さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉 作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)
【グウェンドリンside】
今日は美濃川志乃とペアを組んで初めての出撃。私たち二人は、他の
午前中に
なんで戦って疲れてるのに、後処理の手伝いまでしないといけないのよ。
今は、居住区のそばまで戻って帰り支度をしている。
「お前たち、撤収するぞ!」
「志乃、行くわよ……誰? その娘?」
「さっき泣きながら歩いてたから、とりあえず連れてきたんだけど」
志乃の方を振り向くと、5歳くらいの女の子が志乃の袖を掴んでいた。
「うぐっ、ひぐっ……みっちゃんが、みっちゃんが」
「そっか、友達とはぐれたんだね。大丈夫、私たちに任せて」
志乃はしゃがんで女の子に目線を合わせると、女の子の涙をぬぐった。
「待ちなさい、もう帰りのバスが出るわよ」
「私たち二人だけなら、もうちょっと遅い便で帰れないか聞いてくるよ」
「そもそも私は……行っちゃった」
「みっちゃん! みっちゃん!」
「みっちゃんや~~~! どこにいるの~~~!」
灰色の廃墟に幼い声と間抜けな声が響く。
結局、私と志乃と女の子(名前はアスカというらしい)は現場に残ってみっちゃんを探すことになった。
私は探すとは言ってないのに。
ちなみに、アスカも迷子みたいなものなので、両親への連絡は
「グリ子も、ちゃんと探してよ~」
「探してるわよ」
声を出すのは面倒くさいけど、人の気配や人影がないか目を光らせている。
「ただ、迷子の捜索なんて、リリィの仕事じゃないんじゃないの?」
「え~~、そうかな?」
「第一、私は残るなんて言ってないのに」
「それはごめん。けど、ほかっておけないよ。頭の固い
「そうかもしれないけど、居住区の警察に任せるとか」
「通報はとっくにしてるよ。でも、アスカを一人にさせられないでしょ。みっちゃんも怪我とかで身動きが取れなくなってるのかもしれないし」
「うわ~~~~~ん! ぐずっ! み゛っぢゃ~~~~~ん!」
私と志乃が言い合ってると、アスカが泣き出してしまった。
無意味に不安をあおっちゃったみたいね。
「うぐっ!」
『おか~~~さ~~~~ん! おと~~~さ~~~ん! どこ~~~~ぉ!?』
嫌な記憶がフラッシュバックする。嫌な記憶ほど、忘れてしまうのに時間がかかるのね。
「グリ子! 大変だよ!」
「あっ、うん」
志乃に呼びかけられて、我に返る。自分でも分かるぐらい冷や汗をかいている。結構長い時間放心しちゃってたわね。
「もう時間がない。最終便が出ちゃうよ」
もうそんな時間だったのね。そういえば、日も暮れてきてもう夕方になっている。このまま夜になれば、私たちまで迷子になってしまうかもしれない。でも、
「ギリギリまで探すわよ。最悪、明日の朝までに研究所に戻れば良いでしょ」
「もちろん。けど、さっきまで乗り気じゃなかったの――」
「わ゛~~~~~!?」
志乃の言葉を遮って、アスカの悲鳴が聞こえる。いつの間にか泣き止んで、少し離れた場所にいたのね。
声のした方を見ると、スモール級
「志乃!!」
私が声をかけるのとほぼ同時に、志乃はレアスキル:縮地で
「……震えて眠れ」
蹴り上げられた
いつも不思議なんだけど、あいつら、どういう原理で爆散してるのかしら。
「大丈夫? 怪我はない?」
志乃はすぐさまアスカを抱きしめながら、体に異常がないか確認する。
「ニャー、ニャー」
二人に駆け寄る私を追い越して、一匹の猫がアスカのもとへ走る。
「みっちゃん!」
「「……え?」」
どうやら、みっちゃんっていうのは、猫のことだったみたいね。
アスカとみっちゃんを最寄りの交番まで送り、私と志乃は薄暗くなった帰路を歩いていた。
結局、帰りの送迎バスには乗れなくて、研究所まで自力で帰ることになったわね。
「アンタっていつもこうなの?」
「こう?」
「困っている人を、ほおっておけないみたいな」
志乃は夜空を仰いだ後、楽しそうに口を開いた。
「私ね、漫画とかアニメが好きでしょ。作り物だけど、中には私よりも酷い状況にいるのに、誰かのために命を懸けている人もいて。そういうのって、素直に尊敬するし、元気づけられる。なんていうか、見た目だけじゃなくて、生き方がカッコイイんだよね」
「ヒーローになりたいの?」
「ヒーローになりたいんじゃなくて、ヒーローみたいに生きていたいの」
「なにそれ」
この
【志乃side】
「そう言えば、途中からみっちゃん探しにやる気が出たみたいだったけど、何かあったの?」
私がグリ子の方を見ると、グリ子は少し考えてから下を向いた。
「小さいころに、地震に巻き込まれて家族と離れ離れになったことがあったの。今日のアスカみたいに、
「そっか」
「ええ、そうよ」
俯いて話すグリ子の横顔は、少し赤らんで見えた。
グリ子は私の少し前で立ち止まると、どこかスッキリした表情で眼を合わせてきた。
「アンタとのペアは、確か仮契約だったわね」
「そうだっけ?」
「正式にアンタとのペアを承諾するわ」
次の日、グリ子は生活用品一式を持参して私の住んでいる社宅に来ていた。
「どうしたの? この荷物」
「今日から平日はここに泊まるわ。この部屋、一人で使うには広いし、良いでしょ」
ラブコメのヒロインみたいなことを言ってる! 私が思春期の男子だったら、呪い殺されそうな展開だが、私は平均的な一般女性のつもりだ。
「他の部屋とか空いてないの?」
「空いてないらしいわ。元々いた寮も解約したから、ここに住まわせてもらわないと、部屋の前の廊下に寝泊まりするわよ」
これは脅迫されているのでは?
「それにしても、いきなりここに住むって」
「何かあった時、ここにいた方が行動しやすいし。学校と寮と研究所を1日で回るよりも楽だし。ここで同居した方が安上がりなのよ」
それが本音か。
「ま、いっか」
少しひねくれたところもあるけど、共同生活って憧れてたし。ホームズとワトソンみたいに、「相棒」って感じになったらカッコイイかな。
その後、どっちが2段ベッドの上で寝るかで揉めたが、ポーカーでは全然かなわなかった。
第2話へ続く