「えっ・・・嘘・・・炭治郎・・・貴方今・・・何て言ったの・・・?」
「俺はしのぶのことがずっと好きだったって言ったんだ。初めて会った時からずっと」
「えっ・・・えっ・・・! えぇえええええっ!!??」
私はつま先から頭の天辺まで真っ赤に染まり、つい大声を上げてしまった。嘘、嘘、嘘っ!!?? 炭治郎がっ!!?? 私のことをっ!!?? 本当なのっ!!??
「えっ、えっ、嘘よっ! だって・・・炭治郎はカナヲに見惚れて・・・それで・・・!!」
「ん? カナヲに? 俺が? どうしてそう思うんだ? しのぶは」
「だ、だってだってっ!! あんなとろけるような甘い顔してて・・・それからも毎日毎日・・・それで私っ!!」
「えっ? う~ん・・・そんな顔してたか? まあカナヲのヒノカミ神楽は本当に綺麗だったから思わず感動して見惚れてたのはそうだろうけど・・・」
「だから私っ!! 炭治郎がカナヲを好きになったと思ったのっ!! 毎日毎日カナヲの話ばかり嬉しそうに私の前でもしてて・・・それでっ!!」
「確かにカナヲはここ毎日俺の鍛錬に付き合ってくれていた。ヒノカミ神楽を日の呼吸として磨き上げて、それをどうやって再現してるのかを何百回って説明してくれて、必ず一日一回は正解の形を見せてくれるんだ。そしてその時のカナヲは人とは思えないような雰囲気で舞うんだ。それがとても綺麗で美しくて、まるで精霊のようだった。確かに俺はその舞いの虜になってたと思う」
「いやそうじゃなくてっ!! 炭治郎は何度も私に言ってたでしょ!? カナヲは凄くて綺麗で俺の憧れだってっ!! あれってそういう意味じゃなかったの!!??」
「ん? あれはカナヲの舞うヒノカミ神楽の話だよ。まあカナヲはしのぶと双子だし、しのぶと同じくらい綺麗な容姿をした女の子だとは思うけど・・・」
「嘘ばっかりっ!! 炭治郎はずっとカナヲのことを褒めてたっ!! 私の目の前でっ!! ずっと熱に浮かされてるみたいにっ!!」
「それは・・・カナヲのおかげで俺のヒノカミ神楽の理解度がグンと上がったからだと思う。その実感に多分俺ずっと感激してて、ずっと夢を見てるみたいに四六時中舞い上がってたんじゃないかな。カナヲが毎日手本を見せてくれるから、あんな完成された技を一度見ただけで繰り出せるカナヲが本当に凄いなって思ってさ。そんなカナヲのおかげで俺自身も日に日に腕を上げることができたから、その実感に熱で浮かされたようになってたのかもしれない。うん。多分そうだと思う」
「そ・・・そんなの・・・信じられない・・・そもそも炭治郎が私のことがずっと好きだったなんて・・・今までそんな素振り一度も・・・」
「ああ、それは多分、今の今まで俺が自分の気持ちを自覚してなかったからだと思う。多分俺はずっと無自覚にしのぶのことを好いていた。それを今さっきやっと自覚したんだ」
「えっ・・・えっ・・・どうして今になってそんな・・・」
すると炭治郎は私の肩から手を離し、照れくさそうに自身の頬を掻いた。
「はは・・・さっきさ。俺自分で言い出して気づいたんだ。『しのぶはずっと前から俺のことよく見ててくれたから』って言葉にしたあれだよ。それでふと思ったんだ。そもそも俺、なんでそれに気づいていたんだろうって。振り返ったら至極当然のことだった。それよりも前から俺は無意識にしのぶのことをずっと見てたんだ。だから俺はしのぶの頑張ってる所とか、凄い所とか、良い所にずっと前から気が付いてたんだ。それを今さっき漸く自覚した」
「た、炭治郎・・・」
「そしたら自然と俺、自分の気持ちに気づけたよ。俺はずっと、しのぶのことが好きだったんだなって。しのぶにずっと支えられて助けられて、しのぶ無しじゃ生きていけない位になってたんだなって。俺はもうしのぶから離れたくない。これからもずっとしのぶの傍に居たい。何度でも言うけど、俺にとってしのぶは何者にも代えがたい大切な存在なんだ」
