さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉   作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)

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第3話 結成トレインズ(2)~意図しない遭遇~

【グリ子side】

 駆け足で研究所を出発した私と志乃は、コンビニで軽食(フライドチキンと肉まん)を買った後、行方不明の少女を探して百合ヶ丘女学院近くの廃墟に向かった。少女の名前は鉄麻莉歌(くろがね・まりか)。私たちと同じ14歳で、赤いマフラーをしているらしい。

「よく考えたら、私たち2人でこのだだっ(ぴろ)い場所から人を探すのって無理がないかしら?」

 隣で双眼鏡越しに(あた)りを見回す志乃に声をかける。

「あんまり大勢だと、百合ヶ丘の関係者に見つかるかもしれないんだから、仕方ないよ」

 だったら双眼鏡を使うのは絵的に怪しくないかしら?

「何が仕方ないって?」

「ぴげらっ!!」

 不意に後ろから声をかけられて志乃がたじろぐ……ぴげら??

「お前たち…はたから見ると凄く怪しいぞ…」

 声の主は、百合ヶ丘女学院1年の安藤鶴紗(あんどう・たづさ)様。

 早速、学院関係者に見つかってるじゃない。

「……鶴紗様、こんな所で何をしてるんですか?」

 驚いた拍子に放り投げてしまった双眼鏡を取りに行きながら、志乃が質問した。

「ちょっとこの辺りに用があって……それよりお前たちだ、なにか良からぬことをしようとしているなら見過ごせない」

「……実は」

 私と志乃は、事の顛末(てんまつ)を説明した。

「そうか、行方不明のリリィ……やましいことがないのなら、匿名で百合ヶ丘に協力してもらえば良いじゃないか」

「この辺りに居るって確証もないのに、気軽に頼めないわよ。それに、私たちの他にも、いくつかのグループがその娘を探してるからお構いなく」

「「そうなのか」」

 いや、志乃! アンタは知ってる(てい)でいなさいよ!

 

【志乃side】

 私たちは、鶴紗様と別れた後もしばらく行方不明の少女を探したが、なんの手掛かりも見つけられずにいた。

「あと探してない場所は……グリ――」

 探すポイントを変えようとグリ子に声をかけた時、白いコートを着た男性が近づいてきた。

「君たちは、リリィだね?」

「そうですけど、貴方(あなた)は?」

「私は、仕事でリリィの能力研究をしている者だ」

 リリィの能力研究……私たちとは別の施設のGEHENA(ゲヘナ)職員か、それとも全く別の組織か。

「実はこの付近で、行方不明になっている少女を探しているのだが、なにか知らないかね?」

「えっ、私たちも女の子を探してるんです」

 こんな偶然もあるんだね~ ……なわけないか。

「どうやら我々は同じ人物を探しているようだ」

「そうみたいですね」

 基本的にGEHENA(ゲヘナ)はリリィにとって有害だ。この男性が他施設のGEHENA(ゲヘナ)職員だとしたら関わるべきではない。

 たとえGEHENA(ゲヘナ)職員じゃないにしろ、GEHENA(ゲヘナ)を敵視している人物も多い……GEHENA(ゲヘナ)所属である私たちの存在は目の上のたんこぶになる。

 あんまり人を疑うのは得意じゃないんだけどなぁ。

「それじゃあ私たちはこれで」

「待ちたまえよ。ここで会ったのも何かの縁だ。共に少女を探すのはいかがかな?」

「すみませんが、知らないイケメンに付いていっちゃ駄目だって、教えら――

「志乃!危ない!」

 

【鶴紗side】

 美濃川たちと別れたあと、私は当初の目的どおり猫の集会所に向かっていた。

 行方不明のリリィか……無事だと良いんだけど。

 GEHENA(ゲヘナ)が行う人体実験。奴らはHUGE(ヒュージ)との戦争に人類が生き残るためという大義名分のもと、人の体を(いじく)り、(はずかし)め、(もてあそ)ぶ。

「っ! ……()なことを思い出した」

「ニャー」

 着いたか。さてと、今日はどんな猫がいるかな。

 ……おかしいな、いつものベストスポットである陽だまりに猫がいない。今すれ違った猫も、近くで警戒を解かずにそこを見ている。

 私が殺気を出して歩いていたから逃げられたか? こんな遠くから?

「う……ん……」

 今、声がしたような。

「うっ……かっく……」

 間違いない、人の声だ。

 陽だまりに近づくと、黒髪の少女が身をすくめて寝入っていた。少女の手には、少しだけ汚れたアステリオンが握られている。

 もしかして、この娘が美濃川の言っていたリリィか?

貴女(あなた)、大丈夫?」

 とりあえず、話を聞こうと思い少女の肩を揺らす。

「ふぃっ……」

 あっ、起きた。大した怪我もなさそうで良かっ

「ひいいいぃぃぃぃぃぃぃ!? ……ぎゃふ!?」

 目が合ったとたん、青ざめて遠ざかられた。と思ったら壁にぶつかって逃げ場を失っている。

 少女は息を荒げて、起動もしていないアステリオンを盾に涙目でこちらを見つめてくる。

 今私は、護身用にCHARM(チャーム)を持ってきている。武器を持った人間を警戒するのは当たり前か。

「やめて……下さい」

 まだ何もしてない。いや、何もするつもりもないが、ここまで脅えられても困る。まだ殺気が抑えられてないのか?

 ……助けて(まい)様。

 

【グリ子side】

 なんとか逃げられたわね。あの男、(よう)はつまり敵だったってことね。

 志乃に襲い掛かる影が見えて、そちらに気を取られていたら、私にも他の何かが襲撃を仕掛けてきた。その何かとは……

「機械でできた……狼?」

 どういう仕掛けか知らないけど、どう見ても生命体じゃない。完全に人工でできた機械狼が、鼻(というかセンサーかしら)をヒクヒクさせて私を探している。

 志乃の援護もあって身を隠すことができたけど、このままじゃ見つかるのも時間の問題だわ。

「……戦場ニートでいるのも潮時かもしれないわね」

 意を決して、ポケットに入れていた採血器で人差し指に傷をつける。自分の血液を媒介に疑似CHARM(チャーム)を生成するブーステッドスキル‐アルケミートレース。

 形が単純化できる盾と違って、攻撃的な武器はまだイメージが上手くできない。だからまだ大雑把な物しか作れないけど、そんなことを言っている場合じゃない。

 生成した赤銅色(しゃくどういろ)の刃を見ると、改めて今から一人で戦うんだと実感させられる。

「もう志乃ばっかりに戦わせるわけにはいかないのよ。私だってもうリリィなんだから」

 

(3)へ続く

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