さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉 作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)
【
「……一旦戻るよ」
「
私を抱いたままじゃ深追いは出来ないみたい。
「2人とも大丈夫?」
グリ子ちゃんも近づいてきて、3人で近くの公園まで移動する。
「もう仕方ないから鎖を……! 麻莉歌、顔が真っ青よ」
「え?」
グリ子ちゃんが、両手で私の顔を自分の方に向ける。
私の……顔?
「さっき
志乃ちゃん、それで直ぐに引き返してくれたんだね。
……私の手、まだ少し震えてる…今は落ち着いてきたけど、息苦しさがまだ残ってる……胃液が逆流しそうなほどの喉の渇きが気持ち悪い。
……とても戦っていられるような状態じゃない。
「……わ、私、
志乃ちゃんの胸に顔を埋める。怖いからだけじゃない、まともに戦えない自分が情けなくて。
研究所での練習だと大丈夫だったのに……なんで……なんで私だけ戦えないの?
「ごめんなさい、私の
少し休憩したら、気持ちも落ち着いてきた。
「……麻莉歌、それは
グリ子ちゃんが、私の肩に手を置く。
「麻莉歌が
実験中に使われていた薬物には恐怖心を向上させるものもあって、「
貴女のその感情は、貴女の心が弱いとか、臆病者だからというわけじゃないの」
顔を上げてグリ子ちゃんを見ると、冷静だけど、とても暖かい目が私を見つめてる。
「ごめんなさい。もともと居た研究所のことは、あんまり思い出したくないだろうと思って黙ってたの」
「……ううん、ありがとう……私、リリィを辞めた方が良いのかな?」
「……麻莉歌はどうしたいの?」
志乃ちゃんが逆に私に聞いてきた。そう言えば、戦線離脱してからずっと手を握ってくれてる。
「麻莉歌がどうするべきか。じゃなくて、麻莉歌がどうしたいかの方が大事だよ」
……私……私が、本当にしたいこと……
「私はリリィで居たいよ。
孤児院にもね、
それがたまらなく切なくて、やるせなくて……
でも、そんな子たちを一人でも増やしたくない」
本音を打ち明けられた安心感からか、理想を実現できない落胆からか、目頭が熱くなる。
「麻莉歌」
志乃ちゃんが、私の流した涙をハンカチでぬぐうと、自分の顔を私の顔に近づける。
「絶対に守るから」
志乃ちゃんの
【グリ子side】
「お前たち、無事か?」
3人で後方支援に回ろうかと相談していると、シン様が合流してきた。
「シン様、
「ハァ、ハァ……応援が来たから少し下がらせてもらった……ラージ級の
志乃の質問に、息を切らしながら答えるシン様。
私たちも結構長い間休憩してたと思うけど、初めに見たスモール級3体以外にも出現したのね……こうなったら、私たちも戦線に復帰した方が良さそうね。
「志乃、麻莉歌。鎖はもう壊しても良いわよ」
「良いの?」
「実は、鎖のトレースはマスターしたの。ほら」
いそいそと麻莉歌を抱こうとする志乃に、アルケミートレースで作製した
その抱っこ戦法は止めなさい。危ないから、色々と。
「よ~~し……震えて眠れ!」
鈍い金属音が響く。麻莉歌を下ろした志乃が、拳を手錠の鎖に叩きつけていた。
やるとは思ったけど、そんなので鎖を壊せるわけないじゃない。普段
「無理か……シン様、お願いします」
「よし、鎖をこっちに向けろ」
言うが早いか、志乃がピンと鎖を張ると、シン様が
「ストーーーーップ!」
「……どうしたの?」
私の制止にキョトンと首をかしげる志乃。シン様も不思議そうに見つめてくる。
「危ないでしょ! どう考えても」
「だってこうした方が」
「「カッコいいから」」
ハモるんじゃないわよ、まったく。シン様も疲労が溜まって、おかしなテンションになってるのかしら。
「ぷっ……すまんな、つい冗談に乗っただけだ」
……シン様、意外とノリがいい所があるのね。
「ちゃんと鎖用のカッターを持ってきたわよ」
「……ねぇ、鎖くらい始めに切っちゃっても良かったんじゃない?」
私が鎖を切ると、切れた鎖の先を見つめながら志乃が聞いてきた。
「私のアルケミートレースは、自分が見た実物を優先してトレースする傾向にあるから、破損があるとトレースが上手くできないの。まぁ、練習次第だと思うけど」
「……面白がってただけだったりして」
「そんなことないわよ」
……ちょっとあるけど
「これからどうするの?」
麻莉歌が
ずいぶん顔色も良くなってきたわね。
「私に考えがあるんだけど、乗ってくれるかしら?」
【志乃side】
グリ子が提案してきたのは、私たち3人のフォーメーション。
私が前衛で接近戦、麻莉歌は後衛の最後方で狙撃、グリ子が中衛よりやや下がり他メンバー(主に麻莉歌)のサポートをするという、3人が一直線に並ぶフォーメーション。
「……イケると思う」
「けど、私、志乃ちゃんにも当てちゃうかも」
私はフォーメーションに賛同するが、麻莉歌は自信なさげに下を向く。
フォーメーションとか、さり気に憧れてたから楽しみなんだけどなぁ。
「大丈夫よ、アンタの射撃の腕は平均より高いし、志乃との距離を考えて打てば」
「任せろ、私もサポートする」
グリ子は自信満々に主張し、シン様も
4人で戦闘区域に戻ると、私とシン様は2人から離れて前線へ向かった。
「……ちゃんと出来てるよ。麻莉歌」
私からは麻莉歌の姿は確認できないが、麻莉歌の撃った
……貴女は私よりも、よっぽどリリィらしいリリィだよ。
【麻莉歌side】
自分でも怖いくらい上手くいってる。
私の撃つ
「麻莉歌。しつこいようだけど、グロッキーになりそうだったら早めに言うのよ」
さっきは中衛に居るって言ってたけど、グリ子ちゃんは私のそばに居てくれる。
「このくらいの距離なら大丈夫みたい」
さっきみたいな目の前じゃなければ、吐き気も震えも出てこない。
「射程内の
「うん!」
私の視線の先に、志乃ちゃんのジョルトブローで動きの止まった
「……どうか
私の放った最後の一撃は
「グリ子ちゃん」
「なに?」
「本当は、私が
自信がなくなったとかじゃないよ。ただ、志乃ちゃんは優しいから、私の意思を尊重してくれたけど、
「……勧めはしないわ」
「やっぱり」
「でも、リリィに
グリ子ちゃんの言葉は、少し
「それに、麻莉歌が居てくれると…その、私も嬉しいし」
「ほら、くっちゃべってないで、他の
「……私も、2人と出会えて幸せだと思えるよ」
照れ隠しのために早足のグリ子ちゃんには、私の言葉は届かなかったかもしれない。
「ちょっと暑くなってきたわね…麻莉歌、早く」
……聞こえてたみたいだね。
(3)へ続く