「た、炭治郎・・・!!」
「なあ、しのぶ。折角だから聞かせてくれないか。しのぶは俺のことをどう思っているんだ? 俺の為に役に立ちたいし力になりたいって言ってたけど、それは弟弟子としてか? それとも二人一組の剣士として戦い続ける為なのか? しのぶが・・・少しでも俺のことを男としてそういう風に見ててくれているなら・・・俺は・・・」
ああ、もう、我慢できない。ごめんなさい。炭治郎。私、私は・・・
私は気が付けば炭治郎に一歩歩み寄って、その両頬に両手を添えて、自身の顔を近づけていた。
柔らかい感触と、粘膜の触れる手応え、お互いの息遣いが一瞬一つに交じり合ったようなそんな実感を覚えた。
やがて私は炭治郎から自身の顔を離す。彼は驚き目を見開いていた。
「えっ・・・しのぶっ!? どうしてそんな・・・///」
「もうっ・・・/// いい加減気付きなさいよっ!! 好きっ!! 大好きっ!! 私も炭治郎のことがずっとずっと大好きだったのっ!! 男の子として好きっ!! 愛してる・・・本当に嬉しすぎてどうにかなってしまいそうっ・・・///」
「わあっ! んんっ!? し、しのぶっ!!?? ちょっ!! まっ!!??」
私は、今までずっと胸に抑え込み続けていた炭治郎への愛を、もう一切我慢しなくていいんだと実感して、自身の衝動を一切抑えることができなくなってしまっていた。
ああ、今だけは、一切の感情の制御がまるで効かない。もう無理。だって漸く通じ合えたんだもの。私の気持ち、漸く炭治郎に届いた。受け止めて貰えた。嬉しい・・・///
それからどれだけの時間、ずっとそうしていたのか、私にはわからなかった。
ただ、何度も何度も何度も、私は炭治郎に口付けを重ねる。炭治郎は私の肩を掴んで引き離そうとするが、彼も驚きと困惑で思う様に引き剥がせないでいる。
やがて炭治郎が堪え切れなくなったのか、私の口元に手を当てて、無理に私たちの顔の間に隙間を作る。
「まっ・・・待ってくれしのぶっ!!! いきなりこんな・・・こんなのいきなり過ぎないかっ!!?? 俺、ここまですることになるなんて微塵も思っていなかったぞ!!??」
私は口元を塞ぐ炭治郎の手を剥がして、恍惚とした表情と潤んだ瞳で笑みを浮かべ彼に囁く。
「だって・・・もう我慢できないんだもの・・・/// 今だけは・・・気の済むまで付き合ってよ/// お願い・・・炭治郎・・・///」
「うっ・・・だからってこんな・・・んん??」
私は再び炭治郎に自身の唇を重ね、何度も必死に求めるように口付けする。炭治郎も力尽きたのか、それ以上抵抗しなかった。私はあらんかぎり、彼に自身の気持ちをぶつけた。
そうして薬品庫の中が私たちの熱で温度が上がったのを実感する頃になって、私は落ち着きを取り戻し、冷静になって自身の顔を両手で覆った。
「ああ・・・私・・・炭治郎になんてことを・・・///」
「だ、大丈夫だよ、しのぶ。ちょっと唇むけちゃったけど、これくらいすぐ治ると思うし・・・」
「そういうこと言ってるんじゃないのっ!! 馬鹿ぁ・・・///」
私は全身から火が噴きそうな心境だった。私はその場でしゃがみ込む。うう、穴があったら入りたい。
「しのぶ」
すると炭治郎が私の頭に手を乗せる。私はその感触に気づいて、両の手の指の隙間から目の前の炭治郎の様子を見た。彼は気まずそうに笑っていた。
「兎に角、これからは改めてよろしくな? 俺、任務先では絶対しのぶのことを守るよ。約束する」
「炭治郎・・・うんっ!! 私も炭治郎がどんな鬼とも戦うことになったとしても絶対守り切るからっ! 支えるからっ! これからもずっと一緒に居ようね、炭治郎・・・///」
