さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉 作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)
【志乃side】
鶴紗様が去ったあと、麻莉歌を含めた私たち3人はゆっくりと昼食を食べていた。
「じゃあ、麻莉歌もグリ子と一緒で、普通科の中学校に
「志乃ちゃんは違うの?」
「そいつは不登校なのよ」
「ぶっ!!」
食べかけていた肉まんを吐き出しそうになる。
グリ子……もしかして、さっきあだ名で紹介したのを根に持ってるのかな?
「……学校に行ってないの? 学校でいじめられたとか?」
「違う、違う! 確かに学校には行ってないけど……研究の手伝いとか訓練が忙しいから入ってないの! ちゃんと施設で勉強はしてるよ」
確か、裏から手を回してもらって、中学校を卒業したことにしてもらえる……はず。
「そう言えば、そのアステリオンは麻莉歌の
「アス……テリオン?」
「それよ、それ」
私の質問に麻莉歌が首をかしげていると、グリ子がそばに立てかけてあったアステリオンを指さした。
麻莉歌、自分の
「やっぱり、私がいた施設に返した方が良いかな?」
「良いんじゃないかしら、返さなくても。契約も済んでるみたいだし、そんなものを返されても困るでしょ」
私は普段
「……さてと、私は百合ヶ丘に寄ってから帰るよ」
私は肉まんの包み紙を片付けながら立ち上がった。
「お姉さんによろしくね」
「からかわないでよ!!」
あれ? せとか様のこと、グリ子に言ったっけ?
【麻莉歌side】
私は志乃ちゃんとグリ子ちゃんに連れられて、2人が所属する
「し、失礼しま……す」
「おぉ、君が鉄麻莉歌か。俺は
研究室の扉を開けたら白髪の男性が椅子に座っていた。座っていたんだけど……
「刹那さん、その鼻メガネはなに?」
「いや。お前たちから、怖がりの女の子だって聞いたから、こちらに害がないことを主張しようと思ってな」
志乃ちゃんの質問に、刹那さんはドヤ顔で答える。
確かに怖くないけど、危ない人に見える……。
「さて、早速だが本題に移るぞ」
ドヤ顔から戻ったと思ったら、落ち着いた表情で私を見る。
鼻メガネ、外すんだ……
「麻莉歌、君さえよければここでリリィとして所属しないか?」
……えっ?
「ちょっと待ちなさい鼻メガネ」
グリ子ちゃんが私の前に出て反論する。
「誰が鼻メガネだ⁉」
「アンタよ。
小さいのにしっかりしてて偉いなぁ……あっ、私と同い年だっけ。
「いや、リリィになれるスキラー数値を持つなら、検査をいつでも受けられる環境にいた方が良い。それに、今回のようなことにならないよう、ある程度の後ろ盾も必要だ」
「それは分かるけど、
いつの間にか、刹那さんの鼻メガネをつけて鏡の前にいた志乃ちゃんが、怒られた子供みたいに近くに来た。
「私はもっと一緒に居たいな。グリ子みたいな平日泊りじゃなくても、通いとか……あっ、そうだ。麻莉歌って料理とか掃除は得意?」
「? ……人並みにできると思うよ」
「よし、採用」
グリ子ちゃんは手のひらを返して私の研究所所属を推してきた。
「麻莉歌はどう? もしかしたら、
志乃ちゃんが上目遣いで聞いてくる。
私……私は
「ここに居たいです。私に戦う力があるなら、少しでも誰かの役にたてるなら」
「なら、決まりだね」
志乃ちゃんは満面の笑みを向けてくる。私を後押ししてくれる、勇気の出る笑顔。
「……そうだ、3人になるんだったら、チーム名を考えてくれ」
「チーム名?」
「ああ、さすがに3人にもなると、報告書に名前を書く時に大変なんだよ」
刹那さんとグリ子ちゃんの話す声が聞こえる。
チーム名か……なんか部活動みたい。
「チーム名ねぇ……美濃川軍団とか?」
「それだと本格的に悪の組織みたいだな」
「……刹那さん、これ何?」
2人が私たちのチーム名について話していると、志乃ちゃんが机の上に置いてある資料に目をやった。
「冬に行く社員旅行のパンフレットだ。グリ子、麻莉歌、お前たちも行けるぞ」
「電車で行く旅行か……電車は英語でメトロ……SL」
「いや、トレインよ。メトロは地下鉄で、SLは蒸気機関車」
グリ子ちゃんがヤレヤレと頭を抱える。
「あぁそうか……トレイン……ズ……トレインズ! 私たちは3人でトレインズ!!」
「「「……」」」
かくして、志乃ちゃん、グリ子ちゃん、私はトレインズになったのでした。
【グリ子side】
「あんな、ラジオネームみたいな決め方で良かったのかしら」
麻莉歌が私たちの仲間になった日の夜、私は研究所のPCで彼女が受けた施術について調べてみた。
刹那さん、ハッキングソフトはもっとちゃんと隠しときなさいよ。
「あった……スキラー数値78……結構高いわね」
※スキラー数値:人物(主にリリィ)のマギ出力を0~100で数値化したもの。
……おかしい、初回の検査では51。2回目、3回目……4回目の検査で一気に78に上がっている。
「……これは、レポートかしら?」
……!! “
見つけたレポートには、
……麻莉歌のいた施設が彼女の保有権を放棄したのは、もう実験が終わっていたからなのね……これじゃあ、まるで人体実験じゃない。
「志乃……私たちのいる世界の闇は、地獄の底の色をしているのね」
第4話に続く