さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉 作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)
【グリ子side】
「
「は~い」
麻莉歌の家事スキルはかなり高く(志乃と私が低すぎるのもあるけど)、掃除・洗濯・食事の準備を買って出てくれた。おかげで、ゴミ屋敷一歩手前だった志乃の部屋も、ちょっと汚い程度に回復した。
実は志乃が使っていた社宅は片づければ普通に広めで、3人で使っても余裕で生活できている。
「グリ子ちゃん、読んだ本は本棚に戻してね」
「……えぇ」
今までは本棚が見つからなかったから、ついその
「そう言えば……グリ子の名前が書かれた箱があったけど、これ何?」
志乃は『グリ子』とだけ書かれた小さい箱を持ってきた。
「中身はなにかしら?」
「ん~とね……これって、手錠?」
なんでそんな物が……あっ、アルケミートレースの参考にしようと思って、刹那さんに頼んでおいたんだったわね……私もそろそろ強くならないと。
「お~、私、本物の手錠とか初めて見たよ」
「見たことあったらダメなんじゃないかな」
2人が手錠を取り出していろんな角度から観察し始める。
「美人すぎる罪で逮捕する~」
「わぁ~」
「……壊さないでよ」
「「……あ!?」」
あ!? ってなによ。なにか嫌な予感が……
2人の方を見ると、志乃の右手と麻莉歌の左手が手錠で繋がれていた。
【麻莉歌side】
「まったく、今度は何をしたんだ? 志乃」
「なんで、話を聞く前に私が原因だって決めつけてるの!?」
繋がった手錠をどうにかするために、私、志乃ちゃん、グリ子ちゃんは、手錠を手配した刹那さんのもとを訪れた。
「違うのか?」
「違わ…ないけど」
少し悔しそうに反論する志乃ちゃん。
私も何も考えずに遊びに付き合っちゃったんだけどね。
「グリ子が頼んだ手錠を触ってたらこうなっちゃって…って言うか、なんで鍵がないの?」
「発注ミスだな……依頼するときに値段しか見てなかったから、鍵のついてない不良品をつかまされたんだ」
もうちょっと深刻に考えてほしいんだけどな。
「グリ子、なんでこんな本格的なものを頼んだの?」
「おもちゃを真似ても、中途半端な強度になりそうだったから。戦闘に使うんだったら、ちゃんとした造りのものが良いでしょ。念のために」
私の質問にグリ子ちゃんが淡々と答える。グリ子ちゃんは、さっきから手錠をガチャガチャ触っては構造を確認している。
「しかたないけど、ぶっ壊そうか」
「駄目よ。ちゃんとトレースできるまで壊さないで」
「出撃の時はどうするの? これじゃあ、戦いづらくて仕方ないよ」
「
志乃ちゃんと強い絆で……良いかも。
2人が口論をする隣で、この状況を少しだけ楽しんでいる私がいた。
【志乃side】
「困っちゃうよねぇ~」
「その割には、のん気に肉まん食べてるわね」
刹那さんによると、手錠の鍵が用意できるまで3日ほどかかるとのことだった。さすがに3日間もこのままでは困るので、私、麻莉歌、グリ子は、手錠の製作元に鍵をもらいに行くことにした。
3日間着替えられないのは嫌すぎるよ。他にも色々あるけど。
「グリ子だって、輪っかを作って遊んでるじゃん」
今は手錠の制作会社へ行く電車を待って、駅前の広場でおやつを食べている。
「これは、その手錠をトレースする練習をしてるのよ」
「……志乃、何をしているんだ?」
「あれ? シン様。ごきげんよう」
「「………??」」
いつの間にか、呆れたような困惑したような表情で
シン様は、今は百合ヶ丘女学院に籍を置いているリリィだけど、もともとは青乃沼実業女学院の生徒で、一部では「
「ん? 二人ともどうしたの?」
麻莉歌とグリ子が無反応なので気にしてみると、二人とも私を凝視していた。
「えっと……なんて言うか」
「アンタの口から、
酷っ! あっそうか、麻莉歌とグリ子は百合ヶ丘に行ったことがないから、百合ヶ丘の文化に馴染みがないのか。
「……志乃、何か悪いことをしたのか?」
シン様まで! ……もしかして、知り合いに会うたびに呆れられたり心配されたりするのかな。
【麻莉歌side】
「実際にあるんだな、漫画みたいなことが……せとかには見つからないようにしろよ。きっと説明する前に発狂するぞ」
シン様と会った後、私たちはシン様を交えて談笑することになった。シン様も電車を待っているとのことで、いい時間つぶしになると言っていた。
シン様、綺麗な人だなぁ。お化粧をガッツリしてるわけじゃないけど、スタイルが良いからとっても魅力的……それに……
「どうかしたか?」
「い、いえ何も」
見てたのバレちゃった。恥ずかしい。
「その、素敵な服だなぁって思って」
「そうか? 部屋にあったものをテキトーに合わせただけなんだが……そうだ、今度の休みに服でも買いに行くか?」
「良いんですか? ぜひ行きたいです……二人も一緒に行く?」
「私、オシャレとか分かんないから……」
志乃ちゃんの顔を覗くと、少し気恥ずかしそうに頬を掻いていた。
「おもちゃ屋さんにも寄れるよ」
「行く行く! 前の日に宿題終わらせておくね」
「私はパス」
グリ子ちゃんが、こっちを見ずに話に入ってくる。
「グリ子ちゃん、新しいソックス買わなくて良いの? 生地が薄くなってきてたよ」
「……じゃあ行く……あっ」
私が話しかけると、アルケミートレースで造っていた手錠が霧散した。
声をかけない方がよかったみたいだね。
「それはそうと、手錠は隠したらどうなんだ。近くを通る人がみんな二度見してるぞ」
「グリ子がスキルの練習をするからって……グリ子?」
志乃ちゃんが話しかけると、グリ子ちゃんは手元の通信端末を見ていた。
さっき手錠が壊れたのは、端末のバイブレーションに気を取られたからかな?
「来たわよ」
「電車来たの? まだ10分くらいはあるような」
「いえ…休日出勤の時間よ」
グリ子ちゃんが向けてきた端末には「
【グリ子side】
研究所からの通信要請で
「2人は下がっていろ!」
私たちに指示を飛ばし、シン様が
「私たちも戦います。こうすれば大丈夫!」
「……アンタらねぇ」
志乃と麻莉歌は手が手錠で繋がっている。どうしたものかと悩んでいると、志乃が麻莉歌を抱きかかえていた。
そのドヤ顔は止めなさい、ぶん殴りたくなるわ。
「しっかり捕まってて、麻莉歌」
「う、うん」
行っちゃった。
現れた
「震えて眠れえええぇぇぇ!!」
はずよね……
「帰ったら宿題追加ね……待ちなさい」
(2)に続く