ーside 宇随ー
「おいお前ら。初日でなんかわかったか?」
「大当たりだぜ!! ぜってぇ俺の潜った店に鬼が居るな!! なんだか怪しい気配をビンビン感じるしよ!! 特に壁ん中とか超怪しいぜっ!!」
「俺のところも壁の中でなんか衣擦れの音とかしてたな。多分店の壁の中に抜け道がいくつもあってそこを何かが出入りしてるんだと思う。超狭い隙間だとは思うけど・・・」
夜が明けた。日中は皆寝静まってる遊郭の街。俺は嘴平と我妻と合流し定期連絡会を行っていた。
「ほー、上出来じゃねぇかお前ら。ときと屋と萩本屋で鬼の痕跡発見か。んじゃあとは京極屋だな。ホントはカナヲにも定期連絡しに来て欲しいんだが・・・」
俺は毎度の柱合会議で既にカナヲの人となりを知って居るので半ば諦め口調で息を吐く。
「アイツ本当に報連相できないのな。カナエとしのぶは一体どんな育て方してたんだか。まあそれ言ったら悲鳴嶼の旦那もか。もしかしたらお館様の教育方針なのかもしれねぇけどな」
「しのぶの妹はマジで無口だからな! 日頃笑ってるところか殆ど見てねぇ!」
「というよりもカナヲちゃんは必要性を感じないと会話しないし笑わないしで結構不愛想なんだよな。その割にはしのぶちゃんの前だと年相応な女の子って感じなんだけど・・・」
「あの三姉妹は派手に仲良いからな。逆にベッタリ過ぎてどうだかとは思うが。まあそんなことよりも・・・」
俺はその場を立ち上がり。瓦葺きの屋根の上で周囲を見渡す。
「兎に角、お前らは引き続き夜間の索敵を続けろ。俺も日中限定で店に忍び込んで壁の中の構造とか調べてみる。うまくいけば鬼のねぐらがあっさり見つかるかもな」
「うおっしゃぁあああ!! 待ってろや上弦の鬼!! この伊之助様が直々にぶっ倒してやるぜっ!! 派手にな!!!」
「伊之助。派手柱の口調移ってんぞ? あと俺はもう寝るわ。夜通し耳使い過ぎて疲れたし」
「そうだな。嘴平も我妻を見習ってちゃんと寝とけ。あと朝っぱらから騒ぐな。遊女の連中が起きてくんぞ? 俺の方で調査は進めて置くから夜まで力を蓄えておきな」
そうして俺達はその場で解散した。
ーside アオイー
「伊之助さん遅いわね。大丈夫かしら」
「大丈夫だろう。あの子なら。ほらアンタももう休みな? 初日からいきなり雑用任されて大変だっただろ? 昼間に鬼は出ないんだから少しでも安眠しておきなって」
「はい。まきをさんもゆっくり休んで下さい」
「ああ! アオイもお疲れさん!」
宇随さんの奥さんの一人、まきをさんが私の教育係として昨日から付きっ切りで面倒を見てくれたおかげで、初日は揉め事を起こすことなく無事に終わった。
私は与えられた部屋へと戻る。しかしここで一つ問題があった。
「・・・伊之助さんと寝る部屋一緒なのよね・・・」
売られて来たばかりの遊女見習いにいきなり個室が与えられることなんてないだろうけど、とは言え私としては男性と一つの寝室で眠ることなど初めての経験だった。
「まあ仕方ないわよね。伊之助さんを一人にしてたらいつボロを出すかわからないし。戦いで力になれない分私が伊之助さんを支えてあげないと」
正直伊之助さんは蝶屋敷でもご飯のお世話、隊服の洗濯のお世話と日頃からせっせと面倒を見ているのでそれ自体は苦にならない。寧ろ、彼と一緒に居られる時間が増えるから私としては満更でもなかった。
それにこの任務での人員の組み合わせ。絶対カナヲのお節介よね。私と伊之助さんが一緒に居る機会を増やしてあげようって魂胆なんでしょうけれど。嬉しいようなむず痒いような不思議な感覚だった。
「戻ったぜ」
「あ、伊之助さん。おかえりなさい。連絡会終わりましたか?」
「ああ。祭りの神にはちゃんと言っておいたぜ。この店の壁ん中に鬼が這いずり回ってるってな! 姿を見せたら俺が速攻でやっつけてやるぜっ!!」
「あっ、伊之助さん声大きくなってきてます。他の人に聞こえるのでもう少し抑えて下さいね?」
「チィ、ったくまどろっこしいぜ。この着物のせいで気配も感じ辛いしよ。せめて上だけ脱げればだいぶ違ぇんだけどな」
「もう、ダメですよ? そんなことしたら男の人だってあっさりバレてしまいます。それとお仕事中は喋るのもダメですからね? 伊之助さんの声だとあっさりバレてしまいますから」
「本当に窮屈な任務だぜ・・・上弦の鬼と戦えるって聞いたから我慢してやってるってのに肝心の鬼は隠れてやがるしよ・・・ホンマ腹立つ・・・!!」
「もう、そう言わないで下さい。せめてこれでも食べて機嫌直して下さいね?」
「おっ! ひょっとして握り飯か! アオイ寄こせ!」
「はいはい」
「うめぇ! うめぇぜ!」
「ほら、また声が大きくなってますよ? 気を付けて下さいね?」
「ヘッ! イライラする任務だけどよ。こうして任務先でもお前の握り飯食えんなら悪くねぇな! 良し! 今後は俺の任務にアオイも付いてこいよ! 何があっても俺がアオイのこと守ってやるからよっ!」
