さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉   作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)

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第3話 結成トレインズ(5)~採用基準は生活力~

【志乃side】

 鶴紗様が去ったあと、麻莉歌を含めた私たち3人はゆっくりと昼食を食べていた。

「じゃあ、麻莉歌もグリ子と一緒で、普通科の中学校に(かよ)ってるんだね」

「志乃ちゃんは違うの?」

「そいつは不登校なのよ」

「ぶっ!!」

 食べかけていた肉まんを吐き出しそうになる。

 グリ子……もしかして、さっきあだ名で紹介したのを根に持ってるのかな?

「……学校に行ってないの? 学校でいじめられたとか?」

「違う、違う! 確かに学校には行ってないけど……研究の手伝いとか訓練が忙しいから入ってないの! ちゃんと施設で勉強はしてるよ」

 確か、裏から手を回してもらって、中学校を卒業したことにしてもらえる……はず。

「そう言えば、そのアステリオンは麻莉歌のCHARM(チャーム)なの?」

「アス……テリオン?」

「それよ、それ」

 私の質問に麻莉歌が首をかしげていると、グリ子がそばに立てかけてあったアステリオンを指さした。

 麻莉歌、自分のCHARM(チャーム)の名前も知らなかったんだね。

「やっぱり、私がいた施設に返した方が良いかな?」

「良いんじゃないかしら、返さなくても。契約も済んでるみたいだし、そんなものを返されても困るでしょ」

 私は普段CHARM(チャーム)を使ってないから、よく分からないや。

「……さてと、私は百合ヶ丘に寄ってから帰るよ」

 私は肉まんの包み紙を片付けながら立ち上がった。

「お姉さんによろしくね」

「からかわないでよ!!」

 あれ? せとか様のこと、グリ子に言ったっけ?

 

【麻莉歌side】

 私は志乃ちゃんとグリ子ちゃんに連れられて、2人が所属するGEHENA(ゲヘナ)の研究所を訪れた。

「し、失礼しま……す」

「おぉ、君が鉄麻莉歌か。俺は美濃川刹那(みのがわ・せつな)、この研究所で主にデータ収集・管理をしている。志乃と(まぎ)らわしいから刹那さんと呼んでくれ」

 研究室の扉を開けたら白髪の男性が椅子に座っていた。座っていたんだけど……

「刹那さん、その鼻メガネはなに?」

「いや。お前たちから、怖がりの女の子だって聞いたから、こちらに害がないことを主張しようと思ってな」

 志乃ちゃんの質問に、刹那さんはドヤ顔で答える。

 確かに怖くないけど、危ない人に見える……。

「さて、早速だが本題に移るぞ」

 ドヤ顔から戻ったと思ったら、落ち着いた表情で私を見る。

 鼻メガネ、外すんだ……

「麻莉歌、君さえよければここでリリィとして所属しないか?」

 ……えっ?

「ちょっと待ちなさい鼻メガネ」

 グリ子ちゃんが私の前に出て反論する。

「誰が鼻メガネだ⁉」

「アンタよ。折角(せっかく)GEHENA(ゲヘナ)の研究所から逃げ出してきたのに、またGEHENA(ゲヘナ)研究所の所属にしてどうするのよ」

 小さいのにしっかりしてて偉いなぁ……あっ、私と同い年だっけ。

「いや、リリィになれるスキラー数値を持つなら、検査をいつでも受けられる環境にいた方が良い。それに、今回のようなことにならないよう、ある程度の後ろ盾も必要だ」

「それは分かるけど、GEHENA(ゲヘナ)じゃなくても……志乃、アンタはどう思っ、鼻メガネで遊んでるんじゃないわよ!」

 いつの間にか、刹那さんの鼻メガネをつけて鏡の前にいた志乃ちゃんが、怒られた子供みたいに近くに来た。

「私はもっと一緒に居たいな。グリ子みたいな平日泊りじゃなくても、通いとか……あっ、そうだ。麻莉歌って料理とか掃除は得意?」

「? ……人並みにできると思うよ」

「よし、採用」

 グリ子ちゃんは手のひらを返して私の研究所所属を推してきた。

「麻莉歌はどう? もしかしたら、HUGE(ヒュージ)と戦うことになるかもしれないけど、その時は逃げても全然良いから」

 志乃ちゃんが上目遣いで聞いてくる。

 私……私は

「ここに居たいです。私に戦う力があるなら、少しでも誰かの役にたてるなら」

「なら、決まりだね」

 志乃ちゃんは満面の笑みを向けてくる。私を後押ししてくれる、勇気の出る笑顔。

「……そうだ、3人になるんだったら、チーム名を考えてくれ」

「チーム名?」

「ああ、さすがに3人にもなると、報告書に名前を書く時に大変なんだよ」

 刹那さんとグリ子ちゃんの話す声が聞こえる。

 チーム名か……なんか部活動みたい。

「チーム名ねぇ……美濃川軍団とか?」

「それだと本格的に悪の組織みたいだな」

「……刹那さん、これ何?」

 2人が私たちのチーム名について話していると、志乃ちゃんが机の上に置いてある資料に目をやった。

「冬に行く社員旅行のパンフレットだ。グリ子、麻莉歌、お前たちも行けるぞ」

「電車で行く旅行か……電車は英語でメトロ……SL」

「いや、トレインよ。メトロは地下鉄で、SLは蒸気機関車」

 グリ子ちゃんがヤレヤレと頭を抱える。

「あぁそうか……トレイン……ズ……トレインズ! 私たちは3人でトレインズ!!」

「「「……」」」

 かくして、志乃ちゃん、グリ子ちゃん、私はトレインズになったのでした。

 

【グリ子side】

「あんな、ラジオネームみたいな決め方で良かったのかしら」

 麻莉歌が私たちの仲間になった日の夜、私は研究所のPCで彼女が受けた施術について調べてみた。

 刹那さん、ハッキングソフトはもっとちゃんと隠しときなさいよ。

「あった……スキラー数値78……結構高いわね」

 

 ※スキラー数値:人物(主にリリィ)のマギ出力を0~100で数値化したもの。

 

 ……おかしい、初回の検査では51。2回目、3回目……4回目の検査で一気に78に上がっている。

「……これは、レポートかしら?」

 ……!! “化学物質(ケミカル)μ(ミュー)と精神ストレスによるスキラー数値の変化について”、ですって!?

 見つけたレポートには、μ(ミュー)という物質と、恐怖による精神へのストレスによってスキラー数値を上げる実験について書かれていた。

 ……麻莉歌のいた施設が彼女の保有権を放棄したのは、もう実験が終わっていたからなのね……これじゃあ、まるで人体実験じゃない。

「志乃……私たちのいる世界の闇は、地獄の底の色をしているのね」

 

第4話に続く

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