さんけつのオリリィ物語〈トレインズ編/Buds of Dystopia〉 作:3次元に見放された決闘者(略:さんけつ)
【志乃side】
「もうそろそろ降参してもらえないかね」
赤髪のリリィが本気を出してからは一方的だった。たまに優位に立てるときもあるが、コートの男性がアドバイスやサポートをするから、戦いの流れをこちらに向けられない。
「一方的に襲ってきたくせに、今更説得? 順序が違うくない?」
私は壁に追い詰められ、左手から流れる血を止血しながら座り込んでいる。傷は大したことないが、赤髪のリリィに
「私たちにとって、他の施設の武力はハッキリ言って邪魔なのでね。少し痛い目を見せておきたいのだよ」
考え方が野蛮すぎる! マッドサイエンティストか!
どうにかして赤髪のリリィの気を
「……なるほど、あの動きは鷹の目を使ってたんだね」
彼女の目は、鷹の目が持つ真紅の輝きを放っていた。
レアスキル/鷹の目は、空間把握系のスキル。コンピュータゲームの、見下ろし方アクションゲームをプレイしている感覚に近いって刹那さんが言ってたっけ。でも、一対一になったとき、ここまで脅威になるとは知らなかった。
「まさに、野獣の様だろう。ここまでこの
「なんのこと? ……!!」
赤髪のリリィの目、よく見ると瞳孔が人間のそれとは違う……異様に縦に伸びていて、まるで猫や蛇のそれだ。
「……そうか、
私やグリ子と同じ、普通ではない存在……
「……貴女、今生きていて楽しい?」
「がぅ?」
「私は楽しいよ。アニメ見て、漫画読んで、食べて、寝て、知らない場所に行って、仲間とバカやって」
「わうぅ? ……ううぅ……」
赤髪のリリィは返答に悩んでいるのか、または私の言葉の意味が分からないのか、少し困った表情を見せてきた。
「何を言いたいのか分からないな、君は」
なんでだろう……気になっちゃった、のかな? 境遇が似てる気がして。
「が……わ、たし、の」
「志乃!! 大丈夫!?」
リリィの
良かった、無事だったんだね。
グリ子はアルケミートレースで作った盾を構えて、私と赤髪のリリィの間に割って入った。
「見た目はボロボロだけど、大した怪我はしてないみたいね」
グリ子の方こそコートがボロボロに……というか、裾へのダメージだけ大きいけど何があったんだろ?
「お前たち、何者か知らないが引いておけ」
鶴紗様……まだ、近くに居てくれたんですね。助かりましたけど、
「おやおや、形勢逆転か。まぁ私も、百合ヶ丘女学院のリリィと事を構えるのは不本意だ。
「了、解、です」
コートの男性と赤髪のリリィは、
【グリ子side】
男と犬とリリィを
すぐにその場を離れたかったが、私と麻莉歌は
今は、志乃がお昼ご飯の追加を買いに行くと言い出したので、落ち着けそうな物陰で志乃が戻るのを待っている。
なんであんなに元気が有り余ってるのよ。
「お待たせしました~。美濃川急便で~す。昼食4人前お届けに参りました!」
「ひうっ」
「このおバカ。せっかく落ち着いたところだったのに、怖がらせちゃったでしょうが」
志乃が駆け足で帰ってきたと思ったら、バカでかい声でそれを主張するから、麻莉歌が驚いて涙目になってしまった。
「お~~よしよし、これでも見て元気を出して」
「…………何よ、これは?」
志乃が取り出したのは“でんでん太鼓”。幼児をあやすために使うあれだ。
「電話で刹那さんに、泣いてる子を泣き止ませるにはどうすればいい? って聞いたらこれだって」
あの親にしてこの娘ありね………いつまで鳴らしてるの! でんでんでんでん
「こんなのもあるよ」
次に出してきたのは、シャボン玉。
余計なものまで買って、レシートで経費が落ちなかったらどうするのよ。
「アンタは……そんな物でJCが
「けど、私はこれを聞いてると楽しくなってくるよ。でんでんで~ん」
感性の成長が止まってるのかしら。
「ぷっ」
「「ぷ?」」
「あはははははは!!」
私と志乃がいつものようにコントをしていると、今まで脅えて落ち着かない様子だった麻莉歌が笑い出した。
「あっ、ご、ごめんなさい。私」
「良いよ、良いよ。私、美濃川志乃。こっちは閑林グリ子」
「人をあだ名で紹介するなって言ってるでしょ。閑林グウェンドリンよ」
志乃がこの調子で私を紹介するから、施設の職員どころか、食堂や売店の店員にいたるまで私をグリ子って呼んでくるのよね。グリ子呼びはいいけど、本名がグウェンドリンだってことは知っててほしいわ。
「大丈夫。グリ子が居ないときはグウェンドリンで紹介してるよ。グリ子って可愛いから、みんなに覚えてほしくって、ついね」
……あだ名がよね? 素でこれを言うんだから……もう。
「私はもう行くぞ」
声がした方を見ると、昼食を食べ終えた鶴紗様が耳打ちしてきた。
「この娘はもう
「私もそう思うわ。とりあえず、施設に帰ってから考えるつもりよ」
「そうか。もし、何かあったら百合ヶ丘女学院を頼るんだぞ」
鶴紗様、優しい表情もちゃんとできるのね……私はできないけど。
(5)に続く