さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉 作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)
【鶴紗side】
3人でなんとか
「それで、山の中を駆け回っていたら、銃声が聞こえたから駆けつけたんですよ」
サイドテールの少女は、結局コンビニに行った後、私たちを探してくれていたらしい。
そう言えば、逃げている途中も牽制に何発か撃ったな。
「あっ、自己紹介がまだでしたね。改めまして、
美濃川(サイドテールの少女)は元気よく頭を下げる。
「こっちは、閑林グリ子。同じく14歳です」
「人をあだ名で紹介しないで。
閑林(三つ編みおさげの少女)は、怒るというより呆れた様子で美濃川を睨んだ後、フルネームを言ってわずかに微笑んだ。
「お近づきの印にこれどうぞ。さっきコンビニで買ってきたものですけど。」
「…ありがと」
美濃川はリュックの中を探ると、紙袋の中から肉まんを渡してきた。
「安藤鶴紗、百合ヶ丘女学院の1年だ」
「安藤、鶴紗? 様? 安藤、あんどう、アンドウ……あ、『血煙のリリィ』の安藤鶴紗様」
『血煙のリリィ』か。最近は気にしてなかったけど、確かにそんな二つ名が付いてたな。
「
特に美濃川。さっきの戦闘では、
私が会ってきたリリィの中でも、かなり特殊なタイプだ。
「キャンキャン」
「犬?」
いつの間にか、美濃川の足元に一匹の小型犬が寄ってきていた。
「お、いい子にしてた? よ~し、よしよし~~~~」
「1、2、3……みんな大丈夫そうよ」
美濃川が近づいてきた小型犬とじゃれ合っている間に、閑林が物陰で何かを数えている。
「何かあるのか? ……こんな所に、こんなにたくさん」
閑林が数えているものを覗き込むと、そこには1匹の母犬が5匹の子犬に授乳をしていた。さっきの小型犬と犬種も一緒だから、親子だろうか。
「親の2匹は首輪をしてるから、多分最近まで誰かに飼われていて、捨てられたんじゃないかしら。私たちが見つけた時から、タオルケットとエサ皿があったわ」
どおりで、人に慣れていると思った。
それにしても、親2匹はずいぶん痩せこけているな。
「そうか、美濃川がコンビニに行きたがっていた理由はこれか」
「そういうこと。まったく、迷子の保護だったり、野良犬の世話だったり。あの娘といると自分がリリィだって忘れそうになるわ」
憎まれ口をたたきながらだが、閑林は嬉しそうに、授乳の終わった子犬を撫でる。
「グリ子! グリ子の分のおやつ、ワンちゃんに食べられてるよ!」
「あっ、コラ、これは私のフライドチキンよ」
閑林は、美濃川が買ってきたおやつの袋を奪うために、父犬のもとに走った。
「へぇー……ほぉー……ふーん」
美濃川は閑林と交代で私に近づくと、私の顔や体をジロジロ見てくる。
正直言って、ちょっとうっとおしい。
「なんだ?」
「いえ、『血煙のリリィ』なんて呼ばれているから、鬼神みたいな人だと思ってましたけど、普通の女の子ですね」
「あまり言われたことないな。普通とは」
「てっきり、角が生えてたり、身長が3mくらいあったり、腕が
それ、リリィどころか人間じゃなくなってないか?
「志乃、領収書が犬に噛まれてビリビリになってるわよ」
こんどは、閑林が美濃川を呼ぶ。その手には、原形が領収書だと辛うじて分かる紙片がつままれていた。
「あ~~~! 後で
「
その後、2人のことを色々教えてもらった。2人は
また、美濃川の体にはマギクリスタルが埋め込まれていて、クリスタルが肉体を
正直、
【グリ子side】
今回の戦闘、私って完全に足手まといだったわよね。サポートに徹していると言えば聞こえは良いけど、攻撃手段ゼロだと、できることが少なすぎるわ。現に鶴紗様や志乃が戦っている間、手も出せずに物陰に隠れていたものね。
私のブーステットスキルについては、なんとなく分かってきている。次の出撃までには、なんとかしないといけないわね。
【鶴紗side】
子犬たちのいる廃倉庫を出た直後、研究員から[[rb:HUGE > ヒュージ]]を出現させていたケイブの位置を知らされた。どうやら、遠巻きに私達の戦闘は監視されていたようだった。
犬たちの件はともかく、美濃川は現場から離れてコンビニに行っていたが大丈夫か?
「震えて眠れ」
私達3人はすぐにケイブを破壊して、今、美濃川が最後の[[rb:HUGE > ヒュージ]]にもとどめを刺した。
「鶴紗様、鶴紗様。ほら、タッチ、タッチ」
「……ほら」
ハイタッチを求めてきた美濃川の手に、私の手を重ねる。
そんなことする柄じゃないが、やらないといつまでも誘ってきそうだ。
「そう言えば、私が上げた猫缶は結局無駄になったな」
「いいえ。貰った猫缶は、私がおいしくいただきました」
美濃川は、満面の笑みで空になった猫缶を私に見せてくる。
別に見せてくれなくていいんだが。閑林も呆れたように額を抑えている。
「閑林も苦労してるんだろうな」
「そんなことないですよ」
「それは私のセリフよ!」
色々あったけど、この2人がいたおかげで、億劫なだけだった外征が少し楽になったな。
「そうだ、鶴紗様。私が[[rb:GEHENA > ゲヘナ]]出身だってことは内緒でお願いします。特に百合ヶ丘女学院には」
美濃川は少し困った顔をすると、両手を合わせて頼み込んできた。
「どうして?」
「ちょっと事情がありまして。誓って、悪いことではないので、誰にも言わないでくれませんか?」
「……良いよ」
無理に聞くのも良くないし……何となく、信じても良いかなと思った。
第3話へ続く