さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉 作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)
【
晩御飯を食べた後、みんなで相談して
「お姉ちゃん、チャンネル変えても良い?」
今はお風呂の時間まで、毎日恒例のテレビタイムを堪能している。
『そこには、明らかに何かが居た形跡が……』
「げっ」
明日嘉がテレビのチャンネルを変えると、気味の悪い声色のナレーションが聞こえてきた。テレビには、暗視カメラ越しの廃墟が移っている。
最近見てなかったけど、やっぱり無理なんだよなぁ……って言うか、この
「……どうしたの? 顔色悪いわよ」
少しの間、心の中で心霊番組に言いがかりをしていると、向かいに座っていたグリ子が、心配そうな顔で私の顔を覗いてきた。
「……実は、苦手なの。」
「苦手? 心霊番組が?」
「って言うか、ホラー系全般ダメ」
「でもアンタ、ホラーアニメは平気じゃなかった?」
「……目をつむってれば見れるだけ、原作の漫画とかは静止してるから直視できないし」
「そうか……そうなのね」
グリ子が私を見てにやついてる。
だから言いたくなかったのに。
「いやぁ、アンタにも可愛い弱点があったんだなぁって思って」
グリ子がいたずらっぽく笑っているが不思議と嫌悪感がしない。
……なんでだろ?
「…だったら言ってくれればよかったのに」
「これ嫌いだったの? ごめんね」
いつの間にか、
なんか……無理して内緒にしなくても良かったかも。
「あれ? あれれ? 無い、無い無い無い、お財布が無~い!」
大浴場の脱衣場で着替えてると、ポケットに入れていたはずの財布がないことに気が付いた。
「どこかで落としたのかな? 最後に財布を開いたのはいつ?」
財布を探してアタフタしてると、麻莉歌が私の脱いだ服を探りながら聞いてきた。
「確か、朝に食券をまとめて買ったのが最後だったはず」
「…まったく……まだ8時前ね、探しに行くわよ」
「また探検に行くの?」
グリ子が施設の中へ戻るよう提案すると、明日嘉も乗ってきてくれた。
「良いの?」
「仕方なくよ…アンタ財布に、なんでもかんでも突っ込む癖があるでしょ。何か機密情報に関係するものもあるかもしれないじゃない」
「それに、お財布がないと不安でしょ」
グリ子も麻莉歌も私に慈愛の眼差しを向けてくる。
「みんな、ありがとう。もうこんなに暗いのに………いってらっしゃい」
「アンタも行くのよ!」
ですよねー……けど、夜の研究所とかホラーの定番だし……私、ショック死するかもしれないよ。
「明日嘉、怖いと思うから手をつないで行こうね」
「うん。私も怖いから離さないでね」
……今もしかして、小学生に気を使われた?
研究所の中には夜勤のスタッフもいるけど、廊下は暗いし明かりのついてない部屋も多いし、お化けが出てきそうな雰囲気が漂ってる。
「ふ~っ、ふ~っ! ふ~っ!」
「ちょっとは落ち着きなさいよ。過呼吸になるわよ」
グリ子が懐中電灯で
怖いんだから仕方ないじゃない。さっき目に入った心霊番組が、ちょうど最高潮のシーンだったから脳裏に焼き付いちゃったんだよ!
私たちが最初に向かったのは図書館。
今日は朝ご飯を食べた後、午前中はここで刹那さん(と
「そう言えば、私の行ってる学校に、図書館に出る幽霊の噂があって」
「なんで今その話をするの!?」
みんなで私が居た机や落とし物コーナーを見て回っていると、グリ子が突然怪談の話題を振ってきた
「いえ、理攻めにして説明すれば怖くなくなるんじゃないかと思って」
「そういう問題じゃないの! オバケや幽霊を信じてるわけじゃないんだけど、小さいころに見たホラーがトラウマになってるの!」
グリ子と話していると、本棚を見てきてくれた麻莉歌と明日嘉が戻ってきた。
「……こっちは探し終わったよ…でも
「
「
なんか音がしたなんか音がしたなんか音がしたなんか音がした!
