追記:しのぶに対する呼び名を苗字から下の名前に変更します。理由はこの作品だと胡蝶姉妹が三人居て全員存命なので呼ぶ際にごっちゃになると思ったからです。正直筆者も違和感しかありませんが今後これでゴリ押す予定です。あ、因みに義勇だけは引き続き胡蝶呼びで。義勇はそういうの余り気にしなさそうですし(おい)。
55話 お披露目
「ど、どうかな姉さん・・・」
「似合ってるわ! とっても似合ってるわよしのぶ! 呉服屋さんにはかなり無理な納期でお願いしちゃったけど、無事間に合ってよかったわ~! なにせ今日はしのぶの晴れ舞台だもの~!」
今日は私の柱就任の任命式だ。上弦の弐、猗窩座との会敵報告をするついでに、産屋敷邸で執り行われるとのことだ。
出立の準備を進める途中で、突如姉さんから柱就任祝いの品があると声を掛けられた。
手渡された包みを解いてみると、中には姉さんが現役の時にずっと着ていた羽織とお揃いの意匠のものが用意されていた。私は息を飲む。
促されるままに今まで来ていた白衣の羽織から蝶の羽織へと着替える。そしてその姿を姉さんにお披露目する。姉さんはとても喜んでくれた。
「良いわね~、良いわね~。前の羽織もお医者様みたいで素敵だったけど、やっぱり姉さんこっちの羽織の方が好きだなぁ。一気にしのぶの華やかなところが浮き彫りになったわ~。姉さん大満足よ!」
「ありがとう姉さん。これ高かったでしょ。あとでお代ちゃんと払うから」
「もうっ! そんなこと気にしなくていいの! 私だって花柱してた時のお給金まだ大量に残ってるんだからこれ位平気よ! だから今後はずっとその羽織着てて頂戴。それだけで姉さん嬉しいもの~!」
「わかったわ。これからは肌身離さず着てるから。私も姉さんとお揃いの羽織着れて凄く嬉しい」
「まあ~! しのぶったらなんて嬉しいこと言ってくれるのかしら! 思わず抱きしめたくなっちゃう~!」
そう言って姉さんは私にすり寄り抱きしめてくれる。左手は不自由で添えるだけだったが、それでも姉さんに包み込まれ祝福されてる事実に私は感涙を溢していた。
「さて! じゃあ次は炭治郎君ね! しのぶ! 今すぐ彼の病室に行ってきなさい! 一杯褒めて貰うのよ?」
「えっ!? いや待ってよ姉さん。私もうすぐこの屋敷を出なきゃいけないのに。余りのんびりしてたら遅れちゃうわ」
「もうっ! そんなこと言って本当は照れてるだけでしょ~? 良いから良いから~!」
「ちょっ! 自分で歩けるから! だから押さないで姉さん!」
私がもじもじしてると姉さんはニッコニコで私を部屋から押し出そうとする。姉さん左半身不自由のはずよね。なんでこんなに力強いの?
