胡蝶家の縁壱とお労しい姉上   作:科学大好き人間

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しのぶ視点です。原作と違って覚悟し切れていないしのぶなので思う部分は多いと思います。鬼殺隊だと悲鳴嶼さんみたいに考える人の方が多数派かもしれませんね。


57話 柱に相応しくない

「成る程・・・しかしそうなると私は一体どうなるのか・・・南三」

 

「チッ! そんな軽い代償を払うだけでいいのかよォ」

 

「これを軽いと言ってしまえる軽い頭で羨ましい」

 

「なんだと?」

 

「何も」

 

 

あ、不味い。既に二十一歳組で喧嘩が勃発しようとしている。本当に冨岡さんは余計なことを。

 

 

「じゃ、じゃあ・・・カナヲちゃんと炭治郎君はあと十年以内に・・・」

 

「・・・・・・」

 

 

痣の寿命の話が出た後、口元を押さえて甘露寺さんが私を心底心配する視線を向けてくる。私は力無く呟く。

 

 

「本当なら・・・私は誰一人痣を発現して欲しくありません・・・カナヲと炭治郎は・・・もう手遅れではありますが・・・」

 

「しのぶちゃん・・・!!」

 

 

私は隊服の裾を握りしめる。周囲に私に対する憐憫の情じみた気配が漂う。だが悲鳴嶼さんだけは違った。

 

 

「しのぶ。例え痣が出なかったとしても鬼殺隊で在る限り、明日の命の保証はない。何を今更命を惜しもうか。そのような生半の覚悟で柱に成る者などおらぬ」

 

「っ!!」

 

 

私は全身から軋む音を聞いた。その瞬間、周囲の柱達も気配を察したのか身構えた。

 

 

「どういう意味ですか悲鳴嶼さん・・・!!」

 

 

私は憎悪の目で悲鳴嶼さんに視線を向ける。悲鳴嶼さんは揺るがずに答える。

 

 

「お前のその発言は、私達柱に対してだけではない。最前線で鬼と戦うカナヲ、そして竈門の覚悟を侮辱する行為だ。私が当人達なら腸(はらわた)が煮えくり返っているところだ」

 

「そんなのっ!!」

 

 

私は立ち上がるが悲鳴嶼さんは続ける。

 

 

「二人がそう言ったのか? お前の目の前で。鬼殺の為に短命を義務付けられどうして自分たちがこんな目に遭うのかと。二人の口からそう聞いたのか?」

 

「それは・・・!!」

 

 

私は言い淀む。悲鳴嶼さんは数珠を鳴らす。

 

 

「私は直接見た訳ではないが、カナヲは上弦の壱を、竈門は上弦の弐を相手に、どちらも懸命に周囲の人を守り切り死なせずに戦ったと聞く。本来なら直接私が会って確かめたく思うが、今回ばかりはその必要もないだろう。誰がなんと言おうと二人は鬼殺隊士の鑑そのものだ。私はカナヲに限らず竈門を柱に足る人物であると認める」

 

 

私は何も言い返せなかった。一方で悲鳴嶼さんは私に問いを投げる。

 

 

「寧ろ柱に相応しくない覚悟の持ち主は、しのぶ、君の方ではないのか? これ以上同志の覚悟を侮辱する柔な発言を繰り返すようなら、私は君に柱を辞退するよう申し出る」

 

「ひ、悲鳴嶼の旦那!?」

 

「悲鳴嶼さん!! 何を!? しのぶは充分柱として相応しい実績を積んでいるでしょうがァ!!」

 

 

悲鳴嶼さんの厳格な提案に、宇随さんと不死川さんが抗議の声を上げる。周囲の皆さんも驚きを隠せないようだった。

 

 

「悲鳴嶼さん。流石にそれは胡蝶さんが可哀そうだよ。彼女は上弦の弐とも戦える位には強いはずで・・・」

 

「時透。私は柱として相応しい精神性の持ち主かを議論している。この際実力は関係ない」

 

「いくら何でもあんまりです悲鳴嶼さん!! しのぶちゃんが今どんな気持ちで痣の話を聞いているのか・・・どうしてわかってあげようとしないんですか!?」

 

「甘露寺・・・しかしそれとこれとは話が別だ」

 

 

甘露寺さんは堪え切れなくなったのか目尻に涙を浮かべて私の下に歩みより、私を優しく抱きしめる。

 

 

「か、甘露寺さん・・・」

 