「ここの窓、閉め忘れてるわね」
目を伏せてると、グリ子の呆れ声が聞こえた。
窓? なんだ、風の音か。
「財布はあった?」
グリ子が窓を閉めながら聞くと、みんな顔を横に振る。
「じゃあ次は……」
【明日嘉side】
図書館を出た後、私たちは食堂に向かった。
「しょ、食堂はまだ空いてるから、真っ暗じゃないよね」
志乃ちゃん嬉しそう。私も暗い所はあんまり好きじゃないから、ちょっと嬉しい。
「ピギャ~~~!!」
突然奇声とともに志乃ちゃんの姿が消える。
「志乃ちゃん? どうしたの?」
「……水漏れね、ここはトイレが近いから。多分、首にでも雫が当たって驚いたんじゃないかしら」
お姉ちゃんが不思議がっていると、グリちゃんが天井に光を当てて仮説を立てる。
確かに水が漏れてるところがあるね。こういう時って、とりあえずバケツを置いておくんだっけ?
……志乃ちゃん、どっか行っちゃった。
「これって縮地?」
「そうみたいね、パニックになってスキルが暴走してるんじゃないかしら?」
「早く追いかけないと」
「それよりも先に食堂を探しちゃいましょう」
「でも、志乃ちゃん大丈夫かな?」
「私たちじゃ追いつけないし、とっとと財布を見つけた方が志乃も助かるでしょ……それに、知らない場所で迷子になったってわけでもないから大丈夫よ。多分」
お姉ちゃんもグリちゃんもこれからどうするか話し合ってる。
私もお話ししたい…けど……なんか……頭がぼーっとしてきた……
「ふわぁ~」
「明日嘉ちゃん、眠いの?」
「うん」
あくびで出た涙をぬぐっていると、お姉ちゃんが目線を合わせてきた。
「そっか、明日嘉ちゃんたちはいつも9時には寝てるもんね」
「1度部屋に戻りましょうか、財布は最悪明日探せばいいし。志乃は……まぁ大丈夫でしょう」
「はーい………きゃ」
眠すぎて転びそうになる。
お姉ちゃんが手を引いてくれてなかったら倒れちゃうところだったよ。
「気を付けてね」
「ありがとう……そう言えば、志乃ちゃんも転んでたね」
「……それよ!」
グリちゃんが少し興奮して私を見る。
……もう眠いからオンブしてほしい。
【志乃side】
「はぁ、はぁはぁはぁ、はぁはぁ……はぁはぁ」
やっと……落ち着いてきた。
ここは……トイレかぁ……無茶苦茶に走ってきたから、どうやってここに来たか分かんないけど。
かっこ悪いところ見られちゃたなぁ……
「びぶっ……は、入ってま~す」
突然ドアをノックされてビックリしちゃったよ。
「志乃ちゃん、迎えに来たよ」
「明日嘉……と、私の財布!!」
トイレの扉をノックしてきた明日嘉の手には、私の財布が握られていた。
「どこにあったの?」
「演習場よ。アンタがすっ転んだ場所の近くに落ちてたわよ」
グリ子が補足する。
……あっ、あの時か
「明日嘉ちゃんが見つけてくれたんだよ。それに、『志乃ちゃんに渡すまで戻らない』ってここまで付いてきてくれたし」
「そうなんだ………ありがとう」
「えへへ」
呆れるグリ子に、明日嘉を後ろから支える麻莉歌。明日嘉も私がお礼を言うと、照れくさそうに笑顔を向けてくれた。
部屋に戻る途中で、明日嘉はスイッチが切れたみたいに眠ってしまった。詳しく聞くと、明日嘉のおかげで財布も見つかったらしい。
私のために無理して起きてくれたんだね。
(3)に続く