私は気恥ずかしくて炭治郎に今の羽織姿を見せるのに尻込みしていたが、やがて観念して部屋を出た。私は姉さんが杖をついて後ろを歩いているのを確認しつつ炭治郎の病室へと向かった。
「しのぶ様お似合いです~!」
「とっても綺麗です~!」
「カナエ様みたいです~!」
「ありがとう。皆」
途中でなほ、きよ、すみの三人に遭遇し羽織姿についてお褒めの言葉を貰う。私もついつい嬉しくなって笑みを溢す。
「あ、しのぶ。もう行くのね。その羽織カナエ様から? 今までの羽織は白衣の意匠で正に仕事着って感じだったけど、それ着てると一気に雰囲気が華やかになるわね。とても似合ってるわ」
「ありがとうアオイ。私嬉しいわ」
「折角だから炭治郎さんにも見せにいったらどう?」
「うふふ~、丁度今から彼にお披露目よ~? しのぶったら緊張してるみたいなの~。励ましてあげて~?」
「ちょっ!? 姉さんそういうの良いから!」
「しのぶったら。余計なこと考えないで堂々と見せに行けばいいじゃない。炭治郎さんならきっと手放しに褒めて下さるわ。自信持ちなさい」
「うっ・・・そっそうかな・・・」
「なんで不安そうにしてるのよ」
「大丈夫! しのぶは可愛いもの~!」
「姉さん! もう良いからそういうの! さっさと済ませないと柱の任命式遅れちゃうから!」
そうして私はそそくさと歩き出した。その後を姉さんが必死に杖をつきながら追う。
「待って~! 姉さんを置いてかないで~!」
「もうっ・・・」
私はソワソワする胸の内を必死に落ち着かせて姉さんの左手を取る。そのまま私達はゆっくりと屋敷の廊下を進んでいった。
漸く目的の病室に辿り着いた。炭治郎の居る個室だ。私は入口の前で深呼吸する。鼓動が早い。炭治郎に今の私を見せると思ったらどうしても気持ちが落ち着かない。私はその場から動けなくなる。
「おはよう炭治郎君! お身体の具合はどうかしら~?」
「あ、おはようございます! カナエさん! だいぶ良くなりました! 今は上体起こしても全く痛くありません! もう少しで退院できそうです!」
「あらあら~? でも焦りは禁物よ炭治郎君。いくら治りが早いからって無理したらダメよ~? しのぶに怒られちゃうわ~?」
「そう・・・ですか。あと数日もすれば機能回復訓練に移れると思ったのですが・・・」
「そんなこと言い出したら駄目よ炭治郎君。今はまだゆっくり休んでしのぶを安心させてあげて欲しいな~?」
「わかりました! 今は一日でも早く怪我を直すことに集中します! 俺、いつまでもしのぶに一人っきりで任務に行かせたくないので! 頑張ります!」
「あらあら~? だってしのぶ~? 炭治郎君の気持ちに答えてあげないと彼可哀そうよ~? 隠れてないで晴れ姿見せてあげなさいね~?」
「えっ?」
炭治郎から疑問の声が上がる。私はまごついていたが、やがては観念して自身の姿を炭治郎の前に晒した。部屋に入って彼の視線を感じた途端、思わず頬が熱くなる。
「えっ・・・しのぶ・・・その姿は・・・」
「えっと・・・これはその・・・柱の任命式で着ていく新しい羽織なの・・・炭治郎から見てどうかな?」
私は目線を落とす。今は真っすぐ炭治郎を見てられない。頬が徐々に朱色に染め上がるのを感じる。私は沈黙に耐えられず思わず目を瞑ってしまう。
「似合ってるよしのぶ。それに凄く綺麗だ」
「っ!!」
私は顔を上げる。炭治郎は真っすぐ私を見据えていた。
「本当に綺麗だよしのぶ。俺は今までの人生でこれ程綺麗な女性に出会ったことがない。あっ! いえっ! 別にカナエさんがしのぶに劣ってるとかそういう意味合いは一切なくてっ!!」
彼はつい思わずそれを口にしてしまったという感じだった。慌てて後から自身の発言について姉さんに弁明し始めたけど。
「良いのよ~? 炭治郎君にとってしのぶが一番の女性ってことでしょう? 姉さん、しのぶのことを炭治郎君にそう思って貰えてとっても嬉しいわぁ」
「あ、はい・・・なら良かったです」
私は真っ赤になって再び炭治郎から目線を落としていた。顔だけじゃない。全身きっと今ゆでだこみたいに赤く染まっているだろう。とてもじゃないけど彼に視線を合わせていられない。
「しのぶ。本当に良く似合ってるよその羽織。前の白い羽織もお医者さんみたいで格好良かったけど、今の羽織はそれ以上にしのぶの良さを引き立ててるように思う。何度も言うけど本当に綺麗だ。思わず惚れ直してしまったよ」
