初期の感想欄でも似た事考えてる人居たので書いてみました。楽しんでもらえたら書き手冥利に尽きます。
「ふむ・・・お前達・・・柱ではないのか?」
「柱な訳ないでしょ・・・嫌味のつもりかしら・・・」
「そう・・・なのか・・・」
蜘蛛の鬼二体を無事討伐し、炭治郎達と合流しようとした矢先、いつの間にか私たちの傍に想像だにしない鬼が立っていた。
上弦の壱。鬼舞辻無惨の配下、十二鬼月の中でも最強の鬼。天地がひっくり返ったって私たちが勝てる相手じゃない。死亡が確定した事実に眩暈がし、私は自暴自棄になっていた。
そんな私の横で、震える善逸と、必死に歯を食いしばり刀を構える村田さん。そんな私達を品定めしているのか、上弦の壱はゆっくりと観察していた。
「黄色い頭と・・・そこの女・・・お前達二人は・・・既に常中を身に着けているな・・・特に女の方は・・・既に五年以上は常中を・・・積み重ねているはず・・・ふむ・・・いい練度だ」
「どうも。それで? だとしてもアンタに比べたら私達なんてコバエみたいなものでしょ? グダグダ言ってないでさっさと殺したら?」
「ちょっ!? しのぶちゃん何言ってるの!!??」
「そうだぞしのぶ!! 諦めるな!! せめて俺が
「逃げられる訳ありませんよ村田さん。少しでも長生きしたいなら、コイツの話に付き合った方がよっぽど長く生きられます。まあ・・・それでも今夜中には死ぬでしょうけど」
私は一目見てわかった。
もういい。私はここで死ぬ。確実に。やっぱり善逸の言う通りだった。私達鬼殺隊はいつ死ぬかもわからない立場だ。尻込みして好きな人に想いを伝えずまごついている暇なんてなかったんだ。
ああ・・・炭治郎・・・せめて・・・せめてあと一目だけでも会いたかった・・・私・・・貴方に最期会うこともできずに死ぬのね・・・そう思ったら涙が出て来た。
「どうして・・・泣くのだ・・・死ぬのが・・・そんなに恐ろしいか」
「ふん。アンタにはわかんないでしょうね。鬼のアンタに私の気持ちなんて」
「ほう・・・なぜだ?」
「なぜって・・・」
私はやぶれかぶれになる。今まで貯め込んできた気持ちが止めどもなく溢れてしまう。
「私が今まで抱えて来た気持ちと無念を・・・アンタなんかに理解できる訳ないわ! 私は最初は家の跡取りとして期待されていた!! 最愛の姉だって私が居れば家は安泰って言っていた! でもある日、家に鬼が出て、そんな私の人生は狂わされた! でもそれは・・・何も鬼に家族を殺されたからとかそんな単純な話じゃない!!
私には姉さんの他にもう一人の姉妹が居た。妹だ。妹は生まれた時から口も利けず一人じゃ何もできなくて可哀そうな子だった。だから私はずっと一生懸命面倒を見てた! でもあの夜! 私と姉さんを救ったのはその妹だった! あの子は生まれつき凄い力を持っていた! 私が家の跡を継ぐのに必要な力なんて、その子の前じゃ吹いて飛ぶような無価値なものだった!
その日から私の人生はずっと辛いものだった! 可哀そうだと哀れんでいた妹は! 私よりもずっと秀でた特別な子だった! こと鬼殺に関して言えば猶更!! 大好きな姉の命を!! いつも鬼から守って役に立っていたのは!! 私じゃくて妹の方だった!!
いつも!! いつも妹ばかりが!! 私が一番になりたかったのに!! 姉さんにとっての一番に!! でも私の頑張りなんて!! 特別な才を持って生まれた妹に比べれば亀の如き歩みに他ならなかった!!
