運転免許取得と言う目標が出来た紀伊は、再び鎮守府内を歩き出し、次にたどり着いたのは艦娘専用の桟橋があるエリアだ。
桟橋と砂浜から海面に向けて木造で作られた簡易的なものであるが、艦娘が使用するなら何ら問題はない。
「お?」
其処では、午前中の演習で一緒だった第6駆逐隊が艤装を身につけて何処かへ出発しようとしていた。紀伊は彼女達に声をかける。
「第6駆逐隊、何処に行くんだ?」
「紀伊じゃない。これから遠征に行く処よ」
「遠征?何をしに?」
「資源の回収よ。重油とかボーキサイトとか色々とね」
「もしかして、その数珠繋ぎのドラム缶はそのためのか?」
桟橋の側にはワイヤーで数珠繋ぎにされた多数のドラム缶が浮いており、第6駆逐隊全員の艤装と繋がっている。
「今から行くのか?」
「えぇ。今回は徹夜になりそうなの」
暁がため息を吐く。
「誰かがやらないと皆が困るのです」
「だけど最近はこればっかり。他の任務は無いのかしら?」
『電』の言葉に『雷』が少し不満を漏らす。
「だが駆逐艦である私達に出来る事は限られる。提督は間違った判断はしていないと信じてる」
『響』は自身の任務に肯定感を示す。
「そう言う訳で、資源の輸送任務は私達の専売特許って訳なの」
「大変だな。何なら手伝おうか?戦艦の護衛があれば安心できるだろ?」
その言葉に暁が大きく反応した。
「本当っ!?」
「あぁ。丁度暇を持て余していた処だ」
「じゃあお願いするわ!しっかりエスコートしてよね!」
「任せろ。艤装と長門の許可を取ってくるから待っててくれ」
紀伊はその足で長門へ許可を取り付けると、工廠から艤装を持ち出し、桟橋エリアへと戻ってきた。
「待たせたな。で、遠征って何処に行くんだ?」
「此処よ」
暁は紀伊に海図を渡し、目的地を指差す。
「そこそこ距離があるな。まぁ問題はないだろう」
「決まりね。じゃあ出発っ!」
こうして、戦艦の護衛と言う贅沢なお供を連れた第6駆逐隊は大量のドラム缶を手に鎮守府を出発した。
鎮守府出発から5時間後、太平洋の某海域に到着した第6駆逐隊と紀伊は早速、資源回収を開始した。
「此処は穴場なのよ。この前偶然見付けた処よ」
「確かに穴場だ」
その場所は珊瑚礁と水没した島により浅瀬になっている其処で、ボーキサイトや重油をドラム缶に詰め込んでいく。
「警戒、お願いね」
「任せろ」
紀伊はHSS-2Bを2機、RQ-2Jパイオニア3機を飛ばし周辺を警戒、紀伊自信も対水上レーダーや対空レーダーを駆使して近距離の警戒を行う。
「静かだな」
聞こえるのは波音と海水が岩場に叩きつける音、丁度良い風が吹き付け心が落ち着く。今が戦争でなければ、その場でパラソルを広げてハンモックに寝転がりながは本を読み耽っている。
砲撃や雷撃、爆撃にミサイル等の爆音が無い自然界の音は心地よく感じた。
「ん?」
しかし、そんな平和な時間は長くは続かなかった。ヘリから緊急の通信が入った。
「こちら紀伊、どうした?」
『艦長、正体不明の高速移動物体多数を捕捉!そちらに向かっています!』
「敵の速度は?」
『40ノットを維持。レーダーの反射から恐らく高速艇の類いかと思われます』
「了解。暁!」
「どうしたの?」
「今、ウチの哨戒機が多数の反応を捕捉した。恐らく高速艇だと思うが、深海棲艦に高速艇は居るのか?」
「PT小鬼ってのが居るわ。魚雷2本も抱えて40ノット以上は出るからすばしっこいのよ」
「分かった。今、ヘリから映像を送ってもらってるから確認を頼む」
そう言うと紀伊は艤装からタブレット端末を取り出して、ヘリからの映像を写し出す。
「これは………間違いないわ。PT小鬼の群れよ」
「了解。けっこう数が居るが問題はない、皆はそのまま作業を続けてくれ。もし取りこぼしがあったら知らせるからその時は直ぐに逃げてくれ!」
「了解!任せたわ!」
暁達は作業を続け、紀伊はPT小鬼に向けて動き出した。
「相手は小さい上にすばしっこい。ならヘリからの機銃掃射で何とかなるか………1号機へ、聞こえるか?」
『聞こえます』
「機銃は使えるか?」
『はい、使えます』
「今からそっちに向かうから機銃掃射で時間を稼いでくれ」
『了解!なるべく早くお願いします』
「分かった。無理はするな!」
通信を終えると紀伊は速力を上げた。
続く
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