さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉 作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)
アサルトリリィを原作とする二次創作です。
私個人の解釈もありますがご了承ください。
登場人物のイメージはこちら(pixiv)
https://www.pixiv.net/artworks/128075214
第1話・前編 志乃とグリ子
【グウェンドリンside】
「
中等部3年の4月、障害を負った両親の代わりに生活費を稼ぐため、私がこの
刹那とかいう研究員にこれからペアを組むリリィを紹介すると言われて、休憩所で待っていたら、私と同じくらいの年の少女が声をかけてきた。
「貴女が私とペアを組むリリィ? まぁ、よろしく」
私は感情のない返答をする。
ペアを組むと言っても、人付き合いはめんどくさい。この娘もうるさいタイプみたいだし、出来れば会話も最小限にしたいわね。
「グリ子、お菓子買ってきたから、一緒に食べよ」
数日後、私と志乃は同じ部屋でくつろいでいた。平日はもちろん学校があるけど、放課後や休日の特定の時間は研究所に待機しているように言われている。
志乃は研究所の社宅に住んでいて、今居るのもその社宅である。
それは良いんだけど……
「そのグリ子っていうのは、私のことかしら?」
「そうだよ! グウェンドリンだからグリ子。可愛いでしょ」
この
持っている漫画を何百冊も勧めてくるわ、通っている学校のことを詳しく聞いてくるわ、挙句の果てに勝手に人のことグリ子と呼び始めるわ……グリ子ってあだ名は確かに可愛いから良いけど。
「グリ子はアルケミートレースが使えるんだよね。あれって、漫画とかアニメの武器とかも再現できるの?」
「やったことないから分からないわね」
やりたいとも思わないけど。
私は家族の生活費工面を条件に、
その結果、
「どうして私のブーステットスキルを知ってるのよ」
「刹那さんに教えてもらったの」
刹那? せつな、切な、セツナ。
「ああ、アンタに初めて会った時に話しかけてきた職員よね」
「あむっ。あの人、私の身元引受人兼担当で、
お菓子を食べながら答える志乃。お行儀悪いわね。
「美濃川、アンタと同じ苗字ね」
「私が刹那さんの苗字を貰ったの。ないと不便だし」
「貰った?」
苗字って、そんなボールペン感覚で貰ったりするものだったかしら。
2人の関係が気になった私は、刹那さんのパソコンから、志乃に関するデータを漁っていた……無断で。
「あった……
なんでここの研究員の人たちって、カッコつけてローマ字を多用するのかしら。読みにくいだけじゃない。
「つまり、志乃は人間ではないってこと?」
「いや、人間さ。君や俺となにも変わらない」
志乃のデータを斜め読みしていると、パソコンの主が後ろに立っていた。
「どういうことなの?」
「そこに書いてある通りさ、志乃は14年前にこの研究所で生まれたホムンクルス、人工リリィってわけさ」
なるほど。詳しくは分からないけど、遺伝子工学ってやつね。
「まさか、刹那さんの遺伝子を転写したコピー人間ってわけじゃないわよね」
「ぷっ、くくくくっ。ああそうか、髪の色も似てるし、苗字も一緒だもんな」
いきなり笑われた。ちょっと話が飛躍し過ぎたかしら。
「違う違う、確かに志乃の遺伝子の多くは他の人のコピーだが、俺じゃない。確か、せとか・クレメンティって娘だったかな」
「じゃあなんで、苗字が一緒なのよ」
「志乃を作った研究の班長が俺のオヤジだったんだけど、そのチームが美濃川組って言われてたから、そのまま苗字をとって美濃川志乃になったんだよ。チームは解散したけど、志乃が成人するまでは親の代わりがいるから、俺がその役目を引き継いだのさ」
「志乃はこのことを知ってるの?」
「知ってる。何一つ秘密にはしてないよ」
こんな重要なことを、秘密にするなんて。いや、確かに他人には言いづらいか。自分がホムンクルスだなんて。
「君が望むなら、志乃とのペアを解消しても良い。志乃もそのことは承知の上だと言っていた」
「そうね」
私はこの研究所にきて強化リリィになった。その後、何人かの研究員には、嫌な目を向けられた。弱者を嘲笑うような眼差しを。彼らにとって私は、人間未満の実験動物なのねって分かってしまうほどに。
多分、志乃は生まれた時からそんな思いをしているのよね。
「今はこのままで良いわ。志乃という人間にも興味が出てきたし。私はもう行くわ、そろそろ出撃の時間なの」
そのことだけはっきり刹那さんに伝えると、私はその場を離れる。
まずは、志乃と話をしよう。別に同情したわけでも、傷をなめ合いたいわけでもない。ただなんとなく、志乃のことが知りたいと思った。それだけよ。
「あっ、そうそう。刹那さんが、人妻好きってことは内緒にしてあげるわ」
「うべっ、関係ないファイルを覗いてんじゃない!」
仕事用のパソコンに入れてる方が悪いわよね。
続く