「っ!!」
私の胸の鼓動が一瞬高鳴る。頬が熱い。私は思わず伊之助さんから顔を逸らしてしまう。
「ん? どうしたアオイ?」
「な、なんでもありません。伊之助さん」
「おいホントにどうした? なんか顔赤けぇぞ? ひょっとして風邪でも引いたのか!? 初日から働き過ぎるからだろうが!!」
「なっ、なんでもありませんから! だから大丈夫です! 伊之助さん!」
「熱測らせろ! たしか権八郎がこうやってしのぶの熱測ってたの見たことあるぜっ!」
「ひゃっ! ひゃぁあああ!!」
私の心配をする伊之助さんが突如私に距離を詰めて来て、おでこをコツンと当ててくる。私は一気に真っ赤になる。
「おい! アオイ今すぐ寝ろ! お前熱出てるって! ほら俺の分の布団も上から重ねてやっから! 早く横になれって!」
「うぅ・・・はいぃ・・・///」
私は伊之助さんに促されるままお布団の上で横になる。私はそのまま縮こまっていた。
「お前が眠り始めるまで看病しててやる。だからさっさと寝やがれ」
「は、はい・・・ありがとうございます」
伊之助さんに変な勘違いさせちゃったけど、これはこれで悪くないのかも。
今の私はすぐに寝ちゃったら勿体ないなとついこの時思ってしまうのだった。
ーside カナヲー
「雛鶴さん。お店の人は全員眠らせましたか?」
「ええ。全員薬を盛って眠らせたけど。でも本当に大丈夫なの? せめて天元様の到着を待った方が・・・」
「大丈夫。雛鶴さんは急いで皆を運び出して。流石に遊女全員を庇いながら戦うのは無理だから」
「わ、わかったわ。健闘を祈るわね」
そうして私は遊女たちの避難が概ね進んだことを確認し、目的の一室へと足を運んだ。
「蕨姫花魁。少々宜しいですか?」
「は? 何よこの朝方に。誰だか知らないけどさっさと失せな。ホント最近の若い女共はどうしてこう癪に障ることばかりしてくるんだか・・・」
私は無言で蕨姫花魁の待機する個室のふすまを開ける。部屋には不愉快極まりないと眉を寄せ顔を歪めた刺々しい雰囲気を纏う豪華な着物の女が居た。
「おい。失せろって言ったのが聞こえなかったのか? ん? もしかして昨日店に売られて来た奴ってアンタ?」
蕨姫花魁は私の顔を視認した途端、一転して口元を歪めて上機嫌になった。
「へぇ・・・泣きほくろが気になるけどかなり整った容姿してるわね。気が変わったわ」
私が部屋に入った途端、独りでにふすまがピシャリと閉まる。私はそれを特段気に掛けることもなく静かに目の前の花魁を見つめる。
「おいで? こっちにいらっしゃい」
私は言われた通り歩いて近づく。あと一歩の所まで寄ると、蕨姫花魁は邪悪な笑みを浮かべて私の頬に手を伸ばそうとする。
「馬鹿な餓鬼ね。今から自分が喰われるなんて夢にも思わずに私の手元まで来るなんて。綺麗な顔は食事の華だから最後にでも・・・」
その瞬間、私は蕨姫花魁の手首を掴む。そして万力の握力で握りしめる。
「痛っ!!」
「よし、捕まえた。ちゃんと目に『上弦』『伍』って書いてあるし。じゃあ殺すね」
私が腕を振るうと凄まじい破砕音と共に店が半壊する。蕨姫花魁は店を突き破り、そのまま陽の光が降り注ぐ街の大通りへと投げ出された。
「ギャァアアアア!!??」
蕨姫花魁だったものは全身から煙を上げて燃え上がる。私はすぐに外に出て、それを観察しつつ首からぶら下げた小さな笛に息を吹き込んだ。
ピーーーーーーーーー!!
この笛は、昔しのぶ姉さんが私に買ってくれた大事な笛。私が困ったら吹けとそう言って私に授けてくれた大事な贈り物。
この笛の合図を皮切りに、上弦狩りは白昼堂々決行となった。
続く
ぶっちゃけ蜜璃ちゃんならカナヲと同じことできると思うんですよね。無惨の腕を引き千切った腕力がありますから。尚良い子は危険ですので絶対真似しないように。
カナヲの恋人候補は?
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冨岡義勇
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時透無一郎
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煉獄杏寿郎
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竈門炭治郎※しのぶ付き
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輝利哉君※産屋敷家へ嫁入り確定
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鬼が存在しないこの美しき世界※独り身