないって。今から君らの実力を確かめる暇もないから却下された。とりあえず不満はあると思うけど当初の作戦通り行くよ?」
「はぁああ!!?? なんじゃそりゃぁあ!!! だったら俺が今すぐあいつを叩きのめして!! 俺の方が強いってことを思い知らせてやるわコラッ!! そこで見てろションベン漏らしっ!!!」
「伊之助君?」
「ハイ・・・ゴメンナサイ・・・ソンナコトシマセン」
良し。教育は行き届いてる。問題ないわね。
「でも村田さん! それでも俺は・・・!!」
「炭治郎。それ以上は止めなさい。機会があれば自ずと戦うことにはなるわ。今は焦らないで」
「しのぶ・・・わかったよ・・・俺も村田さんの指示に従う」
「良し。じゃあ入山するよ! 皆ついて来て!」
そして私達は村田さんの指揮の下、那田蜘蛛山へと足を踏み入れた。
「来たね。ぞろぞろと。うっとうしい鬼狩り共が。僕たち家族の静かな暮らしは誰にも邪魔させない。一人残らずバラバラに切り刻んでやる」
山の中腹の大木に、橋渡しになるように自身の生成した蜘蛛の糸を掛け、その上で一人立つ少年のような鬼が居た。
「下弦の伍・・・累・・・降りてこい・・・」
「っ!!?? 貴方様は・・・!!!!」
そしてその大木の根本にもう一人の鬼が立ち尽くしていた。顔を上げて白髪の少年鬼を見上げている。少年鬼は身体中の細胞から産毛に至るまで全身恐怖に振るわせて、大急ぎでその男の足元へと降り、すぐさま頭を垂れて平伏する。
「あの方が・・・お前に命じたこと・・・忘れてはいまいな・・・」
「はい!! 勿論です!!」
顎から汗が伝い、そのまま地に落ちる。下弦の伍と呼ばれた鬼、累は頭を上げることもせず、即答する。
念を押したその男は、六尺を優に超える長身の鬼だった。しかしその立ち姿は人と然程変わらない。腰に一本の刀を下げ、武家の侍のような格好をしていた。だが、そのような姿とは裏腹に、明らかに異形の鬼と分かる六つ目が、闇の中で淡く光を放っていた。
「其方の役目は・・・暫しの間・・・鬼殺隊の目をこの山に釘付けにすることだ・・・そう時を置かずして・・・柱の鬼狩り達も駆け付けるだろう」
「・・・はい・・・心得ています・・・」
すると六つ目の侍鬼は、拳を握ると下弦の伍である類の前に膝を着き、肩に手を乗せる。
「両の掌を・・・私の前に差し出すのだ・・・一滴たりとも溢す事・・・罷りならぬ」
そして累は言われた通り掌を下からすくい上げるように差し出す。その上に赤黒い液体が零れ落ちていく。
「私の中の・・・あの方の血だ・・・これを飲み・・・順応するのだ・・・さすれば貴様は・・・下弦以上の力を・・・今宵手にするだろう」
やがて、掌で作った器一杯に血が溜まり切った。それを累は一気に飲み干し、その後堰を切ったように突如悶え始める。
「血に耐えられず・・・息絶えること・・・罷りならぬ・・・貴様は下弦で唯一・・・あの御方の御目通りに叶った男・・・同族に血を・・・分け与えることを許された・・・特別な鬼・・・」
「がっ・・・がはっ!!」
「なぜあの方が・・・貴様をそこまで特別視するのか・・・定かではないが・・・そこまでの寵愛を受けたのなら・・・全霊でご期待に沿うのだ・・・良いな」
「がっ! ゴホッ! は、はいっ!! 必ずやっ! ごっ! この山に踏み入る者っ!! がふっ! 全てっ!! 僕が皆殺しにしてやりますっ!!」
「そうか・・・励むが良い・・・今回ばかりは特別に・・・私も助力となろう・・・矢面に出るつもりは毛頭ないが・・・柱共の露払いは・・・任せておけ・・・」
そうしてその侍鬼はその場をあとにする。やがて途中で鬼殺隊士複数名と道の途中で遭遇する。
「なんだ? 随分普通な成りした鬼だな。こん位の鬼なら俺でもやれるぜ」
「・・・ほう・・・」
「俺は安全に出世したいんだよ。出世すりゃあ上から支給される金も多くなるからな。他の奴らは入山すらしてねぇが、俺は手早くコイツ倒して手柄独り占めにして下山するぜ。俺が先陣を切るっ!! お前らも続けっ!!!」
「「うぉおおお!!!」」
その瞬間、侍鬼は納刀したまま刀の柄に手を触れた。そして一瞬、闇夜を切り裂く紫の閃きが空を過ぎる。
結果、隊士達が細切れになるという事象だけが、その場に唯一残された。
「軟弱・・・千万・・・昨今の鬼狩りは・・・彼我の力量すら・・・推し量れぬ者ばかりなのか・・・」
やがて月明りに照らされ、侍鬼の姿が照らされる。その六つの目には『上弦』『壱』と記されていた。
「柱は・・・まだ来ぬのか・・・だが仮に来たところで・・・お前に次ぐ剣士など現れぬだろう・・・縁壱よ・・・」
続く
あちゃ~! しのぶがフラグばっか立てるから兄上来ちゃったよ~!
ということで、本章はお労しい姉上(=しのぶ)VS お労しい兄上(=黒死牟)となります。お楽しみに。
因みに最後の兄上の台詞も完全にフラグです。兄上は一体誰と遭遇することになるのでしょうか。もう答え言ってるも同然ですが乞うご期待。
読みたい路線はどっち?
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一部の層(継国兄弟ファン)にぶっ刺さる話
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万人受けしそう(マイルド)な話