さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉   作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)

3 / 10
―これは……GEHENAサイドにありながらも、自分の中の正義を信じて戦うリリィたちの物語―

アサルトリリィを原作とする二次創作です。
私個人の解釈もありますがご了承ください。

登場人物のイメージはこちら(pixiv)
https://www.pixiv.net/artworks/128075214


第2話(1) 猫缶は人用ではありません

【鶴紗side】

 また一人で来てしまった。みんな心配してるかな。

 GEHENA(ゲヘナ)の息のかかった出撃。私だけでなく、何人かのリリィが外征に来ていた。私も、好き好んでここに来たんじゃない。相変わらず、GEHENA(ゲヘナ)はリリィを実験台としか見ていないような、無慈悲な命令を言ってくる。

 けど、行かないという選択肢は選ばなかった。

 私は、自慢じゃないがリリィの中では戦闘慣れしている方だ。私が行くことで、犠牲になるリリィが減るかもしれない。そう思ったら、私の足は自然と百合ヶ丘女学院の門を出ていた。

 

「すみませ~ん」

 出撃前の待機場にて。GEHENA(ゲヘナ)の職員らしき人物から、出現したHUGE(ヒュージ)の説明を聞いていると、後ろから声がした。

 胸元まである白いサイドテールをした、オレンジの瞳の少女。所属は分からないが、赤いセーラーブレザーを着ている。

「おやつを買いに行きたいので、近くのコンビニまで行ってきても良いですか?」

 ……一瞬空耳かと思った。私だけでなく、周りにいるリリィも唖然としている。

 私たちリリィの中には、戦闘の前に大量のカロリーをため込んでおく必要のある者もいる。HUGE(ヒュージ)との闘いの前にそれを怠っているのは、完全な準備不足だ。

 それが理由だとしても、このタイミングでそのことを口に出すとは。それほど切羽詰まっているのか、もしくはふざけているのか。

「食事は支給されているはずだ。勝手な行動をするな」

 怒るでも呆れるでもなく、研究員は淡々とそれだけ言うと、他の研究員たちの方へ行ってしまった。

「けちんぼだなぁ。まだ出撃まで時間があるのに」

 白いサイドテールの少女は、不満そうな顔で文句を言っている。

どうやら、本気で食料が必要なようだ。

 もしかしたら、今日の外征が億劫(おっくう)で食欲がわかなかったのかもしれない。

貴女(あなた)、これで良かったらどうぞ」

 私は非常食用に持ち歩いていた猫缶を、少女に差し出した。大したカロリーにならないかもしれないけど、少しでも足しになれば良いが。

「良いんですか? ありがとうございます」

 少女は申し訳なさそうにお礼を言うと、猫缶をポケットにしまった。

「まずはA班! 出発するぞ! 集合だ!! B班は2時間後に出陣だ!」

 拡声器を通した声が響く。ちゃんと話せないまま、私は先に待機場を後にした。

 

 サイドテールの少女と別れた後、私は10名ほどのリリィと班を組んで、指示された座標を目指していた。

 にしても、慣れていない山道はとても歩きにくい。他の皆は大丈夫か?

 他のリリィの様子を窺っていると、明らかに浮いている少女がいることに気がついた。

「貴方、もしかしてマディック?」

 紺色の三つ編みおさげを左右に結った、バトルドレスに青いコートを着た小柄な少女。その少女は、リリィの象徴であるCHARM(チャーム)を持っていなかった。

「私? ……そうよ。マディックよ」

 今の間はなんだ?

「前衛は私がするから、貴女は後方でサポートを頼む。危なくなったら、すぐに逃げろ」

 マディックはCHARM(チャーム)を起動できないため、強力なHUGE(ヒュージ)との直接戦闘では足手まといになってしまう。本来は1人でリリィと組んで出撃すること自体、あまりないはずなんだが。

 まぁ良い。それならそれで、私のすることは変わらない。

「りょ」

 少女は親指を立てて了解の意思を伝えてくる。

 不愛想にみえるけど、小柄だからか動きの所々にマスコットみたいな可愛らしさがある。猫みたいな娘だ、猫じゃらしを差し出したら、猫パンチをしてくるかな?

「今、なにか失礼なことを考えてなかった?」

「なんでもない。もうすぐ着くぞ」

 少女と話していると、目的の座標に近づいてきた。

 

【志乃side】

 あの人、今まで何度も死線を潜り抜けてきたような、激しい空気をまとっていた……けど、私と話すときは、とても優しい目をしていた。

 初めて見たときはとっつきにくいかもと思ったけど、良い人かもしれない。

 なんにせよ、貰った猫缶のお礼はしないと。

 あまり他のリリィと関わりを持つなって、刹那(せつな)さんには言われているけど、バレなきゃ平気だよね。

 それにあの人、百合ヶ丘の制服を着ていた。百合ヶ丘女学院のリリィは、なんとなく親近感がわくというか、気になってしまう。私のオリジナルである、せとか様のいるガーデンだからかな?

 よし、まずはグリ子と合流しよう。B班の出撃時間まで時間があるけど……まあ良っか。

「ありがとうございました」

「あっ、すいません。領収書ください」

 私は、おやつを入れたリュックを背負うと、コンビニを後にした。

 

(2)へ続く

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。