わかってる!! 私が情けない奴だって!! どうしようもない奴だって!! 妹のことだって本当は大切に想ってた!! ずっとずっと!! 子供の時からずっと!! でも悔しかった!! 羨ましくて仕方がなかった!! 妬ましくて何度も胃の腑を妬いた!! 嫉妬で全身が灼かれる嫌な音がしてた!! もう私なんて何の為に生まれて来たかさえもわかんなくなっちゃった!!
そんな私の気持ち!! 鬼のアンタなんかに分かる訳ないわっ!!!!!」
「・・・・・・・・・・・・」
私の呼吸が激しく乱れる。何言ってるの。私。カナヲを大事に想ってるはずなのに。カナヲを支えるつもりで鬼殺隊に入ったのに。今の私は思考がグチャグチャだ。
そうか。炭治郎に会えないまま死ぬってわかって、以前の自分が感じてたドス黒い感情のことを一時的に思い出してしまったからだ。
でもかつての不満を全部吐き出してすっきりした。もう違う。やっぱり私はカナヲを支えたい。姉さんから託された想いを繋いでいきたい。それが紛れもなく今の私の本音。
ふと振り返ってみると馬鹿みたい。私、なんでカナヲにそんな風に悔しがってんの? カナヲが特別だから何? カナヲだって傷つくし、辛くて折れてしまいそうになることもある。普通の女の子なのに。
それを姉の私が支えてやらなくてどうするの? あったま来た。過去の自分に。過去に戻れるなら自分で自分をぶん殴ってやりたい。やっぱりここで死ぬなんてまっぴらだ。
是が非でも生き残って、今よりも強くなって、いつかカナヲを支える刃になる!! 炭治郎が私を支えてくれたように!!
それに・・・やっぱり私!!! まだ炭治郎と一緒に居たいっ!!! 私の炭治郎に対する想いを絶対に伝えたい!!! 上弦の壱がなんだ。手足を切られようが
それが今の私!!! まずは目の前のコイツに!! 藤の花の抽出物がたっぷり塗ってあるこの日輪刀を頸の根元にぶっ刺してやる!!! そして全力で逃げるっ!!! 私の足なら万に一つ逃げ切れる可能性が・・・
「女・・・お前も・・・鬼にならないか?」
「・・・・・・は?」
突如として長考していた上弦の壱は、私に向けてそのような提案を投げかける。私は思わず間抜けな声が出た。
「お前の境遇には・・・いささか・・・同情すべきところがある・・・」
「・・・何・・・言ってるの? 鬼に同情なんかされても嬉しくないわよっ!!! 侮辱するなっ!!!!!」
「侮辱ではない・・・お前の吐露した人生・・・その苦渋の数々・・・何度も惨めな思いをしたことだろう・・・ある意味・・・死よりも苦痛だったことだろう」
「勝手に決めないで!! 私の人生を!! 惨めなものだなんて言わせない!!」
「そう・・・強がるな・・・今まで辛かったのだろう・・・私なら・・・お前の痛みに・・・理解を示すことはできる・・・私もかつて・・・人の頃は・・・似た境遇だった故・・・」
「は・・・は?・・・はぁあああ!!??」
私は呆れと憤りにそんな大声を上げる。
こいつ・・・こいつ! こいつっ!! 私の人生をお前みたいな鬼に堕ちた糞野郎なんかと一緒にしてくれるなっ!! 許せないっ! 絶対に許せないっ!!!!
「甚だしい侮辱・・・!!
「いや・・・同じだ・・・お前はかつての私の生き写しそのもの・・・性別と・・・家の出は・・・異なるやもしれぬが・・・」
「勝手に同類みたいに言い寄るなっ!!! 不快だと言っているっ!!! 私は何があろうとも鬼にはならないっ!!!!!」
「何故だ・・・鬼となれば・・・お前の望みは叶うと言うのに・・・」
「・・・は・・・?」
私は日輪刀の切っ先を奴の首元に向けたまま怒号を挙げていたが、そんな訳の分からない呟きに対し突如として硬直する。こいつ今何て言った?
