艦これはアニメ版と劇場版の知識しかありませんが、何卒よろしくお願いいたします。
中央歴史16✕✕年、新世界に召喚されて十数年の時を経た日本国。
世界はエモール王国の予言通りに復活した古の魔法帝国『ラヴァーナル帝国』の野望を打ち砕き、新世界に真の意味の平和を取り戻した。
しかしこの戦いで払った犠牲は大きな爪痕を残したが、新世界のバイタリティは凄まじく、徐々にではあるが復興を遂げていく。
そんな渦中、ラヴァーナル帝国との戦争で大きな役目を果たした日本の広島県呉市では1隻の巨艦がその身を大型船舶用ドックに身を預けていた。
「酷い傷痕ですね」
ドックに鎮座する1隻の巨大戦艦。この戦艦こそ新世界の勝利に最も貢献した武功艦であり、その名を世界に知らしめた紀伊型戦艦『紀伊』であった。
ラヴァーナル帝国との戦いは熾烈を極め、海上自衛隊も少なくない被害を受けた中、紀伊は海上自衛隊やムー海軍、神聖ミリシアル帝国海軍、グラ・バルカス帝国海軍等の世界連合艦隊の先鋒に立ったため一番被害を受けていた。
速射砲やCIWS、各種ミサイルランチャーはほぼ破壊し尽くされ、マストも根元から折れて後部艦橋にのし掛かっている状態である。そんな中でも紀伊の巨体はその威容を保ち、傷ついて尚も戦艦としての誇りを見せつけている。
「あぁ。だがコイツの修理は後回しだ」
「え?」
「破損が酷いから何処から手をつけて良いか分からんし、上は他の艦の修理を優先だってさ」
「それって、コイツはお役御免て事ですか?」
「だろうな。もうコイツが必要とされる相手も居なくなった訳だし」
紀伊は確かに武功艦であり本来なら優先的に修理を受ける筈だが、現実がそれを許さなかった。
戦いで傷ついたのは紀伊だけではなく世界連合に参加した護衛艦や輸送艦に加えて喪失した陸上自衛隊や航空自衛隊の装備の補填や修理が優先された事で、紀伊型は修理箇所の調査の名目で暫くの間、ドックに留め置かれる事なった。
「戦争に勝っても無い袖は振れないか」
それから3年の月日が経ち……
「自衛艦隊司令に敬礼!」
呉市の大型艦用岸壁で音楽隊による演奏が始まり多くの人が集まっていた。会場には制服姿の海上自衛官やスーツを身に纏った防衛省や政府高官が訪れており、皆岸壁に停泊している紀伊の姿を見ていた。
この日、ドック入渠から3年の月日を経て修理を終えた紀伊にとって最後の仕事が与えられていた。それは、新世界に転移してから海上自衛隊の最高戦力として活躍した紀伊の自衛艦旗返納式、所謂退役式典が厳かに執り行われていた。
式典の会場に姿を表した男の名は松田千秋。
かつては紀伊の艦長を勤め、現在は自衛艦隊司令となった男である。
壇上に上がり、来賓や式典の内容を中継している日本、ムー、ミリシアル、クワ・トイネ、パーパルディア、グラ・バルカスのメディアのカメラに向かい、マイクの前に立つ。
「本日、この自衛艦旗返納式並びに紀伊型の退役セレモニーに際し各国の代表並びにメディアの方々には大変お忙しい中、お集まり頂き感謝の念に堪えません。皆様の目の前に見えます紀伊型は我が国の国土転移、様々な有事に際し我が国の防衛、更には他国との友好関係を構築する一翼を担い多大な貢献を果たしました。そして3年前のラヴァーナル帝国との武力衝突では傷つきながらも帝国の野望を未然に阻止たらしめた事は大きな誇りであります」
松田はスピーチを読み上げ、メディアからもカメラのフラッシュが炊かれる中、自作のスピーチ原稿を読み続ける。
「本日、紀伊並びに姉妹艦尾張はその職務を解かれ、以後は世界平和のための礎として新たな任務を背負い、多くの人に平和を示すための遺構として勤めを果たせる事を真に願う所存であります」
会場内に拍手が包み込む。
『自衛艦旗返納』
そのナレーションの声と共に現紀伊の艦長が登壇し、松田の前に立つと、折りたたまれていた紀伊の自衛艦旗を松田に手渡す。これを以て、紀伊は正式に自衛艦としての任を解かれ正式に退役となった。
続く
エピローグを1と2に分けます。