胡蝶家の縁壱とお労しい姉上   作:科学大好き人間

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しのぶ視点です。遂に本作のしのぶも蟲柱。感慨深いものがありますね。


56話 柱就任

「しのぶ。蟲柱の就任を記念して印字の刻まれた日輪刀を授与する。今後も引き続き、その類まれな頭脳と慈愛深き精神を以てより多くの人達を救い隊士達の力となって欲しい。私は君のこれまでの活躍を、そしてこれからの活躍を共に嬉しく思うよ。今日から君が九人目の柱だ。期待しているよ」

 

「有難く」

 

 

枯山水庭園に残りの柱八名が跪いて並び、私がお館様より新たな日輪刀を授かる光景を無言で眺めて居る。これで遂に柱の空席は埋まり、事実上柱は規定数を満たした。願わくば炭治郎が柱昇格となるその日まで、ここに居る誰一人欠けないことを願う。

 

 

 

「しのぶ。私が君に育手を紹介した時、正直私はしのぶが柱にまで上り詰めることは有り得ないと思っていた。だが君はそんな私の想像を良い意味で裏切ってくれた。君がいつかカナヲ支える刃、ひいては鬼殺隊を支える真の刃へと成長を遂げることを祈っている」

 

「ありがとうございます。悲鳴嶼さん」

 

 

私が白洲の庭へと降りて柱の皆さんの前に戻って来た際、最も早く労いの言葉を掛けてくれたのは悲鳴嶼さんだった。この中では特に恩人に当たる人故に私は一層の感慨深さを感じていた。

 

 

「しのぶ。派手に完成させたな。藤の花の毒っつうモンを。今後少しで良いから工面してくれ。雛鶴達が直近の任務で使いたいんだとよ。頼めるか?」

 

「ええ、勿論です。宇随さん」

 

 

労いとは別に、感嘆の声と頼み事をしてくる宇随さん。私は二つ返事で了承する。彼の奥様達も常に命懸けの任務に就いてるとのことだ。私で力になれることがあるならばいくらでも協力しようと思う。

 

 

「しのぶ。お前が柱になるのを待ってたぜェ。これからもお前には世話になるかもなァ。それとこの後蝶屋敷に行ってもいいかァ? 丁度包帯切らしてたの思い出しちまってよォ。それと血止め薬も頼むわァ」

 

「良いですよ。ついでに甘味も御馳走します。それと姉さんにも会ってあげてください。寂しそうにしてたので。それと・・・もし宜しければそのついでに少々お時間頂戴しますが構いませんか?」

 

「ああ? まあ別に構わねぇが・・・」

 

 

不死川さんがこの後屋敷に来ると聞いて私は渡りに船と言わんばかりにそう提案する。姉さんを隠れ蓑に会わせたいもう一人の人物。それは私の同期でもある不死川さんの実弟である。

 

 

「胡蝶。お前は水柱にはならないのか」

 

「なりませんよ。冨岡さんが居るじゃないですか。それに私の場合、水の呼吸では鬼を倒せません。だから変なことを言い出さないで下さい」

 

「・・・そうか・・・なら炭治郎が柱に成るのを待つか・・・」

 

 

なんだか残念そうに冨岡さんはそう呟く。さっぱり意味が分からない。この人なんで柱引退しようとしてるの? 柱の中でも実力上位なのにこの人は何を言っているのやら。私は呆れる。

 

 

「しのぶ。お前が柱とはな。上弦の弐とやり合えたその実力だけは認めてやるが、お前が鬼の竈門妹を庇い立てしたことまでを認めるつもりはない。今後どう埋め合わせをする? どう報いる? ちゃんと柱として鬼を狩り続ける気概はあるんだろうな?」

 

「当然ですよ伊黒さん。それに、禰豆子ちゃんのことはお館様も認めてますし、いい加減水に流してくれませんか? 今度蝶屋敷に訪れたら好物のとろろ昆布のお味噌汁振舞いますのでそれで手打ちにして下さい」

 

「・・・なぜ俺の好物を知っている・・・」

 

