さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉   作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)

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第2話(3) GEHENA(ゲヘナ)の2人

【鶴紗side】

 3人でなんとかHUGE(ヒュージ)をやり過ごした後、2人に誘われて待機場近くにあった廃倉庫まで来ていた。

「それで、山の中を駆け回っていたら、銃声が聞こえたから駆けつけたんですよ」

 サイドテールの少女は、結局コンビニに行った後、私たちを探してくれていたらしい。

 そう言えば、逃げている途中も牽制に何発か撃ったな。

「あっ、自己紹介がまだでしたね。改めまして、美濃川志乃(みのがわ・しの)といいます。14歳です」

 美濃川(サイドテールの少女)は元気よく頭を下げる。

「こっちは、閑林グリ子。同じく14歳です」

「人をあだ名で紹介しないで。閑林グウェンドリン(かんばやし・ぐうぇんどりん)よ」

 閑林(三つ編みおさげの少女)は、怒るというより呆れた様子で美濃川を睨んだ後、フルネームを言ってわずかに微笑んだ。

「お近づきの印にこれどうぞ。さっきコンビニで買ってきたものですけど。」

「…ありがと」

 美濃川はリュックの中を探ると、紙袋の中から肉まんを渡してきた。

「安藤鶴紗、百合ヶ丘女学院の1年だ」

「安藤、鶴紗? 様? 安藤、あんどう、アンドウ……あ、『血煙のリリィ』の安藤鶴紗様」

 『血煙のリリィ』か。最近は気にしてなかったけど、確かにそんな二つ名が付いてたな。

貴女(あなた)たちのこと、もう少し聞きたいんだが」

 特に美濃川。さっきの戦闘では、CHARM(チャーム)を使っていなかった。アルケミートレースのように特殊な武器を使うのではなく、完全に徒手格闘での戦いだった。

 私が会ってきたリリィの中でも、かなり特殊なタイプだ。

「キャンキャン」

「犬?」

 いつの間にか、美濃川の足元に一匹の小型犬が寄ってきていた。

「お、いい子にしてた? よ~し、よしよし~~~~」

「1、2、3……みんな大丈夫そうよ」

 美濃川が近づいてきた小型犬とじゃれ合っている間に、閑林が物陰で何かを数えている。

「何かあるのか? ……こんな所に、こんなにたくさん」

 閑林が数えているものを覗き込むと、そこには1匹の母犬が5匹の子犬に授乳をしていた。さっきの小型犬と犬種も一緒だから、親子だろうか。

「親の2匹は首輪をしてるから、多分最近まで誰かに飼われていて、捨てられたんじゃないかしら。私たちが見つけた時から、タオルケットとエサ皿があったわ」

 どおりで、人に慣れていると思った。

 それにしても、親2匹はずいぶん痩せこけているな。

「そうか、美濃川がコンビニに行きたがっていた理由はこれか」

「そういうこと。まったく、迷子の保護だったり、野良犬の世話だったり。あの娘といると自分がリリィだって忘れそうになるわ」

 憎まれ口をたたきながらだが、閑林は嬉しそうに、授乳の終わった子犬を撫でる。

「グリ子! グリ子の分のおやつ、ワンちゃんに食べられてるよ!」

「あっ、コラ、これは私のフライドチキンよ」

 閑林は、美濃川が買ってきたおやつの袋を奪うために、父犬のもとに走った。

「へぇー……ほぉー……ふーん」

 美濃川は閑林と交代で私に近づくと、私の顔や体をジロジロ見てくる。

 正直言って、ちょっとうっとおしい。

「なんだ?」

「いえ、『血煙のリリィ』なんて呼ばれているから、鬼神みたいな人だと思ってましたけど、普通の女の子ですね」

「あまり言われたことないな。普通とは」

「てっきり、角が生えてたり、身長が3mくらいあったり、腕がHUGE(ヒュージ)みたいだったりするのかと思ってました」

 それ、リリィどころか人間じゃなくなってないか?

「志乃、領収書が犬に噛まれてビリビリになってるわよ」

 こんどは、閑林が美濃川を呼ぶ。その手には、原形が領収書だと辛うじて分かる紙片がつままれていた。

「あ~~~! 後でGEHENA(ゲヘナ)の研究所に請求しようと思ってたのに」

GEHENA(ゲヘナ)に? 請求?」

 その後、2人のことを色々教えてもらった。2人はGEHENA(ゲヘナ)所属のリリィで、2人で組んで小規模なHUGE(ヒュージ)戦や、中・大規模戦闘の援助をしているらしい。

 また、美濃川の体にはマギクリスタルが埋め込まれていて、クリスタルが肉体をCHARM(チャーム)だと認識しているせいでCHARM(チャーム)が使えないとか。

 正直、GEHENA(ゲヘナ)所属と聞いた時は背筋がゾッとしたが、少なくともこの2人は悪人ではなさそうだ。

 

【グリ子side】

 今回の戦闘、私って完全に足手まといだったわよね。サポートに徹していると言えば聞こえは良いけど、攻撃手段ゼロだと、できることが少なすぎるわ。現に鶴紗様や志乃が戦っている間、手も出せずに物陰に隠れていたものね。

 私のブーステットスキルについては、なんとなく分かってきている。次の出撃までには、なんとかしないといけないわね。

 

【鶴紗side】

 子犬たちのいる廃倉庫を出た直後、研究員から[[rb:HUGE > ヒュージ]]を出現させていたケイブの位置を知らされた。どうやら、遠巻きに私達の戦闘は監視されていたようだった。

 犬たちの件はともかく、美濃川は現場から離れてコンビニに行っていたが大丈夫か?

「震えて眠れ」

 私達3人はすぐにケイブを破壊して、今、美濃川が最後の[[rb:HUGE > ヒュージ]]にもとどめを刺した。

「鶴紗様、鶴紗様。ほら、タッチ、タッチ」

「……ほら」

 ハイタッチを求めてきた美濃川の手に、私の手を重ねる。

 そんなことする柄じゃないが、やらないといつまでも誘ってきそうだ。

「そう言えば、私が上げた猫缶は結局無駄になったな」

「いいえ。貰った猫缶は、私がおいしくいただきました」

 美濃川は、満面の笑みで空になった猫缶を私に見せてくる。

 別に見せてくれなくていいんだが。閑林も呆れたように額を抑えている。

「閑林も苦労してるんだろうな」

「そんなことないですよ」

「それは私のセリフよ!」

 色々あったけど、この2人がいたおかげで、億劫なだけだった外征が少し楽になったな。

「そうだ、鶴紗様。私が[[rb:GEHENA > ゲヘナ]]出身だってことは内緒でお願いします。特に百合ヶ丘女学院には」

 美濃川は少し困った顔をすると、両手を合わせて頼み込んできた。

「どうして?」

「ちょっと事情がありまして。誓って、悪いことではないので、誰にも言わないでくれませんか?」

「……良いよ」

 無理に聞くのも良くないし……何となく、信じても良いかなと思った。

 

 第3話へ続く

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