その瞬間、私は限界を迎えた。大好きな男の子に褒められた嬉しさと羞恥心で脳内が破裂しそうになる。思わず顔を覆いその場でしゃがみ込んでしまった。
「ううっ・・・///」
「きゃ~!! しのぶったらなんて可愛らしいのかしら~? 叶う事ならお写真取って額縁に入れて蝶屋敷の居間で飾りたい位だわ~!」
「絶対にやめて・・・姉さん・・・///」
私はそう声を絞り出すだけで精一杯だった。勘弁して。もう恥ずかし過ぎてどうにかなってしまいそう。まるで頭から蒸気が出てしまう位に顔が熱い。
「うふふ~? じゃあ炭治郎君。今日はこれ位でお開きね~? さあさ、しのぶもそろそろ出発するわよ~? お館様を待たせる訳には行かないわ~?」
「誰のせいで・・・こうなったと思って・・・///」
私は顔を覆ったまま、姉さんに手を引かれ退出を促される。けど部屋を出る際に、これだけは言っておかねばと炭治郎に背を向けたまま自身の想いを言い残した。
「ありがとう炭治郎。私、今凄く嬉しいわ。また来るわね・・・///」
「あ、ああ。またな、しのぶ」
そうして私たちは彼の病室を出た。
「あら、カナヲ?」
私はすぐさま顔を覆うのを止めた。目の前には微笑を浮かべるカナヲが一人立っていた。
「ふふっ」
「何が可笑しいのよ、カナヲ」
私はやや不機嫌にそう声を漏らす。カナヲは病室の壁を撫でている。
「しのぶ姉さんが幸せそうで本当に嬉しい。その羽織とっても似合ってる。まるでカナエ姉さんみたい」
「うふふ~、カナヲもお揃いの着ちゃう? 三姉妹で同じ羽織用意してみようかしら~?」
「大丈夫、カナエ姉さん。私、見る専だから」
「え? 見る専?」
「なんでもない。しのぶ姉さん。柱の任命式行ってらっしゃい。もう外に隠の人来てるみたいだから」
そうしてカナヲは壁に向き直る。あ、これ多分透き通る世界使ってるわね。でも待って。もしかしてカナヲが部屋の外にずっと立っていたのって・・・
「カナヲ・・・まさか最初から・・・」
「ん? なんのこと?」
「とぼけないで! ずっと私達が部屋で何してたか見てたんでしょ!?」
「あれ? 可笑しいな。透き通る世界に入っている間は気配を気取られないはずなのに・・・」
「やっぱり!」
私はカナヲに突っかかる。
「出歯亀みたいな真似やめてって以前貴方にそう言ったわよね!? 信じらんない!!」
「言ったでしょ? 私見る専だって。しのぶ姉さんもじもじしててとっても可愛かったよ?」
「ちょっ!? アンタ本当にいつから部屋の傍に・・・!!」
「まあまあ、しのぶ。姉さんはしのぶの笑った顔が好きだなぁ」
「もうっ! 姉さんまでっ!!」
私は遂に姉さんをも置き去りにして廊下をズンズンと歩き出した。そして振り返り二人に指を差し向ける。
「帰ったらお説教だから! 逃がさないからね二人とも!!」
「え? 私も?」
「うふふ~、怒ってるしのぶも可愛いわぁ」
駄目だこの二人。こっちの理屈が一切通用しない。カナヲはカナヲで訳のわからないことを言い出すし。一体誰から教わったのかしら。
私はそんな二人などほうっておいて、そそくさと蝶屋敷の庭へと移動し、産屋敷邸まで運んでもらうのだった。
続く
カナヲは真恋柱の薫陶を受けて若干そっち側に移行しつつあります。そのうち日の呼吸でサイリウム振り回し始めるかも。色は勿論藤色で。
カナヲの恋人候補は?
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冨岡義勇
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時透無一郎
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煉獄杏寿郎
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竈門炭治郎※しのぶ付き
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輝利哉君※産屋敷家へ嫁入り確定
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鬼が存在しないこの美しき世界※独り身