 

相変わらずネチネチと伊黒さんは禰豆子ちゃんの件で私を根に持ってるらしい。甘露寺さんから聞いた限りだと悪い人じゃないんだけどなぁ。まあこういう性分なのだろう。私は食べ物で釣る作戦に切り替え適当に落としどころを提示した。

 

 

「しのぶも遂に柱か!! 甘露寺に続いて女性隊士の柱が増えたのは喜ばしいことだ!! しかし、しのぶの隊服は甘露寺の物とは違うのだな!! それは自身で選べるものなのか!?」

 

「ええ。寧ろこちらに選択権なかったら私は裁縫係に油をかけて火あぶりにしてたと思いますよ? そもそも嫁入り前の娘が大腿を人前で晒すこと自体が間違っています。煉獄さんはあのふざけた意匠の方がお好みなのですか?」

 

「いや!! 俺はてっきり女性隊士の隊服はあれが標準だと思っていたのだ!! そもそも女性隊士を見かける機会がまるでないからな!! 始めて出会ったのが甘露寺だった!! だからその後しのぶの隊服を見て疑問に思ったものだ!!」

 

 

成る程。まあ煉獄さんがそんな下心持ってるとは到底思えないし、この人の実力を思えば隊士になって以降ずっと単独任務だった可能性も充分に考えられる。確かに私も甘露寺さん以外で女性隊士あまり見たことないかも。せいぜい那田蜘蛛山の合同任務で見かけた尾崎さん位だ。私は一人納得する。

 

 

「私も驚いたわよしのぶちゃん!! なんでしのぶちゃんの隊服は普通なの!? 私女性隊士の隊服は全部これだと思ってたのに!! 既にこの意匠で戦うことを前提にした新しい呼吸の型と日輪刀まで開発しちゃったわ! 今更普通の隊服に戻せないし私ったらどうすればいいの!?」

 

「えっと・・・恋の呼吸って短袴じゃないと駄目な制約とかあるんですか? 俄かには信じられないのですが・・・」

 

「だって!! 私の日輪刀ってダボついた履物だと振るうたびにペシペシ当たって思う様に振り回せないし!! 可動域もかなり必要な型ばかりだから皆とお揃いの隊服だと動きが制限されて使いにくいの!! ううっ! どうしてこんなことに!!」

 

「それは全てゲスメガネのせいですね。やはり奴は火あぶりにすべきでした。次会ったら確実に息の根止めます。だからご安心を。甘露寺さん」

 

「し、しのぶちゃん!?」

 

「いや、それすらも生ぬるいですね。一度縛り上げて馬で市中引き回しの刑にして、ズタズタにした後水銀でも飲ませて嘔吐させながら磔にした後、槍で串刺しにしてそれから放火すべきですね。良し。ここまでやって漸く奴の罪は許される。協力してくれますか? 甘露寺さん」

 

「し、しのぶちゃぁあああん!!??」

 

 

私の沸き起こる憎悪を鎮める一案として処刑方法を提示するが、甘露寺さんはそれを聞いて青ざめ私を引き留める始末。どうして? どうしてそこまでしてやろうって思えないの? あんな奴この世から居なくなってしまった方が全女性隊士のためなのに。

 

 

「あれ? 君誰だっけ? 前に会ったことある?」

 

「時透君。お久しぶり。私は胡蝶しのぶって言うわ。せめて名前だけは覚えておいて」

 

「ああ、思い出した。鬼を庇ってた子だね。でもそんな君が上弦の弐相手に戦えたんだから本当に凄いよね。お館様が庇い立てした理由が何となくわかったよ。また忘れるかもだけどよろしく」

 

 

この子は脳に深刻な後遺症を負っているので仕方がないとは思う。思うけど何とも言えない子だった。でもお館様曰く始まりの呼吸の剣士の子孫にあたる子なのよね。もしかして日の呼吸や・・・或いは月の呼吸も覚えれば使えたりするのかしら。刀を握って二カ月で柱になった超天才剣士。まるでどこぞのカナヲのようね。正直羨ましい。