「ああ、その為にうんと強くならなくちゃな。俺、頑張るよ」
「私も・・・頑張るっ! 珠世さんと協力して絶対鬼を殺す毒作って、必ず炭治郎の力になるからっ! 約束よっ!!」
「ああ、約束だな」
そうして炭治郎は片膝を着いて、しゃがんだままの私をそっと優しく抱きしめてくれた。温かい。まるでお天道様に包まれているみたい。胸の奥までポカポカする。私はこの言いようのない心地よさに暫く浸っていた。
やがて私達は薬品庫の鍵を開けて外に出ることにした。扉を開けると、そこにはカナヲ、姉さん、アオイ、なほ、きよ、すみが勢ぞろいしていた。
「きゃぁあああっ!!??」
「わっ! なんでカナヲやカナエさんがここにっ!? 俺たちのこと探してたんですか!?」
気が付けば、普段無表情で感情の起伏が殆ど見受けられないカナヲですら、頬を朱色に染めて気恥ずかしそうにしていた。
「そ、その・・・しのぶ姉さん大丈夫かなって思って・・・炭治郎が声掛けに行ったっきり姿が視えなくなって・・・私屋敷中を探したの・・・そしたら薬品庫で二人がずっと・・・///」
「え・・・まさかとは思うけど・・・カナヲは透き通る世界で俺たちの様子をずっと観察してたのか?」
「///」
やがて真っ赤になったカナヲがコクッと頷いた。その瞬間炭治郎も硬直する。私なんて全身から火が噴き出しそうな心境だった。恥ずかしいなんてもんじゃない・・・!!!
「ど、どうしてよカナヲッ!! どうしてそんな出歯亀みたいな真似したのよっ!! カナヲッ!!」
私は苦し紛れにそう糾弾する。するとカナヲが気まずそうに後ろに視線を逸らす。
「だって・・・カナエ姉さんに報告したら・・・私の透き通る世界で薬品庫の中がどうなってるのか詳細に解説しなさいって・・・」
「っ!!?!?? ちょっとっ!!! 姉さんっ!!!!」
「だって~、しのぶが炭治郎君を密室に引きずり込んだって言うじゃない? だから姉さん、もしものことがあったら心配だなぁって思って~。それでよ~?」
「『それでよ~?』じゃないっ!!! もう姉さんは本当にっ!! 平日の真っ昼間からそんな如何わしいこと私達二人でする訳ないでしょうっ!!??」
「あらあら~? でもカナヲは貴方達が薬品庫でみっちりこってり濃厚に口付けを交わしてたって言ってたわよ~?」
「っ!??!!? カナヲッ!!!!!」
「ごめんなさい、しのぶ姉さん。私、隊士達の治療の仕事残ってるから。それじゃあ・・・」
「待ちなさいよカナヲッ!! 戻りなさいっ!! 逃げるな卑怯者っ!!! 逃げるなぁあああ!!!」
私の叫び声にそそくさとカナヲはその場を退散した。やがて姉さんが「婚約する前は最後までしちゃ駄目よ~?」とか、アオイが「なほ達の教育に悪いんで今後近づかないで貰える?」とか、思ってもみなかったことを言い残しそのまま去っていく。なほ達もアオイがそのまま連れ去った。私はその場で崩れ落ち、顔を覆って真っ赤になって叫ぶ。
「カナヲ~~~!!! 貴方はぁ・・・貴方はどうしていつもいつもそうやって・・・信じらんないっ!!!!」
「アハハ・・・恥かしいな・・・しのぶ」
それ以降、蝶屋敷での空気が一変した。姉さんは常にお祭り気分で喜んでいて、カナヲは頬を朱色に染めて私から距離を取る様になり、アオイはゴミを見るような目で私に視線を送るようになった。とても辛い。
続く
取り敢えず本作の書きたい展開の半分はクリアできた気がします。二人の未来に幸あれ。
読みたい路線はどっち?
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一部の層(継国兄弟ファン)にぶっ刺さる話
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万人受けしそう(マイルド)な話