さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉 作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)
【
「
今日は待ちに待った休日。いつもの自主トレを済ませた私が、自室のクッションに体を埋めてアニメを見ていると、
「ちょっと。乙女の園に入ってこないでよ」
「何が、
グリ子が刹那さんを軽く睨むと、簡易実験セットを体で隠した。
10回くらい説明してくれたけど、なんの実験なのか
「良いじゃない、古いPCは余ってるんだから」
「ちゃんと、局長に許可とったのか?」
「……あ゛」
「とってないんだな」
「むぅ……いちいち申請を出すのが面倒くさいのよ」
「俺だって面倒だけど、データが入る系の物は紛失すると大騒ぎになるからな」
「私は困らないわよ」
「困るんだよ! 主にうちの部署が!」
「あの~、私にお客さんって」
グリ子と刹那さんが言い合ってると、麻莉歌が会話の途切れたタイミングで割って入った。
「おっ、そうだった。入って良いよ。」
「…お姉ちゃ~ん!!」
「うわっと……
刹那さんに促されて誰かが部屋に入ってきたと思ったら、金髪の少女が麻莉歌に向かって飛び込んできた。
あれ? この
「志乃、私たちこの娘とどこかで会ったかしら?」
グリ子も見覚えがあるようで、私に耳打ちをしてきた。
「どうしてここに? 1人で来たの?」
「うんとね。最近、お姉ちゃんと遊べないから、シスターに内緒でお姉ちゃんに付いてきたの」
麻莉歌の質問に笑顔で答える少女。
「それで、入口のおじさんにお姉ちゃんの名前を言ったら、このおじさんが――」
「刹那さん」
「……刹那さんが来て、ここに連れてきてもらったの」
少女の説明を強引に訂正する刹那さん。
小さい子供にとっては、20歳を超えたらおじさんだよ。まあ、刹那さんは30歳くらいだから、おじさんなんだけどね。
「あっ、
「……? ……あの時のお姉ちゃんたち!」
少女の顔をまじまじと見ていたグリ子が声をかけると、少女の方から私たちに近づいてきた。
「明日嘉ちゃん、2人のこと知ってるの?」
「前にね、一緒にみっちゃんを探してくれたの」
思い出した。グリ子と初めて出撃した日に、一緒に猫のみっちゃんを探した女の子だ。
少女の名前は
そう言えば、私も小さいころに無断で施設を抜け出したりしたっけ。
「ここが食堂だよ。お金がないときは、時々ここでアルバイトもしてるんだ」
「
今は、明日嘉に研究所の中を案内している。とは言っても、広場、売店を回ってここに来たから、あとは冗談の通じそうな職員のいる部署にでも行こうかな。
「ちょっと、志乃」
次の行き先を考えていると、グリ子が手招きをしてきた。
「あんまり部外者を歩き回らせない方が良いんじゃない?」
「だからコッソリ隠密してるんだよ」
「そうじゃなくて……それに、何かの間違いでエグいものでも目に入ったら」
「そういう場所はかわしながら歩いてるから大丈夫だよ」
「……それで、次はどこに行くのかしら?」
「そうだなぁ……事務室は今忙しいだろうし、薬品倉庫は鍵がかかってるし、図書室には難しい本しかないし、実験室は怖いおじさんもいるし」
【麻莉歌side】
「秘儀・瞬間移動!」
「志乃ちゃん凄ぉい!?」
明日嘉ちゃんを案内する場所に困った私たちは、演習場で遊ぶことになった。
演習場とは言っても、体育館みたいな大きな施設じゃなくて、ダンス教室で使うくらいの大きさの部屋だけどね。私たちのいる施設はあくまで研究所だから。
「あれって、縮地で目にもとまらぬ速さで動いてるだけよね。たしかに凄いけど、瞬間移動とは違うんじゃない?」
「まぁ、本人が満足なら良いんじゃないかな。どっちでも」
「……あっ、転んだ」
グリ子ちゃんと志乃ちゃんの動きについて感想を話していると、志乃ちゃんが足をもつれさせて転倒した。
「志乃ちゃん大丈夫~?」
明日嘉ちゃんが、繋いでいた私の手を離して志乃ちゃんに駆け寄る。
「いや~、失敗、失敗。今度は、グリ子が何か見せてよ」
明日嘉ちゃんの頭をなでながら、志乃ちゃんがリクエストを出す。
良かった、全然大丈夫そうだね。
「嫌よ。宴会芸じゃないんだから、そんなおいそれと見せたく――」
「グリちゃんも凄いこと出来るの! 見たい! 見たい!」
グリ子ちゃんの反論を遮って、明日嘉ちゃんが期待の眼差しを向ける。
「……こんなことくらいしか出来ないわよ」
渋々とアルケミートレースを発動するグリ子ちゃん。その手には、野球ボール大の
「わぁ~、可愛い!」
「これってグリ子ちゃん?」
グリ子ちゃんの作った球体には、左右に分かれたおさげが付いている。よく見ると、目や口も
「麻莉歌や志乃も作れるわよ」
スキルの発動と解除を繰り返して、私や志乃ちゃんの顔も作ってくれるグリ子ちゃん。
……十分宴会芸だよね。
「さぁ、今度は麻莉歌の番よ、射撃場に行きましょうか」
グリ子ちゃんはそう言って自分のターンを終わらせると、志乃ちゃんの頭を模した球体を握りつぶした。
「あぁ、私が~」
次に来たのは、射撃場……という名の裏庭。
志乃ちゃんもグリ子ちゃんもシューティングモードの
「ふぅ~……どうだったかな?」
10発撃った後、一息ついてから3人の方を向く。結果は可もなく不可もなく。
皆が見てると思ったら、ちょっと緊張しちゃった。
「お姉ちゃんカッコ良い!!」
「ありがとう。でも、2人と比べると地味じゃなかったかな?」
アステリオンの安全装置を入れたら、明日嘉ちゃんが私に飛び込んできた。
「ううん、
「最近、
「ええ、操作にだいぶ慣れてきたみたいね。これなら得意技と言っても差し支えないんじゃないかしら」
志乃ちゃんとグリ子ちゃんも、遅れて私のもとに来て称賛してくれた。私が射撃をしている間は、2人が明日嘉ちゃんの手を握ってくれていた。
「後はどうしよう?」
「お姉ちゃん、お腹すいた~」
明日嘉ちゃんがお腹をさする。
そう言えば、もう晩御飯の時間だっけ。ふふっ、なんだか園に居たときみたいだなあ。
(2)へ続く