「良いんだよしのぶちゃん。辛いなら辛いって言ったって。炭治郎君があと十年しか生きられないと聞いて一番辛いのはしのぶちゃんよね? 例え彼が平気だって言ったってしのぶちゃんがそれを悲しいって思うのは人として当然のことよ? 我慢なんてしなくて良いんだからね?」

 

「うっ・・・甘露寺さん・・・」

 

 

私は嗚咽を漏らしそうになるが必死に堪える。ここで涙まで溢したら、本当に柱として不甲斐ないと自分自身でも思ってしまうからだ。私は身体を振るわせるに留めて必死に堪えた。

 

 

「行冥」

 

 

不意にお館様がそう宥めるように声を掛ける。その声にその場の全員が耳を傾ける。

 

 

「しのぶをあまり虐めないではくれないか。君の言ってることは尤もだ。柱として覚悟無く戦っている者など居ない。それは間違いないよ。でもね・・・」

 

 

お館様は続ける。

 

 

「大切な人の行く末を案じ、その者の人生の幸福を願い祈ることも人としての立派な強さだ。確かにしのぶはそれが少々特定の相手に偏り過ぎているかもしれないが、私はそれでも良いと思っている。確かに信念の為に命すら投げ捨てる覚悟を持つ者は強い。行冥、君がそうであるようにね。でも、大切な人を死なせない為に戦う覚悟だって大切じゃないだろうか。大切な人の命を理不尽に奪った者を許さないという想いは永遠だ。私達鬼殺隊の根底にある原動力と言ってもいい。正直今のしのぶは君から見ても少々不甲斐なく思えるだろうけど、それでもこの子は鬼殺隊の為に誰よりも必死に戦うよ。行冥、どうか彼女を認めてはくれないだろうか」

 

「・・・御意・・・お館様がそこまで仰るのであれば・・・」

 

 

すると悲鳴島嶼さんは私に向き直る。

 

 

「しのぶ。君に対する発言を撤回しよう。確かにお館様の言う通りだ。奪われた者の命を背負って戦う覚悟だけでなく、奪わせない為に戦う覚悟も、鬼殺隊として大事な心構えの一つだ。侮辱していたのはどうやら私の方だったららしい。済まなかった」

 

「・・・いえ・・・悲鳴嶼さんは何一つ間違っていません・・・」

 

 

私は甘露寺さんを手で制して抱き止めるのを止めさせる。私は目尻の涙を拭う。

 

 

「お館様は私を肯定して下さいましたが、現時点で私が皆さんに比べて未熟者であることは事実です。ですから今後、私はもう二度と皆さんの前で先程のような軟弱な発言をしないよう心を強く持ちます。その努力をします。なのでどうか悲鳴嶼さん、私を柱として認めて下さいますか?」

 

「ああ。勿論だ」

 

 

そうして私たちの議論はそこで終わりを迎えた。すると話を元に戻す狙いでか、宇随さんが追加で問題提議する。

 

 

「それで、肝心の痣発現の方法はどうなさいますか? 未だに痣発現条件は明らかになってはいなんでしょう?」

 

「ああ。天元の言う通りだ。それについては以前炭治郎に聞き取りを行ったよ。でもね・・・」

 

 

お館様が苦笑いをし柱の皆さんは怪訝そうに首を傾ける。続くその答えを聞いてその場の全員が呆れ果てた。

 

 

「どうやら彼は爆裂に人に物を教えたりするのが下手らしい。正直彼からその方法を聞き出すのは現状不可能に近いと思うよ」

 

「なんと!! では暫くの間、彼のことは放っておきましょう!! お館様!!」

 

「ああ。申し訳ないけど、発現条件の解明は地道に調べることになると思う。それまでの間皆には苦労を掛けるがよろしく頼むよ?」

 

「「「御意」」」

 

 

そんな感じで、何とも締まらない形で柱合会議はお開きになった。結果、炭治郎の皆の印象が『爆裂に教えるのが下手な奴』に認定されてしまった。

 

 

 

 

続く

 

 

 




炭治郎は今後継子の話が出たら「お前はやめとけ」と先輩たちに釘を刺されるでしょう。お労しや炭治郎。

カナヲの恋人候補は?

  • 冨岡義勇
  • 時透無一郎
  • 煉獄杏寿郎
  • 竈門炭治郎※しのぶ付き
  • 輝利哉君※産屋敷家へ嫁入り確定
  • 鬼が存在しないこの美しき世界※独り身
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