「私の望みが・・・鬼になったらなんで叶うのよっ!! バッッッカじゃないのっ!!??」
「お前の望みは・・・その妹よりも・・・強くなることなのだろう?」
「はぁああ!!?? そんなこと言ってない!!!! 言ってないわよっ!!!! 何よアンタ!! 鬼の癖に難聴な訳っ!? 上弦にまで昇り詰めた癖に聴覚を司る有毛細胞死んでんじゃないのっ!? 能書きは良いから今すぐ再生させなさいよっ!!!!!」
「何を・・・言っている・・・お前は・・・先ほど・・・訴えたはずだ・・・妬ましくて何度も胃の腑を妬いたと・・・妹が憎く殺したいとは思わないのか?」
「思うわけないでしょっ!!?? 意味不明なんだけどっ!!! やっぱり鬼は皆頭可笑しいわよっ!!! 理解不能!理解不能!理解不能!理解不能!理解不能!!」
「なぜだ・・・お前は・・・私と同じはずだ・・・これ程に似た境遇の者など・・・400年間一度も見たことはない・・・お前は私が鬼にする・・・そして鍛える・・・常中を五年以上修めた者なら・・・あの御方も・・・手駒として認めてくれるはず・・・」
「寄るなっ!!! 汚らわしいっ!!! 鬼になど死んでもなるものか!!! その頸今すぐ叩き落してやるっ!!!!!」
「ちょっ!!?? しのぶちゃん本当にどうしたの!!?? 明らかに冷静じゃないよ!!!!」
「しのぶ!!! お前はいずれ柱に成れる!!! 生きろっ!!! 生き延びてくれ!!! 俺が命に代えても君を逃がす!!! 全速力で今すぐ逃げるんだっ!!!!!」
「愚かな・・・貴様ら二人では・・・私の足止めにもならぬ・・・先に斬り捨てておくべきか・・・」
「イィイヤァアアア!!! 死ぬ!!! 殺されるっ!!!! しのぶちゃぁあああん!! お願いだから早く逃げてぇえええええええ!!!!!」
私を羽交い絞めにし必死に引っ張ろうとする善逸。しかしこの時の私は日頃と比べものにならない膂力を発揮していた。怒りで全身の血が沸き立つようだ。心臓の鼓動も破裂するんじゃないかと思うくらい高鳴っている。
今なら斬れる。鬼の頸を。例えそれが上弦の頸であったとしても。だから善逸、お願いだから邪魔しないで。今の私は怒りで感情を制御できていないから。
やがて上弦の壱は私に対し、ゆっくりと歩み寄ってきた。善逸も村田さんも思わず身構える。すると・・・
ー花の呼吸 弐ノ型 御影梅ー
その瞬間、花吹雪の竜巻を幻視した。そして上弦の壱が急いで後ずさる音。奴は静かに問いかけた。
「誰だ・・・」
そして問われた主は漆黒の日輪刀を自然体に構え、なんでもないことのように言う。
「別に誰でもいいでしょう。兎に角、しのぶ姉さんは殺させない。間もなく夜明けだし、それまでは私が貴方の相手になるから」
私の目の前には、白い外套に詰襟と短袴の隊服姿で佇む、妹のカナヲが一人居た。
続く
次回!! 兄上死す!! デュエルスタンバイ!!
とまあ冗談はさておき、兄上に鬼に誘われてそれを全力で断るしのぶの話はずっと書きたいと思ってました。読者の皆様にも楽しんで頂けていたら幸いです。そして次回はカナヲVS兄上となります。こっちも是非とも書きたいと思ってた話になります。兄上が登場するだけで筆者のモチベ上昇が止まりません。そのせいで次回文字数ヤバいことになるかもしれない・・・
読みたい路線はどっち?
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一部の層(継国兄弟ファン)にぶっ刺さる話
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万人受けしそう(マイルド)な話