 

 

「さて、しのぶの任命式も終わり話し込みたいところ悪いだろうけど、この後緊急柱合会議を執り行うよ。新たな上弦の弐、猗窩座についての報告を踏まえ、是非皆には対策を練って貰いたい。良いかな?」

 

「「「御意」」」

 

 

私との談話の様子を見計らって、丁度良いところでお館様が全員に声を掛ける。そうして私たちはお屋敷に上がり、柱合会議を執り行うことになった。

 

 

「・・・以上が報告のあらましです。それでは柱の皆さんにもご意見をお聞きしたいのですが・・・」

 

 

私が議事録作成と司会進行を務めながら先輩たちに意見を求める。すると静かに宇随さんが手を挙げた。

 

 

「一番の問題は頸を斬っても死なないことだな。猗窩座って鬼だけが特別なのか、それとも他の上弦も同様なのかで今後の戦い方が派手に変わってきやがる。お前さんはどう思う? しのぶ」

 

「そうですね。全員が頸の弱点を克服してる可能性は低いかと」

 

「その根拠は?」

 

「以前カナヲが討伐した前任の上弦の弐、童磨は頸を刎ねたらあっさり死んだからです。鬼それぞれで個体差があると考えた方が自然かと」

 

「成程な」

 

「ただ、頸を刎ねても死なない鬼が他にも居るという考えは持つべきでしょうね。宇随さんの懸念は持って然るべきだと思います」

 

 

柱一同閉口する。今まで日輪刀で頸を刎ねたら死ぬという、その鬼の常識を覆す事象に全員が思案しているのだろう。やがて不死川さんが悪態をつく。

 

 

「つうことはよォ、俺が鬼殺隊に入る前のやり方で鬼狩らねぇといけねぇ上弦も居るってことかァ? 奴らを開けた場所に縫い付けて朝日が昇るまでの持久戦を挑めってのは並大抵のことじゃねェ」

 

「うむ!! 不死川の言う通りだ!! 通説によると上弦は柱三名分の実力を持つと聞く!! もし一対一で戦おうものならまず勝てないだろう!! しかし竈門と胡蝶は日の出まで耐えきった!! それは如何様にして実現できたことなのか教えて欲しい!!」

 

 

煉獄さんの希望を受けて私は目を伏せる。するとお館様が私の代わりに返答する。

 

 

「それについては私から話そう。なぜ炭治郎が上弦の弐の頸を刎ねる程に力を向上させたのか。彼に発現したカナヲと同じ痣の正体が一体何なのかを」

 

「お館様。肝心のカナヲがこの場に居ません。いつも思っているのですが毎度柱合会議に同席させず宜しいのですか?」

 

「大丈夫だよ小芭内。カナヲとは私と行冥でこまめにやり取りをしている。彼女も痣の話は納得済みだ」

 

「つまり・・・その痣というものが鍵なのですね・・・俺達が上弦と対等に闘う上で・・・」

 

「そう。義勇の言う通り。即ち、炭治郎が上弦の弐と対等に闘えたのはカナヲと同じ痣が発現したからだ。それを説明する上で、君達全員には戦国時代の始まりの呼吸の剣士達の話を聞いてもらいたい」

 

 

そしてお館様は、かつて炭治郎の余命宣告を私達二人にした時と同じ説明をする。私はその間終始目を伏せていた。胃の奥が刺すように痛む。

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 

 

 




原作に比べて本作のしのぶは覚悟が足りてない節があるのでやや頼りなく見えるかもです。信念の為に命すら投げ捨てる覚悟と、大切な人を守る為に戦う覚悟、果たしてどちらの方が強いのか。答えのない二択な気がしてます。

カナヲの恋人候補は?

  • 冨岡義勇
  • 時透無一郎
  • 煉獄杏寿郎
  • 竈門炭治郎※しのぶ付き
  • 輝利哉君※産屋敷家へ嫁入り確定
  • 鬼が存在しないこの美しき世界※独り身
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