さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉   作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)

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第3話 結成トレインズ(3)~強襲する獣たち~

【志乃side】

 コートの男性との話の最中、何者か(CHARM(チャーム)を持っているので、おそらくこの男性の仲間のリリィ)が死角から襲ってきた。その時は、グリ子が気づいてくれたおかげで不意打ちをかわせたが、そのリリィの眼光は私を捉えて離さない。

 レアスキル‐縮地で一気に距離を取って身を隠そうとしたが、こちらの位置を把握しているかのように距離を詰めてくる。

 今はお互いにヒット&アウェイで様子を見ているが、長期戦になればCHARM(チャーム)を持たないこちらが不利になってしまう。

「ぐるる……があぁっ!!」

 おまけに、わざとか天然か知らないが、相手のリリィはときおり獣のような咆哮(ほうこう)を発していて、ヒトと戦っている気がしない。

 早くグリ子の援護にも行きたいのに。

「どうだね? 我々が養成技術の(すい)を集めて育てたリリィの強さは」

 コートの男性は愉快そうに笑う。その声を聞いて、相手のリリィは男性のそばに戻っていき、こちらから目を離さずにCHARM(チャーム)を構えた。

 赤い短髪に手甲鉤(クロー・ガントレット)CHARM(チャーム)、体格は私と同じくらいだけど動きのしなやかさが私より上だ。攻守のバランスもとれている。

「養成技術?」

 私も臨戦態勢を崩さずに返答する。

「言っただろう、リリィの能力研究をしていると。この()は幼少期から戦闘訓練を積んでいる優等生なのだよ」

「……私もだよ。小さいころから施設で訓練を続けてる」

「そうか、境遇が似ているな……だが、その割には……」

「ぐがあぁ!!」

 男性が指パッチンをすると、赤髪リリィがそれを合図にCHARM(チャーム)の刃先をこちらに向けて突進してきた。

 私は突進を紙一重でかわすが、彼女はCHARM(チャーム)をシューティングモードに切り替えると、ノールックでCHARM(チャーム)弾を放ってきた。

「ぐへぇ!」

 なんとか弾は受け止めたが、衝撃で大きく後方へ吹き飛ぶ。

「ここまで実力差があるのは、どういうことだろうかね?」

 男性の嘲笑(ちょうしょう)がかすかに聞こえるが、その言葉に反応する余裕などなかった。

 

【グリ子side】

「このくそぉお」

 攻撃が当たらない。

 私の身体能力は、他のリリィと比べて溜息(ためいき)が出るほど低いが、そもそもCHARM(チャーム)を振るときに体が上手く動いていない。

 こんなことなら、志乃の訓練に付き合って素振りでもすれば良かったわね。

「グルゥラァァウ!!」

 機械狼は、軽いフットワークで私をかく乱しながら爪や牙を突き立ててくる。気を抜けばサンドバッグになりそうになるが、志乃の縮地と比べれば対応できないほど速いわけではない。

 アイツ(志乃)は分身の術とか、疑似瞬間移動を見せてくるものね。

 

 ……今だ!

 ダメもとで、機械狼の動きに合わせて突きのカウンターを試みる。

「ガウバッア!!」

 ……嘘、決まった? ……いや、決まってないわ! 刃が当たったけど、塗装がちょっと剝げたくらいね。

「くっ! ……? ……風?」

 反撃の方法を模索していると、強めの海風が吹いてきた。

 そう言えばここは海が近かったわね。

「……ん?」

 一瞬間を置いた後、機械狼は私を探して再び鼻をヒクヒクさせた。

 さっきも、匂いを嗅ぐような仕草(しぐさ)をしていた。

「……行けるかもしれない」

 私はコートを脱ぐと、血液を媒介にした疑似CHARM(チャーム)を軽めに振りかざす。

 成功すればCHARM(チャーム)を直撃させられる可能性があるが、私の未熟な攻撃がどこまで通用するか分からない。

「ヴァウガァウ!!」

 でも、やるしかない!!

 コートを機械狼の前に放り出し、一歩後ろに下がる。

 機械狼は私の方を向くと、疲労を感じさせない動きで接近してくる。

 ……が、私に到達する手前で急停止すると宙を舞い、近くの瓦礫(がれき)に引っかかった私のコートに飛び掛かった。

 そして私は確信する。やはり、この機械狼はほとんど匂いだけで私の位置を認識していたのだ。

 私よりもコートを優先して攻撃したのは、ポケットの中に入れていたフライドチキンの匂いを追っていたから。私を一度見失ったのは、強い海風で周囲の匂いが混ざったから。

「コートや採血器の経費が落ちなかったら、あの男に請求するわよ」

 今度は機械狼の横腹を狙い、接近する勢いもプラスして赤銅色(しゃくどういろ)の刃を振り下ろした。

「……効いて……ない」

 全力を込めたつもりだったけど、私のCHARM(チャーム)は機械狼の鉄の体を少しへこませた程度で、ダメージにすらなっていない。

 まずい、もう次の手を考える隙も体力もない。渾身の一撃を仕掛けて体勢が崩れた。次の攻撃はかわせない。

 駄目よ! ……志乃の方も優位に立っているかわからない、ここで戦闘不能になるわけにはいかないのに。

「はあぁぁあ!」

 思考回路に絶望が巡り始めたとき、金髪の揺らめくポニーテールのリリィがCHARM(チャーム)の横なぎで機械狼を吹き飛ばした。

「……鶴紗様」

「これで借りは返したぞ。閑林」

 

(4)へ続く

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